(2011年5月15日発売 THE BIG ISSUE JAPAN 第95号 特集「発達障害は個性にできる」より)

「発達障害」も発達する——杉山登志郎著『発達障害の子どもたち』から




世間に広がる「発達障害」についての誤解は多い。今号の特集では「発達障害」という日本語を使ったが、「発達障害」は英語では「developmental disorder」であり、disは乱れ、orderは秩序を意味する。つまり、「発達の道筋の乱れ」あるいは「発達の凹凸」を意味する。

児童・青年精神科医の杉山登志郎さんは、「○○失調」という日本語をできれば使いたいと、その著者『発達障害の子どもたち』の中で述べている。

杉山さんは現在、発達障害は四つのタイプに大別されると考えている。
1.認知の全般的遅れを示す「精神遅滞」など、
2.社会性の障害である「広汎性発達障害(自閉症スペクトラム)」、
3.軽度発達障害の「注意欠陥多動性障害(ADHD)」「学習障害(LD)」「発達性協調運動障害」、
4.「子ども虐待にもとづく発達障害症候群」である。

このうち、2005年に発達障害者支援法が施行されるまで、発達障害として社会的に公認されていたのは、「精神遅滞」と「広汎性発達障害(自閉症スペクトラム)」のうち知的障害を伴うもの、筋ジストロフィー症や脳性麻痺などに限られていた。

ようやく07年から、知的障害を伴わない「高機能広汎性発達障害(高機能自閉症、アスペルガー症候群など)」「ADHD」「LD」についても全国の小学校での特別支援教育が始まったのである。

杉山さんは、発達障害のサポートや教育について、
子どもは発達をしてゆく存在であり(中略)、その過程で凹凸や失調は全体として改善してゆくのが普通である。むしろ、改善をしてゆかなければ何かおかしなことが起きたと考えるべきであり、二次的な問題の派生を疑う必要がある。そして成長をして大人になったときに(中略)、生活をしてゆく上で、支障になるようなハンディキャップを持ち続けているとは限らない
と述べる。

また
生来の素因を持って生じた発達障害に対して、さまざまなサポートや教育を行い、健全なそだちを支えることによって、社会的な適応障害を防ぎ、障害ではなくなるところに、発達障害の治療や教育の目的がある
と断言している。

ただし、診断が遅れた人には、二次的な障害が出やすい。今、成人になって初めて診断を受けた人への処遇が大きな問題となりつつある。
これまでの精神医学、あるいは臨床心理学は、成人はおろか青年期の患者においても、幼児期の状況を丹念に辿る習慣を持たなかった。
(中略)
この問題は、おそらく精神医学における診断学体系の見直しまで拡がる可能性がある
ともいう。

現実に、青年期を迎えた、あるいは成人になった人たちへの社会的なサポートは自助グループなどのNPOの他にはない。発達障害についての社会の認知と理解が深まり、全国各地で子どもたちへのサポートと教育が進み、青年や成人に対しての支援が一日も早く始まることを願う。  (編集部)




すぎやま・としろう

1951年、静岡市生まれ。専門は児童青年期精神医学。久留米大学医学部卒業後、愛知県心身障害者コロニー精神科医長、静岡大学教授などを経て、あいち小児保健医療総合センター保健センター長兼心療科部長。日本小児精神神経学会常務理事。著書に『発達障害の豊かな世界』(日本評論社)、『子ども虐待という第四の発達障害』(学習研究社)、『発達障害の子どもたち』(講談社現代新書)、編著書に『講座子どもの心療科』(講談社)などがある。



















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