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労働者の被曝線量計を鉛で覆い不正操作。拒否した3人は解雇



爆発で放射能にまみれた福島第一原発の復旧作業で、被曝線量を少なくするために、ある下請け企業が不正を行っていたことが内部告発から明らかになった。

下請け企業の名前はビルドアップ。東電の子会社東京エネシスから、循環冷却のパイプに保温材を巻きつける作業を請けた。昨年12月のことで、冬場に粗末なパイプが凍って破裂しないための処置であった。

下見にいったビルドアップの役員は、被曝線量が高くなりそうなことから、胸につける被曝線量計を鉛で覆うことを思いつき、作業員12人に強要したという。話し合いの結果9人は合意したが、拒否した3人は解雇された。

鉛の厚さは数ミリとされ、被曝線量は数パーセント程度下がったと思われる。鉛カバーは現場で装着し、作業後に原発敷地内に捨てたと述べている。

なぜこのような不正をするのか。法律では、年間の被曝線量の限度を50ミリシーベルトかつ5年間で100ミリシーベルト以下としている。そこで、線量計によって個々の作業ごとの線量を記録して被曝線量を管理する。これは本来、労働者の被曝を限度以下に管理するためのものだ。ところが、逆に、50ミリを超えると作業員はその年の仕事がなくなるし、次の年からの作業も被曝管理をより厳しくする必要が出てくる。場合によっては働けなくなる。その弱みにつけ込んでこのような違法行為がまかり通っているのだ。

他方、雇っている企業にとっても都合がいい。労働者を確保する煩わしさをまぬがれるし、労働者の確保が困難になることによる日給の上昇からもまぬがれるだろう。

今回の事件は氷山の一角だ。これまでにも被曝の少ない人の名義を使って作業したことが報告されている。また、事故直後には被曝線量計を持たずに作業したケースもあったとのことだ。将来に健康影響が出てきても、被曝が正しく記録されていなかったり、被曝を証明するものがなければ、労災として扱われない。

国会福島原発事故調査委員会や政府の事故調査委員会がそれぞれ最終報告をまとめて公表したが、こうした被曝作業の実態には十分に迫ることができなかったようだ。この際、徹底して被曝作業の実態に迫ってほしい。弱い作業員にしわ寄せがいく構造は早急に改めるべきだ。



(2012年8月15日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 197号より)


伴 英幸(ばん・ひでゆき)

1951年、三重県生まれ。原子力資料情報室共同代表・事務局長。79年のスリーマイル島原発事故をきっかけとして、脱原発の市民運動などにかかわる。89年脱原発法制定運動の事務局を担当し、90年より原子力資料情報室のスタッフとなる。著書『原子力政策大綱批判』(七つ森書館、2006年)















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