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(2012年12月15日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 205号より)




大間原発の建設続行、対岸市町はじめ大きな反対の声



福島原発事故によって中断していた大間原発の建設が10月から再開されている。政府が建設を止める法律はないとの認識を示したため、再開となった。ただ、今後つくられる新しい安全基準に合格する必要はある。




11月14日に超党派の国会議員でつくる国会エネルギー調査会で、同原発の事業者であるJパワー(電源開発株式会社)から同原発に関する説明を聞き、経産省からも考えを聞いた。

新基準に適合するために追加的な工事が必要になるだろうことを承知で建設を再開したとJパワーはいう。なぜ新基準を待てないのかの明瞭な答えはなかった。

同社によれば、現在の工事進捗率は36・7パーセント。参加者からは他電源への転換を考えるべきとの意見が出ていた。筆者もまったく同感だ。というのは、同社は高効率の火力発電技術をもっているからだ。これから原発を作ることに何らメリットはなく、むしろ放射能のごみという厄介な問題を抱え込むだけと考えるからだ。

Jパワーによれば、大間原発の建設を進める理由は電力需要の拡大が予想されるからだという。計画停電や原発停止によって、消費者の節電意識が高まり、大きな成果をあげていることを私たちは実感している。需要の拡大には極めて大きな疑問をもつ。




この日の会合には、大間原発の対岸に位置する北海道から参加があった。説明に使われた写真では、大間原発の立地点から函館市の夜景が間近に鮮明だった。工藤壽樹函館市長、高谷寿峰北斗市長、中宮安一七飯町長らが非常に強い口調で原発建設に反対の意見を述べた。

Jパワーにとっての顧客は電力会社なので、消費者への対応は不慣れで横柄に感じられた。市町村への事前説明と話し合いはなかったそうだ。防災対策の範囲が30キロに拡大されるが、工藤函館市長は避難計画をつくるより建設をやめるべきと、まっとうな主張だ。




他方、経済産業省の核燃料サイクル産業課は、大間原発に期待しているようだ。この原発は大規模なプルサーマルが可能だから、六ヶ所再処理工場の運転とつなげているのだ。2030年代に原発ゼロを目指す方向で再処理をやめるべきところ、原発の建設で解決しようとしているわけだ。向いている方向が真逆だと言わざるを得なかった。






伴 英幸(ばん・ひでゆき)

1951年、三重県生まれ。原子力資料情報室共同代表・事務局長。79年のスリーマイル島原発事故をきっかけとして、脱原発の市民運動などにかかわる。89年脱原発法制定運動の事務局を担当し、90年より原子力資料情報室のスタッフとなる。著書『原子力政策大綱批判』(七つ森書館、2006年)