前編を読む





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市民参加を盛上げるノウハウを蓄積する



イケダ: 行っていることは、専門的なことというよりは、学生が提供できる先生役というか、家庭教師的なものになるんですか?

森山: 昔であれば、ボランティア参加というと、地域の目があってやめづらかったんです。でも、今では、個人のボランティア参加が多いので辞めやすかったりもします。そこで、どうやって長く続けてもらうのかということは課題です。「ボランティアで子供たちの支援をする」というと聞こえはいいですが、ボランティア活動の優先順位も低くなりがちなので、それをどう担保していくのかが日本では遅れていると感じています。

実際、ボランティアのノウハウの仕組み化がされていないので、3keysでは他のNPOへの研修も行っています。法人化してまだ3年ほどですが、自分たちで実験中してボランティアのノウハウ構築をしているんです。これからは、徐々に個人だけでなく企業なども巻き込み、非営利分野、さらには市民参加を盛り上げていきたいと思います。

イケダ: 学習支援を行いつつ、ノウハウをためているんですね。ちゃんと先が描けているのが素晴らしいと思います。




不適切な支援は、子どもたちを傷付けかねない



森山: やはりノウハウを仕組み化していかないと、参加する人の自己満足の活動になってしまいがちです。例えば、単発の活動を行って、子供たちがもっと求めているのに、それで終わってしまったとします。それでは、結局のところ、支援対象の子供たちのためになりません。

支援を受けたのにもかかわらず、何もできていないことに対して傷つく子供たちもいます。さらには、参加する側も問題の根深さに気付かず、離れていったりするので、問題解決が先送りになるんですよね。

イケダ: 不適切なボランティアや未成熟な支援によって、支援を受ける側の人たちが自分の尊厳を傷つけられてしまうことがあるんですね。未熟な市民参加が課題を悪化させているという視点は面白いですね。

では、個人でボランティアに参加する時に気をつけるポイントなどはあるんですか?

森山: 理想的には、自分の能力やキャパシティを客観的に見れることですね。ボランティアのみなさんは最初に一番やる気があって、家庭教師だと何教科でも教えられるという人もいますが、結局早く辞めていっています。そういう人たちはあらかじめ自分の中でストーリーを描いているために、現実とのギャップが生まれるとやる気をなくしてしまうんです。

また、3keysでは、「週1時間1教科」という仕組みをつくっていて、ボランティアの理想通りにはならないものの、長く活動参加が続けられるように設計しています。結局のところ、属人性のある部分をいかにマニュアル化していくのかが大事になってくると思いますね。


イケダ: 3keysはNPOとして受益者とボランティアをつなぎ、支援を提供していることもあり、中間団体ということなんですね。




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「共助」のバランスを戻していく




イケダ: NPOでいうと寄付型とソーシャルビジネスとも言われる事業型という分け方がありますが、森山さんはソーシャルビジネスに関心はありますか?

森山: 関心はありますが、定義が結構ごちゃまぜになっていると思うんです。まず、ビジネスモデルを整理すると、受益者が負担できる形とできない形があります。負担できる事業は広義のCSR、理想的な企業の追求とも言えると思います。一方で、受益者からお金がもらえないモデルは、拡大を続けてもコストがかかっていくだけです。このモデルでは拡大=成長とはなりません。

このようなモデルでは、無償の担い手を増やしていくことが重要なポイントになると考えています。つまり、コストを最小限にして、市民参加を促していくことが大事になるんです。そのため、3keysでは、現場で3年ほど活動してきたノウハウをもとにNPOや自治体へのコンサルティングなども行っていきたいと考えています。

イケダ: 森山さんは、今は市民が未熟で、まだかなりの資本が眠っていて、そこに水をやったり、耕すことで、花を咲かせ、最終的にはお金を介せずに地域の助け合いが復活してくると普通に信じていますよね?

森山: そうですね。もともと昔の地域社会に存在したバランスが、いま崩れることはないと思っているんです。自分がバランス主義なのかもしれませんが、昔あった助け合い、共助を含めたバランスをもどしていくことを目指しています。引き続きNPOでの実践を通じて、これからあるべき社会を少しずつ作っていきたいです。

イケダ: 今日は興味深いお話をありがとうございました!




インタビューを終えて



本当は児童養護施設の現状と支援について伺う予定だったのですが、思わず話が脱線して、「市民参加」について語ってもらうことになりました。「眠れる市民たちが社会参加すること、世の中が良くなっていく」というポジティブな未来は、エネルギーをいただける内容になっていると思います。

3keysは11/9に、ライフネット生命の出口氏を招いて、これからの働き方を考えるための「Child Issue Seminar」を実施予定です。参加費は2,000円、高校生は無料となっております。こちらもふるってご参加ください。