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“ホームレス”の定義とは?



「ビッグイシューの販売者が若年化している」、「若者ホームレス」が増加傾向にあると言われてもピンと来る人はほとんどいないかもしれない。

路上にいるよりも、ネットカフェやファーストフード店などの終夜営業店舗などに滞在していることが多い彼らを路上で見かけることは少なく、彼らは“見えにくい存在”になっているからだ。

さらに彼らは日本で一般的に使われているホームレスの定義によって、“見えにくい存在”になっている。そこでここでは、“ホームレスの定義”について見ていくことにしたい。




現在、日本で法的(2002年ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法より)に定められているホームレスの定義は、「都市公園、河川、道路、駅舎その他の施設を故なく起居の場所とし、日常生活を営んでいる者」となっており、ネットカフェやファーストフード店など深夜営業店舗で過ごす人などを含んでいないのだ。

しかし、人はある日突然、住居を失い、ホームレスになるといったことはなく、不安定な就労、不安定な住居を経て、徐々に路上に近づいていく。




一方、EU 加盟国では、「路上生活者」に加え、知人や親族の家に宿泊している人、安い民間の宿に泊まり続けている人、福祉施設に滞在している人なども含む、となっている。

ホームレス=路上生活と考えるのではなく、そこに至るプロセスすべてを視野に入れることが予防や支援を考えていく上で重要だと考え、本書では、稲葉剛氏の「ハウジングプア」の概念図に基づき、ホームレスの定義を下記のようにしたい。




家はあっても居住権が侵害されやすい状態を視野(C)に入れをホームレス状態と定義する。
屋根はあっても家がない状態(ハウスレス:B)及び、屋根がない状態(ルーフレス:A)






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ビッグイシューは1991年ロンドンで生まれ、日本では2003年9月に創刊したストリートペーパーです。

ビッグイシューはホームレスの人々の「救済」ではなく、「仕事」を提供し自立を応援するビジネスです。1冊350円の雑誌を売ると半分以上の180円が彼らの収入となります。


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かぶり倒してわかる帽子の楽しさ--冬の帽子道楽



雪が降っても、暖かなウールの帽子をかぶれば散歩も楽しい。
「あの帽子をかぶっている人」と言えば伝わるくらい、いつもおしゃれな帽子をかぶっている、
帽子デザイナーの鏑木和恵さんに、帽子をかぶる楽しさを聞く。





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(鏑木和恵さん)




大げさでない素敵な帽子がほしかった



この日、鏑木和恵さんがかぶっていたチェックのハンティングは、2006〜7年、秋冬コレクションの一つ。今シーズン、鏑木さんが自分のために選んだ帽子は洋服に合わせて5つから6つ。毎シーズン増えていくので、持っている帽子の数はわからないそうだ。もともといつも帽子をかぶっているので、かぶっていないことが考えられないほどの帽子好き。

「1990年代の初め頃は、輸入ものの帽子が今よりもずっと高かったんです。ぴったり合うサイズもなかなか見つからないし、“大げさでないけど素敵な帽子”を探すのはとても大変でした」

ならば自分で作ってしまおうと、鏑木さんは94年から2年間、帽子作りの第一人者として知られる平田暁夫さんの帽子教室に通う。ヘアメイクの仕事もしていたので、次第にモデルやアーティストがかぶる帽子のオーダーを受けるようになっていった。

「どの帽子をデザインする時も、かぶる女性のイメージやシチュエーションを考えて作っています。長い髪と一緒に、風になびいたらきれいだろうなあとか、青空の下にこんな色があったら人目を引くだろうなあとか想像しながら」

99年にレディースの帽子ブランド「Miss Cabour」、06年にはメンズの帽子ブランド「KiKi Senor」を立ち上げた。そんな鏑木さんにお気に入りの帽子を尋ねた。「全部がお気に入り。お気に入りじゃない帽子は発表しませんよ」





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手持ちのトップス3つ以上と相性がいいものを選ぶ



「靴の似合わない人がいないように、帽子が似合わない人はいません」と、きっぱりと言い切る鏑木さん。確かに、選び方がわからずに帽子が似合わないと思い込んでいる人は多いに違いない。

「まずはサイズを合わせることが大切なんです。小さな帽子を無理にかぶっても似合うわけがないですから。ただし、髪の長い人がアップした髪を中に入れてボリュームを持たせてかぶるように、わざとぶかぶかに作ったキャスケットなんかもあります。どういうフォルムの帽子をどんな狙いでかぶれば自分が素敵に見えるかわかるまで、とにかくお店に足を運んで帽子をかぶり倒してみてください」




洋服との合わせ方にもコツがある。

「帽子は、洋服よりも目立つようなコーディネイトにならないこと。いつも着ている洋服の素材や色にスッとなじむものがいいと思います。とりあえず、自分が持っているトップス三つ以上と相性がいいものを選べば、一つの帽子で幾通りもの着こなしができますよ」





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コサージュやリボンを加えたり、自分で作るという手もある



おなじみのベレー、テンガロンハットに、キャスケット。帽子には、つばの広いもの、つばの下がったもの、トップがくぼんでいるもの。エレガントなものからカジュアルなものまで、さまざまな種類がある。自分に似合う形が必ずあるはずだと言う鏑木さん。

「かぶり方ひとつでも、だいぶ印象が変わります。まっすぐのつばを少し曲げて、顔の輪郭に沿うようにするだけでも全然なじみ方が違いますよ。買っていただいた帽子を自由にアレンジして自分らしくかぶってくださったら、うれしいです」




そして、店頭で気に入ったものやサイズがない人は、自分で作るという手もある。鏑木さんは帽子教室も開き、最近、初心者のための帽子作りの本も出した。デザインは同じでも、帽子の素材を変えれば、夏の帽子が冬の帽子になるし、世界にたった一つしかないオリジナルの帽子が作れるのが魅力。

でも、いきなり作るのはハードルが高いと感じる人は、買った帽子にコサージュやリボンを加えてみるだけでもいいという。それだけで、帽子が自分だけのものになる。

帽子を作ることは夢を形にすることだと思っている鏑木さんは、映画を見て素敵なかぶり方を研究することもすすめる。『華麗なるギャツビー』、『プレイタイム』などの登場人物に、鏑木さんは毎回うっとりしてしまうそうだ。

(香月真理子)

Photo:高松英昭




鏑木和恵(かぶらぎ・かずえ)
帽子デザイナー、ヘアメイクアーティスト。1994年から2年間、平田暁夫帽子教室にて帽子作りを学ぶ。99年、レディース帽子ブランド「Miss Cabour」、06年、メンズ帽子ブランド「KiKi Senor」を設立。









(2007年1月15日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 第65号 [特集 冬、満喫—冬ごもりレシピ]より)


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冬の雑木林、命の神秘に出会い、春の訪れを想像する



東京から車で約3時間。八ヶ岳南麓大泉村にある「八ヶ岳倶楽部」に柳生真吾さんを訪ねた。晴れた日には八ヶ岳や富士山が間近に見えるここは、真吾さんの父で俳優の柳生博さんが約30年前、荒れ果てた人工林に手を入れ、雑木林に戻すところから始めたもの。今では四季折々の美しさを見せるこの雑木林に、ギャラリーとレストランを併設し一般に開放している。





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(柳生真吾さん)





冬の“スッピンの林”を知らないと、本当の林を知ったとは言えない



まずは柳生さんと一緒に雑木林を歩いてみることにした。葉が青々と生い茂る夏や、紅葉に彩られた秋の風情とは異なり、冬の雑木林は閑散として静まり返っている。





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「冬の雑木林は、枯れ木や枯れ草の集まりだと思ったらオオマチガイ(笑)。よく観てください。花の芽がここに出ているでしょう」と柳生さん。確かに枝をじっくり観察してみると、そこにはしっかりした突起が付いている。




「一つの枝には、花の芽と葉の芽の2種類の突起がついているはずです。それはレンゲツツジの芽。丸いほうが花の芽で、細長いのが葉になります。花や葉のつぼみは秋にはもうできあがっているんですよ。

そっちにあるグレムリンみたいな顔をしている芽はムシカリ。耳の部分が葉の芽で、顔の部分が花の芽です。毛を生やすことで寒さを防ぎ、外敵から身を守っている。どれも実に個性的で観ているだけで楽しいでしょう。落葉樹は葉っぱをすべて落として、小さな芽にすべての栄養を詰め込んで厳しい冬を越すんです」





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(ムシカリ)




冬の雑木林には、新しい命の芽がたくさん隠れている。「冬は、飾らない“スッピンの林”が見られるまたとない機会」だと柳生さんは言う。

「スッピンの林とつきあわないと、本当の林を知ったとは言えないと思うんです。葉がない分、林の骨格がはっきりとわかる。葉や花ではなく、木肌や芽を見ただけで、何の木かわかるようになると、冬の散歩もぐっとおもしろくなりますよ」





冬の雑木林を歩くことで命の神秘に遭遇し、春の訪れを想像する楽しみを味わうことができる……凍てつく冬も億劫がらず、屋外に一歩足を踏み入れることで、新しい発見があるに違いない。

真冬の「八ヶ岳倶楽部」は、最低気温がマイナス10度を下まわる日もあるという。

「そんな時はやっぱり外に出るのは辛いですよね。だから僕は自分なりに気持ちを高めることにしているんです。かっこいいダウンジャケットを着て、おしゃれな長靴を履いたりしてね……。道具とか形って結構大切なんですよ」





もう一つ、柳生さんにとって欠かせない道具がデジタルカメラだ。

「自然をじっくり観察するには、デジカメが一番。僕はよく写真を撮るんですが、カメラを持ってファインダーをのぞくと“何か探さなきゃ”という意識がムクムクと出てくる。“カメラの眼”になるから、同じものが違って見えてくるんですよ」

 寒い冬、だからこそ、デジカメ片手に屋外に出てみてはどうだろう。




後編へ続く




柳生真吾(やぎゅう・しんご)
1968年東京都生まれ。玉川大学農学部卒。10歳のころからほぼ毎週八ヶ岳に通い、父の雑木林作りを手伝う。大学卒業後、生産農家「タナベナーセリー」での園芸修行を経て八ヶ岳へ移住し、雑木林を核としたギャラリー&レストラン「八ヶ岳倶楽部」を運営。2000年からはNHK『趣味の園芸』のメインキャスターを務めるほか、全国各地で講演活動なども行っている。著書に『柳生真吾の八ヶ岳だより』(NHK出版)、『柳生真吾の、家族の里山園芸』(講談社)、『男のガーデニング入門』(角川書店)などがある。








(2007年1月15日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 第65号 [特集 冬、満喫—冬ごもりレシピ]より)








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外界を完全遮断して、映画の世界に浸るマイ・シネマ!




日々の繁忙に追いたくられ、ちょっと人間関係にも疲れた時、「あーひとりになりたい!」って思いませんか?  そんな時って、意外と知識欲は旺盛。頭ん中は水を吸収するスポンジみたいに、普段の日常とは違う世界を欲してる。

だからこそ、外界との接点を完全に遮断して自宅でマイ・シネマ!


そう、映画館の人ごみに気分をそがれることもない。せっかく足を運んだレンタルビデオ店で観たい作品の「貸出中」に舌打ちすることもナシ。観終わったビデオの返却にめんどくささを感じることもない。自宅でひとり気分よく上映会を楽しむのが、マイ・シネマ。

マイ・シネマは、今やブロードバンドを利用すれば簡単。さまざまな映像コンテンツを配信するシステム「ビデオ・オン・デマンド」の広がりで、パソコンのインターネットで映画をダウンロードできるし、テレビでも専用機器を取り付けるだけで観たい映画を観たい時に視聴できる。会費も必要なく、レンタル料金も2〜3枚まとめれば意外と安い。レンタルビデオ店とほぼ同額か、むしろ安いぐらい。1ヶ月1500円で見放題というプランもある。

できるだけ多くの作品から選びたいという人には、「ツタヤ ディスカス」の宅配サービスがおススメ。このサービスは、ネットで予約すれば、DVDを自宅まで届けてくれて、返却時は最寄りの郵便ポストに入れるだけ。一枚レンタル525円とちょっと高めだが、月額プランだと1974円で8枚レンタル、すべての映画が予約可能だ。

あとは、映画ガイド本の伴走があれば、準備万端。『死ぬまでに観たい映画1001本』や『見ずには死ねない!名映画300選』で新たな発見をするのもよし、映画通なら『友達より深く楽しむ外国映画の歩き方』で洋画に出てくる外国文化の違いや背景などをトリビア的に楽しむのもおもしろい。

(稗田和博)






(2007年1月15日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 第65号 [特集 冬、満喫—冬ごもりレシピ]より)





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Genpatsu

(2012年10月15日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 201号より)




自然エネルギーへ、未来のCO2削減策を



連続する猛暑日と記録的な残暑、そしていきなり仲秋がやってきた。天候の変化の激しさは地球があったまっている証拠だろう。地球温暖化は温室効果ガスの人為的な排出増が原因とする説が有力だ。人口が少ない大昔なら、新天地に大移動できたろうが、現在では不可能と言える。私たちにできることは排出量を減らすことくらいだ。

温室効果ガスの中で影響が大きいのは二酸化炭素(CO2)だ。中でも発電部門からの排出量が、大きな割合を占めている。電気事業連合会の発表によれば、電力10社の2011年度のCO2排出量は昨年度より29パーセントも増加した。その量は4億3900万トンで過去最高の排出量となった。公表されている日本全体のCO2排出量は10年度の値が最新で、およそ12億5800万トンとなっている。

大幅な増加の原因は福島原発事故だ。原発が順次止まっていき、その分火力発電所を使ってきたからだ。新しい原子力規制委員会が設置されて、福島原発事故を踏まえた新しい基準作りが始まろうとしている。これを踏まえた安全確認になお時間がかかり、全国の原発の停止状態がまだまだ続くことは確実だ。大飯原発2基が政治判断で運転されているが、新基準による検査が整わないうちに再び定期検査に入るかもしれない。

政府はこれまでCO2排出量を削減するために原発を活用する政策をとってきた。電力会社はもうかるので消費量を増やそうとする。増える電力消費に対応するために、さらに14基も原発を作ろうとしていた。この電力消費増を前提とする現実的とはいえない計画では、排出量は増えこそすれ、減らすことはできない。福島原発事故は原発によるCO2削減策の危険をいっそう明らかにした。

電力の消費を賢く減らして、自然エネルギーによる発電をいっそう増やしていくことで、本来の意味でのCO2削減が可能となる。温暖化問題に取り組む多くのNGOがこれまで繰り返し主張してきたことだ。しかし電力会社がことごとく反対してきたのだった。自然エネルギーが増えると原発が立ち行かなくなるという理由だ。

今ようやく、こうした歪んだ構造が改められようとしている。ここ数年は排出量が増えるかもしれないが、省エネと再エネを着実に増やしていけば、25パーセント削減という国際公約も可能となる。






伴 英幸(ばん・ひでゆき)

1951年、三重県生まれ。原子力資料情報室共同代表・事務局長。79年のスリーマイル島原発事故をきっかけとして、脱原発の市民運動などにかかわる。89年脱原発法制定運動の事務局を担当し、90年より原子力資料情報室のスタッフとなる。著書『原子力政策大綱批判』(七つ森書館、2006年)









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寒いほど、暗いほど、人は寄り添いたくなる?
映画の中で寄り添う人々の冬ごもり。


『僕たちのアナ・バナナ』(エドワード・ノートン監督/2000年)



『僕たちのアナ・バナナ』には、冬のニューヨークをほっつき歩く若い男が一人。誰かに聞いてほしいと、一軒のバーに向かう。

 かなり酔っている彼に、マスターも「当ててみよう。浮気がばれて、怒った女房が子供を連れて出て行ったんだろう」。ところが、彼のジャケットの下は、黒一色の神父服。神父がバーで酔いつぶれているという非常事態に、思わずマスターも身を乗り出す。

神父のブライアン(エドワード・ノートン)、ユダヤ教のラビ、ジェイク(ベン・スティラー)と幼馴染の女の子アナ(ジェナ・エルフマン)の織り成す群像劇に聞き入り、バーは「本日閉店」。今夜もどこかのバーで、物語が紡がれているかもしれない。



『キッチン・ストーリー』(ベント・ハーメル監督/02年)





『キッチン・ストーリー』は北欧の冬ごもり物語。スウェーデンの「家庭研究所」研究員、フォルケ(トーマス・ノールシュトローム)は、ノルウェー人・フィンランド人独身男性の台所での行動パターンを調査中。

派遣先のイザックじいさん(ヨアキム・カルメイヤー)とは一言も口を利かず、ただ台所に一日中陣取り、彼の行動をつぶさに観察しなければならない。

初めは寝室で調理するなど抵抗を続けていたイザックだが、あまりにも気まずい観察生活は、ある日ついに二人が言葉を交わすことで終わりを告げる。

調査そっちのけでお茶を楽しみ、語り合う二人。イザックの誕生日にフォルケが用意したケーキには、乗りきらないくらいロウソクがささっていて、思わず笑みがこぼれる。窓の外はしんしんと雪が降り積もるけれど、家の中は暖かい。



『大停電の夜に』(源孝志監督/05年)




ちょっとしたハプニングが、単調になりがちな冬の生活を思い出深いものにする。『大停電の夜に』が描くのは、そんな一夜のストーリー。

「首都圏全域が大規模な停電に見舞われました」のニュースとともに、東京は暗闇に包まれる。会社役員の夫(宇津井健)の定年をともにお祝いする妻(淡島千景)。田口トモロヲ、原田知世演じる夫婦は、ろうそくの明かりの下、家でシャンパンを開け、少しオシャレなディナーを楽しむ。キャンドル屋の叶のぞみ(田畑智子)は、今日は大忙しだ。

12人の登場人物が、それぞれの場所で停電の夜を過ごす。そこには、秘密あり、驚きあり、懐かしい再会あり・・・。ロウソクに照らされた人々の横顔にはどこか優しさが漂う。
(八鍬加容子)




イラスト:Chise Park





(2007年1月15日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 第65号 [特集 冬、満喫—冬ごもりレシピ]より)








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タイムトラベル、記憶除去の施術、カウントダウン——時間を旅する映画たち



『バック・トゥ・ザ・フューチャー』






世界で一番有名なタイム・トラベラーといえば、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の高校生、マーティ(マイケル・J・フォックス)だろう。

ブラウン博士が愛車デロリアンを改造してつくったタイムマシンに乗って、30年前の世界に来てしまった。博士を訪ね「君が作ったタイムマシンで1985年から来た」と言っても、なかなか信じてもらえない。「1985年の大統領は誰だ」に「ロナルド・レーガン」と答えると、「あの俳優が?」とますます疑われてしまう始末。ばったり出会った母親は、まだ10代。マーティに一目惚れし、猛烈アタックを繰り返す。父親になるはずのジョージに惚れてもらわないと、自分が生まれない! 

「量子論的な揺らぎが作り出した時空のゆがみを何かの方法で拡大させることができれば」(理論物理学者ソーン)、「2本の宇宙ひもが光速に近い速さで反対に動いている時に、その周りを1周すれば」(物理学者ゴット)、その可能性があるといわれるタイムトラベル。とはいうものの、時間は1本の糸のようなもの。過去をいじれば、当然現在も変わってくるというタイムパラドックスがそこに横たわる。



『エターナル・サンシャイン』





一方、つらい今を経験するくらいなら、いっそ過去を全部消してしまったらいい、というのは『エターナル・サンシャイン』のクレメンタイン(ケイト・ウィンスレット)とジョエル(ジム・キャリー)。ある日、ジョエルは1通の手紙を受け取る。「クレメンタインはジョエルの記憶をすべて消し去りました。今後、彼女の過去について絶対触れないようにお願いします。ラクーナ社」。別れた恋人が、自分との記憶を消したというのだ。それなら自分も、とジョエルもラクーナ社を訪れる。

睡眠薬を飲み、記憶除去の施術を受ける。まずは、二人の最後の記憶。猜疑心に満ち、怒鳴りあい、すれ違いの日々。そして、徐々に記憶が巻き戻り始める。一緒に見た星空、出会いの日…。人はまったく過去にとらわれず生きていけるのだろうか? できたとしても、それは幸せなのだろうか?



『THE 有頂天ホテル』






毎年、暮れが近づくと、「今年はこれができなかった」「来年こそはあれをしたい」と、改めて過去と未来に思いを馳せる。三谷幸喜監督作品『THE 有頂天ホテル』も、あと2時間で元旦という、時間の境目が舞台。汚職事件に手を染めた国会議員(佐藤浩市)、シンガーソングライターという夢をあきらめ、故郷に帰る決意をするベルボーイ(香取慎吾)、別れた妻と鉢合わせで思わずかっこいい嘘をついてしまうホテルの副支配人(役所広司)。さまざまな「あの時」と「これから」への思いが絡み合い、いよいよカウントダウンが始まった。

今年ももうわずか。タイムマシンはまだないけれど…私たちの想いは過去と未来を行き来する。

(八鍬加容子)





(2006年12月15日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 第63号 [特集 鮮やかな時間をあなたのものに—時の贈り物]より)





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80人生相談





自分に自信が持てない、どうしたら自分を好きになれますか?



今大学生ですが、いつも人と自分を比較してしまいます。「あの子は、あんなにきれいなのに、自分は全然や」とか「あの子のように英語がしゃべられたらなぁ」とか・・・。自分にまったく自信が持てないのですが、どうしたら自分を好きになれますか?
(20歳/大学生/女性)






誰でも自分と誰かを比較することはよくあるよな。それは当たり前だし普通の行為なので、まずそれで悩んだり自信をなくしたりするのはやめてほしい。

この子にはこの子のいいところが必ずあると思うねん。見た目がきれいとか英語がしゃべられるとか、極端に言うたら、それぞれの得意分野がそうなだけやん。それと比較したところでやっぱり自分は自分やろ? 

そんなことを求めるよりも、例えば字がきれいであるとかマナーを守るとか、「他の人よりも私の方が○○のセンスええで!」とか、自分が自信をもてる何かを探したり自分の中にあるものを引き出せるように努力したほうが、きっと幸せになれると思うねんな。

俺も自信はないねんけどあるフリはしとる。俺自身がホームレスということについて後悔もしていないし、そういうことがあったから今があると思ってる。まずは自信が持てなくても持つフリだけでもいいから、「私はこんなん」って前面に出していけば、まわりもわかってくれる。

具体的には、まずは自分の嫌な部分を好きになることから始めてみたらええよ。もしかしたら自分の一番嫌な部分は、自分の一番好きなところかもしれん。その可能性ってあるやろ? 自分が思っとるより周りは好意的にとってくれてるとこあるやん。

例えば俺やったら口下手で、自分の言うことを相手に伝えるのが苦手。だけどその口下手がええっていう人もいてくれるねんで。コンプレックス=悪いことではないわけやから。案外そこが特徴になったりポイントになったりするかも。

だから一度自分自身を整理してみて一番嫌なところから好きになる。そしたら他の小さなことは自然に受け入れられるようになるし、それが自信に変わるやん。自信のある人いうんは自分に対して強い人なんやと思う。自分の悪いところも全部ふくめて、自分を好きになってはじめて強くなれるんちゃうかな。


俺もこういうふうに悩みたいなあ。もうそういう歳ではないから、ある意味うらやましいわ。この子には俺の倍以上の可能性があるわけやん。もうそれだけでもうらやましい。
一度俺と入れ替わってみる? 

(K/大阪)




(THE BIG ISSUE JAPAN 80号より)










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思い出という贈物——記憶の襞にとどまる文学





ここに、『わすれられないおくりもの』(スーザン・バーレイ、評論社)という1冊の絵本がある。

物知りで、いつもみんなから頼りにされている年老いたアナグマがこの世を去った後、残された森の仲間たちが悲しみを乗りこえていく姿を描いたものだ。モグラは1枚の紙から手をつないだモグラを切り抜く方法を、カエルはスケートを、ウサギの奥さんはしょうがパンの焼き方をアナグマから習い、それぞれの道を究めている。

突然の別れに混乱していた彼らは、互いに思い出を語り合うことで「アナグマが残してくれたもののゆたかさ」に気づき、しだいに悲しみは消えていく。

死者が残してくれた思い出が、残酷な試練からかけがえのない財産へと変わるまでを描いた示唆に富む本だ。






200万部を超えるベストセラーとなった『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』(リリー・フランキー、扶桑社)は、失う対象が母親だけに張り裂けそうな魂の痛みがひりひりと伝わってくる。

還暦を過ぎてガンに冒された九州のオカンを東京に呼び寄せた「ボク」は、束の間の楽しい時間を過ごす。最期のときを迎え、オカンの亡骸にキスをして蒲団をともにし、焼いたばかりの骨を口の中でボリボリと噛んでいたボクが、「温かい思い出を握りしめ、埋まることのない思い残しを抱えて」生きていくのだと覚悟する姿に、胸を打たれない人はいないだろう。






同じく、大切な人との別れを描いた作品に『物語が、始まる』(川上弘美、中央公論新社)がある。ゆき子が公園で拾い、家に持ち帰った身長1mの“男の雛型”は尋常でない速度で成長し、多くのことを学んで青年になっていく。やがて接吻を交わす仲になった二人は、束の間の幸せな同棲生活を送る。

そんなある日、雛型の頭に白髪を認め、彼が老いに向かっていることを悟ったゆき子は、1週間の有給休暇を取り、思い出話をしながら介護に励む。その甲斐も虚しく元の大きさに戻り、動かなくなった雛型を1ヶ月後、ゆき子は再び公園に捨て「物語の中のもの」に変えてしまう。自らが「生きながらえる」ために。

自然の摂理に従えば絶対に避けられない愛する人との別れだが、ともにすごした記憶がある限り、その時間は生きている。 

(香月真理子)





(2006年12月15日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 第63号 [特集 鮮やかな時間をあなたのものに—時の贈り物]より)


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