(2007年9月15日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 第79号より ※肩書きは当時)





魚は日本の食文化、築地から考える魚の今



東京ドームの約5倍の広さを持つ日本最大の魚市場、築地魚市場では
1日約2100トン、17億円の魚介類が動く。
日本の輸入魚が増えたといっても、築地魚市場では国産魚が多いという。
社長の鈴木敬一さんに、築地から見た漁業、魚文化について聞いた。





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(鈴木敬一さん)




マグロの高級化、冷凍技術とともに



築地の朝は早い。

5時にはセリが始まって、7時にはもうプロの買い出し人たちがぞくぞくと集まってくる。場内は人、人、人の波になる。水に濡れた石畳の上をわが物顔の長靴たちが闊歩し、きらびやかに輝く魚を載せて、狭い道のあいだをターレットと呼ばれる乗り物がそれは器用にすれちがっていく。

無数の店が立ちならんだ、ここ仲卸エリアに立っていると、ともすれば迷子になりかねないような気がしてくる。それだけの広さがあるのだ。そのわりに入り組んだ道はかなり細いので、買いつけに来た人々とすれちがう時はうまく道をゆずりあって進まなければならない。ようやくのことで次の角を曲がってみると、今度は出合い頭に巨大なマグロと出合った。まな板の上に頭の部分だけがどかっと居座っている。

「煮なさるか 焼きなさるかと まぐろ売り」とは、江戸時代の川柳で、マグロを生で食べることがほとんどなかった時代に詠まれた句だ。たとえ生で食べることがあったとしても、そのころは赤身を醤油に漬けたヅケがもっぱらの定番。




鈴木さんがそのあたりの事情をこう説明してくれる。

「マグロが大衆化したのは昭和30年代の半ば以降だと思いますよ。戦前は鮮度が落ちやすいので生食は少なく、煮たり焼いたりして食べていた。昔は冷凍技術がなかったんだな。それで超低温という保存方法が考えられた。マイナス50〜60度で凍結して保存しておくと、マグロの品質は変わらない。それで遠洋マグロ漁が発達して海外からの輸入も増えたわけ。当時は世界でマグロを食べなかったし、それで日本の消費も増えていったんですね。これがマグロの普及した原因です」

まさに時代変われば魚も変わる。私たちと魚のつき合いは、そうした冷凍技術の進歩による大きな変化を受けてきたのだ。





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魚は増やせる。そのため、まず資源保護が必要



マグロの他にも、輸送方法、加工技術の発展によって世界中から輸入されるようになった魚介類について同じことがいえるかもしれない。いまや私たちはアフリカ産のティラピア、ナイルパーチを口にすることもあれば、ペルー産のアナゴ、モロッコ産のタコを食す日まである。

しかし、獲れる魚の量にはやはり限界があるわけで、それが今、世界中でわきおこる魚食ブーム、増え続ける人口の影響によって大きな問題となっている。鈴木さんはこう断言した。

「いいですか。魚が不足する時代はまちがいなく来ます。その最大の原因は生産量には限界があるにもかかわらず、消費が膨大になっていることです。僕は魚が世の中から消えてしまうことはないと思うけれども、40〜50年で大変な時代になると思う。そうすると魚が食べにくくなり、高価なものになるという時代は、割と近い将来に来るであろうということが予測されますよ」




後編へ続く


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93人生相談





憧れの人の前でまったく話せなくなります





普段友達とはペラペラしゃべれるのに、芸能人などですごく憧れている人や好きな人、尊敬している人の前に立つと遠巻きに見つめるばかりでまったく話せなくなります。後から「めったにないチャンスだったのに…」といつも後悔します。どうすれば怖じけずに話しかけることができるでしょう。
(25歳/専門学生)


シャイになるのはすごくわかる。10代であろうが20代30代であろうが俺らでもそう。よっぽどお偉い人がきはったらやなあ、しゃべれるかいな。初対面の人でもようしゃべられへんって。

多分これはファン心理が働いていると思う。俺は昔、アイドルで女優の岡崎友紀さんが好きでファンクラブに入ってた。そのファンクラブの中の野球チームを大阪でつくって、とりあえず俺が監督ということになったんよ。

そこに女子マネージャー4人ほどおって、ある時に彼女たちを東京の事務所に連れて行った。みんなで事務所に挨拶に行って、友紀さんのマネージャーにご挨拶。そしたらたまたま岡崎友紀さん本人がきはったんや。

それで「お世話になってます~、大阪のファン野球チームの○○です!」と話していたら、女子マネージャーのうちの一人が固まって感極まり、何もしゃべられへん状態になっちゃったわけよ。しかも感動してぽろぽろぽろっと泣き出しちゃったんやな。これを慰めるのが大変やった。友紀さんも気つかってはるし。




そんな状態やと思うねん。固まってしまって何も言えないっていう。一つの方法として、その憧れの人の取り巻きの中に友達がおるとして、その人に取り次いでもらって紹介してもらう、ワンクッション置くというもの。一人でいきなり話しかけるのは無理やろうから。

もし取り巻きに知り合いがいなかったら、取り巻きじゃなくても同じように話せなくて困っている子に声をかけて一緒に行くとか。そういうネットワークをまずはつくってみたらいいんじゃないでしょうか。

その人のやってるサークルやファンクラブ、関係する集まりなどには積極的に参加して慣れていく。タイガースファンが「行けー打てー!赤星!」と球場で応援してるのは、赤星に見てほしいからやろう?見てるか見てへんかわからへんけど。

やっぱりアピールをしないと。自分で持って行かへんことには誰も「おいでおいで」と呼んでくれへんからなあ。

(大阪/N)





(THE BIG ISSUE JAPAN 第93号より)





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こんにちは、ビッグイシュー・オンライン編集長のイケダです。現在発売中の最新号から、読みどころをピックアップしてご紹介いたします。




暗闇を取り戻す「ダーク・スカイ・ムーブメント」



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深夜でも煌々と輝く街路灯……「治安」や「進歩」の象徴でもある街にあふれる光の数々は、見方を変えれば「光公害」をもたらす悪者としても捉えられます。なんでもイギリスでは人口の9割が、人口の光によって天の川を見ることができなくなったとか。

最新号で紹介されているのは、そんな「人口の光」を街から減らし、いま一度、自然な暗闇を取り戻そうとする「ダーク・スカイ・ムーブメント」

特に自然公園や観光地での「暗闇化」が進んでおり、スコットランド官公庁がギャロウェイ森林公園に「ダーク・スカイ」を取り入れ、サーク島においても、暗闇を楽しみむため、あえてオフシーズンに来訪する観光客が増加しているそうです。




また、観光的な事情とは別に、経済的な理由からも「暗闇化」は進んでいます。つまり、節電、節約のために、自治体が街路灯を削減する動きがすすんでいるのです。

自治体によっては明るさのレベルを落とすだけでなく、午前0時から朝5時までを完全消灯とするところも。これによって、たとえばハートフォードシャーでは年間130万ポンド(約1.87億円)の予算削減になるというから、そのインパクトに驚きます。




街路灯を減らすことでコストが削減されるのは喜ばしいことですが、気になるのは治安への影響。住民からも防犯の面から、反対意見が上がっています。

が、実際に統計を見ると、必ずしも暗闇が犯罪をおびき寄せるということはないようです。

米国シカゴで00年に行われた調査報告は、その逆を示唆している。裏道に街路灯を追加して明るくしたところ、犯罪は減らず、むしろ増えたというのだ。

(中略)英国内でも、ワトフォード警察が最近発表したところによると、昨年11月からワトフォードの自治体が実施している午前0時から朝6時までの街路灯の消灯について、住民の犯罪に対する不安は増加したものの、実際の犯罪件数は増加していないとのことだ。





記事は、「ダーク・スカイ・ムーブメント」を牽引する天文学者のスティーブ・オウエンス氏の「次の数十年の間に、町や都市をよりよく効率的に灯すことができれば、暗い夜空が見られるようになるかもしれません」ということばで締めくくられています。




ぼくは比較的夜空が暗い、東京都多摩市に住んでいます。以前品川区に住んでいたときは、いつ見ても夜空が灰青色で、なんだか寂しい気分になったものです。

昨年末に引っ越してからは夜空を楽しむことができるようになり、夜の帰り道が気持ちよくなりました。日本でも「ダーク・スカイ・ムーブメント」、広げていきたいですね。




最新号の表紙はこちら。街で見かけたらぜひご購入を!









photo credit: Space Ritual via photopin cc
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(2012年5月1日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 第190号より)





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タイ、ケシ栽培地域で進む作物転換プロジェクト



タイとミャンマー、ラオスの3ヵ国が国境を接し、ゴールデントライアングルと呼ばれる一帯は、古くからケシやアヘンの生産で知られてきた。

栽培作物の転換を通じて山岳民族の生活の向上を図るため、タイ王室が財団を立ち上げ、「ドイトゥン開発プロジェクト」に着手したのは88年のこと。現在はコーヒー豆や衣料品を生産し、国連機関から「世界でも際立った代替開発の成功例」と評されている。

ただ、実を言えば、違法薬物をめぐるタイの状況は思わしくない。人権侵害との批判を受けつつ、タクシン政権が03年に実施した摘発作戦など、これまでの対策は一定の成功を収めたものの、ミャンマーから持ち込まれた覚醒剤がまん延しており、依存症者は全国で120万人。ドイトゥン地区のあるチェンライ県を、麻薬の取引で有名な南米のコロンビアになぞらえる向きもある。

王室肝いりの財団は現在、支援の対象地域を広げ、「パンマハン貧困救済・森林再生プロジェクト」に取り組んでいる。

現地の生態系になじみやすいツバキ科の植物の栽培を後押しし、無理な耕作でやせ細った土壌の回復を促すとともに、せっけんなどの日用品の生産につなげていくことが目的だ。長期的には、エコツーリズムの振興を図る狙いもある。

関係者の一人は「若者の多くは学校を中退して都会で仕事を探したり、麻薬の取引にかかわったりしていた。だが、農園で仕事が生まれ、彼らの多くが戻ってきた」と話している。

(長谷川亮/参照:バンコク・ポスト、ネーション、チェンライ・タイムズ)


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前編を読む




「かわいい」から「すごい」へと変わる歓声



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実はこのエピソードのなかに、旭山動物園が今のような人気を得た秘密がある。

「彼らにエサを探す努力をしてもらおうと動物園にはさまざまな仕かけがしてあって、キリンなんかだとわざわざ遠いすみっこのところにエサを隠してあったり。そういうふうにして、彼らが自分で発見し、自分で取るという野生の状態を少しでも再現しようとしてるんだ。たった1粒のピーナッツかもしれないけど、それを求めてオランウータンが綱をわたっていく。そういう自分の能力をいかんなく発揮できる瞬間を彼らに提供していくこと。その瞬間がまた、人間にとって極めて感動的なんだな」




動物たちの秘める野性の力。それを十分に発揮してもらえるような環境をつくることで、動物たちはのびのびとした幸せを感じられるし、そこにいる人間もまた幸せになれる。

動物と人間、お互いの幸せはどこにあるのかを探し求めてきた旭山動物園。だからこそ、ここには魅力的な施設が次々と生まれ、人が集まった。動物たちのすごい姿が北海道で見られるらしい、その噂を耳にして——。


けれど、よくよく考えてみれば不思議なこともある。動物たちがのびのび暮らせる環境をつくることに、どうして私たちは今まで気づけなかったのだろうか? ただただ動物を檻に放り込んで満足していたのは、一体なぜだろう?




レッサーパンダが2本足で立ち上がって、いつか話題になったことがある。あのときのことを思い出してみよう。小菅さんは当時、事件をこんなふうに見ていた。

「なぜ立っているのか、ということを誰も考えなかったな。動物たちは目的のない行動はしないんだからね。みんなあまりにも表面しか見てなかったんだ」




レッサーパンダが立ち上がる理由は、外をのぞきたい、エサがもらえるかもと期待してのこと。立ち上がること自体は彼らにとってなんでもない、当たり前にできる行動だ。それを「かわいい」と言って立ち上がったのは、むしろ私たち人間の側。レッサーパンダのような動物が人のように2本足で立つことの、いったい何が「かわいい」のか、説明することは意外と難しいはずだ。


「そこはね、動物を下に見ているからなんだよ。例えば年齢のことを考えたってさ、自分より年上のしっかりした人を見てね、『きゃーかわいい』とは言わないわけでしょ。だけど赤ちゃんとか、幼稚園児だとか、そういう子供を見たら『ああ、かわいい』と。その『かわいい』というなかにはそれを庇護しようという、逆にいえば、こちらの思いあがりがあるわけだよ」

もちろん、旭山動物園でも「かわいい!」という悲鳴はよく聞こえてくる。特に「あざらし館」なんかに行けば、それはすごい歓声だ。けれど眼の前に飛び込んでくるホッキョクグマや、すいすいと泳ぐペンギンを前にして、その声は次第に「かわいい」から「すごい」へと変わっていくことに気づかされる。

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動物園の3分の1は地元で保護された動物



「それが重要なの。『すごい』というのは尊敬の対象だから。自分のほうが上で、相手が下というよりも、同等の存在として見ると。もしくはある切り口からいったら、野生動物のほうがよっぽどしっかりした生存であると認識することが重要なんでね。そういうふうに人間の側が変化しないと、ぼくはこれから100年、200年、野生動物はもたないと思う。『かわいい』と言っているうちはね、絶滅しても人間の都合で仕方ないと思っちゃうんだけど、彼らが尊敬の対象になったら仕方ないでは済まないでしょう?」

かつて動物園という存在は、野生動物の絶滅に手を貸したともいわれた。動物のためには何の役にも立たないどころか、単なる野生からの収奪者。密漁して、自分たちが楽しむために動物を使い捨ててきたことは間違いない事実だ。

「だから今までの歴史を帳消しにはできないけどさ、とにかく今、野生動物を代弁できるのはオレたちなんだよ。オランウータンの代わりにさ、『冗談じゃねえよ。オレらの森に手をつけねえでくれや』とか、地球温暖化展なんかを少しでもやって、ホッキョクグマを救いましょうよ、ということをやっている。これぜんぶ、動物の代弁者として訴えてるんだ」




船の浮かんだプールに、浜辺でよく見るテトラポッドが沈んでいる。ここ「あざらし館」では、観客にあるクイズが出される。

「この施設は北海道の港をイメージしてつくられました。ただし、実際の港にはあって、このセットにはないものが一つあります。それは、いったい何なんでしょう?」

バケツから魚が放りなげられ、アザラシがそれをパクッとキャッチする。正解は、最後にバケツの中から出てきたもの。「この”ごみ“です」




アザラシの周りにいるウミネコたちは、地元で保護された傷病動物なのだと飼育員が説明を続ける。羽がないため、もう空を飛ぶことはできない。ここにいるおよそ3分の1の動物がそうして保護されてきたという事実を訪れる人たちは見逃しがちだ。

「地元の動物を手に入れる手段っていうのは、もうぜんぶ保護される動物なんだもん。動物園に持ってこられるのはほとんど人間が原因。一番多いのは交通事故と農薬。これぜんぶ人間がまいた種やろ? 原生復帰できない動物は、動物園でしっかりと飼う。必要であれば繁殖させて、元に戻してやる必要があると思うんだよ。オレは義務だと思う。それをうちはずっとやって来た」




だからこそ、もしここへやって来たら、あちこちで見かける手書きのメッセージにもぜひ眼を向けてみてほしい。そこには、野生動物たちの置かれる状況が飼育員の想いとともに綴られている。あなたがかわいいと思ったオランウータンが、すごいと感じたホッキョクグマが、もう何年か後にはいないかもしれないのだと、そこには書かれている。

「ただ見せるだけの動物園は、これからどんどんなくなっていくよ。そういう目的なくして、これからの動物園は存在しないんだ」

謙虚な客人こそ、動物たちは温かく迎えてくれる。「ちょいと失礼」と言っておじゃまするのが、これからの新しいマナーだ。動物たちはいつでも、こちらを見つめている。

(土田朋水)
Photos:高松英昭





こすげ・まさお
1973年、北海道大学獣医学部卒業。在学中は柔道に打ち込み、主将もつとめた。旭山動物園の獣医師としてスタート。その後、飼育係長・副園長などを歴任し、1995年園長に就任。一時は閉園の危機に立った旭山動物園を再建。日本最北にして日本有数の入園者の動物園にまで育て上げた。2004年には「あざらし館」が日経MJ賞を受賞した。著書に、『旭山動物園園長が語る命のメッセージ』竹書房、『「旭山動物園」革命—夢を実現した復活プロジェクト』角川書店、共著書に『戦う動物園—旭山動物園と到津の森公園の物語』中央公論新社、などがある。






(2007年7月1日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 第75号より
※肩書きは当時)


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(2012年6月15日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 第193号より)




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中国、戸籍問題がもたらす新卒者の給与格差



先日、北京で就職を希望する新卒者対象の就職説明会があり、同じ職種の仕事でも、企業が「都市戸籍」の取得を保障する場合の給与は3000元(約3万6千円)程度、保障しない場合は8000〜13000元と、2〜3倍の格差があることが明らかになった。

中国には元々、都市への人口集中を回避するために「都市戸籍」「農村戸籍」の区分がある。そのため、新卒者の多くは大都市での就職を望みながらも、地方出身者が都市戸籍を得るのはたやすくない。

しかし、都市戸籍を得ないまま就職すれば、福祉サービスなどが受けられないため、医療や教育で負担を強いられる。政府も新卒者を採用する企業や機関に一定数の「戸籍」枠しか与えない。

そのため、地方出身者は農村戸籍のままで3倍の給与を選ぶべきか、都市戸籍のメリットを重視すべきか、厳しい選択を迫られる。

一方、地方は人材誘致のためにさまざまな政策を実施しており、仕事上の発展を見込んで地方を選ぶ学生もいる。清華大学の就職指導センターの主任は、今年度地方で就職する同大学の卒業生は半数に達するだろうと予測している。

(森若裕子/参照:鳳凰網、北京晨報)


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2月15日発売のビッグイシュー日本版209号のご紹介です。



スペシャルインタビュー スティーブン・スピルバーグ&ダニエル・デイ=ルイス


スピルバーグが心血を注いでつくりあげ、今年の米アカデミー賞12部門にノミネートされた映画『リンカーン』。米国史上最も偉大な大統領といわれていますが、彼を正面から取り上げた映画は、今までほとんどありませんでした。監督と主演俳優が、リンカーンの人生について語ります。



特集 脱原発を政策化し、未来へすすむ


福島第一原発事故から2年近くが経ちました。事故の収束はおろか、避難住民への賠償も決まらず、生活再建の見通しも立っていません。そんな中、脱原発に反対する動きもつくられつつあります。
そこで「脱原発にかかるコストより、原子力発電依存コストの方が大きい。原発をなくす困難さより、原発こそが社会に膨大なコストをかけさせている。節電と再生可能エネルギーの普及によって、脱原発は可能」と言う大島堅一さん(立命館大学教授)に話を聞きました。
また、避難住民の調査を継続して行ってきた山下祐介さん(首都大学東京准教授)に、原発避難住民が置かれている状況について聞き、先ごろ町長が辞職した双葉町の様子を中心に地元自治体をレポート。
さらに、脱原発のドイツで、原発から風力発電の仕事に転職した市民にインタビューしました。
脱原発か? 原発現状維持か? 改めて、考えてみたい。



リレーインタビュー 「サステナ」代表 マエキタ ミヤコさん


コピーライター、クリエイティブディレクターとして、NPO・NGOの広告に取り組んできたマエキタミヤコさん。「ほっとけない世界のまずしさ」など、様々なキャンペーンを打ち出した原点には、大学時代のバックパック旅行があると語ります。



映画レビュー 世界にひとつのプレイブック


最愛の人を亡くし、心が壊れた二人の男女が紡ぎだす人生のプレイブック(作戦図)。『ハングオーバー!』のブラッドリー・クーパーが、これまでとは180度違う役柄を演じました。躁うつ病を描きながらも、軽妙なコメディに仕上がっています。



国際記事 路上で生活しながら働く人々の極端な弱点を象徴する出来事―英国バーミンガム ビッグイシュー販売者殺される


1月にバーミンガム市内の繁華街で起きた事件について、オランダ在住の美術作家、タケトモコさんのリポートです。



この他にも、「ホームレス人生相談」やオンラインでは掲載していない各種連載などもりだくさんです。詳しくはこちらのページをごらんください。

最新号は、ぜひお近くの販売者からお求めください。
販売場所検索はこちらです。

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(2007年7月1日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 第75号より ※肩書きは当時)




野生では見られない、野生動物の“凄さ”を伝えたい



2002年に約67万人だった入園者が06年には約304万人、
今や日本有数の入園者が訪れる旭山動物園。
園長の小菅正夫さんが語る、その人気の秘密と旭山動物園の哲学。






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(小菅正夫さん)




オランウータンの野性が20年のブランクを吹き飛ばしてしまった瞬間



「うわぁ!」
「すごい! すごい!」
 誰もがいっせいに空を見上げて、感嘆の声をあげる。びゅん、びゅんと、何ものかがものすごい速さで空を横切る。
「ペンギンって魚? それとも鳥だっけ?」
「鳥だよ。鳥」

 二人で仲良くやって来たカップルがそんな会話をしてるうち、ほらほらと指をさした先には、もうペンギンの姿が消えている。あまりの泳ぎっぷりに、こちらの眼も追いつかないせいだ。

「知らなかった。ペンギンってこんなに速く泳げるんだね」




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上空からはゆらゆらと日の光が差し込んでくる。この水中トンネルのなかに立っていると、自分は今、水のなかにいるのか、それとも宙に浮かんでいるのか、わからなくなってきてしまう。トンネルの足元が透明なせいもあるだろう。なにしろペンギンたちは、四方八方、水のなかを飛びまわっているのだ。

”君たち、ぼくたちがペタペタと歩いてる姿しか知らなかったんだろう?“

まるでそう言わんばかりに、1羽のペンギンがまたびゅんと、視界から姿を消していった。




「野生でも歩いているペンギンなんかを見たときにさ、ただヨチヨチ歩くだけでね、それでペンギンのすごさっていうのは感じないわけ。それが水の中に入ったとたんさ、ペンギンはああいうふうにして泳ぐために進化した鳥だというのがわかるでしょう?」

園長の小菅正夫さんはそう言って、ちょっと嬉しそうに胸を張った。

「そういうところをしっかり伝えるというのが動物園の役割で、逆にいえば野生では見られない。だけれど動物園でなら見えるという動物のすごさを伝えていくのがウチのやり方だと思ってるんですよ」




例えば、オランウータンのジャックが見せる「空中散歩」。

広島の動物園から引っ越してきたジャックは、もともと床の上で1日中ごろりとする生活を送っていたという。運動をすることもなかったので、体重はおよそ140キロあった。オスのオランウータンの平均がだいたい100キロぐらいなので、これはかなり太めといえる。

旭山動物園の「オランウータン舎」には、高さ17メートルの塔が2本立っていて、そのあいだに13メートルのロープが繋がれている。ここのオランウータンたちはエサを食べるために塔へ登っては、ロープを渡ってゆく。もし同じことを自分にやれと言われても、せいぜい塔によじ登った時点で気絶してしまうのが関の山だけれど、彼らオランウータンにとってみれば、これもなんてことはないという。ただ……

「いや正直ね、ぼくはジャックが来たとき、できないと思ってたよ。140キロだよ? 生まれて20年、高いところなんか登ったこともなくてね、床にずっと座っていてさ、あそこにいきなり登れるかといったってね」




小菅さんでさえ、最初はそんな心配をした。それでもある日、ジャックの方から行くといった。みんなの心配をよそに、ジャックが塔を登り始め、やがてロープを渡りきってしまったのだ。遺伝子に組み込まれた野性の力が、20年のブランクをも吹き飛ばしてしまう瞬間だった。




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初めての綱渡りのあとで、ピーナッツやぶどうを味わったジャック。それは彼にとってどんな味がしたのだろう?




後編へ続く


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(2012年5月1日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 第190号より)





Sekaitanshin logo2012




南アフリカ、急成長するフェアトレード



南アフリカでは今、生産と消費の両面でフェアトレード市場が急成長しており、国内のフェアトレード製品売り上げ高は、09年の570万南アフリカランド(約6千万円)から10年には1840万ランド(約2億円)と、3倍以上に増加した。地元産のワインとコーヒーがその大部分を占めるが、すぐに他の製品にも広がっていくと期待されている。

NGO「環境モニターグループ(EMG)」によると、南アフリカのフェアトレードの特徴は、生産者の大部分が会社組織になっていることだという。

国際的なフェアトレード認証(FLO)を受けた団体が60あり、約1万2500人の農民が働いているが、小規模農家は3つのみで、他のアフリカ諸国とは際立った違いがある。FLO認証には、従業員が会社の株を25パーセント以上保持していることが求められる。

EMGは西ケープ州のルイボスティー農家を支援している。栽培技術に関する助言や融資手続きのサポートが功を奏し、150戸の小規模農家が有機フェアトレード市場への参入を果たした。

今では、農家は茶葉の精製を自分たちで手がけ、ケープタウンにある箱詰め工場の株を66パーセント保有するまでになった。EMGの次のプロジェクトは、北ケープ州オレンジ川沿いで、天日干しレーズンのフェアトレード認証を目指す農家を支援することだという。

(Sarah Taylor/参照: Fairtrade Label South Africa、 EMG)


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