P14映画2


寒いほど、暗いほど、人は寄り添いたくなる?
映画の中で寄り添う人々の冬ごもり。


『僕たちのアナ・バナナ』(エドワード・ノートン監督/2000年)



『僕たちのアナ・バナナ』には、冬のニューヨークをほっつき歩く若い男が一人。誰かに聞いてほしいと、一軒のバーに向かう。

 かなり酔っている彼に、マスターも「当ててみよう。浮気がばれて、怒った女房が子供を連れて出て行ったんだろう」。ところが、彼のジャケットの下は、黒一色の神父服。神父がバーで酔いつぶれているという非常事態に、思わずマスターも身を乗り出す。

神父のブライアン(エドワード・ノートン)、ユダヤ教のラビ、ジェイク(ベン・スティラー)と幼馴染の女の子アナ(ジェナ・エルフマン)の織り成す群像劇に聞き入り、バーは「本日閉店」。今夜もどこかのバーで、物語が紡がれているかもしれない。



『キッチン・ストーリー』(ベント・ハーメル監督/02年)





『キッチン・ストーリー』は北欧の冬ごもり物語。スウェーデンの「家庭研究所」研究員、フォルケ(トーマス・ノールシュトローム)は、ノルウェー人・フィンランド人独身男性の台所での行動パターンを調査中。

派遣先のイザックじいさん(ヨアキム・カルメイヤー)とは一言も口を利かず、ただ台所に一日中陣取り、彼の行動をつぶさに観察しなければならない。

初めは寝室で調理するなど抵抗を続けていたイザックだが、あまりにも気まずい観察生活は、ある日ついに二人が言葉を交わすことで終わりを告げる。

調査そっちのけでお茶を楽しみ、語り合う二人。イザックの誕生日にフォルケが用意したケーキには、乗りきらないくらいロウソクがささっていて、思わず笑みがこぼれる。窓の外はしんしんと雪が降り積もるけれど、家の中は暖かい。



『大停電の夜に』(源孝志監督/05年)




ちょっとしたハプニングが、単調になりがちな冬の生活を思い出深いものにする。『大停電の夜に』が描くのは、そんな一夜のストーリー。

「首都圏全域が大規模な停電に見舞われました」のニュースとともに、東京は暗闇に包まれる。会社役員の夫(宇津井健)の定年をともにお祝いする妻(淡島千景)。田口トモロヲ、原田知世演じる夫婦は、ろうそくの明かりの下、家でシャンパンを開け、少しオシャレなディナーを楽しむ。キャンドル屋の叶のぞみ(田畑智子)は、今日は大忙しだ。

12人の登場人物が、それぞれの場所で停電の夜を過ごす。そこには、秘密あり、驚きあり、懐かしい再会あり・・・。ロウソクに照らされた人々の横顔にはどこか優しさが漂う。
(八鍬加容子)




イラスト:Chise Park





(2007年1月15日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 第65号 [特集 冬、満喫—冬ごもりレシピ]より)








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タイムトラベル、記憶除去の施術、カウントダウン——時間を旅する映画たち



『バック・トゥ・ザ・フューチャー』






世界で一番有名なタイム・トラベラーといえば、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の高校生、マーティ(マイケル・J・フォックス)だろう。

ブラウン博士が愛車デロリアンを改造してつくったタイムマシンに乗って、30年前の世界に来てしまった。博士を訪ね「君が作ったタイムマシンで1985年から来た」と言っても、なかなか信じてもらえない。「1985年の大統領は誰だ」に「ロナルド・レーガン」と答えると、「あの俳優が?」とますます疑われてしまう始末。ばったり出会った母親は、まだ10代。マーティに一目惚れし、猛烈アタックを繰り返す。父親になるはずのジョージに惚れてもらわないと、自分が生まれない! 

「量子論的な揺らぎが作り出した時空のゆがみを何かの方法で拡大させることができれば」(理論物理学者ソーン)、「2本の宇宙ひもが光速に近い速さで反対に動いている時に、その周りを1周すれば」(物理学者ゴット)、その可能性があるといわれるタイムトラベル。とはいうものの、時間は1本の糸のようなもの。過去をいじれば、当然現在も変わってくるというタイムパラドックスがそこに横たわる。



『エターナル・サンシャイン』





一方、つらい今を経験するくらいなら、いっそ過去を全部消してしまったらいい、というのは『エターナル・サンシャイン』のクレメンタイン(ケイト・ウィンスレット)とジョエル(ジム・キャリー)。ある日、ジョエルは1通の手紙を受け取る。「クレメンタインはジョエルの記憶をすべて消し去りました。今後、彼女の過去について絶対触れないようにお願いします。ラクーナ社」。別れた恋人が、自分との記憶を消したというのだ。それなら自分も、とジョエルもラクーナ社を訪れる。

睡眠薬を飲み、記憶除去の施術を受ける。まずは、二人の最後の記憶。猜疑心に満ち、怒鳴りあい、すれ違いの日々。そして、徐々に記憶が巻き戻り始める。一緒に見た星空、出会いの日…。人はまったく過去にとらわれず生きていけるのだろうか? できたとしても、それは幸せなのだろうか?



『THE 有頂天ホテル』






毎年、暮れが近づくと、「今年はこれができなかった」「来年こそはあれをしたい」と、改めて過去と未来に思いを馳せる。三谷幸喜監督作品『THE 有頂天ホテル』も、あと2時間で元旦という、時間の境目が舞台。汚職事件に手を染めた国会議員(佐藤浩市)、シンガーソングライターという夢をあきらめ、故郷に帰る決意をするベルボーイ(香取慎吾)、別れた妻と鉢合わせで思わずかっこいい嘘をついてしまうホテルの副支配人(役所広司)。さまざまな「あの時」と「これから」への思いが絡み合い、いよいよカウントダウンが始まった。

今年ももうわずか。タイムマシンはまだないけれど…私たちの想いは過去と未来を行き来する。

(八鍬加容子)





(2006年12月15日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 第63号 [特集 鮮やかな時間をあなたのものに—時の贈り物]より)





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80人生相談





自分に自信が持てない、どうしたら自分を好きになれますか?



今大学生ですが、いつも人と自分を比較してしまいます。「あの子は、あんなにきれいなのに、自分は全然や」とか「あの子のように英語がしゃべられたらなぁ」とか・・・。自分にまったく自信が持てないのですが、どうしたら自分を好きになれますか?
(20歳/大学生/女性)






誰でも自分と誰かを比較することはよくあるよな。それは当たり前だし普通の行為なので、まずそれで悩んだり自信をなくしたりするのはやめてほしい。

この子にはこの子のいいところが必ずあると思うねん。見た目がきれいとか英語がしゃべられるとか、極端に言うたら、それぞれの得意分野がそうなだけやん。それと比較したところでやっぱり自分は自分やろ? 

そんなことを求めるよりも、例えば字がきれいであるとかマナーを守るとか、「他の人よりも私の方が○○のセンスええで!」とか、自分が自信をもてる何かを探したり自分の中にあるものを引き出せるように努力したほうが、きっと幸せになれると思うねんな。

俺も自信はないねんけどあるフリはしとる。俺自身がホームレスということについて後悔もしていないし、そういうことがあったから今があると思ってる。まずは自信が持てなくても持つフリだけでもいいから、「私はこんなん」って前面に出していけば、まわりもわかってくれる。

具体的には、まずは自分の嫌な部分を好きになることから始めてみたらええよ。もしかしたら自分の一番嫌な部分は、自分の一番好きなところかもしれん。その可能性ってあるやろ? 自分が思っとるより周りは好意的にとってくれてるとこあるやん。

例えば俺やったら口下手で、自分の言うことを相手に伝えるのが苦手。だけどその口下手がええっていう人もいてくれるねんで。コンプレックス=悪いことではないわけやから。案外そこが特徴になったりポイントになったりするかも。

だから一度自分自身を整理してみて一番嫌なところから好きになる。そしたら他の小さなことは自然に受け入れられるようになるし、それが自信に変わるやん。自信のある人いうんは自分に対して強い人なんやと思う。自分の悪いところも全部ふくめて、自分を好きになってはじめて強くなれるんちゃうかな。


俺もこういうふうに悩みたいなあ。もうそういう歳ではないから、ある意味うらやましいわ。この子には俺の倍以上の可能性があるわけやん。もうそれだけでもうらやましい。
一度俺と入れ替わってみる? 

(K/大阪)




(THE BIG ISSUE JAPAN 80号より)










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思い出という贈物——記憶の襞にとどまる文学





ここに、『わすれられないおくりもの』(スーザン・バーレイ、評論社)という1冊の絵本がある。

物知りで、いつもみんなから頼りにされている年老いたアナグマがこの世を去った後、残された森の仲間たちが悲しみを乗りこえていく姿を描いたものだ。モグラは1枚の紙から手をつないだモグラを切り抜く方法を、カエルはスケートを、ウサギの奥さんはしょうがパンの焼き方をアナグマから習い、それぞれの道を究めている。

突然の別れに混乱していた彼らは、互いに思い出を語り合うことで「アナグマが残してくれたもののゆたかさ」に気づき、しだいに悲しみは消えていく。

死者が残してくれた思い出が、残酷な試練からかけがえのない財産へと変わるまでを描いた示唆に富む本だ。






200万部を超えるベストセラーとなった『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』(リリー・フランキー、扶桑社)は、失う対象が母親だけに張り裂けそうな魂の痛みがひりひりと伝わってくる。

還暦を過ぎてガンに冒された九州のオカンを東京に呼び寄せた「ボク」は、束の間の楽しい時間を過ごす。最期のときを迎え、オカンの亡骸にキスをして蒲団をともにし、焼いたばかりの骨を口の中でボリボリと噛んでいたボクが、「温かい思い出を握りしめ、埋まることのない思い残しを抱えて」生きていくのだと覚悟する姿に、胸を打たれない人はいないだろう。






同じく、大切な人との別れを描いた作品に『物語が、始まる』(川上弘美、中央公論新社)がある。ゆき子が公園で拾い、家に持ち帰った身長1mの“男の雛型”は尋常でない速度で成長し、多くのことを学んで青年になっていく。やがて接吻を交わす仲になった二人は、束の間の幸せな同棲生活を送る。

そんなある日、雛型の頭に白髪を認め、彼が老いに向かっていることを悟ったゆき子は、1週間の有給休暇を取り、思い出話をしながら介護に励む。その甲斐も虚しく元の大きさに戻り、動かなくなった雛型を1ヶ月後、ゆき子は再び公園に捨て「物語の中のもの」に変えてしまう。自らが「生きながらえる」ために。

自然の摂理に従えば絶対に避けられない愛する人との別れだが、ともにすごした記憶がある限り、その時間は生きている。 

(香月真理子)





(2006年12月15日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 第63号 [特集 鮮やかな時間をあなたのものに—時の贈り物]より)


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12月15日発売のビッグイシュー日本版205号のご紹介です。



スペシャルインタビュー 奈良美智さん


故郷の青森県立美術館と十和田市現代美術館で新作個展を披露している奈良さん。ビッグイシューには6年ぶりのご登場です。新作に新たな進化を奈良さんが創作の苦悩と新作への思い、そして震災後の変化を語ります。



リレーインタビュー アーティスト「Chim↑Pom」エリイさん


カラスが「仲間を呼ぶ声」を利用し、東京の名所上空にカラスを呼び集めるなど、ゲリラ的なアート活動で知られる芸術家集団「Chim↑Pom(チンポム)」。メンバーの一人であるエリイさんが、自身の分岐点、仲間との作品づくりについて語ります。



国際記事 スコットランド、刑務所でコメディ上演


スコットランド最大のバーリニー刑務所に、ある夜出現したコメディクラブ。一流のスタンダップコメディアンたちが、きわどくて痛快なネタを披露しました。抑うつなど、心の問題を抱える受刑者への効果が期待されています。



特集 ファーストピープルの贈りもの


人間は自然の一部にすぎない。そのことをよく知るのは、ファースト・ピープル(先住民)の人たちです。先祖代々の地で生き抜いてきた彼らの哲学はシンプルで美しく、示唆に富んでいます。それに比べ、移動と拡散、変化を求めてきた私たちの生活は根なし草的。行きづまりを感じる社会。今、ファーストピープルの人たちに、彼らの自然と人生について聞いてみました。
まず、千葉県君津に「カムイミンタラ(神々の遊ぶ庭)」という先住民の仲間や、地域の人々の交流の場をつくっているアイヌのエカシ(長老)、浦川治造さんを訪ねました。
また、長年マレーシア・ボルネオ島先住民の人々と交流を続ける樫田秀樹さんと、カナダ・クリンギット先住民のお連れ合いと暮らすKirby Midoriさんからは、エッセイが届きました。来日中のグアテマラ先住民、アリシア・ラミレスさんと台湾原住民ディヴァン・スクルマンさんにはインタビュー。
ファーストピープルの自然や人生、生き方を知り、私たちの今と未来を考えたい。



この他にも、「ホームレス人生相談」やオンラインでは掲載していない各種連載などもりだくさんです。詳しくはこちらのページをごらんください。

最新号は、ぜひお近くの販売者からお求めください。
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不意打ちでよみがえる時間--音楽は記憶というアルバムの目次



ふとワンフレーズを耳にしただけで、瞬時に心の中で時間が巻き戻されるのが音楽のすごいところだ。いわば、記憶というアルバムの目次になるようなもの。

音楽の力で記憶をたぐるなら、「不意打ち」でなければ意味がない。ラジオを聞いていると、何の前触れもなく思い出の曲が流れてきて、自分の思い出の1ページを突然に開かれる、ということがある。長いこと閉じたままだった引き出しを開けた時のように、忘れかけていた記憶が次々に溢れてきて、悲しい曲でないのに涙が流れたりもする。

そうやって、人々の記憶の断片と交錯する音楽を選び、流すのが、僕のしているDJという仕事である。音楽そのものの与える感動とは別に、「不意打ち」で聞かされることによって蘇る記憶が、人の感情を大きく揺り動かすことがある。それがDJという行為の魅力の一つだと僕は考える。DJは人の記憶を刺激し、時としてリスナーの心の時間をつかさどることさえできるのだ。




僕がDJという道に進むきっかけとなったのは、大学時代、ひょんなことから加入したDJ研究会というサークルだった。構成員は全学年を合わせても20人足らず。どこか垢抜けない学生ばかりの集まった地味な団体だった。

しかし、このサークルのメンバーたちの、音楽に対する知識の深さと情熱には目を見張るものがあった。高校時代まで非常に偏った音楽知識しかなかった僕は、サークル仲間からいろんなレコードやCDを借りては、彼らの知識に追いつくためにひたすら音楽を聞きまくった。だから、サークルの仲間との思い出は、取りも直さず一緒に聞いた音楽の思い出だった。




このサークルでは毎年、学園祭の最終日に、3年生の引退の儀式が行われることになっていた。引退する3年生が一人ずつDJブースに入り、最後のDJを披露するのだ。同期の仲間のほか、この日のために集まったOBや後輩たち一人ひとりに、DJが1曲ずつ、曲を贈るというのがその儀式だった。

それぞれの仲間との思い出の中で流れていた、たくさんの音楽。その中の1曲を選んで、「この曲は、○○に贈ります」と紹介し、その仲間との追想やメッセージを語る。普段は面と向かって言えないような照れくさい気持ちも、DJというシチュエーションだと素直に言えるから不思議だ。




流す曲はほとんどの場合がバラードだった。名曲とされる有名なバラードは、この時のために、普段のDJではやすやすとかけるべからずという、サークル内の暗黙のルールさえあった。

聞いている側は大抵の場合、イントロが流れた瞬間に、それが自分に贈られている曲だということには気づく。DJをしているその仲間と自分が過ごした日々の記憶が、瞬時に蘇る。もうそれだけで、泣いてしまう。音楽の力ってすごいよなと思うと同時に、DJという仕事のおもしろさを実感した。




自分の好きな曲は、他の誰かにとっても大切な存在であるはずだ。それを選曲することで、聞いているたくさんの人の懐旧を演出して、一緒に感動したい。プロのDJになりたいという思いが最大限に強くなったのは、学園祭で最後のDJをしたあの時だった。

つくられた思い出の数だけ、心の中には音楽という目次が並んでいくだろう。お気に入りのCDを聞くのもいいけれど、たまにはラジオをつけてみてほしい。

そこにはきっと「不意打ち」が待っている。あなたが忘れかけていた記憶の断片を呼び起こして、思いもよらぬ感動を与えてくれるかもしれない。






浅井 博章(あさい・ひろあき)
1972年生まれ。ラジオDJ。担当番組<FM802>SUPERFINE SUNDAY(日曜朝)、REDNIQS(月曜深夜)。<NACK5>V-ROCK INDEX(平日夜)、BEAT SHUFFLE(金曜夜)。本誌バックビート「毎日が音楽」を連載中。
http://www.roxite.jp/





(2006年12月15日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 第63号 [特集 鮮やかな時間をあなたのものに—時の贈り物]より)


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79人生相談





小学生の子供が嘘をつくようになりました




小学生になる子供がいるのですが、その子が最近嘘をつくようになりました。今まではそんなことはなく、何でも話してくれる素直な子だったので、ショックです。今は、その嘘に気づかないフリをしていますが、これからどう接していったらいいでしょうか?
(41歳/主婦)






今まで嘘をつかなかったのに急に嘘をつく。どうしてやろうね、ただ叱られるのが怖いからかな。どういった状況での、どういった種類の嘘なのかお便りには何も書いていないので、私もなんとも言えないのですが、お母さんがそれを見て見ぬフリをするのはあきません。その嘘に気がついたら必ず面と向かって立ち向かっていかなあかんわ。なんか理由があるはずなんやけど、お母さんはわかりませんか?

昔から嘘は方便ってよく言いますけれど、ついていい嘘と悪い嘘がある。犯罪につながるような悪い嘘もあります。気がつかないふりをしたり小さなものを許すと、お子さんはこれからもずーっと周りを嘘で塗り固めて、中学・高校で少しずつ大きくふくらんで、しまいには悪事に走る可能性だってあると思う。ここで癖にならないようにちゃんと「嘘はだめ」と叱ってあげないといけないと思いますわ。

お便りを読んでいて、お母さん自身のことも心配です。もしかして普段から、お子さんにたいして神経質になりすぎと違いますか。お母さん自身がちょっと神経質になりすぎて、子供が微妙にそれを感じ取って嘘をつくのかもわからない。もっとおおらかに子供をのびのび育てるのがいいと思います。

そう言うのも、私は子供の時にほとんど嘘をついたことがなかったから。昔から正直者で通ってた。

ホームレス状態になってしまっても、性格はひねくれずに素直な気持ちのままだと自分では思っている。それはなぜかと考えたら、親にあまり干渉されずにのんびりゆっくり育ったので、それが良かったのかもわかりません。

でもおもしろい嘘はつくで? 自分自身がおもしろがりだから、冗談で人を笑わす嘘は好きです。エイプリルフールで、起きてもない出来事を言って人を驚かしたりよくするわ。今だって「今日は半日でビッグイシューが何百冊も売れたわ」とか言うてみたいもんやけど・・・。人を笑かしたり楽しくさせるいい嘘はあってもいいと思うねん。

お母さんもこれからは笑いながらのびのびとおおらかに。お母さん自身にもお子さんにも、あまり神経質になりすぎたらあきませんよ。

(T/大阪)


(THE BIG ISSUE JAPAN 79号より)










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Genpatsu

(2012年9月15日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 199号より)




「脱原発法制定全国ネットワーク」発足




法律で原発を止めていこうと弁護士たちが立ち上がった。8月22日に発足した「脱原発法制定全国ネットワーク」の記者会見には、宇都宮健児前日本弁護士連合会会長もはせ参じてくださった。集まったのは弁護士だけではない。さようなら原発1000万人アクションの呼びかけ人たちが名を連ねてくれている。村上達也東海村村長など自治体の長にも加わってもらった。代表世話人は現時点で24人。筆者も末席にいれてもらっている。さらに多くの方々に参加を呼びかけていきたい。

法案は、2025年までのできる限り早い時期にすべての原発を止めることを明記し、具体的な各原発の廃止計画をつくることを求めている。法案を提出できるのは内閣もしくは国会議員だから、私たちは超党派による議員立法を目指している。政局が不安定なので、できれば早く提案できればよいと願っている。成立には議員の過半数の賛成が必要になる。今は難しいが、脱原発議員が増えれば成立の展望が開ける。次の選挙に期待したい。

毎週金曜には、原発の即時廃止を求めて国会前に人々が集い、再稼働に反対して声をあげている。野田首相とも会談することができた。政府の主張を述べただけで、会談は物別れに終わった。その後も、金曜日行動は続いている。この即時廃止への思いと、法律で年限を決めて原発を止めていくこととは対立しない。

大飯原発2基を除いてすべての原発がいま止まっているが、これは各自治体が安全強化を求めて、運転再開を認めていないからだ。市民の声が自治体の首長にそうさせている。脱原発法が成立して、法的に原発が廃止になるまで、私たちは運転再開を認めないように働きかけ続けたい。いや、むしろ同法が通ればいっそうの安全強化が可能となる。首長たちは無理して原発を動かすこともなくなり、廃炉が早まる可能性もある。

朝日新聞が国会議員にアンケートしたところ、原発ゼロを選択した議員は42パーセントだった。福島原発事故の前と比べると、隔世の感がある。そしてどの党も直ちにすべての原発を廃止することは難しいと考えている。私たちはこの現実から出発し、脱原発法制定を求めている。

政府は脱原発依存を掲げてエネルギー基本計画の見直しを進めているが、さらに法律で原発ゼロを確実なものにしたい。







伴 英幸(ばん・ひでゆき)

1951年、三重県生まれ。原子力資料情報室共同代表・事務局長。79年のスリーマイル島原発事故をきっかけとして、脱原発の市民運動などにかかわる。89年脱原発法制定運動の事務局を担当し、90年より原子力資料情報室のスタッフとなる。著書『原子力政策大綱批判』(七つ森書館、2006年)









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連載開始以来、多くの反響と書籍化のご要望をいだたいた東田直樹さんのコラム「自閉症の僕が生きていく風景」が、ついに書籍化します。
ビッグイシュー単行本第3弾『風になる―自閉症の僕が生きていく風景』の出版を記念して行った記者会見のようすをお届けします。


12月1日、東京・赤坂にあるスワンカフェ&ベーカリー赤坂店で、出版記念記者会見を行いました。
昼過ぎまで雨もようだった空も、会見が始まるころにはすっきりと晴れ、青空から柔らかな光がさし始めました。ガラス張りの明るい店内には淹れたてのコーヒーの香りが満ち、温かな雰囲気の中で会見が始まりました。

著者の東田直樹さんは重度の自閉症のため、頭にうかんだことばを覚えていることが難しく、通常の会話ができないそうです。そこで、手作りの紙の文字盤を指差しながら、一音、一音、発し、一かたまりのことばとして発語します。
「今日は、僕のついに出ることになった本の記者会見の会場に来てくださり、ありがとうございます。この本を書いたのは、自閉症の人たちは特別な存在ではなく、みんなと同じように悩み、苦しみ、そして喜んでいたり、楽しんでいたりしていることをわかってもらいたかったのです。自閉症の説明をしていると思われるかもしれませんが、どちらかというと、僕の価値観を表現したものです。どうか多くの方に読んでもらいたいです。どうぞよろしくお願いします。おわり」

筆談を経てたどり着いたこの独自の発語方法で、ゆっくりと発語する直樹さんのご挨拶で、会見は始まりました。



futari

文字盤を使って発語する直樹さんと
隣でサポートする美紀さん


夕焼けがあるからこそ今日の日に終わりがある。
聞いてほしいと思うような一日に感謝ができる。



直樹さんからのご挨拶の後、会場からは次々と質問の手があがりました。

―文字盤を指しながらことばを発するのに、訓練が必要だったのではありませんか?
「僕は、話そうとすると頭の中がまっしろになってしまうのです。そのために、自分のことばを思い出すという訓練が一番大変でした。おわり」


―ビッグイシューで連載を始めてから、心境の変化はありましたか?
「自分のことは、自閉症という障害を知っている人にだけ理解してもらえるものだと思っていましたが、いっぱいの反響をいただいて、誰にも伝わる内容であるとあらためてわかりました。おわり」


―演出家・宮本亜門さんとの対談(ビッグイシュー190号)はどうでしたか?
「対談は初めてでしたが、とても楽しかったです。1人の人と時間をかけて話すことで、僕自身も新しい自分を知ることにもなりました。」


―「夕焼けのオレンジは命の色」(単行本収録のコラム)について。今も東田さんにとって命の色はオレンジ色なのですか?
「僕の命のイメージは、今でも夕焼けのオレンジです。なぜなら、夕焼けがあるからこそ、今日の日におわりがあることを知り、聞いてほしいと思うような一日に感謝ができると思います。だから、夕焼けは命のいろんなものを宿しています。おわり」


―これから先は何をしたいですか?
「作家として、もっとたくさんの文章を書きたいことと、どんな人にも内面というものがあり、それぞれが大事な人間であることをわかってもらいたいです。」


―ビッグイシューを販売するのは路上生活者ですね。路上生活者も、直樹さんのように障害を持つ人も、またその他にもいわれのない差別や偏見をうける方は多くいらっしゃると思います。差別や偏見をなくすためにどのような社会になったらよいと思われますか?
「僕は差別や偏見は誰もがもっているものだと思います。それは人間が集団で生活しているからです。そうして強い者がリーダーとなり、社会がなりたつのでしょう。
できることは、無理に差別をなくしてしまおうと思うより、みんなが今より少しだけ優しくなることを目指すことの方が現実的だと思います。おわり」


質問が相次ぎ、60分を予定していた会見は、5分の休憩をはさみ90分に及びました。
会見の終盤、発語の途中で「つかれるー」ということばがもれ、会場の雰囲気がより和やかになる場面もありました。長時間の会見は、初めてのことが苦手な直樹さんにとっては心身ともに大変な体験であったことでしょう。

直樹さんからのご挨拶で会見は締めくくられました。
「僕はビッグイシューに連載させていただいてよかったと思っています。なぜなら、こうして多くの人に僕のことを知ってもらえたからです。今日の会見はうまく話せないところもありましたが、僕は初めてのことが苦手なのです。今日、来てくださって本当にありがとうございました。どうぞ、これからもよろしくお願いします。おわり」



mojiban
手作りの文字盤。
直樹さんは、一文字ずつ指してことばを思い出しながら発語します。

「わかっているのだけれど、思い出せない人の名前を思い出す感じ」
に近いのだと美紀さんは話してくださいました。

誰もが豊かな内面を持ち合わせている



直樹さんの発語には、不意に途切れる瞬間がたびたびおとずれます。
質問の途中、席を立ち、外を走る車をガラス張りの窓から眺めたあとにすっと席に戻ったり、美紀さんの腕時計を確認したり(美紀さんは直樹さんが落ち着くよう「終わったら」「3時」と応えます)、また、「おかあさーん」「タクシー」「福岡空港」「柿がふたつ」など、それまでの発語や質問の内容とは直接関係のないことば、1フレーズくらいの歌や英文を口にすることもあります。
直樹さんのことを何も知らない人がいあわせたら、びっくりするかもしれません。

直樹さんの質疑応答のあと、美紀さんから次のようなことばがありました。
「重度の自閉症の直樹は言動のコントロールがうまくいきません。自分の意思とは関係なく動いてしまうことがあります。好きでやっているわけではなくて、つい気をひかれてしまう。今も、直樹は車が見たくて席を立っているのではなくて、会見をちゃんとやりたいという気持ちはあるのです。しかし、コントロールがうまくいかないために、他人から見たら変わった行動に見え、“どうして今あんなことを?”という見方をされてしまうのが、一番の直樹の困難だと思います。
これまで、重度の自閉症で内面を表出できる方がそれほどいらっしゃらなかったということもあり、“そういう人は知能が低くて、わかっていないから、周囲には理解できないような行動をしてしまうのだろう”と考えられてきたと思います。けれど、私たちでも話すのがすごく上手な方も、口下手な方もいらっしゃるように、それぞれに豊かな内面があってもそれを外に出せないだけ、という人が世の中にはいらっしゃるのではないかなと思います。直樹だけが特別なのではなくて、障害が同じならば他の人にもそういう内面があるのではないのかと考えています。」


futariwbooks

完成した本を手にする直樹さんと美紀さん

直樹さんの口から一音、一音、発せられることばは、簡潔でありながら、「人はなぜ生きるのか」という大きな問いへの答えを一人ひとりが考える手がかりに満ちていました。自分のことも、他の人のことも、「生きている」というただそれだけで賞賛したくなるような記者会見でした。

『風になる―自閉症の僕が生きていく風景』は、連載コラムを加筆・再構成し、宮本亜門さんとの対談(ビッグイシュー190号)も収録しています。何度も読み返し、ゆっくりと長く読み続けていただけるような本になりました。大切な人へのプレゼントにもおすすめの一冊です。
発売から約1ヶ月間はビッグシュー販売者による独占先行販売となります。ぜひお近くのビッグイシュー販売者からお求めください。



cover

ビッグイシュー単行本第3弾『風になる―自閉症の僕が生きていく風景』(東田直樹著)

(ビッグイシュー日本 東京事務所 販売サポート 長崎友絵)


BIG ISSUEから東田直樹さんの本が2冊出ています。


BOOKS
社会の中で居場所をつくる 自閉症の僕が生きていく風景(対話編・往復書簡)
東田直樹・山登敬之 著
作家であり重度の自閉症者の東田直樹さんと、精神科医・山登敬之さんの立場をこえた率直な往復書簡。「記憶」「自閉症者の秘めた理性」「純粋さ」「嘘」「自己愛」「自分らしさ」など、根源的な問いが交わされる。
2015 年12 月発売
定価1600 円(税込)
B5判変型
(800 円が販売者の収入になります)
--
風になる 自閉症の僕が生きていく風景(増補版)
東田直樹 著
発話できない著者が文字盤で思いを伝えられるようになるまでの日常や、ありのままの自分を率直に語る。連載エッセイ74 編、宮本亜門さんとの対談も収録の増補版。路上で一万冊突破。
2015 年9月発売
定価1600 円(税込)
四六判
(800 円が販売者の収入になります)

2016/10/14よりクレジット決済が可能になりました。

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郵便局備え付けの振込用紙に、本のタイトル、ご希望の冊数、お名前、送付先住所及び郵便番号、電話番号をご記入の上、下記の郵便口座にお振込みください。
送料は冊数に関わらず100 円です。 ご入金を確認後にお送りします。

ご入金金額:ご希望の本の代金 × 冊数 + 送料100 円
郵便振替口座番号: 00900-3-246288
加入者名:有限会社ビッグイシュー日本
TEL:06-6344-2260  E-mail:info@bigissue.jp
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