社会に受け皿がない。単身女性3人に1人が貧困


女性ホームレスはめったに見かけないという人が多いかもしれない。
しかし、女性ホームレスは確実に存在する。
雨宮処凛さんが出会ったホームレス状態の女性たちとは?


夜間は「身を隠す」ことに必死


「単身女性の3人に1人が貧困」。昨年末に発表されたこの数字はこの国の人々に大きな衝撃を与え、「貧困女子」なる言葉も生み出した。続きを読む
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前編を読む




「かおり」で害虫の天敵を呼び寄せ、仲間に伝える植物



「植物と植物の会話」が成立していることもわかってきた。もし害虫の被害に遭っている植物の株の隣に、まだ被害に遭っていない株があったら、いずれ害虫の次のターゲットになるのはまちがいない。さて、この未被害株は何もせずにただ害虫に攻撃されるのを待っているのだろうか? 答えは否である。





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植物を外から観察するだけではわからないが、コナガ幼虫の天敵を誘引する「かおり」にさらされた未被害のシロイヌナズナは、その細胞内で防衛遺伝子のなかの代表的なもののいくつかを活性化させるという。

それを高林さんは「むしろ『立ち聞き』と呼んだほうがよいのかもしれませんね」と話す。しかも、彼らは、害虫の種類ごとに、違った「かおり」を放つというのだ。だが、いったいどうやって害虫の種類を識別するのかは謎に包まれている。

さらに、植物が病気にかかったときも、植物間で同様の防衛のためのコミュニケーションを行うといわれている。このように、植物は光と温度だけに敏感なのではなく、害虫や病気に対しても受身でなくアクティブに反応しているのだ。






植物の知られざるコミュニケーションツールとしての「かおり」。彼らはどのように「かおり」を感知し、会話するのだろうか?

植物の『かおり』は彼らの言葉です。ですが”植物は鼻がないのにどうやって『かおり』をきくの?“と聞かれても、そのしくみはまだわかっていないんです。彼らが絵本の『葉っぱのフレディ』のように、哲学的に会話をしているかどうかは知りませんけれども、独特の『かおり』の受容メカニズムを持っていて、それを介して会話や相互作用をしていることはまちがいありませんね」

しかも、次々と新しい発見も続く。 「ミカン、リンゴ、イネ、マメ、アブラナ科…、単子葉から双子葉まで、食害に反応して何らかの『かおり』を出して、それが植物自身の何らかの防衛に役立っているという事実についての研究は積み重なってきています」



 

植物の「かおり」、重く木霊のように漂う




だが、「かおり」の情報がどれほどの範囲まで届くのかは、まだ明らかにされていない。

「植物の『かおり』は、分子量が100とか150なので、空気の2〜3倍も重いんです。そういう重いベタっとした『かおり』の情報が流れているんですね。それがどのくらいの距離を流れていくのか? それを蜂の反応や植物の細胞内での防衛遺伝子の発現の様子から調べているところです」




高林さんは、植物の「かおり」を『もののけ姫』に出てくる木霊のイメージにたとえる。

「木霊が何かはわかりませんが、森の中にいて何らかの役に立っていますよね。植物の『かおり』も、重たくて断片化したもので、それ自身が情報なんです。一つ重要なことは『かおり』は混ざりにくいものだということです。例えば、飲み屋街で、焼き鳥屋とウナギ屋の中間に立っても、その匂いは混じらないでしょう? 森の中でも、植物が放出するいろんな『かおり』が断片化して、かたまりとなって漂っているというのが実態ではないかと思います」




葉っぱの一部が害虫に食べられても植物は死ぬことはなく、翌年も新芽を出す。だが、葉っぱを食べられれば食べられるほど、光合成を行う場所が減る。だからこそ、植物はできるだけ自分の組織を失わないように、「かおり」を出して害虫の天敵を呼ぶなどの進化をしてきた。そして、さらに生物間での複雑な関係をつくってきたのだ。

「群盲が象をなでるという言葉がありますが、象よりももっと巨大な生物多様性の一つの切り口として『かおり』を介した生物間の情報ネットワークみたいなものを考えていけたらいいなあと思います。つまり、複雑な食物網を支える目に見えないかおりを介した植物と動物との情報ネットワーク、さらにそれを支える植物間の情報ネットワークというような層状のネットワーク構造の視点です」 

人間の嗅覚のしくみさえ明らかにされたのは数年前で、その研究者がノーベル賞を受賞したばかり。高林さんらの植物の「かおり」についての、これからの研究が待たれている。


(編集部)
Photo:中西真誠



たかばやし・じゅんじ
京都大学生態学研究センターセンター長。1987年10月より京都大学農学部助手、88年2月〜90年1月までオランダワーゲニンゲン大学研究員、95年5月より京都大学農学研究科助教授、00年4月より京都大学生態学研究センター教授を経て、07年4月より現職。00年3月に日本応用動物昆虫学会学会賞を受賞。日本応用動物昆虫学会評議員。著書に『虫と草木のネットワーク』東方出版(07年)、『寄生バチをめぐる三角関係』講談社メチエ(95年)などがある。






京都大学生態学研究センターについて

生態学の立場から、生物の多様性がどのようにして生まれ、どのようにして維持されているかを明らかにすることをミッションに掲げ、例えば、植物、動物、微生物の生態学の研究者が集い、行動の進化から生物集団のダイナミクス、生物群集のネットワークや生態系の機能などの研究をして、生物多数性のさまざまな問題に取り組んでいる。


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(2007年12月15日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 第83号




植物は「かおり」で会話する—植物間コミュニケーションの秘められた物語




植物同士が、植物と昆虫が会話をしているといっても、半信半疑の人がほとんどかもしれない。でもそれは本当のこと。高林純示さんに、そんな不思議でエキサイティングな話を聞いた。






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(高林純示さん)




植物が会話をしている? そんなバカな?!



植物が会話をしている? それも「かおり」(具体的な香りと抽象的な薫りの両方を含めた概念としてここでは使っている)を出してというと、そんなバカな?!という反論があちこちから聞こえてきそうだ。だが、そんなグリーンファンタジーとも呼べそうな事実がだんだん明らかになってきた。

1983年に虫に食べられた葉っぱが『かおり』を出して天敵を呼ぶという研究が発表されて、86年に植物が会話するという最初の論文が出たんですね。

最初は『すごいな』と言われたんですが、『そんなはずないだろ? きっと実験がおかしいんだ』と言う人がいて、特にプラント・プラント・コミュニケーション(植物間のコミュニケーション)研究は休止してしまいました。

けれど、2000年からサイエンスの世界で再び研究が始まって、植物間のコミュニケーションはまぎれもない事実であることがわかってきたんです」と、高林純示さんは話す。




確かに、私たちは「見てわかる」ものについては納得しやすい。ライオンがシマウマを食べているのを見れば、「あれが自分だったら嫌だな、痛いだろうな」と実感が持てるが、それが虫に食われている植物だったら、ただ静かにたたずんでいて虫に食われるに任せているだけだと見えてしまう。

「でも、植物って動物とはまったく違う生き物。例えばライオンは餌としてシマウマを狩る。四本足と二つの目で、空間の中に座標を定めて餌を狙う。だけど植物は動けないし、餌は光合成をするための光ですから、葉っぱをたくさん配置して、薄く広く存在している餌(光)をなるべくたくさんもらうようにしているんですね」




そんなふうに静かにたたずんでいるように見える植物が、実際に害虫に葉っぱを食べられた場合、それに反応して「かおり」(揮発性物質)を放出し、害虫に対して反撃していることがわかってきたのだ。

高林さんの研究によると、例えばキャベツの芽だしやシロイヌナズナ(アブラナ科の植物)にコナガ幼虫がやってきてその葉っぱを食べると、葉っぱがコナガ幼虫の天敵を誘引する特別な「かおり」を出すことがわかった。その「かおり」が漂い出すと、「かおり」をかぎつけた寄生蜂がやってきて、コナガ幼虫に卵を産みつけ、卵は10日ほどで幼虫の身体を食い破って出てくる。キャベツやシロイヌナズナはまさに、自分を守ってくれるボディガードの寄生蜂を、「かおり」の言葉で呼び寄せ、会話をしているのである。




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「寄生蜂は2〜3と小さいんです。野原でコナガ幼虫を探しても、自分ではなかなか見つけられない。でも『かおり』が出ていれば、集中的に探すことができます。『かおり』があるのは、寄生蜂にとってはうれしいことで、シロイヌナズナと寄生蜂は友だちの関係だといえるわけです」。こうした植物のボディガードのような昆虫の存在は特殊な例ではなく、一般的に成立しているという。




では、昆虫は「かおり」に対して、どれくらい敏感なのだろうか?

「犬の嗅覚は人間の1000万倍といわれます。カイコ蛾の性フェロモンの感度はだいたい犬と同じくらいといわれていますから、よくわかってはいないのですが、昆虫もすごく『かおり』に敏感なんだと思いますね」




後編に続く


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111人生相談





携帯電話の依存症かもしれません…



最近自分でも、携帯電話の依存症かなって思うんです。家に忘れて出かけた日には一日中、気になって仕事が手につかず、電車の中ではずっとウェブを見ているし、夜寝る時も、携帯をいじりながらでないと眠れないようになりました。おまけにメールを送った相手からの返信がないと、それも不安で落ち着きません。どうしたら解放されますか?

(34歳/女性/会社員)





この相談者さんのように携帯依存症で不安に感じている人って、すごく多いんじゃないかな。今は小学生からおじいちゃん、おばあちゃんまで、1人につき携帯電話を1台の割合で持っていてもおかしくない。携帯電話を持ってないと仲間にも入れない、そういう時代になっちゃったんでしょうねぇ。




昔は僕も携帯電話を持っていて、1日1回くらいは電話していたなぁ。メールは打つのが遅いもんで、用事があったら電話で済ませちゃう。

実はね、最近また、携帯を持ち始めたんですよ。バックナンバーの配達がある時に電話でやりとりをしたり、何かあった時にも会社との連絡が取りやすい。やっぱり便利なもんだなって思います。街中の公衆電話も減ってしまって、なかったら不便でしょう。だから「携帯電話を持たない方がいい」とは決して言いませんよ。




ただ、駅前で販売していていつも思うのは、階段の上り下りの途中で止まってピコピコとメールを打つ人や、自転車に乗りながら携帯電話を使う人、1日に何人も見るんですが、通行人にぶつかってほんとに危ないですよ! 

それと今は、イヤホンとマイクまでつけて通話できるでしょう。あれも最初はびっくりしました。「この人さっきから、えらい長い独り言やなぁ」って思うでしょう(笑)。




僕が携帯で電話かけるのは今、1ヵ月に4、5回程度。プリペイド式携帯電話だから、使ったらそのつど料金が引かれて、入金した分の残高がないと電話もかけられないようになってます。この方も思い切って使い放題や家族割のプランをやめて、使ったら使った分だけ料金がかかる、あえて数字が見えるプランにしたらどうでしょうか。

メールの返信がないっていうのも、相手が仕事中だとか、すぐに送れない時もあるじゃない。どうしても一方通行になっちゃうことも多いんじゃないかな。「1日に送るメールの数は○通まで」と制限を決めてみるのもいいんじゃないかな。そうすると、一方通行ではない本当に大切な相手や内容のメールっていうものが、自分の中でわかってくると思いますよ。

(大阪/T)




(THE BIG ISSUE JAPAN 第111号より)







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(編集部より:「住宅政策のどこが問題か」などの著作がある、住宅政策の研究者、平山洋介さんに寄稿をいただきました。)




住宅政策という投資を、いま、始めよう



貧困が増えていて、これからさらに増える可能性がある。住む場所の不安定さが貧困を増やす重大な原因になっているし、そしてまた、居住が不安定なままでは貧困から抜けだせない。

ところが、日本では、貧困対策といえば、雇用と福祉の領域の施策ばかりである。所得さえあれば、それで必要なものを買えるし、住まいも確保できる、という暗黙の仮説があるように思われる。

だとしたら、それは、間違いである。雇用がみつかっても、不安定・低賃金の仕事では、適切な住まいは得られない。生活保護を受給すれば、住宅扶助がある。

しかし、保護受給が必要になるほど困窮しないと住居費を負担できない、というシステムは奇怪である。住宅を雇用・福祉の付属物としてしか扱わない政策は間違っている。

住宅それ自体を保障する独自の施策が必要である。雇用を失っても住む場所はある、だから、貧困状態にまでは落ちない、という仕組みをつくる点に住宅保障の意義がある。




戦後日本の住宅政策は、中間層の持家取得ばかりに支援を集中した。公的賃貸住宅は6%と少なく、住宅扶助を除けば公的家賃補助はほぼ皆無。この政策編成は、経済先進諸国のなかで、特異である。欧州では、社会的賃貸住宅が2割程度、家賃補助受給世帯も2割前後という国が多い。低所得者向け住宅対策が貧弱なアメリカでさえ家賃補助制度をもつ。

日本では、終戦からバブル破綻の頃まで、経済は成長し続け、中間層が拡大した。だから、政府は、たいていの世帯は家を買えると仮定し、持家促進に傾く政策を続けた。しかし、バブル破綻以来、経済の不安定さが増し、中間層は縮小し始めた。



これから、住まいに困窮し、そして貧困に陥る人がいっそう増える可能性がある。

第1に、「非正規第一世代」に注目する必要がある。前世紀末に労働市場の自由化が始まった。そのとき、非正規被用者が急増した。この第一世代の人たちが、加齢にともなって、雇用の不安定化に見舞われ、住居を確保できなくなる、といった事態の発生がありえる。

第2に、「無配偶者」の住宅困窮と貧困が拡大するおそれがある。日本は、あからさまに既婚有利の社会である。経済力の弱い人たちの未婚率が増え、未婚の人たちはさらに不利な経済状態に置かれる。離婚もまた増えている。

第3は、「高齢借家人」の増大である。高齢者の8割は持家に住んでいる。残りの2割のうち、何割かは公的借家に住んでいる。不安定なのは、民営借家の高齢者である。低所得者が多いうえに、住居費が高い。高齢者の民営借家率は低い。しかし、その絶対数が激増する。




住宅政策の再構築には、短期と長期の2種類の課題がある。

まず、「野宿」とか、「脱法ハウス」とか、「追い出し」とか、あってはならない問題状況は、ただちに解消しなければならない。次に、将来に向けて、社会的に利用可能な住宅ストックを蓄積していく必要がある。

雇用・福祉領域の施策と異なる住宅政策の独自性は、それが投資の役割をはたすという点である。欧州諸国の多くは、終戦から1960年代頃まで、社会的賃貸住宅を大量に建てた。そのストックが、いま、役に立っている。住宅建設に必要であった借入金の償還がすでに終わったので、「成熟」したストックの家賃は低い。

私物の住宅ばかりを建ててきた日本では、社会的なストックが異様に乏しい。このままで超高齢社会を迎えると、どういうことになるのか、想像してみるとよい。

将来の貧困増大をくいとめるために、住宅政策という投資を、いま、始める必要がある。社会的に使える「成熟」した住宅ストックこそは、人口・経済・政治の激動から人びとを守る最重要の基盤である。





(編集部より:住宅政策に関する記事は、こちらのタグページからまとめて読むことができます。平山洋介さんと稲葉剛さんの対談記事なども掲載しておりますので、ぜひ続けてご覧ください。)
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こんにちは、ビッグイシュー・オンライン編集長のイケダハヤトです。恒例の最新号の読みどころピックアップをお届けします。続きを読む
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前編を読む




議論が苦手な日本人



オランダ在住15年になる私が、日本に行く度に肌で感じるのは、日本人は、議論が苦手ということだ。

議論をしようとすると、自分が否定されてると勘違いし、防御的になってしまう。そこにはなぜか、人から違う意見を言われること=否定されることという、変な図式が存在するようにみえる。

日本人が議論出来ない理由として、教育方法にも問題があるだろう。日本の義務教育では自らをプレゼンしたり、公の場で日常的に意見を言う場をほとんど与えられたことがないから、そのまま自らの意見を人前で言う経験のないまま、大人になってしまった。

私の友人に聞いた話だが、オランダで行われたIT分野の国際コンファレンスで、世界中の技術者が集結したそうだ。ほとんどの国の参加者が2~30代の若い技術者で、皆どの国もプレゼンも上手く、2~3カ国語以上は普通に話せたそうだが、日本の技術者だけが年配で、プレゼンにも慣れていないから戸惑い気味、英語も話せないので、通訳を付けていた唯一の国だったそうだ。

オランダの子どもたちは、教育スタイルに関わらず、小学校のときから人前でプレゼンさせられるのが一般的だ。語学も早い時期からマルチ・リンガルが当たり前で、オランダ語+英語、ドイツ語やフランス語を学ぶ。さらにオランダではアメリカのカトゥーン・チャンネルが、ドイツのような吹き替えではないため、幼い頃から非英語圏であるのに、日常的に直接英語を見聞きしている。そのためか、オランダ人のコミュニケーション能力は、イギリスやフランスやドイツなどの大国よりも、平均して高いと一般的に言われている。

一方、非英語圏でありながら、経済大国であるフランスやドイツなどでは、国民の数が多く、メディアにも予算があるため、マスメディアで放映するテレビ番組などでは、一般的に吹き替えが行なわれている。フランス人やドイツ人で英語が苦手な人が多いのは、吹き替えの影響が大きいと思われる。

国際社会において、議論が苦手だからといって、それを避けることはデメリットである。これは日本の市民運動にも言えることで、議論を避けていることから、様々な問題が引き起こされている。

日本独自の白黒をつけない「曖昧さ」は美しい文化だと思うが、国際社会においては理解されないことが多い。公の場ではしっかりと議論が出来る明確さを身につけ、個人レベルの対話では曖昧さのニュアンスをうまく残すことができれば、日本はより魅力的な国になれるのかもしれない。




モンサント反対デモ行進



前編」でも紹介した「モンサント反対」デモ行進は、5月26日、世界規模で行なわれた。 6000人以上の人たちが、オランダ・アムステルダムに集結し、世界36カ国、300都市と繋がった。


2004年、フランスの農業従事者が「農作業中に除草剤を吸入したために健康を害した」として、米モンサント社を相手取り、損害賠償を求めた。昨年、裁判所は原告の主張を認め、賠償請求を認める判決を下した。

参考:米モンサントの除草剤訴訟、原告勝利で賠償命令 フランス 国際ニュース : AFPBB News

この判決以降、欧州ではさらに安全な食を求める声が加速し、消費者が積極的に、非モンサント&非遺伝子組み換え食品を選択する流れが確立された。 これらのことは、欧州のみならず、世界的な影響を与える可能性のある判決となった。

そして、ついに米モンサント社は、ヨーロッパで遺伝子組み換え作物の種子について、新規承認を得るためのロビー活動を行わないことを決定した。

参考:Monsanto gives up fight for GM plants in Europe | Business | DW.DE | 31.05.2013

このモンサント社の決定は紛れもなく、ヨーロッパ各国で広く情報を共有し、地道な市民運動を継続してきたからこそ、その成果が顕在化された例のひとつだ。




これまでとこれからの市民運動



「アラブの春」に始まり、現在のトルコの暴動、20万人にも拡大したブラジルの反政府デモまで、世界中で巻き起こっている市民運動のうねり。これらの市民運動が日本の市民運動に与えている影響は大きいだろう。

原発問題など、ある1つのイシューについて、インターネットを通じて、フェイスブック、ツイッターなどのSNS、ビデオ共有アプリVine, YouTubeなどのソーシャル・メディアを駆使し、情報をシンプルかつ出来るだけ広く共有する。あらゆる手段を使って共感を得た市民が瞬時に繋がり、気軽に市民運動に参加できるメリットは、世界各国における現在の市民運動の特徴でもある。

個人発信が可能なSNSやソーシャル・メディアを駆使することで、市民運動の主催者は、運動の目的を誰にでもわかりやすいように顕在化させることや、参加者とのコミュニケーション、また、どのようなかたちで市民運動を継続させていくのか、ということが常に問われる。

現在日本では、反原発運動に加え、主に在日韓国・朝鮮人への民族憎悪の横行に対抗する反レイシズム運動が活発化している。この日本の反レイシズム運動の中心的役割を担っているのは、「レイシストをしばき隊」と、反レイシズム署名活動や「仲良くしようぜ」のプラカードを沿道で掲げる「プラカ隊」、 「友だち守る団」などである。

これらの市民運動のうち、継続されている運動に共通して言えるのは、「わかりやすくシンプルなシングル・イシューであること」「デモや抗議の手法がバラエティに飛んでいること」「市民が自発的に動き、主催者と参加者の壁が薄いこと」「主催者・参加者を問わず、それぞれがフェイスブックやツイッターなどのSNSで、自分の意見と立場を明確にしていること」、そして「非暴力主義を貫いていること」が挙げられる。

インターネットやSNS、ソーシャル・メディアのお陰で、市民運動へ参加することがもはや特別なことではなく、日常生活の一部となってきている。これまで市民運動に関心のなかった、いわゆる無関心・ノンポリの若い世代も、今までとは違ったやり方で、確実に市民運動に取り込んでいる。

今後、日本の市民運動の最終ゴールがどこに行き着くのか、というビジョンを、国内のみならず、世界中のあらゆる場所のあらゆる世代で、広く共有していくことが、運動を拡大・継続させるための要となっていくだろう。これらの動きは、日本発の市民運動が、世界の市民運動のうねりを作る、きっかけともなり得るような、可能性を大いに秘めている。

日本の一般市民が世界の市民運動に影響を与えるような、歴史を塗り替える日がくることを信じてやまない。







タケトモコ
美術家。アムステルダム在住。現地のストリート・マガジン『Z!』誌とともに、”HOMELESSHOME PROJECT”(ホームレスホーム・プロジェクト)を企画するなど、あらゆるマイノリティ問題を軸に、衣食住をテーマにした創作活動を展開している。

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「私たち」が歴史を塗り替えていく〜世界の市民運動のうねり〜



イスタンブール・タクシム広場、アラブの春、オキュパイに、「反原発デモ」や「モンサント反対デモ」―――。世界の路上で行われている市民運動の今と、その系譜。






トルコ・イスタンブールのタクシム広場で何が起こっているのか?






この曲は、イスタンブールのタクシム広場で現在起こっていることについて、自分たちの日常生活の一部であるストリートで、鍋やスプーン、グラスなど、身の回りにあるものを、楽器代わりに演奏しながら、 一般市民たちが歌い、タクシム広場で現在巻き起こっている暴動の映像と、祖国に対する熱い想いを重ねあわせている。

現在、トルコで起こっている暴動について、欧米人と話していると、いつも引っかかるのは、"文明化=シビリゼーション"という言葉だ。非欧米人である、私からすれば、欧米のような"文明化"が正しいかどうかは疑問符が残る。

西洋社会のような"文明化"が正しいと思い込んでいるから、欧米人と議論していても、そこから先が見えてこない。トルコでは、西洋社会のような"文明化"は進んでいないが、独自の文化が存在するのだから。

現在、トルコ・イスタンブールのタクシム広場で起こっている暴動は、なぜ起こったのか? イスタンブールの中心に位置するタクシム地区が、オリンピック招致のために公園の取り壊しを決めたことに反対派が座り込みを始めたことが、発端だとされている。しかし、暴動がトルコ全域に拡大するにつれ、トルコ与党のエルドアン首相の辞任を要求する反政府デモへとかたちを変えていった。

なぜ、ここまで市民運動が暴動と化してしまったのか? それは、トルコ政府が行なった過剰な強制排除への反対運動に多くの人が共感し、募っていたエルドアン政権への不満がかたちとなって現れたのだと考えられる。




市民運動が拡大しない理由



3.11をきっかけに、日本でもデモなどの市民運動が活発になった。特に顕著なのが、日本各地で継続的に行なわれている反原発運動だ。

私自身もオランダ・アムステルダムで「HOPE STEP JAPAN!」の一員として、地元アムステルダムの幾つかの脱原発グループと提携しつつ、日本の被災地支援、および脱原発運動を定期的に行なっている。

現在、オランダではボルセラ (Borssele) 原発が1基のみ稼働しており、新規の原発建設は事実上凍結されている。

この2年、「HOPE STEP JAPAN!」の活動を通じて感じたことは、オランダでは、なかなか脱原発運動の輪が思うように広がっていかないということだ。もちろん、オランダ市民も、脱原発を望んでいる人は多い。しかし、実際に私たちの活動を直接支援して下さっている一般市民は、オランダに暮らす日本人、日本人のパートナーや友人を持つオランダ人、何らかのかたちで日本に縁やゆかりがある人がほとんどである。

これまで、オランダの多くの人々が共感し、積極的に行動を起こしてきたのは、主に、オキュパイ運動、LGBT運動、つい先日行なわれたモンサント反対運動である。オランダは市民運動が日常的に行なわれる土壌があった。チェルノブイリの原発事故を経て、特に食品においては、多少なりとも被害を被ったので、脱原発にはもっと関心があってもよさそうだが、脱原発運動は、オランダの多数の市民の共感を呼ぶレベルに達していないのは事実だ。

このような問題は、オランダのみならず、オランダの近隣諸国〜ドイツを除いた、イギリスやフランス、ベルギー、そしてアメリカにおいても、同様の問題を抱えているようだ。

市民運動は、突然恋に落ちるのと似ていると、市民運動に詳しい私の友人が話していた 。この言葉を読み解くと、市民運動は決して努力だけで広がるものではなく、その時代の背景や状況、参加者の想い、運動の人数と規模、タイミングなどの様々な要素がミックスされ、最終的に「偶然性」が反響し、すべてが一致した時に、大きなうねりを生み出していくものなのかもしれない。




市民運動の現在〜日本のマルチ・イシューとシングル・イシュー



現在、日本の反原発運動や官邸前抗議は、幾つかの派閥に分かれている。それぞれ原発をなくしたいという気持は同じなのだが、反原発運動に原発の問題をどこまで取り込むかが、主催者によって異なることが、大きな争点になっている。




日本の反原発の市民運動は主に以下のように分類できる。

1.シンプルに「原発反対」のわかりやすい”シングル・イシュー”を掲げている市民団体・市民グループ (首都圏反原発連合TwitNoNukesNO NUKES MORE HEARTSなど) :この”シングル・イシュー”には、原発事故による食の安全、福島の子どもたちの避難、原発事故で被ったあらゆる被害・保障、経産省前テント、原発輸出の問題、原発労働者、原発事故による失業や健康被害なども含まれている。

2. あらゆる問題を取り入れた“マルチ・イシュー”の市民団体・市民グループ:貧困問題やTPP問題など、より広義的な意味で原発と関わる周辺問題を含んでいる。

これらの市民活動グループの関係を見てみると、1の中にも”シングル・イシュー”をめぐる細かな解釈の違いがあったり、 ツイッターやフェイスブックに代表されるSNS (ソーシャル・ネット・ワーキング)では、「反・反原発派」と呼ばれる、いわゆる反原発デモや抗議に反対する人たちも存在し、反原発運動が始まってから、2年が経過した今、これらの派閥の層は複雑化している。




オランダの市民運動の基本はシングル・イシューである。なぜ欧米では、シングル・イシューのデモが多く存在するのか? なぜマルチ・イシューでは存在しにくかったのか。ご周知の通り欧米では移民が多く、文化、宗教、言語、価値観の違う人たちと共に、主義主張をひとつに結束していくために「シングル・イシュー」が必然的なかたちだったと思われる。

きっと市民運動の理想形としてふさわしいのは、各イシューに応じたシングル・イシューのシンプルでわかりやすいデモや抗議活動が行われること。そして、気になるイシュー、 自分の主義主張にあったデモを自ら選び、気軽に参加できるようなシステムを、市民それぞれが構築すること。それが存在していける社会があることだ。欧米先進諸国では、それが市民の権利として日常に存在している。




後編に続く

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