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3月1日発売のビッグイシュー日本版234号のご紹介です。
グラミー賞の年間最優秀楽曲賞を獲得したロードが表紙を飾ります!

特集 温、魅、質。被災地、女性の仕事づくり
東日本大震災から丸3年、今、被災地の女性たちがつくりだしている仕事は、温かく、魅力的で、ハイレベル。それは、なぜでしょう。
被災地外の市民が被災地の女性たちの仕事づくりをサポートしたいと動きだし、それに応えて始まる仕事、あるいは、被災地の女性たちが新しい仕事を始めたいと動き出したとき、サポートに現れる市民たち。仕事をつくっていく志、生みの苦しみと緊張感、両者の交流やプロセス、そこに、希望や生きがい、生きる喜びが生まれ、思いもかけなかったかたちで、仕事が誕生する。そんな作品と作り手に会いたくなる7つのチームを紹介します。

スペシャルインタビュー ロード
シンプルでありながら一度聴いたら忘れられないサウンドと、深く響く歌声。16歳にして瞬く間に全米・全英チャートの1位を獲得し、今年はグラミー賞の年間最優秀楽曲賞にも輝きました。ニュージーランド出身の歌姫ロードの、シャイな素顔に迫ります。

リレーインタビュー。私の分岐点 歌手 ZEROさん
ドラマ『美しき日々』の主題歌をきっかけに人気を博した、ソウル出身の歌手・ZEROさん。今では日本を拠点に活動を続けており、「絶体絶命の自分にチャレンジする場をくれた日本への思いはとても強いものがあります」と、熱い思いを語ります。

国際記事 南アフリカ、マリカナ鉱山事件
2012年8月、南アフリカのマリカナ鉱山で、ストライキに参加した労働者たちに対し、警察が機関銃を発砲して34人を殺害する事件がありました。英国人のベテラン弁護士ジム・ニコルは、事件後現地に渡り、真相究明と遺族の救済のために闘っています。二コルさんに事件の経緯、マンデラ後の南アフリカの行方について聞きました。

映画インタビュー 『僕がジョンと呼ばれるまで』太田茂監督
アメリカの介護施設が舞台のドキュメンタリー。認知症患者の1人エヴリンが、次第に冗談好きな“自分らしさ”を取り戻す旅は、家族の希望となりました。症状でなく人間を描くため、家族の視点が必要だったと監督は語ります。

この他にも、「ホームレス人生相談」やオンラインでは掲載していない各種連載などもりだくさんです。詳しくはこちらのページをごらんください。

最新号は、ぜひお近くの販売者からお求めください。
販売場所検索はこちらです。

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<「住宅政策提案書」はビッグイシュー基金ウェブサイトよりダウンロードできます>


賃貸住宅政策の再構築を ─公的住宅の拡大と、公的保障制度の導入、家賃補助の恒久化を



低所得、かつ不安定な雇用の拡大により、住宅購入が困難な世帯が増加している。戦後、持家取得の促進を中心に展開されてきた住宅政策を、住宅所有形態の選択に中立的な政策へと転換する必要性が高まっている。

賃貸住宅政策の再構築にあたり、まず、全住宅のわずか4%にまで落ち込んだ公営住宅ストックの供給量の拡大を図るとともに、老朽化した住宅の適切な改善・更新が求められる。次に、民間賃貸住宅市場を維持した住宅セーフティネットの整備が急務である。

公的援助を通じ、低所得者や高齢者、障害者、母子世帯等の生活困窮世帯が入居可能な、低廉かつ良質な民間賃貸住宅ストックの形成が図られることが求められる。

このような生活困窮世帯向けの賃貸住宅の管理・運営の主体として、民間非営利組織などが活用され、生活相談などのサービスも含んだ包括的な居住支援がなされることが期待される。

また、賃貸住宅市場へのアクセスを可能にし、家賃滞納を保証する公的な仕組みの整備が必要である。さらには、低所得者を対象とした家賃補助の恒久化が求められる。(川田)


住まいとケアの統合を ─有効なアウトリーチによる見守り



核家族化や単身世帯の増加、高齢社会の拡大、貧困や格差の拡大など社会構造の変化が大きい時代になっている。そのなかで特徴的なことは、家族相互の扶養や介護などに期待ができない状況が出てきたということだろう。

個人では解決できない家族問題や生活問題の社会化が求められている。介護や介助、生活支援、見守りなどのニーズを有する人々に対し、家族以外の人や社会が、対応していくことを求められてきている。

その前提において、住宅政策も議論することが重要だ。一人で暮らせないなら施設という従来の考え方を超えて、支援体制を組み合わせながら、住み慣れた地域で暮らせるように支える仕組みが必要となる。

例えば、地域で空き家となっている住宅を有効活用しながら、ケア付き住宅やシェアハウスとして、活用していくことも必要だろう。住まいとケアの統合を福祉や住宅の垣根を越えて議論し、新しい実践の取り組みを進めていくことが求められる。そのようなケア付き住宅には、ソーシャルワークなど社会福祉援助技術を学んでいる専門職人材を積極的に配置していくことが不可欠だ。

そして、孤立死対策でも有効性が明らかとなっているのは、アウトリーチによる見守りである。一人暮らしでは誰も訪問することがなく、異常があっても気づかれない。しかし、多少のケアを導入する工夫をするだけで、訪問者が常にいる状況を作り出せる。食事提供や介護等をしなくても話し相手や相談相手になるだけでも生きがいが持てる人々も多い。施設でもなく、住宅提供だけでもない見守り型の中間施設の整備が今後も必要となってくるだろう。(藤田)


居住支援体制をつくろう ─実現可能かつ、多様な支援プログラムの展開



2007年に制定された住宅セーフティネット法は、低所得者、被災者、高齢者、障害者、子育て世帯など「住宅の確保に特に配慮を要する者」が民間の住宅に円滑に入居できるようにするため、地方自治体ごとに居住支援協議会を組織できると定めている。居住支援協議会は、それぞれの地域の自治体、不動産業者、民間の居住支援団体等によって構成されるとしている。

国土交通省は居住支援協議会の設立を各自治体に呼びかけており、1協議会ごとに年間1000 万円の補助を出しているが、2013 年 5 月時点で協議会を設立している自治体は 32 団体(24 道県、2特別区、6 政令市)にとどまっている。

各協議会の取り組みは様々だが、なかでも注目すべきは、シングルマザーなどを支援する NPOと連携して空き家・空き室を活用したモデル事業を実施している東京都豊島区の居住支援協議会である。ただ、実際にモデル事業を進めると、空き家の家主の理解がなかなか得られない、空き家が現在の耐震基準を満たしていないので活用できないなどの問題が生じているそうだ。

それぞれの地域の実情にあった居住支援プログラムを実施していくためには、行政と不動産業界、居住支援 NPO の連携は不可欠である。住まいの貧困が深刻化している大都市部では、すべての基礎自治体で居住支援協議会を設立してほしい。そしてすでに設立している自治体でも、市民に開かれた議論を行なうことで、協議会を活性化してもらいたい。(稲葉)


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<住宅政策に関する過去の記事は、こちらのページから閲覧できます>
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(THE BIG ISSUE JAPAN 第128号より)

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いきつけのバーの店長に気に入られて困っています



最近よく行くレストランバーがあります。通ううちに常連さんたちと仲よくなれたのに、そこの店長の男性が私のことを気に入ったと言って、常連さんや近くの飲食店の人たちに「俺のハニーが……」と勝手に言いふらしています。せっかくそこで出会いを見つけようと思っていたのに、みんなに気を使われて、誰も誘ってくれません。どうにかして前の状態に戻したいです。店長も傷つけず、何かいい方法はありますか?
(女性/28歳/大阪府)


販売をしている時でも、けっこうお客さんでよくしゃべられる方がいらっしゃるんです。お客さんも「話をするのが楽しい」って言って来てくださいます。自分のことばかり一方的に言わんと、「最近調子はどうですか」って、まずはお客さんの話から聞きます。その後に自分の言いたいことをポンっと言うねん。「楽しい」って言って、30分くらいしゃべっていかれる方もいたはります。

そのレストランバーも、店員や常連と交わすおしゃべりを楽しみにしてみんな通っているんやろうし、相談者さんもきっとそうやと思うねん。でも、私も飲食店で働いていたことがあるけど、お客さんが楽しく過ごせるように一線を引くのは水商売の鉄則やわ。

私が昔行ったことのある居酒屋はたまたま開店したばかりやって、そこの女店長が帰りわざわざ見送りをしてくれてん。でも、ずーっとついて来るねん(笑)。気がついたらその店長さん、駅までついて来てたわ(笑)。「別に初めて来ただけなのにそこまでサービスしなくても」と、逆にかまわれすぎても行く気がしないものです。

そのレストランバーの店長さんは若いんかしら。はっきり言ってプロとして失格やと思います。お客さんを気に入って、しかも独り占めしたいんか知らんけど、周りに言いふらすなんてもってのほか。昔のバーのマスターたちは、本当にそういった部分の線引きがきっちりしていて格好よかったわ。今は時代が変わったせいかナアナアになっているのかもしれんけど、これはちょっとひどいわ。

もう別にこの店にこだわらずに、行かんといたらいいねん。別にここでなくても、いい店は他にもいくらでもあるやんか。この店にこだわることはないと思いますよ。せっかくお金を払って飲みに行くんやから、楽しくて気持ちよく過ごさせてくれる店に時間を使った方がいいと思うわ。

(大阪/Eさん)
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公的住宅保障の確立を:必要かつ必然。社会の安定、福祉コスト抑制に効果



住宅供給を市場経済にゆだねるのか、あるいは公的に推進するのかは、これまでも、住宅政策のあり方に関する基本的な争点となってきた。現実には、すべての人々が市場で住まいを確保できるという社会は存在しないし、政府がすべての住宅供給をコントロールするという社会も存在したことがない。政府と市場の役割をどのように組み合わせるのかが問題になる。

しかし、まず、重要なのは、住宅の公的保障の必要に関する理念の確立である。日本では、市場での住宅確保が困難な人たちがさらに増大すると予測される。人口は超高齢化し、経済は不安定なままで推移する。雇用と所得の安全性が回復する見込みは乏しい。家族世帯は減少し、より低所得の単身・母子世帯などが増える。社会・経済条件のこうした変動のもとでは、公的住宅保障の対象範囲の拡大が必要かつ必然になる。

住宅政策のための財政支出に社会的な合意が得られるかどうか、という問題がある。しかし、その投資が社会安定を支え、社会保障・福祉などのコストの増大を抑制する効果をもつ点をみる必要がある。住宅供給をもっぱら市場にゆだねる方針は、住む場所を得られない人びとを増やし、そこから増大する貧困は、膨大な対策コストを社会に要求する。この文脈において、これからの脱成長・超高齢社会では、住宅の公的保障を充実する政策は高い合理性をもつ。

(平山)

住宅政策から居住政策へ :セーフティネットから予防的連携・連動の方策へ



非正規雇用者や単身世帯、低所得高齢者等の居住不安定層の増加が予想される中、市場からこぼれ落ちる人たちを「住宅セーフティネット」で救う、だけでは量的に限界があり、予防の観点から、様々な施策と関係付けた総合的な政策体系としていくことが必要と考えられる。

そもそも安定した住生活を実現するためには、支払い能力に応じた適正な住居費負担で、モノとして居住空間の基本的な質が担保され、安心して暮らすことができる社会的な関係が備わっていることが求められる。また、そうした居住を確保する際、年齢や世帯構成、職業などによる入居の差別がない公正な市場が形成されていることが前提条件となる。

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これらの条件を満たす住宅政策を実現するためには多くの課題がある。例えば、適正な住居費の負担を追及するには、まず、それぞれの家計条件にとって適正といえる住居費負担(率)を明らかにすること、その住宅が当該居住世帯に適合した基本的な質を有しているかどうか、その家賃が住宅の質に対し適正であるかどうかなどを判断するための尺度や計測する仕組みがあること、医療・福祉施策やまちづくり・コミュニティ施策と連携・連動していることなどが求められる。

住生活基本法制定後、様々な市場施策や連携施策が生まれているが、これらを今一度、住生活の安定という観点から検討する必要がある。とくに、普遍的住宅手当などを円滑に機能させるためには、これまで住宅政策の中で見落とされていた「モノ:居住空間の質」「ヒト:社会的関係」「カネ:住居費負担」の相互の関係性を重視し、上記のような周辺システムを整備していくことが求められる。

そのためには、国や都道府県などが主導する広域対応の市場政策と、基礎自治体(市区町村)による日常生活上の課題に対応した部局横断型の連携施策を組み合わせ、居住政策として一体的に取り組んでいくことが望まれる。

(佐藤)


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(2008年3月15日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 第91号より)

雑草の生きる秘訣を田中修さんに聞く:みんなで一緒に花を咲かせる「雑草の生き方」



都会の喧騒の片隅で、か弱く生きている雑草にも生き方の秘訣がある。
『雑草のはなし』の著者、田中修さん(甲南大学理工学部教授)に巧妙な雑草の戦略を聞いた。


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都会の負け組?分相応に生きるタンポポの潜在能力



アスファルトの割れ目など、都会のわずかなすき間から顔をのぞかせる雑草。人に望まれず、踏みつけられ、引き抜かれたりしながら、都会の片隅で遠慮がちに、ひっそりと芽吹いている姿は、さながら都会の負け組のように見えなくもない。

だが、そうした小さく弱々しい姿は、雑草の本来の姿ではない。田中修さんは、「普段の私たちが目にしないだけで、例えばタンポポでも本当はもっと大きく育つ能力を持っているんです」と話す。道端では、タンポポは小さな葉っぱを展開する存在に過ぎないが、しっかりと肥料を与えて育てると、1枚50㎝もの大きな葉っぱが放射状に広がり、直径1mもの大きな草花に成長するのだという。

また、畦や道端などで人や車に踏まれながら生きているオオバコも、「大葉子」と書くわりには、それほど葉が大きくない。が、日当たりが良く、土地の肥えた、人に踏まれることのない場所だと、オオバコは観葉植物になるぐらい立派に育ち、まるで別の植物に見違えるような姿になる。タンポポもオオバコも、本当はすごい潜在能力を持っていながら、それを自慢げに披露するでもなく、控え目に生きている。

「ほとんどの雑草がそうですが、彼らの生き方はいじましいぐらいに身分相応なんです。タンポポは外見が小さくても、地下ではゴボウのように太い根が地中のどこまでも伸びていて、簡単に引き抜くことができない。大事な芽の部分も地表スレスレにあって、動物にいくら葉をかじられても、芽だけは残るような仕組みになっている。つまり、誇らしげに大きく育つより、とにかく生き抜こうとしているのです」
 

なぜ、春に花が咲くのか?雑草は仲間の繁栄を優先する



厳しい環境の中で、誰にも頼らず、自分の力で生き抜く雑草には、雑草なりの生きる戦略がある。

一番わかりやすいのは、トゲやにおい、毒などで動物から身を守る戦略だろう。また、雑草の中には人や車に踏みつけられるほど強い植物になるものが多いが、その仕組みも科学的に実証されている。植物は触られると感じて、エチレンという気体を出し、それが太くて強い植物に成長させるのだ。

極めつけは、小さな雑草のタネに秘められた戦略だ。それは、「なぜ春に花咲く草花が多いのか」という疑問とも関係している。

「人間は花の美しさばかりに気をとられて忘れがちですが、花は生殖器であって、タネをつくるために花を咲かせている。では、なぜ春にタネをつくるのかというと、暑さに弱い草花たちはタネの姿になって夏の暑さをしのぐために、2ヶ月前に夏の到来を感じとって花を咲かせるようになっているんです」

雑草のタネは発芽する「時」と「場所」も精巧に計る。秋に結実したタネは間違っても、良い日差しに誘われて秋に発芽したりはしない。自分の身体で寒さを感じ「今、冬が通過した」ということを感知してから春の暖かさを感じとり、芽吹くのだ。

また、雑草のタネは光を感じることで、自らが発芽して成長できる環境にいるかどうかも見極める。「タネは土の奥深くで十分な光が感じられなければ、土が掘り返されるまで、じっと発芽のチャンスをうかがいます。光の感知は、栽培植物には要求されない、雑草特有の能力」と田中さんは説明する。

そして、雑草は、何よりも仲間とのつながりを大事にしている、と田中さんは強調する。草花はある特定の季節、あるいは特定の時刻に仲間と一緒に花を咲かせる。とくに雑草には、朝に咲くツユクサやオオイヌフグリ、夕方に咲くツキミソウなど、特定の時間に咲き、1日以内にしおれる一日花が多い。

「そもそも草花は自分だけキレイな花を咲かせても、仲間が一緒に咲いてくれなければ、花粉もつかないし、強いタネも残せないんです。だから、彼らは温度や光、夜の長さを計って、同じ季節、同じ時刻に『みんなで一緒に花を咲かせよう』と決めている。実りを多くするためには自分だけの繁栄はありえない、仲間とのつながり、仲間の繁栄が何より大切なんです」
 

雑草のたくましさは、多様性にあり



どこにでも生える雑草は、「たくましい」といわれる。だが、一株の雑草が、寒暖や乾燥、湿気といったすべての環境に耐えられる性質を持っているわけではない。例えば、同じタンポポの種類でも、乾燥に強いものもいれば、乾燥に弱くて死んでいくものもいる。つまり、雑草の多様性が、彼らをたくましく見せている要因なのだ。そして、その雑草の多様性は、花粉を虫や風に遠くまで運ばせて、常に自分とは違う性質の子どもをつくる生殖の工夫によって担保されている。

こうした雑草たちのさまざまな戦略を見てみると、都会の雑踏の中を誰にも頼らずに生き抜き、片隅で芽を出している彼らは、実は都会の勝ち組であることがわかる。

そして、田中さんは、逆に雑草の目線から見た人間の姿をこんな風に想像してみせる。

「雑草は人間や動物のように動き回ることができないのではなく、実は動き回る必要がないんですね。水と二酸化炭素と光さえあれば、栄養分を自分でつくれますし、生殖の相手を探すのも虫や風任せ。暑さや寒さもタネでしのげる。だから、雑草がもししゃべることができたら、たぶん、食べ物や生殖の相手を探して毎日ウロウロしなきゃいけない人間はかわいそうな生き物やな、と言うと思いますよ」

(稗田和博)
Photo:中西真誠

たなか・おさむ
1947年、京都生まれ。京都大学農学部卒業、同大学院博士課程修了。スミソニアン研究所博士研究員などを経て、現在、甲南大学理工学部教授。著書に、『雑草のはなし』、『ふしぎの植物学』中公新書、『入門たのしい植物学』講談社、など多数。
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人生を生き抜くために大切なことは、「信じること」



写真家になる日を夢見る20歳。ロマの青年・ベオグラード『LiceUlice』誌販売者、ミルコさん


クネズ・ミハイロヴァ通りで最も楽しそうな笑顔を探せば、それがミルコだ。この20歳の青年は、朝は笑顔とともに起き、一日中笑顔を絶やさない。おそらく夜寝ている間も笑っているに違いない。写真家になる夢を見ながら—。

ミルコの朝はいつも快調だ。出かける準備をすると、若いホームレスのためのドロップイン・センターに向かう。「カカやクルサ、ドラガナなどの先生たちや、友達のエミール・アミール、メティ、エルビラ、リュリエッタらに会えば、たちまち顔がほころぶんだ」。ミルコは彼らのことを、自分を支えてくれる家族と思っている。

ミルコはスロバキアで生まれた。小さい頃は本当に幸せだった。ロマの母親とともに祝った楽しいジュルジェヴダンのお祭りや、父親が歌ってくれたスロバキアのクリスマスを覚えている。「クリスマスイブには、近所の子どもたちと、家々を回って歌を歌うのが好きでした」と語る彼は、当時に戻ったようで、笑顔も後光が射したように輝く。彼の大好きな歌は、「ラジ、ラジ、プラジ、マス、ベルジャ、ペジャジ」で、「もしお金を持っているなら、持っていなければ借りてきて、私におくれ」というもの。実際にはお金ではなく、袋に入ったスイーツを大人からもらうのだ。

母親の死を機に、4年前に父とセルビアに移住したミルコだったが、父と折り合いが悪くなり、家出。路上で物乞いをして暮らしていた。その頃知り合ったのが、『LiceUlice』の販売者でもあるシャディックとその仲間たちだ。

「雑誌販売を始めて半年になります。1時間で30冊売れる時もあれば、1日中街頭にいて10冊しか売れない時もある。時には、30分も話し込んでいくお客さんもいますよ」とミルコは笑う。

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セルビア・ベオグラードのストリート・マガジン『LiceUlice』は2010年創刊。販売者のほとんどがロマの人々だ。

スタッフのニコレッタは語る。「ベオグラードでは、ロマの人々への偏見は根強いものがあります。『彼らは、教育も受けず、働く気のない怠け者で、薄汚い。何もせずに物乞いで生きている』と。政府も抜本的にかかわっていこうとしないため、現状は変わらないままでした。ですから、実際に路上で販売者であるロマの人々と“出会う”ことは、彼らも同じ人間で、自分たち同様喜怒哀楽をもって生活しているということを理解するのに、とても大きな役割を果たしているようです」

今では大家族のシャディック家の一員として暮らしているミルコ。ベオグラード郊外にある小さな家で、シャディックの家族はミルコを愛情をもって迎え入れている。シャディックの母は、ミルコが家計の一部を負担することを辞退。だから、時にシャディック家の子どもたちにジュースを買って、公園でみなで一緒に飲む以外は、ミルコは稼いだお金をほとんど貯めている。

彼の大人びたお金の使い方は、実は将来の大きな夢と関係がある。彼には写真を勉強したいという夢があるのだ。

ミルコは、ベオグラードの有名な写真家ゼリコ・サファルと会ったことがある。サファルは、ワークショップ「ストリートの目」を主宰、ミルコはそこで1番の生徒だった。「ミルコはまるで空のハードディスクのように、どんなアドバイスや提案も受け入れて、『写真で自分の身の回りのことを述べよ』という課題を与えられると、最高の作品を提出しました」と、サファルは振り返る。

ミルコは才能のほとばしりを抑えることができず、ワークショップの後も、携帯電話で写真を撮り続けた。撮りためた写真は特別なアルバムに収めていっている。有名な写真家になる日を夢見て—。
人生を生き抜くために大切なことって何だと思いますか?という問いに、「信じること」と答えたミルコ。周りの人にたっぷりの愛情をもらって、人を信じること、自分を、夢を信じることを、少しずつ学び始めている。

(Dragana Nikoletic / Translator from Serbian to English Nikoleta Kosovac)

『LiceUlice』
1冊の値段/100セルビアディナール(約92円)のうち、50セルビアディナール(約46円)が販売者の収入に。
販売回数/月1回刊。
発行部数/1回につき6千部。
販売場所/べオグラード、アヴィサド
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126人生相談


しつけと虐待の違いって何ですか?



スーパーで買い物途中、3歳になる子どもがお菓子を買ってくれと駄々をこね始め、しまいには大声で泣き出してしまい、思わずその場で、手をあげてしまいました。その後、こんなご時世ですから、周囲から虐待ではないかと誤解を受けたらどうしようと、気をもんでいます。しつけと虐待の差って、何だろうと思いますか?
(主婦/30歳)


しつけと虐待の差は、愛があるかないか。ちょっとキツイ言い方かもしれないけれど、見栄や他人の目を気にしているようじゃ、愛が足らないんじゃないのかな。

子どもだって、対等な立場で見てやることが大切だと思うよ。オレは女房の連れ子だった娘に、そうしてきた。むろん他人の子なんて思ったことなんかなかったし、年頃になって血がつながってないとバレても、関係は変わらなかったね。

親子になった時は娘が2歳だったから、このお子さんと同じぐらいかな。あとで自分の子どもが生まれた時は、サルかと思ったのにね、娘は最初からかわいくって。

なにせ女房のお腹が大きかったから、よく娘をスーパーなんかにも連れてった。駄々をこねたら、「家に帰ったら好きなテレビを見よう」とか、「オモチャで遊ぼう」とか目先をかえる努力をしてね。それでダメだったら、「お金がないから、買えない」って素直に言った。子どもの時分から、お金の価値を教えることや我慢を知ることは、大切なことだと思うよ。子どももそのうち、高いものはじいちゃん、ばあちゃんに頼もうって、生きる知恵をつけていきますわ。

ほんとオレ、娘が大好きだった。オレと同じA型だったしね。でも、しつけのためには悪さをしたら、たたきました。場所はお尻って決めてね。親に怒られて子どもが逃げ回るのは、何をされるかわからない恐怖心でしょ。オレが「ちょっと来なさい」って言うと、娘も「ハー」ってため息ついて、お尻をさすりながら、膝の上に乗ってきた。習慣ですね。

ところが5年生ぐらいになると、知恵をつけてお尻に本を入れてくるんだわ。硬いからアレッて思ったけど、娘が反省しているってわかってるもの。気づかないふりしてあげた。子どもが大きくなったら、見逃してあげるぐらいの度量も必要だね。

人様だって、子どものお尻をたたいている親を見て、虐待なんて決して言わないわ。そのかわりお仕置きが終わったら、ギューッて抱きしめてあげてな。

(大阪/Hさん)



(THE BIG ISSUE JAPAN 第126号より)


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(2013年5月1日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 214号より)


グローバルプラットフォームで 被災地の子どもが声を発信



今年5月にスイスのジュネーブで開催される、国際会議「第4回グローバルプラットフォーム」に、東日本大震災で震災を経験した子どもたちが日本の子ども代表として参加することになった。この会議には、国連加盟国や国際機関、NGOなどが参加する。

この準備のため、3月31日から1泊2日の日程で、岩手、宮城、福島各県の中高生たちが意見をまとめるワークショップ「世界の防災に向けて、私たちが伝えたいこと!」が仙台市の茂庭荘で開かれた。主催は国際子ども支援団体「セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン(SCJ)」。

参加した中高生は32人で、初めて会う人がほとんど。最初の自己紹介ではやや緊張した面持ちだった参加者も、グループに分かれて資料を読み込んだあと、付せんを使って、どのような課題に絞って提言していくかを議論した。意見を重ねるうちに打ち解けて、会場は和やかな雰囲気に。最終日の2日目は、お互いの意見を聞き、アドバイスし合いながら、グループごとに意見をまとめた。

この中では、「子どもの意見も聞いて、これからに生かしてください。子どもだからって言わないでください」「子どもたち自身の手で未来へのまちづくりをするための環境を整えてください」「情報の公開をしてください」「すべての子どもが平等に保養に行ける機会をつくってください」「離れ離れになった友達と再会できる機会をつくってください」「子どもが主体で地域と一緒にハザードマップ作成/避難訓練をしたい」など、合計で11ページにのぼるほど、さまざまな意見が出された。

宮城県の村上日奈子さん(中学3年)の学校は津波の被害を受けた。「支援してくれているカナダの人とメールのやり取りをしていますが、日本のことを気遣ってくれています。心配してくれている世界中の人に、防災に向けた提言を発信したい」。

福島県の能登太一君(中学2年)も「みんなと話し合ううちに、支援してくれた人への感謝の気持ちが大切だということに気づかされました」。

2月に国連事務総長特別代表(防災担当)のマルガレータ・ワルストローム氏に提言書を提出した一人、福島県の本田歩さん(高校2年)は「参加したみんなが前向きで、地元のことを考えて大人以上に行動したいと考えているのがわかりました。充実した体験になりました」と話してくれた。

(文:藍原寛子)
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Genpatsu
(2014年2月15日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 233号より)

再稼働を前提にした東電の再建計画



東京電力は新しい総合特別事業計画(以下、新総特)を作成し、政府は1月15日にこれを認定した。

最初の総特は2012年2月に策定されたが、東電を取り巻く環境に大きな変化があり見直すことになったという。大きな変化とは、まず被害者への賠償が5兆円を超える可能性が出てきた。除染費用や中間貯蔵施設の費用などの見積もりはあわせて3・6兆円と見込まれるようになった。廃炉費用や汚染水問題への対応の費用も膨らんでいるなどなどだ。

また、福島の復興を加速化するとした安倍政権の決定を受けて、新総特では福島原発事故の責任を果たし、進む電力自由化による競争環境の中でも生き残れる会社にする。そして、東電を持ち株会社とし、「発電部門」と「送電部門」、従来の営業エリアを超えた「小売事業部門」の3つに分社化する。福島廃炉専門の会社も設立する計画だ。こうした「改革」で利益もどんどん上げていくという。

旧総特では柏崎刈羽原発の再稼働を前提としていて、地元から強い批判を浴びた。あれから1年半、運転再開は果たせなかった。新総特でも再稼働が前提だ。しかも再稼働申請を行った6、7号機は今年の7月から稼働する皮算用だ。さらに2〜4号機の再稼働も計算に入れたいようだ。再稼働を織り込む場合とあてにしない場合の二通りで損益の試算結果を掲げ、再稼働したほうがもうかるとしている。

しかし、敷地の近くの活断層問題や敷地内を走る断層の再調査も避けられない。これには相当の時間がかかるし、廃炉という結果もありうる。加えて、柏崎刈羽原発の再稼働には、地元の新潟県が再稼働に強く反対していて合意は得られそうもない。

東電は損害賠償に対しても誠実ではない。原子力損害賠償紛争解決センターの和解案を東電が拒否するケースが目立ってきているという。裁判に訴える動きが増えてきている。

新総特は絵に描いた餅になるだろう。東電を法律に基づいて破たん処理をしたうえで再建するべきとの声は根強い。




伴 英幸(ばん・ひでゆき)

1951年、三重県生まれ。原子力資料情報室共同代表・事務局長。79年のスリーマイル島原発事故をきっかけとして、脱原発の市民運動などにかかわる。89年脱原発法制定運動の事務局を担当し、90年より原子力資料情報室のスタッフとなる。著書『原子力政策大綱批判』(七つ森書館、2006年)





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