ビッグイシュー・オンライン編集部のイケダです。講談社「現代ビジネス」の協力のもと、児童養護施設の子どもたちの教育問題に取り組む「3keys」の代表・森山さんにお話を伺ってきました。





東京だけで、3,000人以上の子どもが児童養護施設に




DSC 0478
(森山誉恵さん)





イケダ: 今回は、NPO法人3keys (スリーキーズ)代表理事の森山誉恵さんにお越しいただきました。子供の貧困や教育格差、そして3keysの活動についてお話を伺えたらと思います。

森山: よろしくお願いいたします。

イケダ: まず最初に、児童養護施設の子供たちが抱える課題について教えてください。

森山: 私たちが支援の対象にしているのは、格差のもとにある子供たちです。その中でも特に児童養護施設にいる子供たちに焦点を当てて活動しています。

前提として、児童養護施設は、戦後孤児を預かる場所として始まったものでした。親戚なども預かれなくて、行政が保護するしかない子供たちの場所としてできたので、現在でも学校法人や宗教法人が運営していることが多いです。

しかしながら、そのような文化がなくなっている中で、社会保障化が進んでいます。昔に比べて地域や親族とのつながりなども希薄になってきていることもあり、ニーズが増えている状態です。今では、東京だけでも18歳以下で3000人以上の子供たちが児童養護施設で暮らしています。そのため、定員が埋まっていて、常に待ち状態です。






スクリーンショット 2013 11 06 11 05 37
(参考:「東京都の社会的養護の現状」)




その中で、身近にサポートする人が足りていない子供たちに対して、3keysでは学習支援にフォーカスしています。しかしながら、子供たちが幼いころに身に付けるなければいけないことが身に付いていなかったり、愛情不足だったり、教養面なども足りていないので、問題は根深いです。

イケダ: 児童養護施設に来る子供たちは、基本的に親が子供を育てられなかったり、親と死別してしまったことなどが原因なんですか?

森山: そうですね。昔は親を亡くした子供たちが来ることが多かったんですが、現在では、施設に来る子供たちの95%には親がいます。しかし、その親が精神疾患だったり、虐待をしたり、また親自身も生活保護を受けているケースもあり、世代をまたぐ複雑な問題となっています。




18歳で「自立」を迫られる子どもたち




イケダ: 施設の子供たちは、18歳で施設から出て行くんですか?

森山: 基本的には、児童福祉法行政のもと18歳まで守られていますが、2年前くらい前に行政の方で、20歳まで延長してもいいということが通知されました。ただ、施設の方もいっぱいいっぱいなので、次の子供たちのために、できるだけ18歳で出ていくことが暗黙のルールになっています。

イケダ: 要するに18歳以上になったら、自立しなきゃいけないということなんですね。たとえば、勉強したい子供というのはどうなんでしょう。どうしても働きながら通える学校に進学するということになるのでしょうか?

森山: 進学の場合は、夜間になることが多いですね。施設の子供たちの8割が就職の選択肢をとっている状況で、基本的に働くことを選ぶ子供たちが多いです。親からの支援や奨学金の活用をもとに進学する子もいますが、まだ一握りしかいませんね。

また、意欲的に高校まで学習しようという子供たちの方が圧倒的に少ないです。中卒も2~3割ほどいますし、たとえ高校に進学したとしても、中退してしまうケースが多いです。





「共助」を取り戻すために



イケダ: 児童養護施設の子供たちに対して、3keysは学習支援をしていますよね。具体的にはどのようなことをやっているんですか?

森山: 基本的には学習支援が目的ではありません。昔の地域社会における、共助の文化が都心部では失われているので、それ別の形で再生できないかと考えて活動しています

私自身は両親が共働きだったこともあり、マンションのおばさんが夜遅くまで面倒を見てくれていました。そういうお金ではない、つながりが支えていた部分をもう一度取り戻していかないと、自己責任論になったり、社会保障が膨らむだけなんですよね。

私は、昔の地域社会でいう「おすそわけ」が「寄付」で、「助け合い」が「ボランティア」だと思っています。おすそわけをいただきながら、公助だけに頼らず、子供たちに最低限の支援をしていけたらと考えて、活動しているんです。

昔、地域の中でボランティアをやっていこともあるんですが、退職された教師を含む60~70代の方々が多く、大学生だとなかなか居づらかったり、子供たちが昔の常識で勉強を教えられたりしていました。

しかし、そこで活動している方々がいなくなった時に、若い人が参加していかないと、ますます共助がなくなっていくと感じたんです。そこで、大学在学中の2009年に、周りの大学生に声をかけて団体を作ったことが3keysのはじまりでした。

学生主体ということでSNSを活用したり、学生が参加しやすいこともあり活動が広がっていきました。一方で、学生の団体で心のケアまで行うのは行き過ぎとも考えていたので、現実的な子供たちに対する自立支援として「学習」にフォーカスしています。さらには、この問題に市民参加を促していかないと手遅れになってしまうとも感じています。




後編に続く



    このエントリーをはてなブックマークに追加




こんにちは、ビッグイシュー・オンライン編集部イケダです。現在発売中の226号より、オンライン編集部が気になった「読みどころ」をピックアップいたします。続きを読む
    このエントリーをはてなブックマークに追加




前編<「空(くう)」の思想:すべての世界を否定、すべてのものの価値を認める>を読む




「キリスト教はもともと個人の救済だけでなく、労働の意味を考えたり、他者に働きかけたりする意識が鮮明にありました。つまり、社会というものを意識していたんです。しかし、仏教は常に自己と世界の関係にかかわったために、自分と同じ人間が社会をつくっているという観点が弱かったんです。

そのために、仏教的な自己否定の考え方は現実社会における経済的、政治的なガイドラインを生み出すことができず、インドから追い出され、その後もさまざまな国に伝播しましたが、厳しい運命をたどりました。仏教の『空』の歴史は、滅びの歴史ともいえるんです」




「空」の否定体験から見える、「世界の美」と「他者への慈悲」



あらゆる仏教思想の源となりながら、その歴史の中でいつしか影を潜めていった「空」の思想は、今や一般社会はおろか仏教界においてさえマイノリティーな存在となった。

立川さんは、その「空」の思想がたどった足跡を求めて仏教2000年の歴史を遡り、長い過去のトンネルから返ってきた時、「マックス・ウェーバーの理論について考えるようになった」と話す。




マックス・ウェーバーの理論とは、営利の追求を敵視していたはずのプロテスタントの倫理が、実は近代の資本主義の誕生に大きく貢献していたことを解き明かした研究のことである。

キリスト教、特にプロテスタンティズムは、ぜいたくや怠惰などを否定的にとらえ、労働に励むことが神のおぼし召しにかなうことだ、と考えた。その禁欲的態度こそが近代合理主義を形成し、蓄財を奨励し、現代につながる資本主義を成立させる精神的起動力となったのである。





「現代に生きる私たちは産業を興し、財を蓄積し、自由競争すれば、個人同士は競争していても結局は世界がうまく収まると考えています。マルクスでさえ、資本家が搾取しなければ、生産によって人びとの生活は楽になると考えた。

でも、今日のグローバライゼーションや地球環境問題を考えた時、その楽観主義はもう通用しないのではないかと思うんです。自然科学の技術を含めた生産形態は、私たちの手によって制御される必要があり、これまで利潤をいかに合理的にあげていくかと考えて積み上げてきた知恵を、今度は欲望を制御する方向に用いるべきではないかと思うのです」




仏教は、伝統的に人間の行為や煩悩、業といった欲望を否定することを教えてきた。その否定の典型的なあり方が「空」の思想だった。立川さんは、この「空」の思想に、今こそ世界に向けてメッセージを発信できる何かがあると感じている、と言う。

「『空』は、神の存在を認めていないにもかかわらず宗教たりえている。根本原理からすべてを導き出すという発想がないところに私は『空』の可能性を感じるんです。

すべての世界を否定して、その後の甦りによって、世界はもろもろのものが一つの原因から生じるのではなく、原因と結果によって成り立つものが寄り集まっていると考え、すべてのものの価値さえ認める。その世界のとらえ方や発想こそが、今の私たちに必要ではないかと思えるんです」




そして、否定は、人間に欲望を抑え我慢することだけを教えるわけではない。「空」による否定は、人間にとっての聖なるものの提示、美と崇高なるものの尊さを教え、感じさせていると立川さんは言う。

「『空』の否定体験を経て、新しく世界をとらえ直してきた人は、世界は美しく、かけがえのないものであるという畏敬の念を感じ、人の命の尊さを実感している。そして、その美と崇高なるものを実感した時、人は自己の精神的救済だけでなく、他者に向けて動き出すんです。そこにあるのは、他者を慈しみ、悲しみを取り除こうとする慈悲なんです」

(稗田和博)
Photo:伊藤卓哉




立川武蔵(たちかわ・むさし)
1942年、名古屋生まれ。名古屋大学文学部卒業後、ハーバード大学大学院でPh.D取得。名古屋大学教授を経て、現在、愛知学院大学文学部教授、国立民族学博物館名誉教授。著書に、『中論の思想』『西蔵仏教宗義研究(第1・5巻)』『日本仏教の思想』『空の思想史』などがある。
※肩書きは取材当時








ビッグイシューをいいね!で応援!

https://www.facebook.com/bigissue.jp" data-hide-cover="false" data-show-facepile="true" data-show-posts="false">


最新情報をお届けします

無料メルマガ登録で「ビッグイシュー日本版」創刊号PDFをプレゼント!



過去記事を検索して読む


ビッグイシューについて

top_main

ビッグイシューは1991年ロンドンで生まれ、日本では2003年9月に創刊したストリートペーパーです。

ビッグイシューはホームレスの人々の「救済」ではなく、「仕事」を提供し自立を応援するビジネスです。1冊350円の雑誌を売ると半分以上の180円が彼らの収入となります。

    このエントリーをはてなブックマークに追加


11月1日発売のビッグイシュー日本版226号のご紹介です。



スペシャルインタビュー ポール・マッカートニー


11年ぶりの来日コンサートが迫るポール・マッカートニー。70歳になった今、ますます精力的にライブをこなしています。英ビッグイシューの取材に応じ、ビートルズメンバーとの思い出や、変わらない音楽への情熱を語ります。



リレーインタビュー 私の分岐点 番外編
『アプロポ』編集長ミカエラ・グリュンドゥラーさん


今回のリレーインタビューは番外編。モーツァルト生誕の地・ザルツブルクで販売されているストリート・マガジン『アプロポ』に14年間携わっててきたミカエラさんに話を聞きました。自身の生い立ちや販売者さんとの思い出、夢を語ります。



連続企画 堤未果さんに聞く貧困大国アメリカ その①
―進行する「フードスタンプ」。米国企業による巨大支配


2001年の同時多発テロ後、変節する米国に危機感を抱いた堤未果さんは、長年住んでいた米国から帰国し、ジャーナリストに転職。『ルポ 貧困大国アメリカ』『ルポ 貧困大国アメリカⅡ』『(株)貧困大国アメリカ』を次々に執筆しました。その間10余年、執筆を通して見えてきたことを、3回シリーズで伺います。一回目のテーマは「食と農業」です。



特集 ただ触れ合う―皮膚から見える世界


江戸期、貝原益軒の『養生訓』によると、身体に異変があったときには、まずマッサージをしたといいます。江戸まで時代を遡らずとも、つらいとき・かなしいとき、100の言葉よりもただ背中をさする手が心をほぐしてくれるのは、誰しも体験のあることでしょう。先が見えない現代社会で心身に不調を訴える人が多いが、いま私たちに必要なのは、医療やカウンセラーだけではなく、ただ「触れ合う」ことではないでしょうか。
振付家の近藤良平さんには、「触れ合うコミュニケーション」についてお話を伺い、『手の治癒力』などの著書のある山口創さん(桜美林大学准教授)には、「触れ合いで取り戻す心と身体のバランス」を、またNPO法人「タッチケア支援センター」代表の中川玲子さんには、いつでもだれでも始められるタッチケアを教えていただきました。
この秋、あなたの皮膚が、新たな世界を拓きます!



ビッグイシュー・アイ 棒人間、日本に再上陸!


223号に登場のStikさんが日本に帰ってきた!ビッグイシュー大阪&東京事務所を訪れた際のサイン会や、大阪・難波&京都・西院でのライブペインティングの様子をレポート!



この他にも、「ホームレス人生相談」やオンラインでは掲載していない各種連載などもりだくさんです。詳しくはこちらのページをごらんください。

最新号は、ぜひお近くの販売者からお求めください。
販売場所検索はこちらです。


    このエントリーをはてなブックマークに追加


(2008年1月1日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 86号より)

今、「空(くう)」の思想:すべての世界を否定、すべてのものの価値を認める


インド仏教が生んだ「空の思想」は、この世にあるものすべては存在しない、と考える。
神も世界も私すらも実在しないという「空」とは、いったい何か? そして空の思想は現代の私たちに何を語りかけるのか。『空の思想史』の著者である立川武蔵さんに聞いた。
続きを読む
    このエントリーをはてなブックマークに追加





ホームレスワールドカップの精神



ホームレスワールドカップに7年前関与しはじめたダニエール・バティストさんは、このイベントにすっかり魅了されてしまった。企画者の使命感、試合の精神、そして何よりも参加選手たちの勇気に惹かれ、世界中でこの驚異的なトーナメントを取材し続けている。

著者:ダニエール・バティス










ナミビア砂漠の端のとある砂場で、私ははじめてストリートサッカーのパワーを目撃した。2006年、猛暑のなかで8人の男の子がボールを追いかけていた。サッカーピッチは、空気でふくらませた大きなチューブで正方形をくぎり、二つのゴールポストが作ってあった。観客があまりいないことにも選手たちは気付く様子もない。選手たちは命が懸かっているかのように試合に没頭していたが、実際、それは真実でもあった。試合後に推薦された選手はその年にケープタウンで開催されるホームレスワールドカップで国の代表となる機会を得るからだ。




その翌年の2007年に、地球の反対側、デンマークのコペンハーゲンで開催されたホームレスワールドカップで、私はナミビアのコーチ、ベスエルさんと再開した。選手たちのトーナメントへの参加は一回に限定されているため、今回は新しい顔ぶれのチームを連れて来ていた。しかし、世界中でホームレスが増加しているなか、コーチがたくさんの候補者の中から代表となる選手を選べるというのは、悲しい現実でもある。




ホームレスワールドカップの規定には次のように記されている。

選手は過去2年の間にホームレスの経験、難民経験、もしくは一時的住宅や仮設シェルターに住んだ経験のある者が対象となる。各チームが抱える問題は多様であり少しづつ違う。ホームレスの定義は世界一様でない。貧困、失業、麻薬やアルコールへの依存、借金、精神病、刑事司法制度や、家族の崩壊などが個人の人生にそれぞれ影響をもたらしている。




物理的な面でも、トーナメントは様々な相違点を炙り出す。企業の社会的責任プログラム(Corporate Social Responsibility Programme – CSR)を通し、Nikeが寄付した新品のサッカーシューズを履きながら試合に苦戦する初期のナミビアンチームを私は今でも忘れられることができない。技術力の高いこの少年たちの実力が突然消えてしまったように見えたとき、その理由に気がつくまでにはそのときは少し時間が必要だった。彼らは裸足での試合のほうが慣れていた。




一方、共通点もあった。2008年にアフリカから英国のウェールズに引っ越したとき、一時の敗北にめげず必死に士気を貫き続ける光景を目にした。それは、私がそれまでストリートサッカーのフィールドで何度も目にしてきたものと同じだった。

来る年来る年、リオ・デ・ジャネイロや、パリ、メキシコ・シティーと毎年開催された試合を追いながら、このホームレスワールドカップへの出場を通じて変わった人生があるという証をたくさん見てきた。




2008年にミラノで開催されたホームレスワールドカップで、ウェールズ代表チームである「ウェルシュ・ドラゴンズ」がサッカーフィールドに登場したときの選手たちの誇らしげな表情は、私がよく知っているナミビア代表の男の子たちの顔をまるで鏡に映したかのようにそっくりだった。

その一週間、私は彼らに密着取材をし、代表チームの鮮やかな赤いサッカーユニフォームを身につける度に、選手たちの自信が育っていく様子を目の当たりにした。

そんな訳で、今年、2013年8月にポーランド、ポズナンで開催された第11回ホームレスワールドカップのオープニング・パレードで、元ウェルシュ‘09のチーム所属だったダイとテリーの二人に遭遇したときの私の喜びは想像がつくのではないだろうか。

ダイはウェールズ初の女子チームのコーチを務めていて、テリーは男子チームのアシスタントコーチになっていた。私が昔撮ったダイのウェルシュジャージ姿の写真をフェイスブックのプロフィール写真として使っていると、彼は得意げに話してくれた。




「(大会を終えて)ここに再び戻って来た後も、ぼくらはいつでも互いに助け合うでしょう」と2009年にテリーは私に話してくれた。礼儀正しいが誇りを隠さない微笑みを浮かべながら、テリーは私たちが最後に会ったときからの彼の進歩について語ってくれた。彼は社会的包摂について勉強をするため大学に入学し、家族と再度連絡も取るようになった。そして、ボランティアとして務めた数年後に、ずっと夢だったサポートワーカーとしての仕事を「ストリート・フットボール・ウェールズ」で得た。

イタリア大会の会場の観客席でダイをインタビューをしたとき、彼はまだ20歳だった。しかしすでにホームレス状態を経験していて、サッカーに出会うまでは生きる目的を見失っていた。「故郷に帰ったら仕事を見つけて、人生をやり直したい」、と彼はミラノで語っていた。その4年後、彼は自らの目的を達成しただけでなく、今では他の人が自分と同じようにできるようサポートを続けている。




ホームレスワールドカップとは;
・サッカーの力でホームレスの人々を力づけ、自らの力で自分の生活を改善できるようにする。
・70の国々にいるパートナーとのネットワークを通し、グラスルーツのサッカープログラムや社会的企業の育成を支援し、毎年世界大会を開催することで、その活動を祝い、スポットライトをあてる。
・2012年には、10万人以上のホームレス経験者がこのプログラムに参加。
・2003年から毎年開催。
・2014年はチリで開催予定。2015年はアムステルダム。
・人生を変える力がある:参加者の70%は、参加後のアンケートに、生活が大きく改善されたと答えている。麻薬やアルコール依存からの離脱や、仕事や住宅、教育や訓練を得た人もいれば、中にはサッカー選手やコーチ、社会起業家になった人もいる。




Poznan 2013 - Homeless World Cup


    このエントリーをはてなブックマークに追加





120人生相談



悩みやすく、不安だらけ負の連鎖から抜け出すには?




悩みやすい性格で、人生のさまざまなことで自分の弱さを感じ、自分に自信がもてません。というのも、思春期の時にニキビがひどくて自己嫌悪になり、衝動的に部活を辞めてしまいました。

その引け目から人間関係は希薄で恋愛もできず。勉強も楽な方へ流れ、それほどこだわりのない大学に進みましたが、孤独で成長することなく、ただ日々をだらだらと生きています。最近はそんな自分を変えようと行動を起こし始めていますが、一寸先は闇で不安です。こんな負の連鎖から抜け出すにはどうしたらいいでしょうか?
(男性/大学生/19歳)






時代が悪いって言ったら、それまでやけどね。

僕なんかね今71歳で、戦前戦後に育ったでしょ。あの時代は、その日、その日の食べることが第一。何もないかわりに、劣等感みたいなのもなかった。年を取ると、酸いも甘いも咀嚼して、悪い時代でも前向きに頑張れるところがありますけどね。若いとどうしても迷いがある。でも、これだけ悩んだら、気の毒やな。

そうやね。将来のことや難しい問題に取り組むよりも、まずは今日1日を精いっぱい生きる。それから、自分を変えようとか、たいそうな行動を起こそうとするんじゃなしに、人に優しくするぐらいのことから、始めてみてはどうでしょうかね。色恋ではなしに、人を愛すること。動物でもそうでしょ。犬が嫌いな人には、噛みつきよるでしょう(笑)。

僕がここに立っているとね、道を尋ねてくる人がおる。その時に丁重に教えてあげるんです。教えてあげても、本を買ってくれることなんてないんですよ。帰り際に、「ちゃんと行けました」って、頭を下げてくれたり、「ありがとう」って、買うてくれたりするのは、10人に1人ですわ。

ところが不思議なことに、誰も僕のことを見てないはずないのにね。その後は、たくさん売れるんです。人に働きかけると、結局、まわりまわって、かならず返ってきますわ。この人が言うように、人生はいいことより、嫌なことの方が多い。僕が今こうして生きてるのも、いろんな人に生かされてるねんな。

ここにいてたら、応援や励ましをたくさんいただきます。昔の知り合いも、訪ねて来てくれたりもします。うれしいね。なんぼ貧乏してても、お金がなかろうと、人は財産やし、それで自然と道が開けてくるんですわ。

「一日一善」っていうのは、ええ言葉ですな。人が落とした煙草を拾って、きれいにしたりね。何をしろって、押しつけるのでもなく、そういう心がけが、この人の状況を好転させてくれるんじゃないやろかな。

(大阪/Mさん)





(THE BIG ISSUE JAPAN 第119号より)







    このエントリーをはてなブックマークに追加




Genpatsu


(2013年10月1日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 225号より)






「危険、ゼロにはできない」 福島事故が変えた米国の原発政策





9月23日に「福島原発事故の米国への影響」と題する講演会を主催した。講師は、米国から都市計画が専門のトーガン・ジョンソンさんと、米国原子力規制委員会・前委員長のグレゴリー・ヤツコさん。

トーガンさんは、カリフォルニア州内の多くの自治体から同州のサンオノフレ原発の再稼働を認めない自治体決定を引き出すのに貢献した人だ。福島原発事故で放出されたヨウ素が米国西海岸にまで達したことに大きな衝撃を受け、地元にある原発のことを調べるようになったという。さらにいろいろな人たちと情報を交換し議論するサンディエゴフォーラムを立ち上げた。




福島事故を見ながら、仮に、地元の原発で事故が起きたら、どのような被害がもたらされるのか?

土地の汚染によって、長期にわたる避難や健康影響への対応が必要になり、住めない町では住宅価格がゼロになる。農漁業のみならず、商工業も成立しなくなる。そういったさまざまな損失を、それぞれの分野の専門家に算出してもらった。

たとえば、住宅の損害だけでも43兆円に達するのに対して、米国の法律による賠償上限額は1兆2600億円しかない。そして、万が一の事故によるそれらの損害は誰が払うか? 結局は消費者である私たちだと訴えたという。




原発の安全を強化して福島のような事故が起きなければ、それらの試算は杞憂に終わるのだが、果たして二度と起きないと言えるのだろうか? 

事故当時、米国原子力規制委員会の委員長だったグレゴリー・ヤツコさんは、福島事故後に地震や津波を含む12項目の安全強化策を米国原発に導入した。それは重要なことではあるが、しかし、彼はそれでも「大事故の危険をゼロにはできない」と明言した。

サンディエゴフォーラムには、福島原発事故の時に総理だった菅直人氏も参加した。結局、大事故が起きた時の損害は物心両面にわたって甚大だ。このことを考えると原発から撤退して、新しい発電方法を考えた方がよいというのがフォーラムの結論だった。そして、サンオノフレ原発は廃炉となった。

翻って、安倍政権は、動かせない福島第一原発2基の廃止要請をしつつ、原発の再稼働を目指している。大事故時の多方面に及ぶ災害の大きさを、今いちど考えてみたい。





伴 英幸(ばん・ひでゆき)

1951年、三重県生まれ。原子力資料情報室共同代表・事務局長。79年のスリーマイル島原発事故をきっかけとして、脱原発の市民運動などにかかわる。89年脱原発法制定運動の事務局を担当し、90年より原子力資料情報室のスタッフとなる。著書『原子力政策大綱批判』(七つ森書館、2006年)








    このエントリーをはてなブックマークに追加





前編を読む





スクリーンショット 2013 10 19 15 58 04






心の病に対する、根強い偏見



イケダ: Light Ring.は「悩みを抱えている方」のサポートも実施していると聞いています。これまであった相談のなかで、驚いたようなエピソードはありますか?

石井: たくさんあります。例えば、病院に行ったことを友だちに伝えたら、イジメにあったという相談もありましたし、お父さんがメンタルヘルスの悩みを抱えていることから、ご父兄からの偏見が生まれたようなケースもありました。

イケダ: なるほど、むずかしい話ですね…。こういった問題の根底には無理解ということもあると思いますが、偏見についてはどう思われますか?

石井: 仕方のない面もあると思っています。もちろん、経験していないことを知ることは難しいですが、違う人間として切り離してしまうのは、人間関係という資源から自分からなくしてしまっているので、もったいないなとは思います。

実際、うつやメンタルに問題を抱えていても、社会で活躍している人もいるので、お互いに人間関係を持つことは、偏見した方された方の双方にとっていいことだと思います。




うつ病になりやすい人は、どんな人?



イケダ: こうして色々な方と触れられていて、うつ病など、メンタルに問題を抱えてしまう人には、何か共通点は感じたりするものなのでしょうか?

石井: 「真面目な人」というのは良く言われますね。あとは、完璧主義な人や何でもうまくやりたい人です。このような人は、本音の自分を誰にもに見せることができなくなる傾向にあると言われています。

イケダ: これはぼく自身、長年の疑問なんですが、何でそういう人は失敗を恐れているのでしょうね…? 失敗を恐れる人と、そうではない人の境界線って、どこにあるとお考えですか? とても抽象的な質問ですが…。

石井: うまくやらなきゃいけないというのは、幼少時代から成績で人が見られていたことも要因としてあります。また、真面目でいることとふざけることのどちらも大事なんですが、そう思える人と思えない人でわかれてきます。

具体的にこの人だけが認めてくれるという人がいれば、ふざけた一面も見せることができる一方で、そういう人がいないと、表向きにキャラクターをつくってしまい、メンタルの部分に問題が出てきてしまうんです。

イケダ: 普段は社交的な人でも、メンタルに問題を抱えている人もいるかもしれないですよね。

石井: 明るくて、"まさかこの人が"という人もなってしまっている事例もあります。自分が苦しんでいることに気付いていなかったり、隠すのがうまいかったりするんですよね。そこで、周囲の人が「苦しいって言っていいんだよ」「休んでいいんだよ」ということを教えてあげることが大事になってきます。

イケダ: そういう人には、「逃げていいよ」って言われると、救いになりそうですよね。実際にLight Ring.では、「ソーシャル・サポート力養成講座」という活動を行っていますが、具体的にどのようなスキルを育んでいるんですか?




「ソーシャル・サポート力」とは



石井: ソーシャル・サポート力養成講座で提供しているサポートは、大きく4つあります。それぞれ、共感や愛情を届ける情緒的サポート、形あるものやサービスを与える道具的サポート、問題解決に必要な情報提供をする情報的サポート、最後に効果的な自己評価を促す評価サポートです。

セルフチェック、"寄り添う"を定義すること、傾聴力を高める、専門機関につなげるということで、ソーシャル・サポート力養成講座というものを提供しています。

イケダ: "寄り添う"を定義するとは、具体的にどんな感じなのですか?

石井: "寄り添う"を定義すると聞くと難しいですが、利己的な寄り添うではなくて、本質的な意味で寄り添うことが本当にできていますか、ということをセルフチェックし、話し合いながら、自分なりの"寄り添う"を定義していきます。

イケダ: なるほど、寄り添うということについて、もう一度深く考える機会を与えるわけですね。もうひとつ、「傾聴力」は具体的にどのようなことなのですか?

石井: まず、傾聴力と一言で言っても、24のスキルがあります。視線、目線、姿勢、相槌、質問、繰り返しの5要素をベースとしながら、相手が聞きやすくなるような聞き方を学んでいきます。




「心の病の予防」を切り口にしたソーシャルビジネスへ



イケダ: 今は、悩んでいる人を支援する人をサポートしている活動を行っていますが、これからの展望についてもぜひ聞かせてください。

石井: いまは支える人をサポートすることを中心にしています。これはまだ民間サービスとしてスタートしたばかりで、これから自治体や企業内の同僚支援などにもつながるのではないかと考えています。環境設計に生かすモデルも展開したい。

イケダ: そうなると、企業のプログラム導入についてはお金をもらって行う、いわゆる「ソーシャルビジネス(社会的企業)」のような形になるんでしょうか?

石井: そうですね。企業の導入していただいて、社員の方のセルフケアや同僚同士のサポートができるようになるまで支援する形を考えています。現在は寄付で団体の活動が成り立っていますが、今後は事業収入が5割くらいを目標にして、企業とのコラボレーションや20代ではなくて、親世代のスキルアップなどの支援なども展開していけたらと思っています。




イケダ: 最後に、何か伝えたいことはありますか?

石井: 夜に眠れなかったり、夜中に甘いものを食べたりすることなどもメンタルヘルスの兆候になるので、周囲を見渡してみると異変に気付くことができるかもしれません。そのような中で、周囲の人としてアプローチできる人が増えていくことで、この社会問題の解決も見えてくるのではないかと思います。






石井綾華(いしい・あやか)

特別非営利活動法人Light Ring.(ライトリング)代表理事。1989年生まれ。小学5年のとき摂食障害を発症し入院するが、家族や学校の先生、友人たちの応援もあって克服。高校3年のときにアルコール依存症で父親を亡くす。「同じような辛い思いをする人を減らしたい」と、精神病患者を取り巻く社会の仕組みを学ぶため、2008年、大正大学人間学部人間福祉学科社会福祉学専攻に入学。2010年「こころの病予防プロジェクトa.light」を立ち上げ、居場所に興味のある若者が自由に過ごせる場を提供する「Co-Freetime」やメンタルヘルスを楽しみながら学ぶイベントなどを開催。2012年、『特別非営利活動法人Light Ring.』を設立する。






会場提供:講談社「現代ビジネス」
取材協力:徳瑠里香さん、佐藤慶一さん





『ビッグイシュー日本版』関連記事バックナンバー
路上にて、販売者にバックナンバーの在庫をお問い合わせください。
手元にない場合は、次回までに仕入れてご用意が可能です。

323号 “うつ”を抜く
323_01s

今、うつ病の人は20人に1人。6〜7人に1人が一生に一度、うつ病にかかるとも言われる。

https://www.bigissue.jp/backnumber/323/




ぜひ路上でお求めください。
ビッグイシュー日本版の販売場所はこちらです。

バックナンバー3冊以上でしたら通信販売  も可能です。






過去記事を検索して読む


ビッグイシューについて

top_main

ビッグイシューは1991年ロンドンで生まれ、日本では2003年9月に創刊したストリートペーパーです。

ビッグイシューはホームレスの人々の「救済」ではなく、「仕事」を提供し自立を応援するビジネスです。1冊350円の雑誌を売ると半分以上の180円が彼らの収入となります。


    このエントリーをはてなブックマークに追加

このページのトップヘ