(2010年4月15日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 第141号より)










西アフリカ農家、オーガニック製品へシフト




FAO(国際連合食糧農業機関)が、西アフリカ諸国の農家がオーガニックの製品を輸出するのを応援する240万ドル(約2億4千万円)規模の取り組みを始めた。ブルキナファソ、カメルーン、ガーナ、セネガル、シエラレオネの5000の農家が、オーガニック製品の基準に合う作物を育てようと奮闘している。

FAOによると、オーガニック製品やフェアトレードのマーケットは、向こう3年間で年10パーセントずつ成長するだろうといわれている。

FAOのパスカル・リゥは語る。「今までですとFAOから資金援助を受けていた農家も、今回のプロジェクトで、自尊心を刺激されるようです。というのも、これまでとは比較にならないほどいい価格で、世界に自分たちの製品を届けることができるからです」

FAOのコラ・ダンカーズによると、農家の人たちはこの仕組みのおかげで、輸入業者たちと契約について交渉できるようになったという。また、ガーナとカメルーンのパイナップル農家は世界的な不況にもかかわらず、輸出量を伸ばしているという。


(Sarah Taylor)


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(2009年12月15日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 第133号より)










ドイツ、市民菜園から食料援助




ドイツ国内には、約600のターフェル(Tafel/ドイツ語で「食卓」の意)と呼ばれるフードバンクが存在する。スーパーや食堂などから、まだ状態のいい食品を譲り受けて生活困窮者に配るNPOだ。

最近、ブランデンブルク州などのターフェルが始めた新しい試みが話題を呼んでいる。それは、使われなくなった市民菜園をターフェルが借り上げ、そこで育てた野菜や果物を困窮者に提供するというもの。

「新鮮な野菜や果物はなかなか手に入らなかったので、受給者にとても喜ばれています」と、ターフェルのスタッフ、グレイさんは語る。これらの市民菜園では、希望すれば受給者自身も働いて、食料生産に積極的にかかわることができるという。

ターフェルの食料を頼りとしている困窮者は国内で5年前には40万人だったが、今日では100万人に増加。ブランデンブルク州内の人口7万2500人の町ブランデンブルク・ハヴェルだけで、3000人が困窮者として登録されている。

(見市知/参照:Berliner Zeitung)


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(2009年10月1日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 第128号より)











中国、南京の歴史保護区でとまらない都市開発



三国志で有名な呉の孫権が都を置いた南京は、史跡が多く、中でも老城南(ラオチェンナン)という地域は南京の歴史文化発祥地とされ、2500年前の城跡など多数の遺跡が集中し、南京の伝統的風俗習慣もこの地に息づいているという。老城南は歴史保護区に指定されているが、今や高層ビルが建ち並び、歴史的価値の高い建物も商業施設や高級別荘に変わりつつある。

南京市は市民の生活を守るためとして06年に違法建築物と危険家屋の撤去を開始した。しかし実際は、不動産業者と地方政府が結託して古い住宅の住民を立ち退かせ、そこに商業施設等が建設されている。安い補償費で立ち退かせ、高利益を生む施設を作る。立ち退きに応じなければ嫌がらせをして追い出す。

開発に反対する学者たちは既に意見書を数回提出しているが、開発は止まらない。温家宝首相も撤去を一時中止するように二度も指示したが、立ち退きの強要は一向に減らない。古い街並で営まれてきた庶民の生活文化は消えつつある。

(森若裕子/参照:亜洲週刊、南京日報、新京報)


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Genpatsu

(2012年7月1日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 194号より)




福島第一原発では大きなトラブルは報告されていないが、小さなトラブルが多発している。そんな中で、夏を直前にして行っている工事がある。冷凍機の設置だ。気温の高い夏場の冷却不足を懸念してのことだ。冷却不足には注水を増やせばよさそうに思うが、それは地下水の汚染につながりかねない。建物から漏れ出ることのないようにギリギリの水位を保っているのだ。注水を増やせないので、水を冷やそうというわけだ。爆発した福島原発の後始末はまだまだ紆余曲折しそうだ。

増える一方の後始末費用を、果たして東電は負担しきれるのか。今回の家庭用電気料金の10パーセントを少し超える値上げ申請に対して、もっと利益を減らすべき、人件費が高すぎるなど、批判が相次いでいる。了解できる値上げか、二つの委員会で激論が続いている。一つは経済産業省の電気料金審議専門委員会で、もう一つは内閣府の消費者委員会である。

先に企業向けの料金を17パーセント値上げすることにも大反対が続いている。東京都病院協会は値上げ分を払わない方針を表明、参加病院のうちの大半の260病院が賛同している。診療報酬が決められており、電気料金の値上げ分を上乗せできないからだ。

企業向け電力は自由化された分野で、値上げは企業の合意が得られればそれでよい。他の電力会社との契約も自由だ。立川市や世田谷区など脱東電が進んでいる。他方、家庭用電力の自由化は検討されている最中だ。電力の自由化が進めば、私たちは自分たちの望む電力会社と契約できるようになり、風力発電会社などが設立されるようになるだろう。今は、値上げには政府の許可が必要だ。

値上げ申請では、東電は福島第一原発と第二原発を資産から除外した。しかし、10基のうち6基分の減価償却費と維持費の合計900億円を経費に加えている。資産から外したのなら減価償却は必要ないはずだ。おかしなことをしている。また、柏崎刈羽原発の運転再開も前提としている。

このような小ざかしいことをするよりも、5兆円といわれる送電部門を売却して、その費用で住民への損害賠償などに充てるべきではないか。






伴 英幸(ばん・ひでゆき)

1951年、三重県生まれ。原子力資料情報室共同代表・事務局長。79年のスリーマイル島原発事故をきっかけとして、脱原発の市民運動などにかかわる。89年脱原発法制定運動の事務局を担当し、90年より原子力資料情報室のスタッフとなる。著書『原子力政策大綱批判』(七つ森書館、2006年)






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遺したいもの。アーティストとしての着地に向けて作品をつくる



映像と音楽を自在に組み合わせてつくる独自の世界。
この秋は初のピアノソロコンサートに挑む。






MG 6833
( 高木正勝さん)





すべてを越え共感できる普遍性、世界で10人のクリエーターに



非常に現代的、いや未来的にさえ感じる一方で、とても根源的で本質的な世界に誘われてしまう不思議。高木正勝さんの手から生まれる映像や音楽は、電子的なのに温かく、先端を行くのに懐かしい。ビデオカメラを片手に世界各地の風景を写した映像は、光や風、空気などその風景の中に感じ取った「色」が加工によって再現され、その「色」を補完する音楽と組み合わされていく。




「家の周辺には緑が多いんですよ。制作がはかどらなくて気分転換したい時には、本を読んだり、外に出て昆虫採集をしたり、山の中を歩いたり。ヒントを探そうと思ってそうしているわけではないんだけど、得たインスピレーションは曲をつくっている時に知らぬ間につながって、自然と組み込まれていたりしますね」





06年には世界最大級の映像フェスティバル「RESFEST」が選ぶ「世界の10人のクリエイター」に、09年には『NEWS WEEK』の特集「世界が尊敬する日本人100人」にも選ばれた。時代も国も言語も越えて、観る人、聴く人が共感、共有できる普遍性が、高木さんの作品にはある。

「ピアノを習い始めた中学生の頃に観た映画『ピアノ・レッスン』の中で、主人公がほんの10秒ほどスコットランドの民謡を元にした曲を弾くシーンがあるんです。民俗音楽とピアノが組み合わさった、なんともいえない魅力に驚いて……。日本の民謡もピアノの音に乗せたらどんなふうになるだろう、聴いてみたい、つくりたいとずっと思ってきたんですよ」





音楽、その始まりは自然や宇宙と話す方法だった




TakagiM HK


この秋、初のピアノソロコンサートツアーが幕を開ける。取材日の時点では「まだ曲が1曲も決まっていなくて」ということだったが、「イメージは、お母さんの子宮の中にいる時の感じかな。胎内で聞こえる音、見えるもの、そういうものを表現できれば」と思っている。

さかのぼって、08年の公演「Tai Rei Tei Rio(タイ・レイ・タイ・リオ)」は、そもそも音楽とは何だろうというところから、太古に生きた人々が初めて奏でた音を探り、今へと受け継がれている「大いなる流れ」に触れようと挑んだものだった。

「山とか海とか、自然や宇宙、人間ではないものとのかかわり、圧倒的な強さをもったものを表現したいと思って取り組んだプロジェクト。今の時点で思うのは、そういった人間でないもの、絶対に話すことのできない対象と話すためのコミュニケーション方法が音楽の始まりだったのかな、と。そう考えるようになってから、僕自身のピアノの弾き方や音楽の聴き方も変わりました」


この公演では9人のミュージシャンと共演。バイオリニストには「どう演奏してもいい。でも、想像してほしい。そこで焚火を囲んでおばあちゃんが子どもたちに昔話をしている。そのおばあちゃんの声が、バイオリンの音だとしたらどんな感じやろう?」と話し、イメージを共有した。




そして、今回のピアノソロコンサートでは「Tai Rei Tei Rio」ではできなかったことに挑戦したいという。

「ピアノ1台で、お母さんと子どもという小さくて身近な関係性を表現したい。たとえば、子守唄や鼻歌のように、穏やかで静かで、何でもないところにあるもの。子守唄って、メロディーや歌詞を単純に奏でるのと、子どもに対して歌うのとでは異なるものですよね。胎内で聞く、母が子のために歌う子守唄。それをどう表現するか。極端に言えば、ドレミファソラシドだけを弾いて、それが伝わるピアノを弾きたいし、僕も聴きたい(笑)」





そんな高木さんにとって、舞台のイメージとは?

「フィギュアスケートの浅田真央さんに、とっても共感するんです。リンク上ですることは決まっているんだけれど、この1試合はジャンプにこだわるのか、演技で魅せるのか、何に挑戦して何を達成したいのか。僕にとっての舞台も、それと同じ」





デビューから10年。今後について尋ねてみると、意外な答えが返ってきた。

「アーティストとしての着地のことを考えています。着地って跳ぶことよりも難しいし、その年齢も人それぞれでいいと思う。僕は今、着地に向けて遺作に取り組んでいるような感覚かな。これまでのようにつくりたいものをつくるのではなく、遺したいものをつくるという、そんな心境なんです」



(松岡理絵)




高木正勝(たかぎ・まさかつ)
1979年、京都府生まれ。中学・高校時代にピアノを習い、学生時代に映像を撮り始める。01年にCD『pia』を米国でリリース後、国内外のレーベルからもCDやDVDをリリース。アートスペースでのインスタレーション、ライブも多数。デヴィッド・シルヴィアンのワールドツアーの参加、UAのミュージックビデオ制作ほか活動は多岐にわたる。
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ビッグイシューは1991年ロンドンで生まれ、日本では2003年9月に創刊したストリートペーパーです。

ビッグイシューはホームレスの人々の「救済」ではなく、「仕事」を提供し自立を応援するビジネスです。1冊350円の雑誌を売ると半分以上の180円が彼らの収入となります。

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(2012年2月1日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 第184号より「ともに生きよう!東日本 レポート20」)





「除染作業」で人は再び住めるのか?



大型の重機が、人影のない水田や畑で音を立てて動き、汚染された土を詰め込んだ黒い大型のバッグ「フレキシブルコンテナバッグ」(フレコンバッグ)が次々と並んでいく。周囲では、白い防護服、顔にはプラスチックの全面マスクを着けた作業員が慌ただしく動いている。




10 作業員写真
(汚染土砂が入ったバッグを設置する作業員)




ここは、メルトダウンを起こした福島第一原発から1・5キロほどの大熊町夫沢地区。震災後、県内各地で住民や自治体により除染作業が行われてきたが、原発20キロ圏内の「警戒区域」や、線量の高い「計画的避難区域」を国が除染することが決まった。本格的な国の除染開始を前に、効果的な除染や実際の費用と成果、作業者の被曝対策など、広く除染の進め方を決めるための「除染モデル実証事業」が、独立行政法人日本原子力研究開発機構福島技術本部(JAEA)に委託して行われている。2月9日、報道関係者にその様子が公開された。

JAEAが国から事業を受託し、大手ゼネコンJV(共同企業体)に委託。大成建設JVと、大林組JVが各32億、鹿島建設JVが17億でそれぞれ受託した。JAEAはさらに、除染技術に関する実証事業も国から受託、建設業者や研究所など25社に委託しており、除染モデル実証事業は総額約100億円の高額予算で行われている。

実際の作業は、高圧洗浄水で建物やコンクリートを洗い流したり、汚染された土や草木の除去などが中心。重機も入るが、実際の細かな作業は、人の手で行われているのが現実だ。作業は終盤に入っており、この日は除染が進んだ地域や山林の様子、フレコンバッグを仮置き場に置く様子などが公開された。

民家のすぐ裏山で行われた除染作業。山林の向こうに福島第一原発の煙突が見える。震災直後は毎時200マイクロシーベルト程度、除染作業直前は100マイクロシーベルトだったのが、下草刈りや土の除去作業後は50~70マイクロシーベルトまで低減した。しかし、高線量は依然続いている。JAEAは木の枝葉の切り落としなどを検討しているが、中山真一同本部副本部長は「山林、水田の除染は本当に難しい。木を切り、土を削って、森林の保水性を壊してもいいのか、という問題も残る」と話す。




10 除染後写真
(公開された除染後の山林)





本当に効果的な除染とは何か。そしてそもそも、作業員が被曝しながら進める除染作業が必要なのか。仮に除染後、いったんは線量が下がっても、住民が再び住んで安全なのかどうか。100億円除染モデル実証事業の結果は?
(文と写真 藍原寛子)
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(2010年10月15日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 第153号より)




渾身のストップモーションアニメ。毎日12時間、8年かけた制作




人間を好きになってしまった電信柱の恋を描く『電信柱エレミの恋』。
映像に映る造形物すべてを手作りで制作した、45分全編ストップモーションアニメ。






Profiel hosei
(中田秀人監督)





完成した時、宇宙船の旅から帰ってきたようだった



Elemi3

©SOVAT THEATER





制作秘話を聞いているだけで、気が遠くなってくる。人形を少しずつ動かしながら、コマ撮りで映像を撮影していくストップモーションアニメ。わずか1秒の映像を撮影するのに、キャラクターを平均6回以上動かし、細かいところでは実に30回も動かした。撮影前の表情の調整だけで数時間、丸一日撮影しても数秒撮るのがやっと。最も長いシーンでは、連続18時間撮影し続けたという。「人形は表情や関節だけでなく、服のシワまで微妙に動くので、一度撮影し始めたら、途中で終われないんです。トイレに行く以外はずっと同じ姿勢で、スタッフと二人でひたすら人形を動かした」と中田さん。




撮影以上に労力を使ったのが、造形物の制作だ。作品に登場する数々のキャラクターや背景となる昭和の町並み、アパートの部屋の細かな描写に至るまで、すべての造形物を一つずつ手づくりで制作したという。

「たとえば、人形の洋服なら、イメージに合った布を探し、なければ靴下や古着の裏地など身の回りにあるもので試していく。人形の顔など動く部分はプラスチック粘土ですけど、それ以外は木や発泡スチロール、樹脂、紙粘土、アルミ、鉄など、表現に合った素材を選んで一つひとつ制作しました」




Scene





緻密でリアルな町並みは、イメージデザインを描き、それに近い町並みを歩いて探し、実写とデザインを組み合わせて架空の町を作り上げた。また、効果音も町中で採録したり、棒に布を巻いたものを叩いて鳥の羽ばたく音にするなど、すべてが独自のアイディアによるもの。




制作期間は、実に8年。造形技師の仲間3人と交代で毎日12時間フルに作業しても、それだけの歳月が必要だった。「一つとして同じ作業はないので、毎日大変で、毎日難しかった。完成した時は、4人で宇宙船の旅から帰ってきたようだった」

そうして完成した映画は、自主制作フィルムとしては異例のロードショーが実現し、今年、第13回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門優秀賞を受賞。さらに、手塚治虫や宮崎駿などが歴代受賞者に名を連ねる、国内のアニメ映画賞では最も歴史と権威のある第64回毎日映画コンクールアニメーション賞大藤信郎賞を受賞。立体アニメ表現の完成度に対して満場一致という高い評価を受けた。




小さなものでいいから、何年も人の記憶に残る作品をつくりたい



ストップモーションアニメに魅せられたのは学生時代。ヨーロッパのアートアニメを観て衝撃を受けた。「学生の自主映画だと、有名な俳優は使えないし、大きなセットもつくれない。でも、これなら一つの画面を自分が納得できるまで思う存分つくれると思った」




アニメや造形制作については、中田さんをはじめ4人とも完全な独学。日々の制作と失敗を繰り返す中で、独自のノウハウを積み上げてきた。

「造形物を置いて、アングルを決め、その空間を撮ることに自分たちの喜びがある。ものすごく手間はかかるけど、木を削る感覚や絵の具を混ぜた時のにおいみたいなものが、最終的な画面につながってくると思うし、観客にもそれが伝わると信じている」

ストーリーは、電信柱のエレミが電力会社の作業員タカハシに恋をし、電話回線に侵入して話し始める。中田さんはこのファンタジーを20年かけてでも完成させたかったと話す。

「僕の考えるファンタジーは、天使が舞い降りて奇跡を起こすようなものじゃなくて、実生活の中で何年かに一度起こる偶然のようなもの。電信柱は無言で佇むただのコンクリートの柱だけど、そこに何らかの想いを感じる。優しくて、少し温かい。でも、何もかもが幸せってわけじゃない。そういうファンタジーがどうしてもやりたかった」




映画のラストは、観る者に深い余韻を残す。そして、観終わった後、町の片隅で秘かに立つ電信柱をふと見上げたくなる、そんな記憶に残る作品だ。

「学生時代、南の島で海に浮かんでいた時、今自分がここで消えても、砂浜の砂粒ひとつ何も変わらないんだろうなって思ったことがあって、その時自分はほんとに貝殻ひとつぐらいの小さなものでいいから、何年も人の気持ちに残るような作品をつくりたいと切実に思った。それが、僕のクリエーターとしての原点で、今につながっていると思います」

(稗田和博)






中田秀人
1972年、兵庫県出身。京都精華大学卒。97年に、主にパペットを用いたストップモーションアニメを制作する映像チーム「ソバットシアター」を結成。ストーリーや世界観、デザインを担当するなど、チームの中心的存在。00年に短編アニメーション作品『オートマミー』で国内の映画祭で数々の賞を獲得。09年には、8年の制作期間を経て『電信柱エレミの恋』を制作した。




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Genpatsu

(2012年6月15日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 193号より)




原子力ムラの実態が明るみに出てきた。ムラ社会の風通しがよくなる好機が訪れたといえよう。5月24日に、毎日新聞が「4/24勉強会用【取扱注意】」と書かれた資料の表紙の写真とともに、原子力委員会が「勉強会」と称する秘密会議を開催したと報じた。

この勉強会は、原子力委員会の担当役人、経済産業省の役人、文部科学省の役人、日本原子力研究開発機構、東京電力や関西電力などの電気事業者と日本原燃などの面々で構成されている。さながらムラの長たちの集まりである。

この秘密会議はいわば裏の会合だ。表の会合は、原子力発電所・核燃料サイクル技術等小委員会。原子力委員会が設置したもので、ここで核燃料サイクル政策に関する選択肢を議論する。日本はこれまで原発で使い終わった燃料を再処理してプルトニウムを取り出し、燃料に再利用する政策をとってきたが、これが事故続きでうまくいっていない上に、お金がかかり過ぎるというので、福島原発事故をきっかけとして見直すことになったのだ。

表の会合はこれまでに15回開かれたが、裏の会合は23回に達しているという。表の会合の委員である筆者は怒り心頭に発している。初めからムラで相談のうえ議論の方向性を決めていたわけだから、これでは表の審議会が成立しない。

今日に至るまで脈々と続いてきたムラ社会のしきたりではないかと疑っていたところ、04年に再処理を見直した時にも裏の会合が行われていたことも明らかになった。自民党時代には議員、官僚、電力各社といった政官財が一体となって、政策を決め事業者に有利になるような制度をつくり、事業を推進してきた。このようななれ合い、もたれあいが脈々と続いてきたのだ。政権交代後もまだ悪しき慣行を引きずっていた。

東海村の村上達也村長は、5月26日の「講演会 さようなら原発」で「原発発祥の地からの脱原発宣言」と題して講演した。原発立地自治体の中でただ一人脱原発を主張している首長だ。村上村長の話の趣旨は「中央集権的な原発は疫病神、貧乏神。もはや原発依存は時代遅れ」と明快だった。

中央集権的なムラ社会の解体は必至だ。近藤駿介原子力委員長は今後は秘密会合を開かないと公約し、 委員会のあり方を見直すと明言した。行方を注目したい。






伴 英幸(ばん・ひでゆき)

1951年、三重県生まれ。原子力資料情報室共同代表・事務局長。79年のスリーマイル島原発事故をきっかけとして、脱原発の市民運動などにかかわる。89年脱原発法制定運動の事務局を担当し、90年より原子力資料情報室のスタッフとなる。著書『原子力政策大綱批判』(七つ森書館、2006年)









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(2012年2月1日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 第184号より「ともに生きよう!東日本 レポート20」)




日本国政府による犯罪だと痛感した—脱原発世界会議、海外ゲストが見たフクシマ





世界各国の脱原発、核廃絶運動に関心のある人、NPO、専門家など約1万1500人が参加した「脱原発世界会議 2012 YOKOHAMA」が1月14、15の両日、パシフィコ横浜で開催された。
このイベントに先立って、ドイツ、ヨルダン、モンゴル、スイス、ケニア、韓国などの海外ゲスト、ジャーナリスト50人が13日、福島県を訪れ、被災した住民や地元で活動する人々の声を聞き、活発な意見を交わした。海外ゲストが見たフクシマとは。





福島の問題が福島だけの問題になっていることが問題




海外ゲストたちは、まず福島市を訪ね、市民の話を聞いた。

吉野裕之さん(子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク)は〝子どもの疎開と保養事業〟について、丸森あやさん(CRMS市民放射能測定所)は〝福島市内で食品や内部被曝測定を行う活動〟について、佐藤健太さん(まげねど飯舘)は、福島第一原発から30キロ以上離れていながら放射能の高汚染地域「ホットスポット」になった飯舘村について報告した。

福島大学准教授の丹波史紀さんは、「避難した住民は原発爆発から10ヵ月以上経った現在でも、わが家に戻れるのか、あるいは戻れないのか、見通しが立たないため、仕事や日常生活の再建のめどが立たない」現実を報告。「家族がバラバラのままの避難生活、避難していない人も放射能の影響で仕事や日常生活に大きな影響を受けている」ことを説明し、「現在の福島の問題が、福島だけの問題になって忘れ去られてしまうことが問題。福島の現実を少しでも知ってほしい」と訴えた。

一行は次に伊達市へ移動。元酪農家の長谷川健一さんが、スライド写真を見せながら、震災直後から飯舘村で起きた出来事や、放射能汚染で廃業せざるを得なくなったことを説明した。




飯舘村通過で、一斉に鳴り出したガイガーカウンター




10 バスの中写真


この後、バスで海側・浜通りの南相馬市へ移動中、飯舘村を通過した。バスの中から、住人が避難してカーテンを下ろしたままの住宅や、シャッターを閉めた商店、耕されない水田や畑、防護服を着た人が建物の除染作業を行っている様子などが目に飛び込んでくる。原発から20キロ圏に入る国道6号線の検問では、韓国からの参加者が横断幕を手に「非核と脱原発を福島から」と、「ノーモア・フクシマ」を連呼するシュプレヒコールも飛び出した。


10 参加者写真



この日参加した海外ゲストらは、自国で購入してきたガイガーカウンターなど、放射線の測定器をそれぞれ持参していた。バスが伊達市から飯舘村に入ると、バスの中でも空間放射線量が1マイクロシーベルトから2マイクロシーベルト前後まで、グンと跳ね上がる場面があった。ピーピーピー……ピーピーピー……。バスの前、真ん中、後ろの座席からそれぞれの測定器のアラームが一斉に鳴り出すと、韓国、ドイツの研究者やNPOのメンバーは、持参した測定器が表示した数値をお互いに比較したり、数値をノートに記録していく。

到着した南相馬市では、高橋美加子さん(つながろう南相馬)から、〝市民による除染や住民支援活動〟についての話を聞いた。高橋さんは「放射能は目に見えず、家畜や野菜など汚染されたものに私たちは手出しができない。海外メディアでは南相馬市を『死の街』と報道したと聞いた。小さな子どもを持つ若い人たちは、ここを出て行かざるを得ない」と、放射能の影響で厳しい現実を強いられている様子を述べた。同時に「放射能で汚染された街だが、私たちはここで生きていくため、共同作業でもう一度復活させたい」。そして「福島の大変な状況を、広く世界に伝えてほしい」と訴えた。

また箱崎亮三さん(NPO法人実践まちづくり)ら住民5人は、南相馬市の現状について説明。箱崎さんは、「私たちは原発事故の真実を本当には知らない。心配だけれど、ここに住みたいから除染する。でも実際には除染モデルなどどこにも存在せず、本当に除染できるのだろうかという思いもある」と、住民としてのさまざまな葛藤があることを吐露。その上で「除染モデルを南相馬市から発信することができるのではないか」と、除染に関するデータを集めて分析し、作業や管理について研究してマニュアル化する試みに取り組んでいる様子をレポートした。




混乱、葛藤、解決のない課題に衝撃



11 ムナさん
(ムナ・マハメラーさん)




ヨルダンの弁護士、ムナ・マハメラーさんは、「福島第一原発事故後、福島県を中心に住民の健康被害や避難など深刻な問題が続いているなか、日本政府は昨年12月、ヨルダン、韓国、ベトナム、ロシアとの原子力協定を国会で承認した。ヨルダンの原発予定地は砂漠で水源が十分になく、情報公開も進まない現状がある」と言う。

また、「本当に福島の現状は残念で、住民の方々は大変な状況に置かれているのを理解した。その状況と闘う住民は素晴らしい方々ばかりだった。改めて、この現状は人権問題で、情報隠しも含めて日本国政府による犯罪だと痛感した。帰国したら福島で起きている深刻な出来事を伝え、ヨルダン政府に脱原発を強く働きかける。全力で取り組んでいく」

ケニアの医師で公衆衛生の専門家ポール・サオケさんは「核兵器廃絶に関してはケニアを含め、アフリカ全体で進んだものの、『原発は別』として、南アフリカに建設され、エジプトでも建設が予定されている。ケニアでも2022年に原発建設がケニア政府によって示され、日本からの建設打診の動きがあるが、今回の福島の厳しい現状はまったくケニア国民には伝えられていない」と問題を指摘する。「福島で撮影した動画をケニアのメディアの人たちに提供して伝え、原発が国民に与える悪影響を具体的に説明して、国内世論を喚起したい」




11 アンドレさん
(アンドレアス・ニデッカーさん)




スイス・バーゼルの開業医で放射線医学の専門家でもある、核戦争防止国際医師会議スイス支部長のアンドレアス・ニデッカーさんはこう話す。「最も印象的だったのは、福島で暮らす人々が非常に大きな精神的なダメージを受けていることだ。避難するかとどまるか、いずれ戻るかという現実的な問題を突きつけられている。また、特に子どもの健康面については、低線量であっても長期的被曝の影響の問題がある」

「とにかく私は医師として、過去20年以上にわたって、核の平和利用はありえないと反対し続けてきた。原発はこれだけの混乱や葛藤を生み、解決策のない課題を残す。政府は補償も含めて責任は取らず、アクシデントが起こったら難しい結果に陥る。スイスに帰ったら仲間やグループとさらに連携して原発をなくす活動をしていきたい。日本でも同じ決断をしてもらうように働きかけたい」

参加者は、福島で見たこと、聞いたこと、感じたことをリアルに発信し、世界各国で活動を展開することを誓い合う。素顔のフクシマ、フクシマの悲劇の教訓が世界中に発信されようとしている。

(文と写真 藍原寛子)


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