クローン時代の生命倫理を考える

タレントが依頼した代理母出産も話題となったり、不妊治療の現場では第三者から精子や、海外では卵子の提供も行われている。また、受精卵から得られる細胞から、人体の組織をつくり難病治療に役立てる「再生医療」の基礎研究が進んでいる。この技術はクローン人間の作成にきわどく接近する。私たちは先端医療技術をどこまで認めるのか。米本昌平さん(今号特集ゲスト編集長/科学技術文明研究所所長)に聞いた。

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<2005年2月1日発売、THE BIG ISSUE JAPAN21号より> 

ヒト胚研究、精子・卵子売買禁止、画期的な韓国の生命倫理法

「不妊治療や再生医療の研究の場で、精子はもちろん海外では卵子が提供されたり、受精卵が使われる以上、日本はこれらを規制する法律を早急に整える必要があります」

そう語るのは、生命倫理や医療倫理を扱うシンクタンク、科学技術文明研究所所長の米本昌平さん。長く生命倫理の研究に携わり、生命倫理に関する立法化で多くの政策提言を行ってきた。その米本さんが日本の生命倫理に関するルールづくりを考えるうえで注目しているのが、先月に韓国で施行された、アジア初の生命倫理法「生命倫理および安全に関する法律」だ。

この法律は、クローン人間の作成禁止をはじめ、妊娠を目的としないヒト胚の作成禁止、さらに遺伝子治療や遺伝子検査、遺伝情報の保護に至るまで、生命倫理にかかわる包括的な規制内容を盛り込んでいる。世界的に問題となっている、ヒトの体細胞の核を未受精卵に移植して胚まで発生させる「クローン胚」についても、難病治療研究にのみ認め、具体的審議は法律で新設された国家生命倫理審議会に委ねる、と定められている。

「具体的な規制内容を見ても、胚段階での男女の選別、精子・卵子・受精卵の売買、死者の精子の使用などを禁止する世界的にみても厳しい内容で、クローン人間の作成は10年、胚操作は3年以下の懲役に処せられことになります。不妊治療に使われる生殖技術は対象から外されていますが、画期的な法律がアジアにできたことの意味は大きい」と話す。

だが、医療技術では世界水準にある日本を尻目に、なぜ韓国でこれほど充実した生命倫理法ができたのか。法案段階から注目してきた米本さんは、こう解説する。

「韓国では、クローン羊ドリーの誕生をきっかけに、生命倫理の議論が活発になり、複数の法案をめぐって政府、産業界、医学界、宗教界、市民団体の間で激しい論議が交わされました。韓国は軍事政権による独裁時代が長かったため、かえって対抗勢力として在野の市民団体が育ち、世論形成に大きな力を持っています。このことが、今回、画期的な法律を生み出す原動力の一つとなったんです」

もちろん国民の関心の強い再生医療や不妊治療技術が進歩し、韓国社会に深く浸透していた事実も見逃せない。

「韓国社会には男子を跡継ぎとする父系社会の価値観がまだ色濃く残っています。古くは男子を得るためだけの『シバジ』という特殊な制度がありました。契約でセックスをして男子が生まれれば渡し、女子だった場合は生んだ女性が引きとって、その子もシバジとなるのです。今では、経済水準が低い中国東北部の朝鮮族の女性が韓国で代理母を請け負うことが問題となっています。卵子を提供している可能性もある。残念ながら、厳として存在する経済格差が、こういう行為が金銭を介して行われてしまう理由です」


後編に続く


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Genpatsu

(2014年8月1日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 244号より)


実態より低い数値、積み上がる除染廃棄物。飯舘村の放射能汚染

飯舘村に出かけた。福島原発から北西に40キロメートルほど離れたところに位置している。スローライフを掲げて村づくりをしていたことで有名だった。ところが、3年前の福島原発事故の1ヵ月後の4月11日に全村避難が指示された。全員が村から出たのは6月末だった。高い放射線環境の中で最長3ヵ月ほど過ごしていたことになる。

村内へ入るのはこれで4回目となる。昨年からは、政府が設置するモニタリングポストの値(※参照)が実態より低いとの指摘があり比較している。村内およそ40ヵ所のうち、10ヵ所程度を調べている。測定結果は実態よりおおよそ2割ほど低く出ているといえる。

政府も気にしてバッテリーの位置を変える対応をとったのだが、それでも低く出るのは、堅固な土台をつくったからのようだ。それは必要な措置だろうから、実態に合うように換算すればよいと考えるが、そんなアナウンスはどこにもない。実態より低い数値が公式記録として残っていくことでよいだろうか。

今回まず驚いたことは、村のいたるところにフレコンバッグが積み上げられていたことだ。5段積みが最終形のようで、地区ごとにまとめていた(1ヵ所とは限らない)。仮置き場を設置することに各地区村民の合意がおおむね得られたことから、全村あげての除染作業が今年度から始まったのだった。公共の場所の多くが除染作業現地事務所となっていて、人の出入りが激しかった。

汚染を減らすために、家や敷地の除染、その周辺20メートルの立ち木伐採と下草取り、田畑の表土を削るなどが進められていた。表土を削るのはブルドーザーで行うのだが、生い茂っている草の除草は人手で行っていた。これらはすべて廃棄物となるので、その量は膨大だ。除染実施率は5月末時点で、宅地が9%、農地が4%。除染が進めば進むほど廃棄物の仮置き場も増えていくのだろう。

作業とは裏腹に、期待するほどの効果が得られていないとの村民の声も聞こえてくる。



伴 英幸(ばん・ひでゆき)

1951年、三重県生まれ。原子力資料情報室共同代表・事務局長。79年のスリーマイル島原発事故をきっかけとして、脱原発の市民運動などにかかわる。89年脱原発法制定運動の事務局を担当し、90年より原子力資料情報室のスタッフとなる。著書『原子力政策大綱批判』(七つ森書館、2006年)




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前編を読む

見返りを求めない純粋な贈り物はあるのか?

贈り物は、贈る局面だけを見れば、見返りを求めない自発的な行為のように思える。しかし、かつて贈り物は女性や財貨、言葉を交換しながら共同体を維持する相互扶助的な役割を担うシステムの一環だった。

「生存していくためには、贈る義務があり、贈られた方は受け取る義務があって、また贈り返す義務もある、永遠に繰り返される義務的循環こそが、贈り物の本質」と小馬さんは言う。

たとえば、メラネシア西部で行われてきた「クラ」と呼ばれる慣習は、贈り物の義務的循環の典型だ。クラは、いくつもの諸島群を包み込む広大な地域で、首飾りや腕輪などの財貨を長年にわたって贈答しあう壮大な交換の環なのだが、男たちは相手の集団と財貨を交換することに命を懸けた。その苦労話や冒険譚が栄光に満ちた物語であるほど、男は尊敬されるのである。彼らにとって、生涯の生きがいは所有することではなく、相手の集団と財貨を贈答し合うことだった。

また、英国では、パブでたまたま意気投合した人たちが、ラウンドという飲み方をする。これは、一人ひとり順番に他の全員に1杯ずつビールを奢るという飲み方で、参加者はラウンドごとに奢る側と奢られる側に分かれる。割り勘と違うのは、参加者の誰もが気前のよい贈り手として称賛されると同時に、贈られた側として他の人々にも感謝し、それによってお互いが親密になり、友情を築けること。しかも、最終的には誰一人として得も損もしない。このラウンドによって交換されているのは、ビールというより、贈り物によって得られる喜びそのものなのだ。

「贈り物というのは、あくまで義務的循環であって、見返りを期待しない無償の贈り物というものは存在しません。でも、それではあまりにも窮屈でツライから、人間はさまざまな知恵を使って、できるだけ贈られた人の負い目を軽減する工夫をしてきました。私たちが贈り物をする時、『これは、つまらないものですが…』と言ったり、贈り物の中身が見えないようにラッピングする包みの文化を発達させたのはそのためで、贈り物をお互いの喜びとして感じあえる関係を築いてきたんです」

「人は、贈り物をすることで自分と他者のかかわりを強く意識し、そこから人間という新しい存在のあり方のすべてが始まりました。だから、人間は関係性の中に生きてこそ人間なのであって、贈り物を通じて感じられる喜びは、今もなお生きる喜びのかけがえのない源泉なのだと思います」

(稗田和博)

Photo:高松英昭


こんま・とおる

1948年、富山県高岡市生まれ。一橋大学大学院社会学研究科博士課程修了。博士(社会人類学)。大分大学助教授を経て、神奈川大学人間科学部人間科学科教授。文化人類学・社会人類学専攻。79年以来、ケニアでキプシギス人を中心にカレンジン語系の人々の間で、長期参与観察調査を29度実施。『贈り物と交換の文化人類学』(御茶の水書房)、『ユーミンとマクベス—日照り雨=狐の嫁入りの文化人類学』(世織書房)など著書、共著多数。




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ビッグイシューは1991年ロンドンで生まれ、日本では2003年9月に創刊したストリートペーパーです。

ビッグイシューはホームレスの人々の「救済」ではなく、「仕事」を提供し自立を応援するビジネスです。1冊450円の雑誌を売ると半分以上の230円が彼らの収入となります。


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贈り物をして初めて、ヒトは人間になった:文化人類学者の小馬徹さんと考える贈り物の秘密

すべての生き物の中で唯一、人間だけが贈り物をするといわれる。なぜ、人は贈り物をするのか。文化人類学者の小馬徹さん(神奈川大学教授)の案内のもと、大胆にも人類誕生にまでさかのぼって考えた、贈り物の秘密。


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サンタクロースと資本主義の聖地

今年もクリスマスの季節がやってきたが、現在のような陽気なサンタクロースのイメージをつくり上げたのは20世紀のアメリカだったことを、ご存じだろうか。

無償のプレゼントを届けてくれるサンタクロースと、利潤を追求する資本主義の聖地アメリカ。考えてみれば、奇妙な取り合わせだが、小馬徹さんは「サンタクロースは、市場経済と合理主義にどっぷり浸かった大人たちにこそ、必要とされた」と話す。

どういうことだろうか。

市場経済の中で使われるお金は、いつでも誰とでも、価値の違う物を交換できる便利なツールだ。だが一方で、お金は物を交換したその場でお互いの関係をきれいさっぱり切断し、後はすべてが市場に委ねられる。それまで人々の生活は、お互いに物を贈り、贈られる贈与交換によって成立していたが、市場経済の登場とともに、伝統的な共同体が徐々に解体され、人々は贈り物を通じてふれあう温かみから遠ざかってしまった。

「本来、贈り物は、何かを贈れば、必ず自分のところに返ってくるものでしたから、贈るというのは待つことでもあったわけです。資本主義の世界にどっぷり浸かっている私たちは、自分以外の誰かに感謝する気持ちや自分の心を窺い見るようなことを希薄にしてしまったと同時に、待つという心の中にあった楽しさや喜びもなくしてしまったのかもしれません。また、市場経済は、他者や社会に対して無関心でいられるアパシー(無気力・無感動)も生み出した」と小馬さんは言う。

たとえば、資本主義の世界では、お金儲けのために一国のGDPに匹敵するお金を動かす富豪が出現する一方、何十万人もの人が飢えに苦しんでいたり、戦争で何の罪もない人たちが殺されていても、何の感情も示さないというようなことが起きる。また、大金持ちの不用意な寄付なども新たなアパシーを生む、と小馬さんは言う。

「たとえば、アフリカなどに多額の寄付をすると、もらった方はそのうちにもらうことが当たり前になります。つまり、自立を度外視した寄付や援助が、他者や社会に対して感謝を感じない新たなアパシーを生み、連鎖していくんです」

そうした市場経済が進展し、アパシーが連鎖する中、お互いの凍てついた関係に耐え切れなかった大人たちが、贈り贈られることの喜びを確かめ合う特別なものとしてクリスマスを求めたというわけだ。


人類最初の贈り物は、女性!?

しかし、そもそも私たちは、なぜ贈り物を特別なものと感じるのだろうか。

「それは、私たち人間が、どうして人間になったかということと関係があります。実際、人類最初の贈り物は、女性を贈るということでした」と小馬さん。

女性を贈る!?とは、なんとも物騒な話ではある。小馬さんによると、それはこういうことらしい。

原初の時代、人間は群れの男性たちが自分の姉妹や娘を性的な伴侶とすることをあきらめて外に送り出し、逆に自分たちの伴侶を外から迎え入れる仕組みをつくり出した。つまり、結婚である。近親の大切な女性を贈ることで、内と外をはっきりと分け、そこで成立した内(ウチ)こそが家族という集団であった。そして、女性を受け取った家族集団は、贈り手の家族に必ず家畜や食物、労働奉仕などのサービスを贈り物として渡した。

「多くの動物は群れをつくりますが、家族というかたちは不鮮明です。確かに母親は本能的に子どもを育てる。でも、成長した子どもと分かれた後は、どこかでばったり出会っても、近親の感覚はありません。また、ボノボというサルは、誰にでも餌を分け与えるなど、唯一人間に似た贈り物をしますが、人間のような固定的な関係はつくりません。むしろ人間とは逆で、家系も大人と子どもの区別もない自由な性行動をすることで、お互いの関係をつくることを避け、みんなが対等に生きられるようにしているんです」

つまり、同じ霊長類のボノボとヒトの進化を分けたのは、贈り物だったというわけだ。

「おそらく何らかの理由で人口が増えたヒトは、平和に共存するために、贈り物を強く意識することで、家族と外、男と女、大人と子どもなど、お互いの関係をはっきり区別し、贈り物の交換によって家族集団を連帯させて共同体を形成したのだと思います。そして、贈り、贈られる家族集団の間で確実にコミュニケーションする手段として誕生したのが、言語でした」

「だから、人間にとって贈り物とは、他者があるからこそ自分も存在するという関係性を強く意識するシンボルであり、人間が人間になりえた理由そのものなんです」

後編に続く

<2008年12月1日発売、THE BIG ISSUE JAPAN108号より>



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Genpatsu

(2014年7月15日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 243号より)



集団的自衛権で標的に? 航空機の衝突に耐えられない原発

先日、柏崎刈羽原発の見学に出かけた。施設は厳重な有刺鉄線で守られ、至るところに監視カメラが据えつけてあった。また、防潮堤は津波対策のためではあるが、同時に、外部からの侵入を阻止する役目ももっていると言える。また青森県下北半島に出かけた時も、原子力施設は同様に有刺鉄線で守られていた。

かつて電力会社は原発の施設見学に積極的だった。原発を実際に見ることで理解が深まると考えられていたからだ。旅費はもちろん食事やお土産つきという時代もあった。だが、2001年9月11日以降は、厳しい身元調査が行われるようになり、今は基本的には施設内部の見学はできない。理由はテロ対策だ。

原子力規制委員会の新基準では、「故意による大型航空機の衝突」などのテロへの対応策も求めている。電源車やポンプ車など可搬型の資機材、人材、そして手順書などを整備して、燃料損傷の緩和や使用済み燃料プールの水位の確保、放射能の環境放出の低減などを可能にしなければならない。

しかし、原発は航空機衝突などを想定して造られていない。ただし、六ヶ所村の再処理工場は航空機落下を想定して建屋のコンクリートを厚くしている。それでも想定されているのは意図的な衝突ではなく、燃料がなくエンジンもオフで慣性による落下だ。燃料がたっぷり入った大型航空機が突っ込んでくれば、どの施設も耐えられるはずがない。

原子炉建屋は破壊され、しかも燃料を積んだ航空機は爆発炎上する。使用済み燃料プールも破壊されメルトダウンは避けられない。原子炉の破壊が免れたとしても、電源の確保はできず、人が対応できるような状況ではなく、大量の放射能放出は避けられないだろう。

集団的自衛権が話題となっている。米国の戦争に日本が巻き込まれることになれば、多くの人々の憎しみを買うことになり、原発への攻撃の恐れが高まる。とても賛成できるものではない。



伴 英幸(ばん・ひでゆき)

1951年、三重県生まれ。原子力資料情報室共同代表・事務局長。79年のスリーマイル島原発事故をきっかけとして、脱原発の市民運動などにかかわる。89年脱原発法制定運動の事務局を担当し、90年より原子力資料情報室のスタッフとなる。著書『原子力政策大綱批判』(七つ森書館、2006年)




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こんにちは、ビッグイシュー・オンライン編集部のイケダです。現在路上で発売中の245号から、読みどころをピックアップいたします。


東田直樹さん「人は、外見ではわからない障害に、とても厳しいと思います」

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今回ピックアップするのは人気連載「自閉症の僕が生きていく風景」より、東田直樹さんのコラム。本連載は、重度自閉症の東田直樹さんと精神科医の山登敬之さんの往復書簡のかたちで掲載されています。

今回の書簡で、東田さんは「外見ではわからない障害」についての思いを語っています。

人は、外見ではわからない障害に、とても厳しいと思います。

病気やけが人に親切にしたり、弱者を守ってあげたりする気持ちは、誰でももっています。しかし、無条件に助けるのは、自分がかばわなければならないと感じた時だけではないでしょうか。その理由として、目に見える不具合というものは、容易に想像しやすいため、ということがあげられます。

どれだけ辛いか、痛いかは、一度でも似たような経験があれば、たやすく想像できます。けれども、見るだけではわからない病気や障害は、なかなか共感することができません。そのために、つい自分を基準に判断してしまうのでしょう。

重度の自閉症である東田さん自身は、まさに見えない障害ともいえる「記憶をすることが難しい」という状況のなかにいます(なお、自閉症者のすべてが記憶の困難さを抱えているわけではありません)。

重度の自閉症者の場合「しっかり覚えて」と言われたあと、「わかった?」と念を押され「『はい』は?」という返事まで要求されることが多いのです。

僕が、そこで「はい」という返事ができたとしても、自分の意志ではありません。言わされているか、オウム返しで答えているだけです。なぜなら、覚えられないのは、自分が一番よく知っているからです。そのうえ、素直に言うことを聞かなければ、その場から解放されないことも学習しています。僕と同じような状況の障害者もいるのではないでしょうか。

東田さんは「自閉症者が、何ができて、何ができないのかは、まだまだ研究不足のような気がします」という一言でコラムを締めくくっています。

目に見えない障害に対して人は厳しい。こうした話は自閉症にかぎらず、大人にも多いと言われる発達障害についても同じようなことが言えると思います。


かくいうぼく自身も、診断は受けていませんが、軽い「相貌失認(人の顔の認知ができない)」の自覚症状があります。「相貌失認」は人の顔を認識・記憶することに困難を抱える発達障害の一種です。

幼い頃から、人の顔を覚えるのが本当に苦手で、頭の中で誰かの顔を想像しようとしても、ぼんやりとしたイメージにしかならないんです。ぼくの場合は、フェイスブックやツイッターの写真(不思議と、写真だと認識できます)、その人の名前や身につけているもの、顔以外の容姿・印象の特徴(話し方、体格、雰囲気、メガネ、髪型、アクセサリーなど)で覚えるようにしています。

「相貌失認」という障害は、ともすると「自己責任」の問題とされてしまいます。顔を覚えられないのは、お前の努力が足りないんだ。他人に関心を抱いていないからだ、などなど。症状の軽重によってはたしかにそれも一理あるのですが、「できないこと」という側面もあるわけで、すべてを自己責任に帰着させるのも間違っていると思います。


…と、東田さんの透き通るような言葉に触れて、そんなことをあらためて考えさせられました。多くの人が「見えない困難」に対しても配慮をできるようになれば、この社会はもっと生きやすくなるのでしょうね。

245号では他にも、特集「今、森をめざす」、ガエル・ガルシア・ベルナルさんのスペシャルインタビュー、ホームレス人生相談などなどのコンテンツが掲載されております。ぜひ路上にてお買い求めください!


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BIG ISSUEから東田直樹さんの本が2冊出ています。

BOOKS
社会の中で居場所をつくる 自閉症の僕が生きていく風景(対話編・往復書簡)
東田直樹・山登敬之 著
作家であり重度の自閉症者の東田直樹さんと、精神科医・山登敬之さんの立場をこえた率直な往復書簡。
「記憶」「自閉症者の秘めた理性」「純粋さ」「嘘」「自己愛」「自分らしさ」など、根源的な問いが交わされる。
2015 年12 月発売
定価1600 円(税込)
B5判変型
(800 円が販売者の収入になります)
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 風になる 自閉症の僕が生きていく風景(増補版)
東田直樹 著 発話できない著者が文字盤で思いを伝えられるようになるまでの日常や、ありのままの自分を率直に語る。連載エッセイ74 編、宮本亜門さんとの対談も収録の増補版。路上で一万冊突破。
2015 年9月発売
定価1600 円(税込)
四六判
(800 円が販売者の収入になります)

 2016/10/14よりクレジット決済が可能になりました。

<ご購入方法>

1.全国の販売者よりお買い求めください。
 →販売場所検索

2.全国の書店でもご購入いただけます。
書店で書籍名をお伝えいただきますとご注文ができます。

 3.クレジットカード決済にてご購入いただけます。
クレジットカードを利用して今すぐ書籍をご購入いただけます。
 ※VISA、MasterCard 、JCB、AMEX、DAINERSがご利用いただけます。 https://www.bigissue.jp/books/index.html

4.郵便振替にてご購入いただけます。
郵便局備え付けの振込用紙に、本のタイトル、ご希望の冊数、お名前、送付先住所及び郵便番号、電話番号をご記入の上、下記の郵便口座にお振込みください。 送料は冊数に関わらず100 円です。 ご入金を確認後にお送りします。

 ご入金金額:ご希望の本の代金 × 冊数 + 送料100 円
 郵便振替口座番号: 00900-3-246288
加入者名:有限会社ビッグイシュー日本
TEL:06-6344-2260  
E-mail:info@bigissue.jp
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こんにちは、ビッグイシュー・オンライン編集長のイケダです。ビッグイシュー・オンライン(BIO)独自イベント「BIO CROSS TALK」の第三弾を開催いたします。


佐藤慶一氏が語る「国内外NPOメディアの最新事情〜オンラインメディアで社会を変える方法」

「BIO CROSS TALK」のコンセプトは「クロス」。世代、性別、価値観、コミュニティ…様々なものをリアルにクロスさせながら、新しい価値を生み出す場をデザインしていきます。

第三回は人気ブログ「メディアの輪郭」の運営者で、「現代ビジネス」や「トジョウエンジン」といったブログメディアで活躍するウェブ編集者、佐藤慶一さんを呼んで、国内外の非営利メディアの最新動向についてご紹介いただきます。

海外では「プロパブリカ」など、NPOの法人格をもった著名メディアが複数存在します。日本においても「greenz」を筆頭に、NPOメディアが影響力を持ちつつあります。

NPOメディアの現状と未来について語り合うという、これまでになかった主旨のイベントとなっておりますので、関心がある方はぜひご参加ください。NPOの経営に関わる方々はもちろんのこと、オンラインメディアの運営に関わる編集者、ライターの方にとってもヒントに溢れた時間となるはずです。

また、「BIO CROSS TALK」は、単なる座学ではなく、参加者のみなさまに交流の機会も提供いたします。登壇者はもちろんのこと、アンテナの高い参加者の方とも名刺交換をしていただけます。

ドリンク持ち込みも大歓迎(Bring Your Own形式)です。トークと出会いと飲み物を楽しむ、いつもとはひと味違った仕事帰りの夜をお楽しみください。

当日はこんな話が飛び出します

・ 海外にはどんな非営利メディアが存在するのか?なぜ非営利なのか?

・ どのようにして運営資金を集めているのか?

・ 日本においてはどのようなプレーヤーが存在するのか?

・ それぞれのプレーヤーはどんな目的で、どんなコンテンツを発信しているのか?

・ 佐藤氏が編集長を務める「トジョウエンジン」はどのようにして運営されているのか?

・ 日本において、非営利メディアはどのように発展していくのか?

・ ビッグイシューはどのようなオンライン戦略を考えているのか?

・ ビッグイシュー・オンラインはどのような効果が出ているのか?


イベント概要:ドリンク持ち込み大歓迎です

日時:2014年9月12日(金)19:00-21:00

場所:渋谷駅徒歩3分・geechs株式会社内「21cafe」

http://geechs.com/sp_21cafe/

東京都渋谷区道玄坂1-14-6 ヒューマックス渋谷ビル

タイムライン:

18:45 会場

19:00 クロストーク開始

20:30 懇親会(ドリンク差し入れ歓迎!)

21:00 終了

参加費:

社会人3000円

学生席1000円(5席)

*イベント収益は「ビッグイシュー・オンライン」の記事制作費に充てさせていただきます。

定員:20名

お問い合わせ:ビッグイシュー日本東京事務所 03-6802-6073


申し込みはこちらから


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8月15日発売のビッグイシュー日本版245号のご紹介です。
表紙はガエル・ガルシア・ベルナル! 特集は「今、森をめざす」です。

リレーインタビュー 作家 柴崎友香さん
今年『春の庭』で第151回芥川賞に決まった、小説家の柴崎友香さん。小学校4年生の時に出合ったジャン・コクトーの詩で文芸の道を目指すようになりますが、昔からコツコツやることが苦手で、「追い込まれないとなかなか動かない性格」なのだとか。運動も習い事も“三日坊主以下”。それでも……。

国際記事 魂が受けた傷は、決して消えることはない~コロンビア、紛争下の性暴力
長い内戦が終わったはずのコロンビアですが、今も恐怖の記憶に人々は口をつぐみます。それでも、紛争下に蔓延した性暴力の実態が、少しずつ明らかになりつつあります。

特集 今、森をめざす
今、森に魅了される若い人たちが増えています。それは、なぜでしょうか? おいしい空気、四季の自然がダイレクトに感じられる森……。故郷を持たない若い人が増えたから? 
年代・性別・障害のあるなしにかかわらず、日本の森で木登りの楽しさを伝える、「ツリークライミング・ジャパン」のジョン・ギャスライトさん。
各地の間伐材を使った楽器「カホン」作りのワークショップを開いて、その音色に耳を澄ます山崎正夫さん。
フリーペーパー『fg』を発行する「林業女子会@京都」は、次世代に豊かな森と暮らしを引き継ぎたいといいます。
岡山県西粟倉村にある株式会社「森の学校」は、源流の森ツアーやヒノキの学習机づくり体験ツアーを行うほか、DIYフローリングの販売など、森で働きたい若者たちの仕事をつくっています。
森を遊び場や仕事場にする人たちを訪ね、森や木々との対話の中で生まれる体験や仕事の話を聞きました。

スペシャルインタビュー ガエル・ガルシア・ベルナル&パブロ・ラライン監督

チリの若手監督パブロ・ララインによるドキュメンタリータッチの映画『NO ノー』は、ピノチェト軍事独裁政権を国民投票によって終焉に導いた、チリの軌跡を追体験させてくれます。ラライン監督と主演のベルナルが、制作現場の熱気を伝えます。

この他にも、「ホームレス人生相談」やオンラインでは掲載していない各種連載などもりだくさんです。詳しくはこちらのページをごらんください。

最新号は、ぜひお近くの販売者からお求めください。
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