婚活ブームに踊らされている気がします

近頃の婚活ブームに、自分を含め、みんなが踊らされている気がしてなりません。友達はお見合いを始めたり、私も親から婚活をせかされています。今の時代、専業主婦だけではなく、仕事や趣味などいろいろな道があるはずなのに、結局ゴールは結婚かと思うと、残念な気持ちです。

(女性/33歳/会社員)

131人生相談

「婚活」という言葉が本当にあるなんて、今まで知らんかった。そんなにブームなんですか? スポーツ新聞で「婚活しました!」という見出しを見たことがあったけど、てっきり就職活動を茶化したパロディやと思ってた。

そりゃ僕もかわいい奥さんがいたらいいなと思うこともあるけど、結婚に興味がないねんな。何でやろう? 男は女性と違って、子どもを早く産まなあかんというのがないし、まわりも失敗している人ばかりだからかな。

個人的には「婚活」は、チョコレート業界がつくったバレンタインみたいに、ブライダル業界の陰謀じゃないかって疑ってるんや(笑)。

この人が「婚活」に疑問をもつのはいいことじゃないかな。しっかりと自分の考えをもった人だと思う。

結婚したら子どもが生まれて、何やかんやと経済効果があるでしょ。そんな、業界が言う「結婚がゴール」だなんて、信じちゃあきませんよ。結婚はしてからが、スタート。親やら親せき付き合いもついてくるからね。幸せな家庭を築くために、子どもも産んでちゃんと育てていかなあかんし、ゴールなんてないんですわ。

時流に乗ってしまうと、いいことだけ言うてリスクのこと言ってくれないでしょ。その点、僕はどうしても最初にリスクを考えるのが癖になってしまって、今やこうなんやけど(笑)。

実は僕、人生相談で回答するのは今回が初めて。答えを出すという作業も、段取りを決めたり、責任感があるのも嫌やとか、いろいろと考えてしまっていっぺん断ったんです。その後また考えて、そしたら今までの自分と同じになってしまうって、思い直した。

この人も自分で納得できたら、「婚活」をやればいい。けれど自分に嘘をついてまで「婚活」する必要はないと思うで。結婚相談所に行くのが趣味なんて人もたまにいてるからね。古いかもしれないけど、僕は好きな趣味やボランティアに参加して、自然にしてたらいいと思う。結婚は縁の問題やし、いろんな人と出会って、人を見る目を養っていってほしいな。

(大阪/Jさん)




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ビッグイシューは1991年ロンドンで生まれ、日本では2003年9月に創刊したストリートペーパーです。

ビッグイシューはホームレスの人々の「救済」ではなく、「仕事」を提供し自立を応援するビジネスです。1冊450円の雑誌を売ると半分以上の230円が彼らの収入となります。


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(2014年4月15日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 237号より)

日本政府の「100ミリシーベルト以下なら安全」は間違い 国連人権理事会、特別報告担当者 アナンド・グローバーさん講演

DSC05359 グローバー氏  藍原

2012年、福島第一原発事故後の健康の権利に対する調査を実施し、13年に勧告を発表した、国連人権理事会の特別報告者のアナンド・グローバーさん(インド最高裁判所主任弁護人)。そのグローバーさんが再来日、東京、福島、京都などで、原発事故に伴う健康の権利、人権侵害の状況、そして日本の課題をテーマに巡回講演を開催した(NPO法人ヒューマンライツナウなどの主催)。

このうち、福島大学では3月21日、勧告を踏まえ、福島大学放射線副読本研究会などの共催で「放射線被曝を健康への権利と教育から考える」と題したシンポジウムを開いた。

 

グローバーさんは「日本政府が『100ミリシーベルト以下なら安全』とするのは間違っている。広島、長崎の長期低線量被曝調査でも、ゼロより少しでも高ければリスクが高まるということが明らかになっている。1ミリシーベルト以下でもがんにつながるリスクがあることを考えて、政策をつくるべき」と述べ、対象や内容を限定的にとらえた日本政府の政策により、国民の健康に関する権利や人権が侵害されている現状を指摘した。

シンポジウムで、福島大学准教授の荒木田岳さんは「原発事故前に決められた法律や内規、ガイドラインが守られていない。緊急時環境放射線モニタリング指針で定めたスピーディの公開も行われず、緊急時の食品の放射能測定マニュアルでは、(放射性ヨウ素やウランだけでなく)ストロンチウム計測が定められているものの、その測定は実施されていない。行政が勝手にルールを変えて、測定内容を省略しているのが現状で、法治国家が終わりを告げているのではないか。この流れを変えないといけない」と述べた。

後半は、国や行政のプロパガンダに使われる恐れのある原発や放射能教育について、現場の教師を交えた議論が行われた。福島県内で行われている原子力・放射線授業の内容と課題、震災後の学校や教育のあり方などについて意見が交わされた。

(文と写真 藍原寛子)


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集団的自衛権で標的に?航空機の衝突に耐えられない原発

先日、柏崎刈羽原発の見学に出かけた。施設は厳重な有刺鉄線で守られ、至るところに監視カメラが据えつけてあった。また、防潮堤は津波対策のためではあるが、同時に、外部からの侵入を阻止する役目ももっていると言える。また青森県下北半島に出かけた時も、原子力施設は同様に有刺鉄線で守られていた。

かつて電力会社は原発の施設見学に積極的だった。原発を実際に見ることで理解が深まると考えられていたからだ。旅費はもちろん食事やお土産つきという時代もあった。だが、2001年9月11日以降は、厳しい身元調査が行われるようになり、今は基本的には施設内部の見学はできない。理由はテロ対策だ。

原子力規制委員会の新基準では、「故意による大型航空機の衝突」などのテロへの対応策も求めている。電源車やポンプ車など可搬型の資機材、人材、そして手順書などを整備して、燃料損傷の緩和や使用済み燃料プールの水位の確保、放射能の環境放出の低減などを可能にしなければならない。

しかし、原発は航空機衝突などを想定して造られていない。ただし、六ヶ所村の再処理工場は航空機落下を想定して建屋のコンクリートを厚くしている。それでも想定されているのは意図的な衝突ではなく、燃料がなくエンジンもオフで慣性による落下だ。燃料がたっぷり入った大型航空機が突っ込んでくれば、どの施設も耐えられるはずがない。

原子炉建屋は破壊され、しかも燃料を積んだ航空機は爆発炎上する。使用済み燃料プールも破壊されメルトダウンは避けられない。原子炉の破壊が免れたとしても、電源の確保はできず、人が対応できるような状況ではなく、大量の放射能放出は避けられないだろう。

集団的自衛権が話題となっている。米国の戦争に日本が巻き込まれることになれば、多くの人々の憎しみを買うことになり、原発への攻撃の恐れが高まる。とても賛成できるものではない。



伴 英幸(ばん・ひでゆき)

1951年、三重県生まれ。原子力資料情報室共同代表・事務局長。79年のスリーマイル島原発事故をきっかけとして、脱原発の市民運動などにかかわる。89年脱原発法制定運動の事務局を担当し、90年より原子力資料情報室のスタッフとなる。著書『原子力政策大綱批判』(七つ森書館、2006年)






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こんにちは、ビッグイシュー・オンライン編集部のイケダです。現在路上で発売中の244号から、読みどころをピックアップいたします。


差別を煽るヘイトスピーチ。必要な「差別禁止法」と「国内人権機関」

今回ピックアップするのは「ビッグイシュー・アイ」より、ヘイトスピーチ問題にまつわる、弁護士の師岡康子さんのインタビュー。

ご存知の通り、日本では、特に在日韓国人の方々に対して、集団で「死ね」「ゴキブリ」などといった言葉を浴びせかける「ヘイトスピーチ」が問題になっています。

日本最大級のコリアンタウン、東京・新大久保。

今、ここで激しい罵声を浴びせかけるデモが毎月、行われています。

「在日朝鮮人、ぶち殺せー!」

「在日韓国人、朝鮮人のやりたい放題、誰が許すか!」

デモの主催者によると、この日の参加者はおよそ300人。

1時間以上にわたって、在日韓国・朝鮮人に対し、差別的な言動を繰り返しました。 双方の小競り合いがエスカレートして逮捕者が出る事態になりました。

“ヘイトスピーチ” 日韓友好の街で何が・・・|特集まるごと|NHKニュース おはよう日本

日本にはヘイトスピーチを規制する法律は現在ありませんが、海外に目を向けると、ヘイトスピーチに対する法規制を持つ国は増えているそうです。

「日本には外国籍の人に部屋を貸さない、雇わないといった差別も存在するのに、これを禁止する法律すらない。これは明らかに国際人権法違反で、まずは実態を調査して『差別禁止法』をつくり、その中にヘイトスピーチの禁止を位置づけるべきです」

たとえば、ユダヤ人迫害の歴史をもつドイツには、ヘイトスピーチに対するさまざまな刑事規制法や「ホロコースト否定罪」が存在している。

また、アボリジニへの差別政策を進めてきたオーストラリアにも、州レベルでヘイトスピーチ刑事規制が拡大している。

さらに、差別禁止法を最も早い段階で制定した英国では、デモや演説だけでなく、「サッカー(犯罪)法」で試合中の差別的なヤジ行為を軽犯罪にしている。

「こうした規制法は欧州、アフリカ、アジア、アメリカなど世界の過半数の国に存在します。」


ただ、こうした規制を施したとして、実際には裁判にかかるコストの大きさは問題になります。

ヘイトスピーチとは少し文脈が違いますが、ぼく自身もネットで「死ね」と繰り返し誹謗中傷された経験があります。あまりにも悪質なので法廷の場で争おうと考えたのですが、残念ながら金銭的なコスト、膨大な手間が掛かることがわかり、「泣き寝入り」することにしました。

ヘイトスピーチ規制が実現したとしても、実際にはこうしたコストの問題が発生すると思われます。この点について、師岡さんは次のように語っています。

「被害者がそこに訴え出れば、非公開かつ無料で迅速に休載してくれる、政府から独立した国内人権機関をつくるべき」と師岡さんは主張する。

インターネット上での人権侵害の広がりを考えると、「国内人権機関」をつくるべき、という主張は決して荒唐無稽なものではなく、実際に数多くの人が救われる仕組みになると思います。


また「表現の自由」との摩擦については、「反論の成り立たない罵詈雑言、変えようがない相手の属性に対する攻撃」を違法とし、「歴史的な事実についての議論や政策の評価」については規制の対象外にすればよい、と師岡さんは語っています。


インタビューの締めくくりの言葉を引用します。

ヘイトスピーチは、マイノリティや、そこにかかわる人たちを黙らせ、最悪の場合は自死へと追いやり、表現の自由、民主主義を壊します。

セクハラが法規制をきっかけに『許されない』と広く認識されたように、ヘイトスピーチも"社会の意思"を法で表し、差別はいけないのだということが常識になることを願っています。

ちょうど昨日(8月6日)のニュースでは、舛添知事がヘイトスピーチ法の規制の必要性について言及したことが報道されています。

この中で、舛添知事は、「ヘイトスピーチ」と呼ばれる民族差別的な言動を繰り返す街宣活動について、「仮に個人に対してであれば脅迫罪に当たる。こんなことをやっていたら東京オリンピックはできない。人種や国境、宗教の壁を越えて、スポーツで結びつく平和の祭典の開催都市で、そんな恥ずかしい言論を許していいのか」と述べました。

そのうえで、舛添知事は「東京都が条例で規制しても周辺の都市で同じことをやられたらどうしようもない。国のレベルでしかるべき対策をとるべきだ」と述べ、6年後の東京オリンピック・パラリンピックの開催に向けて、政府・与党に対し、ヘイトスピーチを規制するための法整備を進めるよう求める考えを示しました。

舛添知事 ヘイトスピーチ規制の法整備を NHKニュース

見ず知らずの他人に対して、「殺せ」「死ね」「ゴキブリ」「出て行け」などといった罵声を集団に浴びせるというのは、人の心に快復できない傷を与える、たいへん暴力的な行為だとぼくは考えています。こうした野蛮な現状を後世に残さないためにも、今、ぼくらが仕組みを作らないといけません。「ビッグイシュー日本版」244号を手に取って、みなさんもぜひご一考くださいませ。


244号では他にも、特集「戦争をしない国へ」、オーランド・ブルームさんのスペシャルインタビュー、漫画家のくらもちふさこさんのインターネット、ホームレス人生相談などなどのコンテンツが掲載されております。ぜひ路上にてお買い求めください!


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Genpatsu
(2014年7月1日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 242号より)

東電の1億円の寄付受けた田中知氏、原子力規制委員に

福島原発事故という犠牲を経て、経済産業省から切り離して、原子力規制委員会が設置された。規制が電力会社の虜になっていたとの反省からだった。ところが、この独立が危うくなるような人事案が国会で承認された。

原子力規制委員会の発足は2012年9月19日。法律によれば委員は5名で任期は5年だが、最初だけ、2名の委員は2年、他の2名は3年、委員長が5年になっている。そこで2名がこの9月に交代する。

今回、交替する委員は、島崎邦彦委員と大島賢三委員の2名。島崎委員は地震学者で、前職は地震予知連絡会の会長だった。島崎委員は活断層をめぐって厳しい態度で審査にあたってきた。ぜひとも引き続いて審査にあたってほしいところだが、交代することになった。

報道では本人が固辞したというが、いろいろな圧力が陰に陽にかかっているとの噂だったので、わからなくもない。大島委員は外務省の出身で、再稼働に向けた審査の中では陰が薄かった。

問題の人事は田中知氏の起用だ。これには、疑問や反対の声が広がった。当然のことだ。  同氏は原子力推進の論陣を張ってきた人だ。原子力推進の牙城とも言うべき日本原子力学会の会長をつとめた。

また、起用直前まで日本原子力産業協会の理事を務めていた。筆者も同席した民主党時代のエネルギー基本計画を策定する審議会では、原子力の維持を訴えて、電力に占める原子力の割合を20~25パーセントにするべきだと主張した。

また、田中氏には業界からの寄付の問題もある。個人への寄付金もあるが、同氏が担当した核燃料サイクルにかかわる研究や人材の育成をめざす講座に、08年から福島原発事故が起きるまで、東京電力から1億円の寄付があったと報じられている。

原発の維持という政府の方針に沿った人事では、再び大事故が起きるのを待つようなものと言わざるを得ない。



伴 英幸(ばん・ひでゆき)

1951年、三重県生まれ。原子力資料情報室共同代表・事務局長。79年のスリーマイル島原発事故をきっかけとして、脱原発の市民運動などにかかわる。89年脱原発法制定運動の事務局を担当し、90年より原子力資料情報室のスタッフとなる。著書『原子力政策大綱批判』(七つ森書館、2006年)



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part.3を読む


有志による路上生活の応援【坂総合病院・事務局次長 神倉功さんのお話】

仙台のベッドタウンでもある港町・塩釜にある「財団法人宮城厚生協会 坂総合病院」。その事務局次長を務める神倉功さんは、病院内の有志による路上生活者支援に取り組んできた。

また、『仙台夜まわりグループ』の支援にも参加、病院としても年1回の無料検診などの協力を行っている。


無料低額診療の取り組み

レポート(1)で紹介したNPO法人POSSEによる、仙台市宮城野区の応急仮設住宅に入居する40世帯を対象に行った生活実態調査でも、震災後に健康状態が「悪化」「やや悪化」したと回答した世帯が67.5%を占める一方で、2013年3月に医療費減免制度が一旦終了した際には、「通院の頻度を減らした」世帯が8世帯、食費や公共料金など「他にかかる費用を減らした」世帯も9世帯にのぼっている。

病院までの交通費も負担となり、生活困窮によって必要な医療へのアクセスが妨げられる状況が起きている。そこで今回は、坂総合病院での生活困窮者や無保険者が受診した場合の対応について話をうかがった。

「宮城県民主医療機関連合会(民医連)に加盟する坂総合病院では、『無料低額診療事業』を実施しています。これは、失業中、ホームレス、ネットカフェ難民、DV被害者など、生活に困窮した人の医療費自己負担を無料または低額にする制度で、都道府県の認可を受けた医療機関が実施しているものです。

宮城県では、震災後に被災者対象の医療費減免制度を行っていましたが、2013年3月に一旦終了(※)したため、その際にはこの制度を利用した被災者も少なからずいました。また、昨年から坂総合病院では、他県から復興関係の仕事で来ていると思われる無保険者の受診が続いていて、この制度が活用されるケースもありました」と神倉さん。

※2014年度からは、所得制限などの条件つきで医療費減免制度が復活している。

 坂総合病院では相談室に5人のケースワーカーがいて、医療費の支払いが難しい場合や無保険の受診者が来た場合には、事情を聞いたうえで対応を行っている。

ケースワーカ―の佐藤健太郎さんによると、「まずその人が医療費が払えない生活状況なのか、必要性を感じなくて払ってこなかったのかによって対応が変わってきます。後者であれば保険の必要性について説明をすることから始まります。無保険のままで、もし大きな病気で手術にでもなれば、とても全額負担できません。無保険というのは、リスクが大きい状況なのです。そこで役所に行き未納分を追納する形で、まずは3か月や6か月の短期保険証を出してもらって3割負担分を払ってもらいます」

しかし、3割負担分でも支払が難しい生活状況の場合には、病院の所得基準にあわせて、無料低額診療制度を使うことになる。無料や低額にした分の医療費は病院が負担する。この制度はそれほど知られていないが、被災地に限らず全国で行われている。

ただし、この制度は生活保護の受給開始など、生活が改善するまでの一時的な措置という位置づけなので、6か月までという期限がある。

さらに、院外処方である薬には原則として適用されない。坂総合病院ではケースワーカーが6か月たった時点で面談を行い、その人の生活状況を把握しながら、必要に応じて措置の更新、他制度との組み合わせなど、適切な制度やサービスに結び付けるよう取り組んでいる。


全編のリンクはこちら


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8月1日発売のビッグイシュー日本版244号のご紹介です。

特集 戦争をしない国へ―特定秘密保護法と集団的自衛権を見据える
国境なき記者団による「報道の自由度」世界ランキングで、2010年、11位だった日本は、13年には原発報道などで53位に急落、14年は特定秘密保護法の成立で59位になりました。
昨年末、衆参両議院でわずか67時間の審議で成立した特定秘密保護法に続き、7月1日、政府は従来の憲法解釈を変更し「集団的自衛権の行使容認」の閣議決定を行いました。
いったい今、何が行われようとしているのでしょうか? 「政府が秘密にしたいと考えれば、それを秘密にできるのが特定秘密保護法」と言う、黒澤いつきさん(明日の自由を守る若手弁護士の会)。
紛争地でのリアルを通して、武力行使こそが非現実的で、「日本の平和主義を背景に日本のNGOは紛争地で影響力を発揮できた」と谷山博史さん(NGO・日本国際ボランティアセンター代表理事)は話す。そして、「解釈改憲とは、政府による従来の憲法解釈を変え、実質上は憲法改正と同じ」と語る高作正博さん(関西大学法学部教授)。そんな3人にインタビュー。
今、戦争をしないために私たちができることを考えたい。

ビッグイシュー・アイ 差別あおるヘイトスピーチ
「寄生虫、うじ虫、犯罪者」など、聞くに堪えない言葉をマイノリティに向けて連呼し、差別を煽り立てるヘイトスピーチ。しかし、「“不特定多数”の集団に対して差別を扇動する表現」を取り締まる法律が日本にはありません。弁護士の師岡康子さんに話を聞きました。8月に発足する「在日コリアンなんでも相談室『晴れほこ』」の取り組みもご紹介。

国際記事 カナダ、劇団「アーバン・インク」のヒップホップ・ワークショップ
ヒップホップには、傷ついた心を言葉で癒してきた長い歴史があります。マイノリティの若者たちが怒りを表現し、困難に立ち向かうことを手助けしている劇団を訪ねました。

スペシャルインタビュー オーランド・ブルーム
全編にわたり南アフリカで撮影された映画『ケープタウン』。南アフリカ社会が抱える矛盾を深くえぐり出したこの作品で、ブルームは俳優として大きな進化を遂げました。撮影の日々、反アパルトヘイトの活動家だった彼の義理の父親のことも語ります。

この他にも、「ホームレス人生相談」やオンラインでは掲載していない各種連載などもりだくさんです。詳しくはこちらのページをごらんください。

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<part.2を読む>

路上生活者支援の草分け【NPO法人仙台夜まわりグループ

2000年から、仙台市内で路上生活者の自立支援を行っている。市内での路上生活者への訪問による昼・夜の安否確認のほか、炊き出し、食事会、相談会などを定期的に実施。緊急時には施設での居宅保護も行う。仙台の路上生活者支援の草分け的存在である。

路上生活者、全国で減少。しかし仙台では増加

厚生労働省の『ホームレスの実態に関する全国調査』によると、2014年1月に調査時点での全国の路上生活者数は7,508人と、昨年から757人減ったことが報告されている。この調査は日中に目視で数える調査方法のため、実数との差異があることが指摘されているが、その発表のなかでも、路上生活者数が増えた地域のひとつが宮城県だ。去年の調査では107人とされていたのが、今年は122人と15人増。そのうち仙台市内が119人だという。

「去年と比べても、夜まわりで見かける新しい人は増えているような気がします。ただし、いなくなるペースも速い。路上に出て、仕事に行って、仕事がなくなればまた路上に出てという繰り返しなんじゃないか。厚生労働省の調査はいつも真冬で、雪が降っていることが多いので、実数より少なくなるんだけど、これまでの経験からの感覚でいうと、実際は150人くらいはいるように思います。復興事業開始後は車上生活の人が増えたので、さらに数は多いはず」と理事長の今井誠二さんは考える。

夜まわりグループでは、2013年10月から「HELP!みやぎ 生活困窮者ほっとライン」という相談窓口をたちあげた。そこには、東北に仕事を求めてきて、さまざまな事情で働けなくなり、「住むところがないから助けて欲しい」という相談も来るという。

「南は奄美大島から北は北海道まで。除染や廃炉の仕事ならあるだろうとやってくるんです」と今井さん。相談のなかで、ある会社の給与明細を見せてもらったところ、15万円ほどの給与から食費や部屋代などがひかれて、手元には数千円しか残っていないというケースもあった。

「生活に困っている日雇い労働者が下請け業者や手配師たちからピンハネされているのは昔から変わらない構造なんだけど、除染などのために出されている危険手当なども全く本人の手に入らず、実際に出されている賃金の1割しか手に渡っていないという極端なケースも被災地では起きている」。

このほか、「HELP!みやぎ」には、DV、借金、住まいのことなど、さまざまな相談が寄せられる。

HELPみやぎ

「震災後、夜まわりグループへは、“ホームレス”状態にある人たちだけにとどまらず、広く生活に困窮している人からの相談が増加しています。相談者は、路上生活者と家のある人が半分くらい。生活困窮者自立支援法ができたけれど、おそらくその対象からもれてしまう人たちも出てくる。そういう人たちの駆け込み寺にしたいと思ってやっています。2013年10月に開設して3月末までで、累計257件の相談がありましたが、115件が継続相談中。つまり解決していない。それだけ、いろんな困難を抱えすぎている人が多いということ」。

駆け込み寺に「HELP! みやぎ」

今井さんは、さまざまな相談が集まる「HELP!みやぎ」をハブにして、就労、債務整理、居宅保護、医療保護などができるような駆け込み寺にしたいと構想を練っている。

「いまは、路上から定住先に移るまでの“中間的施設”として部屋の提供もしているけれど、中間的就労の場としての事業もつくりたい。これまでも元路上生活者の雇用創出を目的にしたリユース事業などをやってきましたが、リサイクル品のクリーニングや宅配弁当づくりなどの事業を通じて、生活習慣をつけたり、コミュニケーション力をつける訓練ができるといい。お金だけじゃなくて、仕事をしたくても高齢でできない人もいるので、生活を立て直したいと思っている人の部屋をいっしょに片付けたりとか、当事者同士で互助できるような場になるといいよね」

今井さんは、施設や市営住宅に入居しても、ちゃんとした食事をとる習慣がない人が多いことから、安否確認を兼ねた宅配弁当業などができないかと考えている。

「カロリーや栄養を計算したお弁当を届けながら、『どうしてる?』と、顔色や部屋の様子を確認する。顔色が悪かったら病院に連れて行き、部屋が汚かったらおそうじ隊を連れてこようかとかね。それが当事者の人たちの仕事になればいい。まだアイデア段階で、資金も必要だし、これから検討していくところなんだけど…」と今井さん。

生活困窮者自立支援法ができたが、行政による委託事業では、その支援が「成功」したかどうかを数字で問われる傾向があり、数になりにくい相談者がはじかれてしまう傾向が実際にあることを、今井さんは心配する。

「“継続相談中115件”が示すように、どこにもあてはまらない人がうちへ相談にくる。複雑な問題を抱えている人こそ、一人ひとりのニーズを汲んだ支援が必要です。そういう意味では、うちはうちで行政とは違う方向で必要とされている役割があるんだと思っています」



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part.1を読む


仮設の見守り支援と就労支援【一般社団法人パーソナルサポートセンター

一般社団法人パーソナルサポートセンター(PSC)は、さまざまな事情により、安定した生活を送ることが困難な人たちへの伴走型支援を目指して、10団体が連携して設立(※平成26年6月30日現在、14団体)。設立直後に発生した東日本大震災を受け、仮設住宅の見守り支援のほか、主に被災困窮者を対象とした就労支援、生活相談を行っている。


絆支援から生活困窮者自立支援モデル事業へ

PSCでは、震災後から“絆支援員”による仮設住宅での見守り支援を継続してきたが、今年度より、いよいよ仮設住宅から復興公営住宅への転居が始まっている。生活困窮、高齢、病気など、さまざまな課題を抱えた仮設住宅入居者が転居したあと、生活に支障が起きないようにするため、また、孤立死・孤独死を防ぐために、どのようにしていくのかということが検討課題になっている。

そんななかPSCでは、今年4月から仙台市青葉区を対象に、生活困窮者自立促進支援モデル事業をスタートさせた。

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「モデル事業の対象者は青葉区となっていますが、基本的に困っている市民の方であればどなたでも、既存の総合相談と就労相談の枠で対応しています。国全体として、生活困窮者自立支援法が制度化されていくなか、これまで被災者支援に焦点をあてていた活動を、広く困窮者支援に活かしていきたいと考えています」と話すのは、PSCで生活支援や自立相談支援などを担当する佐藤圭司さん。

青葉区に続き、宮城県南地域でもモデル事業の展開を始めている。今後は、行政ともしっかりと連携しながら、被災困窮者の枠を超えて、制度の狭間にいる人を支援につなぐ役割が期待される。


仕事を求め東北へ。失業、路上のケースも

震災から3年が経ち、そのほかの事業にも変化が起きている。2012年10月から開設している総合相談の窓口「わんすてっぷ」では、被災で生活が困窮した人を対象に相談を受けてきたが、最近では「住むところがない」という相談が多くあるという。

「相談者の年齢は30代後半~50代前半くらい。全国から仙台に仕事を求めてやってきたものの、思うような仕事がない、人手がいらなくなったなどで失業し、そのまま路上に出てしまうのです。これは被災地ならではの特徴だと思う」と佐藤さん。

PSCでは、公的な自立支援センター『清流ホーム』へ申請を行って入所が決まるまでの間、連携団体のシェルターを利用するなどの対応をしているが、シェルターの利用者が宮城県外の人ばかりだった時期もあったという。

また、2012年に開設された就労支援相談センター「わっくわあく」ではオーダーメイド型の就労支援をすすめてきたが、昨年度からは就労準備支援センター「わあくしょっぷ」、中間就労支援事業所「シニアと若者ワークセンター こらぼ」を開設。

「わっくわあく」には、ハローワークで仕事を見つけるのが難しい高齢者や障害者の方からの相談も多いため、一般就労の前に準備期間が必要だと考えられる場合には、「わあくしょっぷ」で軽作業を行いながら、基本的な生活習慣、コミュニケーション、PCスキルなどを3ヶ月1単位で身につけていくことができる。

費用は無料で、2013年7月~2014年3月末までで、のべ1921名(新規66名)が利用。そのうち就労決定者数は17名(25.8%)となっている。また、「こらぼ」は、リフォーム事業やキャンドル製作、墓石清掃などの中間的就労(※2)の機会を提供している。


入り口より、出口をどう増やす?

総合相談、就労相談の窓口をもち、他団体や行政との連携をとりながら、トータルでのサポートができる仕組みを整えてきたPSC。3年間の活動を通して、行政の各部署との協力体制を築きながら、制度の間をつなぐ支援の形を仙台市とともにつくりあげてきた。だが、現在の課題について尋ねると、佐藤さんは“出口の不足”を挙げた。

「以前に比べると、行政のひとつの窓口では対応が難しい複合的な課題を抱える人に対しても、適切な支援につなぐことが可能になってきました。しかし、相談を受ける窓口(入り口)は増えても、まだ出口の選択肢は少ない。なかでも、「住まい」と「仕事」はいちばんの課題です。

たとえば『住まいがない』という人は、自立支援センターに入所するか、第二種社会福祉事業施設(無料低額宿泊所)、あとは生活保護を受けてアパートに入るくらいしか選択肢がない。でも、共同生活が難しい人もいます。また、保証人がいないとアパート入居は難しい。精神障害などがあってサポートが必要な場合は、さらに選択肢は減ります。ケースによっては受け皿が見つからないこともあるのです。

住まい以外に、もっと仕事にも選択肢がほしい。PSCに相談に来る人は、いきなり『普通にフルタイムで働く』ことが難しい場合も多いので、その人のペースにあった中間就労を受け入れてくれるところも必要です。せっかく相談に来てくれても、つなぎ先が見つからないというのは、ご本人はもちろん、支援者にとってもつらいこと。多様な住まいと働き先、居場所はまだまだ足りていません」


(※1)生活困窮者自立支援モデル事業

2012年に成立した生活困窮者自立支援法に基づき、2015年4月からの実施に向けて各地でモデル事業が行われている。生活保護受給に至る前の生活困窮者の自立相談支援、就労支援、子どもの学習支援、住宅確保給付金の支給などを行う。実施主体は都道府県や市町村など。

(※2)中間的就労

一般就労と福祉的就労の間に位置する就労の形態。一般就労が困難な人に仕事の機会をつくることを目的とした雇用型(賃金あり)と、就労にむけたトレーニングの機会をつくるための非雇用型(賃金は発生しないか、活動への報奨金のみ)がある。


part.3に続く


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