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仮設の見守り支援と就労支援【一般社団法人パーソナルサポートセンター

一般社団法人パーソナルサポートセンター(PSC)は、さまざまな事情により、安定した生活を送ることが困難な人たちへの伴走型支援を目指して、10団体が連携して設立(※平成26年6月30日現在、14団体)。設立直後に発生した東日本大震災を受け、仮設住宅の見守り支援のほか、主に被災困窮者を対象とした就労支援、生活相談を行っている。


絆支援から生活困窮者自立支援モデル事業へ

PSCでは、震災後から“絆支援員”による仮設住宅での見守り支援を継続してきたが、今年度より、いよいよ仮設住宅から復興公営住宅への転居が始まっている。生活困窮、高齢、病気など、さまざまな課題を抱えた仮設住宅入居者が転居したあと、生活に支障が起きないようにするため、また、孤立死・孤独死を防ぐために、どのようにしていくのかということが検討課題になっている。

そんななかPSCでは、今年4月から仙台市青葉区を対象に、生活困窮者自立促進支援モデル事業をスタートさせた。

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「モデル事業の対象者は青葉区となっていますが、基本的に困っている市民の方であればどなたでも、既存の総合相談と就労相談の枠で対応しています。国全体として、生活困窮者自立支援法が制度化されていくなか、これまで被災者支援に焦点をあてていた活動を、広く困窮者支援に活かしていきたいと考えています」と話すのは、PSCで生活支援や自立相談支援などを担当する佐藤圭司さん。

青葉区に続き、宮城県南地域でもモデル事業の展開を始めている。今後は、行政ともしっかりと連携しながら、被災困窮者の枠を超えて、制度の狭間にいる人を支援につなぐ役割が期待される。


仕事を求め東北へ。失業、路上のケースも

震災から3年が経ち、そのほかの事業にも変化が起きている。2012年10月から開設している総合相談の窓口「わんすてっぷ」では、被災で生活が困窮した人を対象に相談を受けてきたが、最近では「住むところがない」という相談が多くあるという。

「相談者の年齢は30代後半~50代前半くらい。全国から仙台に仕事を求めてやってきたものの、思うような仕事がない、人手がいらなくなったなどで失業し、そのまま路上に出てしまうのです。これは被災地ならではの特徴だと思う」と佐藤さん。

PSCでは、公的な自立支援センター『清流ホーム』へ申請を行って入所が決まるまでの間、連携団体のシェルターを利用するなどの対応をしているが、シェルターの利用者が宮城県外の人ばかりだった時期もあったという。

また、2012年に開設された就労支援相談センター「わっくわあく」ではオーダーメイド型の就労支援をすすめてきたが、昨年度からは就労準備支援センター「わあくしょっぷ」、中間就労支援事業所「シニアと若者ワークセンター こらぼ」を開設。

「わっくわあく」には、ハローワークで仕事を見つけるのが難しい高齢者や障害者の方からの相談も多いため、一般就労の前に準備期間が必要だと考えられる場合には、「わあくしょっぷ」で軽作業を行いながら、基本的な生活習慣、コミュニケーション、PCスキルなどを3ヶ月1単位で身につけていくことができる。

費用は無料で、2013年7月~2014年3月末までで、のべ1921名(新規66名)が利用。そのうち就労決定者数は17名(25.8%)となっている。また、「こらぼ」は、リフォーム事業やキャンドル製作、墓石清掃などの中間的就労(※2)の機会を提供している。


入り口より、出口をどう増やす?

総合相談、就労相談の窓口をもち、他団体や行政との連携をとりながら、トータルでのサポートができる仕組みを整えてきたPSC。3年間の活動を通して、行政の各部署との協力体制を築きながら、制度の間をつなぐ支援の形を仙台市とともにつくりあげてきた。だが、現在の課題について尋ねると、佐藤さんは“出口の不足”を挙げた。

「以前に比べると、行政のひとつの窓口では対応が難しい複合的な課題を抱える人に対しても、適切な支援につなぐことが可能になってきました。しかし、相談を受ける窓口(入り口)は増えても、まだ出口の選択肢は少ない。なかでも、「住まい」と「仕事」はいちばんの課題です。

たとえば『住まいがない』という人は、自立支援センターに入所するか、第二種社会福祉事業施設(無料低額宿泊所)、あとは生活保護を受けてアパートに入るくらいしか選択肢がない。でも、共同生活が難しい人もいます。また、保証人がいないとアパート入居は難しい。精神障害などがあってサポートが必要な場合は、さらに選択肢は減ります。ケースによっては受け皿が見つからないこともあるのです。

住まい以外に、もっと仕事にも選択肢がほしい。PSCに相談に来る人は、いきなり『普通にフルタイムで働く』ことが難しい場合も多いので、その人のペースにあった中間就労を受け入れてくれるところも必要です。せっかく相談に来てくれても、つなぎ先が見つからないというのは、ご本人はもちろん、支援者にとってもつらいこと。多様な住まいと働き先、居場所はまだまだ足りていません」


(※1)生活困窮者自立支援モデル事業

2012年に成立した生活困窮者自立支援法に基づき、2015年4月からの実施に向けて各地でモデル事業が行われている。生活保護受給に至る前の生活困窮者の自立相談支援、就労支援、子どもの学習支援、住宅確保給付金の支給などを行う。実施主体は都道府県や市町村など。

(※2)中間的就労

一般就労と福祉的就労の間に位置する就労の形態。一般就労が困難な人に仕事の機会をつくることを目的とした雇用型(賃金あり)と、就労にむけたトレーニングの機会をつくるための非雇用型(賃金は発生しないか、活動への報奨金のみ)がある。


part.3に続く