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(2014年8月15日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 246号より)


法廷での決着へ。検察審査会、東電旧経営陣を「起訴すべき」と議決

検察審査会が福島原発事故当時の東京電力社長ら3名を起訴すべきだと7月31日に議決した。福島の人たちの思いが通じた瞬間だった。

これまでの経過を振り返ってみる。生命・健康・財産に重大な被害を及ぼしたのに原子力を強力に推進してきた人たちが責任を問われないのは許されないと、2012年3月に福島原発事故告訴団が結成された。告訴団は全国に広がり、同年11月までに1万4586人が、東京電力の重役たちや原子力ムラの33人を告訴した。福島県の検察庁に申し立てたが、東京に送られ、13年9月9日に不起訴処分された。これに対して原告団は被告訴人を東電関係者6人に絞って検察審査会に申し立てを行った。

6人は勝俣恒久(取締役会長)、鼓紀男(取締役副社長)、小森昭生(常務取締役原子力・立地本部副本部長兼福島第一安定化センター所長)、武藤栄(前・取締役副社長原子力・立地本部長)、武黒一郎(元・取締役副社長原子力・立地本部長)、榎本聡明(元・取締役副社長原子力本部長)の各氏である。

検察審査会の議決で「起訴相当」とされたのは勝俣、武藤、武黒氏の3人、「不起訴不当(※「不起訴不当」の場合、検察は議決を参考に、改めて起訴または不起訴を決める)」とされたのが小森氏だった。

「起訴相当」などの議決は12人で構成される審査会で詳細に検討され、8人以上の合意が得られた結果だ。その理由は、事故が起きる前に津波が想定を超える可能性があり、その場合に炉心溶融事故に至ることを、これらの3人は知っており、対応を指示すべき立場にありながらこれを怠った。そして事故を避けるための具体的な対応策についても検討し、それらが決して対応できないことではなかったと結論。事故の重大性を考えるなら、起訴されるべきだとした。

原告団が呼びかけて8月8日には東京地検と東電前で起訴を求める要請行動が行われた。福島からはバスに同乗して参加していた。検察庁は審査会の結果を受けて起訴して法廷で決着をつけるべきだ。



伴 英幸(ばん・ひでゆき)

1951年、三重県生まれ。原子力資料情報室共同代表・事務局長。79年のスリーマイル島原発事故をきっかけとして、脱原発の市民運動などにかかわる。89年脱原発法制定運動の事務局を担当し、90年より原子力資料情報室のスタッフとなる。著書『原子力政策大綱批判』(七つ森書館、2006年)