[編集部より:元受刑者でブロガーのイノシシさんのブログから、記事を転載させていただきました。刑務所での経験を元にした「反省」についてのすぐれた論考となっておりますので、どうぞお楽しみください。]


反省。

反省 猿


逮捕されてから耳にタコができるほど聞かされてきました。

「反省しろ!」
「お前は全く反省していない!」
「あなた、今回の事件を振り返ってどう反省されていますか?」

等々…。



は~い。



こんなことを延々と言ってくる警察や刑務官、その他職員に逆に質問。


「反省したらどうなるの?」


これね、別にケンカを売ってるわけでも事件について罪悪感を感じていないわけでもないんですよ。

ただ、ちょっと考えて欲しいんです。


「反省したら本当に再犯の可能性って低くなるのか?」


自分の持論は、


「そんなことはない。」


です。これは自身の経験や色んな本を読んでたどり着いた現在の持論です。


ここから話を進めていきます。
じゃあ、仮に以下の2人の元受刑者がいたとして、あなたはどちらの方を応援したいと思いますか?

【Aさん】
「本当に事件については反省してます。心の底から悪いと思ってます。これから真面目にコツコツ生きていきます。」

【Bさん】
「反省?するわけないでしょ。別に悪いと思ってませんから。まあ、懲役は割に合わないとは思いますけどね。」


どうですか?ほぼ間違いなくAさんの方を応援したくなりません?というか比べる余地すら無いような気が…。Bさんについては応援どころか怒りすら覚えたんじゃないでしょうか。(俺は断然Bさん!って人もいるかとは思いますが…。)ちなみに、この2人のコメントは全て「本音」と仮定します。


さて、じゃあこの2人にそれぞれ少しずつ言葉を付け足したらどうなるでしょうか。

【Aさん】
「本当に事件については反省してます。心の底から悪いと思ってます。これから真面目にコツコツ生きていきます。だけど、またやっちゃったんですよね…。

【Bさん】
「反省?するわけないでしょ。別に悪いと思ってませんから。まあ、懲役は割に合わないとは思いますけどね。だから、再犯はしてません。


どうですか?

先ほどの評価が少し変わったんじゃないでしょうか。
「おいAさん!結局またやったんかい!口だけかい!」とツッコみたくなる人。
「B、以外とやるな…。」とBさんを少し見直した人。


ちなみに自分は、


「断然Bさん派」


です。

何故ならば、「反省」と「更生」は全くの別物だから。(もちろん関係はしているとは思いますよ。)
「反省」というものは本人にしか分からないし、精神論。
「更生」とは「再犯を犯さない」という「結果」であり具体的な行動。
だから、この場合「反省」しているのはAさんだが、「更生」しているのはBさんということになる。
なので、自分は断然Bさん派。という訳です。


繰り返し強調しますけど、別にケンカを売ってるわけでも事件について罪悪感を感じていないわけでもないんですよ。さらに言えば理想は「反省し、改心し、更生する。」のがベストだと思ってます。


ここで伝えたいのは、


「ただ反省するだけ」という精神論は全くの無駄ってこと。

むしろそれだけで全てが解決すると思っているぶん始末が悪い。

それならば、「反省してなくても、具体的な行動が変わる」方がナンボかマシってこと。


もちろん感情的に納得できない方、多くいらっしゃると思います。特に被害者本人やその家族、周囲の方々。だって自分や自分の大切な人を傷つけた人間が反省してないんですよ?そりゃあ想像しただけでめちゃくちゃ腹が立つと思うし、「自分と同じ目にあわせてやりたい!)」と思うのは人間として当然の感情。


だけど、結局いくら言葉を並べて「反省している。」といっても、それは本人にしか分からないんです。冷静に合理的に考えれば、「反省していなくても再犯しない人間」の方が社会にとっては有益なわけです。自分は被害者になったことも無いのに生意気なこと書いてスミマセン…。だからこそ、少し離れた立場から冷静に考えれているとも思ってこの記事を書いてます。


刑務所における自分の経験をつけ加えると…。

残念ながら「この人反省してないな~。」っていう人間が刑務所には多くいます。
だけど、「この人は再犯しそうにないな。」っていう人、その中に結構いるんですよ。
そんな人達がよく言ってたのが「犯罪は割に合わない。」という言葉。
そもそも犯罪を割に合うかどうかで考えること自体が間違いかもしれませんが、一応自分はそれで再犯しなきゃいいんじゃないかな、と思ってます。

一方、「この人は反省してるな。」っていう人間もいます。
まあ、悲しいことに反省してない人に比べればその数は少な目ですが…。
そして、この人達の中に「あ、またこの人再犯するな。」という人も多いんですよ。
いわゆるAさんタイプ。


このAさんグループとBさんグループ。


2つのグループの差は一体何なのか?


それは、


「再犯をしないために具体的な行動を計画(もしくはイメージ)できているか。」


の一言に集約できると思います。

もう気づかれてる方もいるかと思いますが、Aさんグループって
「精神論ばっかり」なんですよ。具体的な行動計画が全くない。反省したら再犯しないし全て解決すると思い込んでる、そしてそう思い込まされる環境が刑務所にはある。事件について深く考えているようで、実は思考停止状態なんですよね。

一方、Bさんグループ。
「もう逮捕されないためにはどうしたらいいか」ってことを考えてるんですよ。その発想自体が良い悪いとかいうのではなく、大事なのは「再犯しないという結果である」ことを意識している。なので出所後の生活プランとか聞いてもAさんグループより具体的な人が多かった。


こういった経験や本を通じて「頭や心」からアプローチするより精神論よりも、もっと「行動や結果」にアプローチする方がいいように思うようになりました。「心理学」よりも「行動分析学」。をおススメ。


これについては良書がたくさん出ているので、これから徐々に記事にしていきますね!



 まとめ(自分が経験を通してたどり着いた現在の持論)


・反省し、改心し、更生するのがベストであることは間違いない。

・しかし、人間の性格や価値観は中々変わらないし、反省しているかどうかは結局の所本人にしか分からない。

・そして、「反省させるだけ」では再犯防止について何の意味も無い。むしろ害にすらなりうる。

・さらに、その「反省させるだけ」の状況が逮捕されてから延々と続く。

・極論、反省していなくても再犯しなければいい。

・大事なのは「反省」ではなく「再犯をしないための具体的な行動計画。」それには環境設定なども含む。

・「反省」(=頭や心)からではなく「再犯防止」(=行動)から変えた方が効果が出そうな気がする。


 最後に


今回の記事は書きたいことを書かせてもらいました。気分を害された方もいらっしゃるでしょう。

ただ、こういう見方や考えたもあるってことを頭の片隅にでも置いていただけたら幸いです。

それでは今日はこの辺で。イノシシでした。





みなさんは「反省」と「更生」についてどう考えますか?





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