編集部より:『若者政策提案書』より、若者支援を行うことがどのようなソーシャルインパクトがあり、具体的にどのような若者政策を行うべきかをまとめました。



若者政策の4つの柱

大人の世界に踏み出し生活基盤を築き始める時期の若者が、どのような困難な事情を抱えていても社会の一員として暮らし、働き、よい人間関係を築ける社会を実現することを社会理念として打ち立てる必要がある。若者は明日の社会を担う貴重な人々であり、この世代を育てることは社会を持続するための不可欠な事業である。それを私たちは若者政策と考えた。

私たちは若者政策を4つの柱で構成した。(1)学び学校教育の改革とオルタナティブな学びの場づくり、(2)つなぐ若者の社会参加を支える仕組みづくり、(3)生活支援若者が生きていく生活基盤づくり、(4)出口働く場・多様な働き方を増やす、である。それをまとめたのが次の図である。


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若者政策の大枠は、自立に向かう若者に特有のニーズを理解し、教育、雇用、福祉、保健・医療などの包括的な環境整備をめざすことである。そこで、若者の生活を保障するという大局的見地から今求められている政策の重点を整理し、それに続いてその政策の特徴と理念を整理することにしよう。


若者の生活を保障する政策の重点

私たちが掲げた4つの柱を含みながら、人生前半期を守る社会環境の整備として重要と思われることを指摘したい。

【移行期の試行錯誤を認める】

工業化時代に確立した「日本型(戦後型)青年期モデル」に代わる成人期への移行モデルを構築する必要がある。企業の新卒一括採用による学校から仕事への典型移行だけでなく、多様な試行錯誤ができる移行期間が若者に与えられるべきである。また、年齢にかかわらず再チャレンジのチャンスが与えられなければならない。

【職業教育・訓練機会を保障する】

労働市場に入るために、若者には学校内外でいつでもどこでも教育・訓練の機会が保障されるべきである。経済的理由でその機会を利用できない若者が少なくないことを踏まえ、教育・訓練における経済保障を重視する必要がある。

【非正規雇用労働者の処遇見直しを図る】

急速に増加した非正規雇用は、賃金・社会保障・雇用の継続性において、正規雇用との格差がきわめて大きく、生計維持が困難なほど劣悪な処遇に苦しむ若者が少なくない。法的規制をかけ、正規雇用と非正規雇用の格差を縮小する必要がある。また、非正規雇用者のキャリア形成の可能性を高め、社会保障の権利を確立しなければならない。

【失業と離転職が負の経験とならない社会体制を作る】

グローバル化に翻弄される労働市場において、離転職や失業がダメージとならないような仕組みを確立する。

【積極的労働市場政策と仕事の多様化を進める】

仕事に就くための支援の強化(積極的労働市場政策)を若者のために発動すべきである。その際、仕事を狭義の「雇用」に限定せずハンディのある若者のニーズに添った「多様な仕事」を豊富につくる取り組みが必要である。

【支援環境を豊富にする】

リスクを抱えた若者が支援サービスを受けやすい環境を整備する。若者の多様なニーズに応じるきめ細かいステップが用意されている必要がある。

【社会への参加を保障する能動的福祉政策】

就労支援だけでは救済できない複合的リスクを抱えた若者を対象とする能動的福祉政策が必要である。これと積極的労働市場政策とのセットが新しい若者政策であり、社会に参加することが保障される。

【若者の社会保障制度を構築する】

長期化する成人移行期を踏まえて、若者が安定した生活基盤を築けるような社会保障制度を構築する。教育・訓練、求職者手当、住宅、情報提供・相談、家族形成支援と子どもの養育費負担の軽減などがその内容である。

幼少期から若者期までの一貫性のある若者政策を

若者が家庭の事情に左右されず人生のスタートラインに立てるために、幼少期から成人期までの養育保障と教育保障がすべての子ども・若者に適用されなければならない。つまり若者政策は、子ども政策とセットになってこそ効果がある。

若者の参画を推進する

【支援する人――支援される人】という関係を固定化してはならない。もし若者が支援サービスの受け手として固定化されてしまえば、将来まで主体的に生きる力を奪われてしまうことが懸念されるからである。

若者にとって望ましい暮らしや社会のありようを決めるのは若者自身である。だから、若者政策の策定やプランニングの過程への若者の参画を必須条件とする。そして、若者が自らの最善の利益のために自らの力を発揮することを尊重する社会へと転換する。


「成人期への移行」に焦点を当てるという視点

私たちが提案する若者政策は、国の違いを超えてポスト20世紀という時代が共通に抱える社会現象をふまえている。欧米先進工業国で若者の異変に気付いたのは1980年代である。成人期への移行の時期が長期化するだけでなく若者の生活基盤が崩れていくなかで、1990年代から「成人期への移行」への取り組みが本格的に始まった。若者政策の中心課題は、若者が大人としての地位を獲得するための条件を社会的に保障することにあった。また、これを通して若者が社会のアウトサイダーになることを防止し、社会の構成員としての地位と役割を確立することによって、社会統合を図ることを目的としたものだった。

例えば、欧州連合(EU)の若者政策の枠組みをみると、1若年雇用の悪化による二極化と社会的排除を防止し、2グローバル化と少子高齢化が進む社会の担い手として育て、3若者のシティズンシップを強化することに力点が置かれている。

日本でこのような時代に入ったのは20年近く遅い1990年代の終盤頃からであったが、今や日本でも、工業化時代のように旺盛な経済発展のパワーに若者の自立を委ねることが難しい現実がある。しかも社会的格差が拡大するなかで、社会的に不利な立場に置かれる若者がさらに増加する可能性がある。その動きを放置せず若者の自立を支える社会環境の整備を急がねばならない。

総合開発研究機構(NIRA)の試算によれば、現在の若年非正規雇用者と無業者が高齢期に生活保護を受給すると、累計20兆円が追加的に必要だという。日本は、2030年には3人に1人が65歳以上という超高齢社会になる。若者たちはその社会の担い手となる世代である。

深刻な財政難と少子高齢化のなかで、社会保障制度の立て直しは喫緊の課題であるが、人生前半期の社会保障を強化することは、若者の自立のリスクを軽減し、結果として社会の担い手を確保する確実な方法だろう。


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