「ホームレスです。ご援助を!」

そう訴える手書きの看板を持ち、その白人の青年は筆者の住む街の大通りの角に立つ。気温が零下20℃近くまで下がっても、30℃を超える暑い日でも、彼は何時間でも立つ。

健康そうな20代後半から30代前半くらいだ。車の窓を下げてお金を渡す人を見るが、実際にいくら稼ぐかを、ある零下10℃以下の日に彼がカフェの隣のテーブルで、「収入」を数えるのを目撃して知った。

テーブルの上には、くしゃくしゃの20ドル紙幣が2枚、コインや1ドル札、5ドル札もあった。全部で50ドル以上と見た。

朝の11時頃だったが、通勤の人から得た数時間の収入だと仮定すると、決して悪くはない。数日分の食事が買える。

彼は、本当に勤勉に街角に立つ。そして、しっかり人々の心を打つコミュニケーション能力がある。だから、稼ぎがいい。だがそんな彼も、身体をこわしたり、40代になれば無理だろう。

これだけ真面目な人なら、いっそ市が雇って街角の広報員になってもらえないかと想像した。

市は道路工事や断水、DV防止メッセージなどを電光掲示板、巨大なビルボード看板、郵便物やネットで告知しているが、15万の市民への広報費用は1年間に最低10万ドル以上はかかるはずだ。

その内2万ドルでも、嘱託広報員の雇用に使えないか。

最低限の生活を保障する給料と医療保険を支給し、街角に立てる体調・気温や天気の日のみ、看板でメッセージを伝えさせ、停車したドライバーと何気ない会話を交わしてもらう。

「おばあちゃん、この通りは明日から工事で1車線になりますよ」

「ありゃ、知らなかった、ありがとう。あんたは、元気かね」

「やあ、お母さん。インフルエンザの予防接種は、薬局でも受けられるよ。ところで今日は、タリアちゃんが乗ってないね」

「熱を出して、学校を休むのよ」

無機質な広告物より、広報員と市民がお互い気にかけ合うあう方が、伝わりやすいのではないか。

あのホームレスの青年を見るたび、そう思う。





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ビッグイシューについて

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ビッグイシューは1991年ロンドンで生まれ、日本では2003年9月に創刊したストリートペーパーです。

ビッグイシューはホームレスの人々の「救済」ではなく、「仕事」を提供し自立を応援するビジネスです。1冊350円の雑誌を売ると半分以上の180円が彼らの収入となります。