こんにちは!ビッグイシューオンラインの小林美穂子です。

唐突ですが、あなたは自分の容姿が好きですか?私は若いころも、そして老けた今も自分の容姿に関して、「まぁ、こんなもんだろ」と受け入れていますが、子どもの頃は唇の厚さが気になって写真に写る時にいつも下唇を噛んでごまかしていたものです。美の価値観は人によって作られたもの。時代や場所が変われば美の基準も変わります。そんなあいまいな価値観に振り回されず、胸を張って生きたいものですね。

今回の記事のメインテーマは偏見や差別です。刷り込まれた美の価値観によって、肌の色や見かけで、日常的に差別や偏見の目にさらされてきた三人の若い女性たちのにぎやかな座談会をお楽しみください。とても美しく、そしてクールです。

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オランダ・アムステルダムのストリートペーパー『Z!』誌は、同市在住の女性3人、ディマーヤ、ムニーシャ、チェルシーに会った。彼女たちは肌の色が黒いという理由で、日々偏見に悩まされていると言う。そんな彼女たちに肌や髪、お手本となる人物、そして差別についてじっくりと語ってもらった。
No 3
記者:ロベルト・ルイス・マーティンズ

アムステルダム在住のディマーヤ、ムニーシャ、チェルシー。ディマーヤの両親は南アメリカにある旧オランダ領スリナム共和国の出身で、ムニーシャの両親はそれぞれ中国とインド(ヒンドゥスタン地方)の出身で異なる文化を共有し、チェルシーの両親は二人とも西アフリカのリベリアの出身だ。彼女たちは肌の色によって日常的に偏見にさらされているという点で共通している。それは白人からだけでなく、むしろ同じ文化を共有するはずの民族の中で起きている。

『Z!』誌は、彼女たちに呼びかけ、仕事や勉強の合間を縫って朝の時間に大学の食堂に集まってもらった。

会話はまず髪の話題からスタートした。

黒人の髪も美しく伸ばせること、私自身も、最初は信じられなかった

No 10

ディマーヤ:すごく注目すべきだと思うのは、最近ではアフロ系の縮れた髪のまま伸ばすという決断をしているスリナム人女性たちが増えているということ。なぜならつい最近まで、彼女たちには限られた選択肢しかなかったから。つけ毛やエクステンションをつける、あるいは編み込みにする、もしくは化学薬品を使って縮毛矯正し、ストレートにするしかなかったの。母は私が12歳の時に髪をストレートにさせた。でも2011年に私は地毛を伸ばす決断をしたんです。YouTubeの映像では様々な黒人女性が縮れ毛を伸ばし、その決断に至った理由について語っていた。それを見た私はすごく刺激を受けて、最終的に縮毛矯正していた髪を切ることを決意したの。スリナム人の美容師に「切って」と言うと、彼女は信じられないと言ったことを覚えてる。そして私に何度もこう尋ねた。「髪を切って一体これからどうするつもり?」って。

チェルシー:こうやって今、ディマーヤの髪を目にして思うことは1つだけ。すごいわってこと! 今までインターネットで多くの女性が地毛のまま伸ばしている姿を見てきたけど、今こうして目の前に実際に行動に移した人を見ることができて、すごく刺激を受けたわ。

ディマーヤ:切った最初の週は丸坊主になったような気分だったわ! 一番つらかったのは、母が否定的だったこと。母は黒人の女性が健康的に美しく髪を伸ばせるとは思ってなかったの。 正直なところ、私自身も最初は信じきれなかった。でもYouTubeの映像を見て、これなら大丈夫だと思えた。

チェルシー:私が初めて髪を縮毛矯正したのは、6歳の時だった。私の毛量がすごく多かったから、母親は本当に手を焼いていた。私の髪をとかすと、「ねぇ、クシがどこかに消えちゃったわ」なんて言っていた。そして昨年の9月に、ようやくストレートにした部分を切ることにしたの。でも今でもつけ毛は使ってる。だってどう扱っていいのかさっぱりわからないから。私は自分が快適だと感じる髪形にしたい。それに地毛を伸ばすのは大変なのよ。健康的な髪に見せるには、本当にすごい時間をかけてブラッシングしなきゃならないの。私たちは出掛けにパっと髪を一つにしばって家を出るというわけにはいかないのよ。

ディマーヤ:私たちが自分の髪をどう取り扱えばいいのかわかったのは、本当にここ数年のこと。すごい進化よね!

チェルシー:私にとっては、髪を縮毛矯正すること自体がすごく不思議に感じる。まるで白人や混血女性の髪になろうとしてるみたい。

No 7

黒人男性の多くが、黒人女性の美を評価しない

ムニーシャ:私たち人間は自分にないものを持ちたいという願望があるからだと思う。白人の人たちは肌を黒くするために日焼けをするし、黒人の人たちは肌を白くしようとする。ヒンドゥスタン(インドの北部、ガンジス川流域までの大平原)の文化では、色白の肌を持つということがすごく重要視されてるの。それは赤ちゃんが生まれた時から始まってる。赤ちゃんが生まれると、訪ねて来た人たちはまず赤ちゃんの肌の色をチェックするのよ。もし赤ちゃんの耳の色が色黒だったら、その子は色黒に育つと言われてる。肌の黒い人たちは、ファンデーションを使ってできるだけ色を薄めようとする。肌の色を白くする特別なクリームもあるし、肌を脱色する人もいれば、中にはレーザー治療を受ける人も。

ディマーヤ:本当? レーザー治療のことは全く知らなかった。私たちは髪のことについてこうやって話すけど、世の中にはこういう問題があるってことさえ知らない人もたくさんいる。だから今回こうやって私たちの声がちゃんと届けられるというのがすごくうれしいわ。

ムニーシャ:私も同感よ。私たちの文化では肌の色がとても重要視されてる。一般的に色白はより裕福で、より重要な存在として見られるの。ボリウッドの映画を見れば、美の基準が一目瞭然でしょ?

ディマーヤ:スリナムではみんなよくこう言うの。「彼女は美しい色白の肌をしてるね」と。黒人女性の美しさはなかなか認めてもらえない。またショックなのは、黒人男性の多くが黒人女性を美しくないと言っていること。

チェルシー:黒人女性は怠慢で醜く、髪も美しくないって。ソーシャルメディアを見ると、よくそういう投稿を見かける。

ディマーヤ:私たちはスラム街で暮らし、声も大きく、低学歴だと思われてる。実際にはステキで親しみやすい高学歴の黒人女性がたくさんいるのに。美白クリームのCMを見た時は本当に驚いたわ。大まじめに「色白の肌の方が美しい」なんて宣伝してるんだもの。

チェルシー:私たちはありのままの容姿で幸せになれないのかしら? でも、ほら、整形する人たちのことを考えることもあるんだけどね、なんと白人の人たちは唇を厚ぼったくさせたいんですって。 (写真12)

化粧品市場は、白人女性のことしか視野にない。「ブラックビューティー」は褒め言葉なのか侮辱なのか

ムニーシャ:メイベリンやロレアルのような大手化粧品会社は、ここオランダで黒人女性用の化粧品を販売していない。肌のトーンは全部で22種類あるのに、たった12種類しか販売してないの。化粧品市場全体が、白人女性のことしか視野に入れてないのよ。

チェルシー:子どもの頃、白人の赤ちゃん人形をもらったの。でもその後に黒人の人形をもらったら、白人の人形は捨てちゃった!

ディマーヤ:私の妹は黒人の人形を欲しがらなかった。思うに、子ども心に世の中の美の基準をわかってたんだと思う。

チェルシー:バートスミットやインタートイズなど、オランダのおもちゃ屋のチェーン店で黒人の人形を販売していないことを知っても別に驚いたりしないわ。それはソーシャルメディアで人種差別的な投稿をされているのを見るのと同じこと。うんざりはするけど、私にはどうにもできないことと思ってしまう。

ディマーヤ:私も気にするのはやめたわ。以前はすごく悩んだこともあったけど。それよりも他の黒人、特に黒人男性が黒人女性の良さを理解していないことがすごく悲しい。彼らは大抵白人女性の方が好きなのよ。例えばオランダのサッカー代表チームの黒人選手たちは、ナイジェル・デ・ヨング以外はみんな白人の奥さんや恋人がいる。

No 9

ムニーシャ:たとえ自分の肌の色に自信を持っていても、傷つくこともあるのよ。例えばヒンドゥスタン人の女の子が全然魅力のない男性と結婚するという場合、周囲からこう言われるの。「あなたは色黒なのに結婚できるんだから幸せだと思わなきゃ」って。あるいは「あなたは美人だけど黒いわね」なんて言われたりする。こんな言葉を耳にするとすごく悲しくなる。まるで色黒なことが欠点みたいじゃない。でも有難いことに、母は私の肌をそんな風には見なかった。

チェルシー:そうなの? 昔からそうだったの?

ムニーシャ:ええ、そうよ。と言っても、母のような価値観を持つ人は全体の中のごく少数だけどね。

チェルシー:数日前、フェイスブックに写真を投稿したら、ある人から「ブラックビューティー」みたいなことをコメントされたの。その時に思った。「この人は、肌が黒いわりには美しいという意味で書いたのかしら?」って。

ディマーヤ:ある時外出したら、黒人の男性に言われたわ。「3人の色黒美人。すごく珍しいな」って。私はそれを褒め言葉と取っていいのか、侮辱なのかよくわからなかった。

チェルシー:多くの人が色白の子どもを欲しがっている。なぜなら「まっすぐな」髪に「色白」の肌を持っているから。それってすごく愚かだと思うわ! 本当に馬鹿げてる。なぜ男も女ももっと柔軟な考えを持って、多様な容姿の子どもを持とうとしないのかしら。私はあるがままの自分を尊重してほしい。

ムニーシャ:それに親は子どもがどんな容姿で生まれてくるかなんて選べないのよ。妹は私より色白で、より中国人の父親に似てる。私はヒンドゥスタン人の母親の方に似たの。

チェルシー:私は「ズワルト・ピート」の論争(※)については触れたくないけど、でもこの騒動で肌の色についていろんなことが明らかになったのは確かね。それはまるで、私たちが試されてるみたいだった。みんなが突然このテーマについて語り出し、本音が明かされた。もし自分に自信を持っていれば差別的なコメントや意見を見ても無視できるけど、そうでない人たちにとってはかなりつらいんじゃないかしら。
(※ オランダではクリスマスの時期、サンタクロースと一緒に黒人の従者「ズワルト(黒い)・ピート」が、道化役として街を練り歩く。この伝統が人種差別的か否かについて、毎年論争が起きている)

ディマーヤ:私はクラスで唯一の黒人だった。だからこの話題についてクラスメートたちが冗談を言った時には、すごく居心地が悪かった。それで授業で話し合いをする時には、常にそのことを口に出して説明しなきゃならなかった。「なぜ私だけ何度もこうやって説明し続けなきゃならないの?」と思ったものよ。

No 6

オプラ・ウィンフリーに刺激は受けるけど、一番のお手本はやっぱり母親

ディマーヤ:私の場合は、オランダ商業放送チャンネルRTLのお天気レポーターの女性がそうね。彼女は最高よ。

チェルシー:確かにステキよね。

ムニーシャ:オプラ・ウィンフリーにすごく刺激は受けるけど、私のお手本とはまた違う。やっぱり私にとっては母親が一番のお手本よ!

ディマーヤ&チェルシー:その通り!

ムニーシャ:母はいつも私の支えになってくれているし、どんなことがあっても理解してくれる…

チェルシー:私の母は今までいろいろ人種差別を受けて、つらい経験をしてきたの。職場でもそうだった。でも母は女性として、またリベリア人として常に凛としていた。私だったら取り乱しそうだけど、母はそよ風のように冷静さを失わないの。

ディマーヤ:数週間前のことだけど、母はある仕事に応募するために職業安定所に電話したの。すると電話に出た女性はこう言った。「私どもはスリナム人の採用は行っておりません。求めているのは勤勉な人たちで、スリナム人はそうではないと伺っております」

ムニーシャ:それ本当?

チェルシー:ひどい!

ディマーヤ:すごくショックだった。母はその翌日、その女性に再度電話をかけて、昨日の発言に傷ついた旨を伝えた。私だったらもっと怒っていたはず。その時にハッとさせられたの。それまで私は自分が黒人だということで様々な機会を逃しているとは思ったこともないし、自分が他の人と違っているとも思っていなかった。だからズワルト・ピートの論争が起きた時に、頬を叩かれたような衝撃を受けたんだと思う。ああ、世の中にはまだこんなに人種差別主義者の人たちがたくさんいるんだって。改めて思い知らされたわ。

チェルシー:先日、フェイスブックで書かれたあるコメントにメッセージを書かずにはいられなかったことがあった。見知らぬ女性が「その黒人どもを懲らしめろ」というような投稿をしていたから、私は自分の中にあった全ての怒りを込めて回答したの。そしたら面白いことに、翌日その女性から「申し訳なかった、許してほしい」とメッセージが届いた。私は信仰深いから、こう考えるようにしてる。「神は全てを見ておられる。だから私は自分のことに集中しよう」と。

ディマーヤ:私も同感。潜在的にだけど、自分が既成概念に染まらないようにと言い聞かせてるところがある。私の母はいつもこう言ってたわ。「常に前向きな行動を取ること。自分がなりうる限り善良の人になりなさい。そうすれば誰もあなたを非難することはできないから」

ムニーシャ:少しずつ改善されている面もある。例えばディズニー映画の『プリンセスと魔法のキス』では、黒人のプリンセスが初めて登場した。またオランダのテレビチャネルでは黒人女性の司会者起用を増やす動きも出ている。それに私たちの肌にはいい面もたくさんあるのよ。皮膚が厚いからシワができることもほとんどないし、日焼けして困ることもない。

チェルシー:そして、それって美しいのよ!

NO 2

INSPのご厚意による/ Z! Amsterdam





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