こんにちは!ビッグイシューオンラインの小林美穂子です。

ホームレス支援の団体に勤めている関係で、「ホームレスって好きでやっている人もいるんでしょ?」という質問をされることがあります。外で寝るということは常に危険と隣り合わせ。警官や警備員に追い払われることもありますし、夏は熱中症、冬は凍死、そして一年中を通して通行人や少年たちに唾棄されたり、侮蔑的な言葉を投げられたり、ひどい時には暴行されて殺されてしまうケースもなくなりません。これまでに少なくない数の路上生活者の方々と出会ってまいりましたが、私が知る限り、路上が好きで路上生活を続ける人はいませんでした。

誰もが安心、安全な部屋を持つのが当たり前、そんなふうに誰もが考えてくれるといいなぁと夢想します。今日はアメリカでストリートペーパーを販売する男性の独白をお届けします。

ストリートペーパー販売者の告白:「金も家も人生もない。疲れたよ」

(※ストリートペーパー:ホームレスの人の仕事をつくり自立を応援するために発行される雑誌や新聞。日本ではビッグイシューがある)

Street sense author tyrone hallcredit street sense staff

アメリカの路上で雑誌「Street Sense」を販売するタイロン・ホーンが、ホームレス生活のストレスや、どのように希望を持ち続けているかをエッセイにしてくれた。

ワシントン州でシェルター生活から抜け出せない62才のタイロンは、同僚の販売者が住まいを手に入れたことにかすかな希望をつないでいる。「雑誌に、家を手に入れて鍵を持っている男の記事を見たんだ。それが俺に希望をもたらした。だけど、一体いつになったら自分の番が回ってくるのか、それが何年先になるのか…」タイロン自らがその気持ちを文章にまとめてくれた。

エッセイ:タイロン・ホール/STREET SENSE-USA

生活は苦しいよ。そして事態は何も改善されない。

そうさ、俺は毎日外でストリートペーパーを売っているよ。だけどお金はないし、家もない。俺には人生がない。

62才だが、これまでずっと一人だった。生きるのに疲れたよ。

ニューヨークアベニューのシェルターにいたんだ。そこで市の福祉担当者にホームレス状態の人たちに住まいを与える新プログラムがあるって聞かされたんだ。「10年前に言ってた他のプログラムはどうなったんだよ?」って俺は聞いたよ。

市に住まいを供給して欲しいって言っているんじゃないんだ。だけど役人が向こうからやってきた。そして言うんだ。「住まいをサポートするって」

でも、そのあとはなしのつぶて。彼らは「家に住む」ことがいかに大変かを強調するみたいに、俺にいろんな個人的な質問を聞いてきた。一人暮らしができそうか?アルコール依存症はないか?何らかの障がいがないか?で、そのあとは何の連絡もなし。俺の生活は何一つ変わっちゃいない。 雑誌に、家を手に入れて鍵を持っている男の記事を見たんだ。それが俺に希望をもたらした。だけど、一体いつになったら自分の番が回ってくるのか、それが何年先になるのか…

シェルターでは調査のためにいろんな質問に答えないとその日のベッドが得られない。だけど、答えたからってやっぱり家は手に入らない。何の見返りもないのに、どうしてそんな調査に参加しなくちゃならないんだ。 こういうわけで、俺は生きるのにとても疲れてしまった。福祉の担当者は人にぬか喜びばかりさせる。彼らが新しいプログラムを導入しようとして、それがまったくうまくいかなかったとしても、俺たちに同情なんてしないんだ。それどころか、俺たちの責任だと言われる。俺たちがもっとしっかりしていればいいのにって思うんだ。出口なんて、少しも示してもくれないで。

INSPの厚意による/STREET SENSE





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ビッグイシューについて

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ビッグイシューは1991年ロンドンで生まれ、日本では2003年9月に創刊したストリートペーパーです。

ビッグイシューはホームレスの人々の「救済」ではなく、「仕事」を提供し自立を応援するビジネスです。1冊350円の雑誌を売ると半分以上の180円が彼らの収入となります。