ビッグイシューオンライン編集部より。12月1日発売の300号から、毎号各地のビッグイシュー・ストリートペーパーの販売者を紹介している「今月の人」を転載します。 
ゾランには「夜明け」という意味があるが、早起きの彼にはまさにぴったりの名前だ。いつも朝8時きっかりに、ストリートペーパーの販売を始めている。


現在37歳のゾランは、セルビアの出身だ。しかし彼が6歳の時に、暴力を振るう父親から逃れるため、母親は2人の子どもを連れて、この街、すなわちオーストリア第3の都市リンツへと逃れてきた。母親が幼少時代をオーストリアで過ごしていたこともあり、家族全員がドイツ語を流暢に話せた。

でも学校では外国人扱いされ、いじめに遭い、居心地はよくなかったよ。
とゾランは話す。
太っていたから、“ぶさいく”と呼ばれてた。移住してきた子どもたちの多くは最終的に『Sonderchule』という特殊支援学校に行きつくことが多かった。
学校を卒業すると、大工の見習いとして働き始めたが、落ちこぼれてしまった。それからは時々働く程度だった。18歳の時にはセルビアに戻って軍に入り、兵站にまつわる任務についていた。
しかし軍に入って11ヵ月が過ぎた頃、彼は自分が精神的な病にかかっていることに気づき始める。そしてつらい時期を経て、彼は再びオーストリアへと戻ってきた。ゾランが兵役に就いていた97年前後、セルビアはコソボ紛争のただなかにあったが、その当時のことは話したくないという。
病気で働けなくなった数年後、僕は疾病年金を受け取れるようになった。今じゃ『クプファーマクン』の販売を始めて14年になる。そして売るだけじゃなく、この雑誌に自作の詩を投稿することも続けてるよ。
300kongetsunohito1

 彼にはホームレスだった時期が3年間ある。当時は地元にある緊急シェルターを利用したり、リンツの中央駅であるハウプトバーンホフの敷地にもぐりこみ、廃墟となった古い客貨車の中でよく寝ていたそうだ。
その後 カトリック系慈善団体カリタスの『インビタ』というプロジェクトと出合うことができ、それ以来彼らが用意してくれた仮の住まいで暮らしてるよ。
『クプファーマクン』は家族のような存在なんだ。販売者たちが集うカフェにもよく行ってる。お気に入りの販売場所はビショップ通りさ。
とゾランは言う。彼が『クプファーマクン』のバッグを持って販売する姿は、今ではなじみのある街の風景となっている。
販売で得た収入は主に食べ物とコンピューターゲームに使ってる。『ルーンスケープ』『ワールド オブ ウォークラフト』や『マインクラフト』がお気に入りなんだ。よくオンラインで他のプレイヤーたちと対戦してるんだ。
また、『クプファーマクン』による2016年のカレンダーの7月にはゾランが登場している。街の中心にあるお城、シュロスベルクで撮影されたものだ。
300kongetsunohito2
『クプファーマクン』2016年カレンダーより
「リンツの中でお気に入りの場所なんだ。背景には街のシンボルであるペストリンクベルク巡礼教会も見えるよ」
将来のことを考えると、「孤独を感じることが多いから、彼女ができたらうれしい」と彼は言う。また世界が平和であることも願っている。なぜなら戦争の恐ろしさを、彼は身をもって経験しているからだ。
「僕は年老いるまで『クプファーマクン』を販売できたらと思ってるよ」
(Heinz Zauner / Courtesy of Kupfermuckn, INSP.ngo/独英翻訳: Catherine Demaison-Doherty / Translators Without Borders)

Photos: Heinz Zauner

 『Kupfermuckn』
●1冊の値段/2ユーロ(約230円)、そのうち1ユーロが販売者の収入に
●販売回数/月刊
●販売場所/リンツ、ヴェルス、シュタイアなど




ビッグイシューをいいね!で応援!



最新情報をお届けします

無料メルマガ登録で「ビッグイシュー日本版」創刊号PDFをプレゼント!



過去記事を検索して読む


ビッグイシューについて

top_main

ビッグイシューは1991年ロンドンで生まれ、日本では2003年9月に創刊したストリートペーパーです。

ビッグイシューはホームレスの人々の「救済」ではなく、「仕事」を提供し自立を応援するビジネスです。1冊350円の雑誌を売ると半分以上の180円が彼らの収入となります。