貧困、就業、教育といった社会課題の増加に伴い、社会的企業・社会的起業、ソーシャルビジネスについて興味を持つ人が増えてきました。
今回はそんな人たちへの応援の気持ちを込めて、ビッグイシュー・オンライン編集部がおススメする「社会企業」「社会起業」関連の書籍をお伝えします。


「社会的企業」の定義

「社会的企業」とは、ビジネスの手法や戦略を用いて社会的な病弊と戦う組織(英国の定義)。機関や形態によって詳細は異なりますが、ポイントは以下の2点となります。

① 社会や環境問題の解決のために活動する
② 利益・利潤を更なる社会的・環境的問題解決のために再投資する


また、この組織を立ち上げることを「社会的起業」と言います。

ビッグイシューは、「ホームレス状態の人々に仕事を提供することで、自立のチャンスを提供する事業」で、雑誌「ビッグシュー」をホームレスの販売者が路上で販売しています。
最初の10冊は販売者希望の方に無料で提供し、その売上を元手に、以降は1冊170円で仕入れてもらう仕組みです。1冊180円が販売者の収入になります。

上記の定義に合わせるならば、ビッグイシュー日本は

① ホームレス状態の人が路上生活から脱出する手助けをするための活動
② 利益・利潤は、次号の雑誌編集・発行、販売サポートに再投資する


という事業といえます。

「社会的企業」に疑問を持つ記事への反論

「社会的企業」で検索すると、その解説となる情報はもちろんのこと、批判的な記事も目にます。
たとえば、<社会的起業を志す世代は、「誰からも嫌われたくないだけ」に過ぎない><頑張っても世の中に与える効果はない>などと、社会的起業を志す人たちに疑問を呈する記事もあるようです。 しかし、まず「誰からも嫌われたくないだけ」という論に反論させていただくと、社会的起業をしたからといって人に嫌われないことなど全くありません。

むしろ、世の中の「当たり前」に疑問を持ち、変えようとしたとき、普通に過ごしているより摩擦が生まれるのは当然です。嫌われたくないならむしろ、摩擦のなさそうな仕事をこなす方がよいでしょう。このような批判は、実態を知らない人が想像で書いた的外れなものと言えるかと思います。

また、「社会的企業が効果があるとも思えない」という意見についても反論するならば、たとえばビッグイシュー日本の場合は10年以上の活動の中で、ホームレス状態の販売者たちに10億円以上の収入をもたらし、1割の販売者はビッグイシューを経て住所や仕事を得ることができています。

「おかしいものはおかしい」「こういう社会であってほしい」と願い、行動する人が増えることは何ら不健全なことではないですし、あるべき社会の姿だと信じています。

「社会的企業」を志すあなたへのオススメ本

そこで、ビッグイシュー・オンライン編集部の各メンバーがオススメする社会的企業・社会的起業本を紹介したいと思います。社会的企業の研究の参考にしていただければ幸いです。

【国内事例】

Sign with Me 店内は手話が公用語

聴覚障がい者である柳匡裕氏が、手話が公用語のカフェ「-Social Cafe- Sign with Me」を立ち上げるまでの思いや苦労を綴った一冊。ろう者と聴者(ろう者に対して、音が聞こえる人)との間にいまだ存在する社会的な壁と、そんな壁を乗り越えるための"バリアオーバー"の工夫や知恵が散りばめられています。Sign with Meが登場する『ビッグイシュー日本版』307号と一緒にお楽しみ下さい!(S.K)

「社会を変える」を仕事にする: 社会起業家という生き方

訪問型病児保育のビジネスモデルを作ったNPOフローレンスの代表の本。読みやすい語り口調なので、NPOの活動が身近に思えると思います。人の痛みを自分ごとに思う力を大切に、まずは自分から動かなければと感じさせられる本です。(S.M)

「カタリバ」という授業―社会起業家と学生が生み出す “つながりづくり”の場としくみ

高校生にコミュニケーションのプログラムを提供して、若者の意識改革に実績をあげている「カタリバ」。最近は被災地の子供たちの学習支援なども進めています。この画期的なNPO創設メンバーのストーリーを軸に、彼らの方法論や試行錯誤が語られます。「社会的企業」「動機づけ」「組織論」「コミュニケーション」…様々に考えるきっかけをくれる一冊です。(K.M)

僕はミドリムシで世界を救うことに決めた。

『ビッグイシュー日本版』222号の特集で知った「ユーグレナ」。始まりは創業社長の出雲さんが18歳の時にバングラディシュで「世界から栄養失調をなくしたい」と思ったことです。世界の人口が増えると深刻化するのが栄養不足とエネルギー不足。その問題を一挙に解決できる可能性を秘めるミドリムシ、学名「ユーグレナ」を発見し、その大量培養に世界で初めて成功。とはいえ最初の3年は倒産の危機、営業に全国を飛び回った…。「この世に、くだらないものなんてない」と出雲さんは断言します。ユーグレナ(と出雲さん)の可能性を信じて他分野の「天才」が集まり形になっていく過程がとてもドラマチックで、一気に読めます。(M.S)


【日本人による海外での事業事例】

裸でも生きる―25歳女性起業家の号泣戦記

バングラディシュ発革製品のブランド「MOTHERHOUSE」ができるまでを、生みの親である山口絵里子さんが綴った話です。タイトルの通りの「号泣戦記」。バングラディシュで一から事業を始めるまで、また始めてからもとにかくよく泣く山口さんの姿に親しみを覚えました。特別な人でなくたって、普通の人であったって、強い情熱と果てしない努力があれば夢は実現できるのだなと、勇気をもらえます。(K.N)

前へ ! 前へ ! 前へ ! ― 足立区の落ちこぼれが、バングラデシュでおこした奇跡

バングラディッシュの田舎の教育格差をなくすためにパッションと行動力で映像授業をなしとげた若者の話です。ルールを守るとトラブルは少なくなるが、化学反応は起こらない…と感じ、勇気づけられました。そしてこの方の笑顔がとても素敵なのが印象的です。(S.M)

世界と、いっしょに輝く―エシカルジュエリーブランドHASUNAの仕事

世界のために何かしたいという想いから発展途上国の開発を学んだものの、進む道に迷い、ビジネスを通じて世界を変えることを決意した白木さん。エシカルジュエリー「HASUNA」ができるまでの話や、HASUNAが大切にしていることなどが綴られています。挿入されているジュエリーの写真も美しいのですが、なによりも文章が美しい!(K.N)


【海外事例】

貧困のない世界を創る

マイクロクレジット(無担保少額融資)で貧しい人々の自立を支援するグラミン銀行。その創設者であり、ノーベル平和賞も受賞したムハマド・ユヌスが語る理念と実践はスケールが大きく、かつ情熱的。胸が熱くなります。グラミン銀行についてはもちろん「ソーシャル・ビジネス入門」としても読み応えたっぷりです。(K.M)

世界を変えるオシゴト 社会起業家になったふたりの女の子の感動物語

チベットのヤクの毛を使い、フェアトレードのニットのビジネスを立ち上げた二人の女子の物語。読んでいてとても勇気づけられ、明るい気持ちになる素敵な本です。ハーバード大のケネディスクールで学んだことはこのお二人には大きなアドバンテージだったのだと思います。学生さんは何のために勉強するのか、がわからない時に読むと勇気づけられると思います。(S.M)

あなたには夢がある 小さなアトリエから始まったスラム街の奇跡

スラム街で生まれ育った著者が、高校のアートの時間に出会った陶芸が彼の人生を変えます。生活の立て直しに直結しそうな職業訓練などとは、一見対極にあるように見える、アートなどのクリエイティブな活動が、その人の人生のやり直しにどれだけ力を与えてくれるのか、読むほどに実感をもって迫ってくる一冊。(T.N)


▼ビッグイシューの活動を紹介した本

・社会を変える仕事をしよう ビッグイシュー 10年続けてわかった大事なこと


・ビッグイシューの挑戦

→ビッグイシュー日本代表の佐野章二による著作。

ビッグイシュー 突破する人びと―社会的企業としての挑戦

→著者からのコメント(Amazonより)
一般の市民たちが日々の仕事そのものを、直接に社会問題の解決に向けようとするビッグイシューの発想は、私の硬直的な仕事への思い込みを180度転換させた。 人は、それぞれの職業を持ち、社会の中でそれぞれの役割を担っている。この世界は、一人ひとりの小さな「仕事」の累積でできている。だとすれば、自分の仕事を変えることで世界も変えることができるのではないか、と私は思った...。

今、この日本の社会があらゆる意味で危機的状況にあると考えるなら、その社会を変える最も刺激的で情熱的な社会的企業が、このビッグイシューではないか、と私は思った。

▼社会的起業を扱ったビッグイシューバックナンバー

259号 特集「20代、生き方としての社会的起業」

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・働きたい仕事を作った 和える/矢島理佳
・社会の闇から逃げない TEDIC/門馬優
・小さい故郷愛に目覚めて トラ男/武田昌大
・ネットワークを生かした e-Education/税所篤快
・時間を共有できるツアー リディラバ/阿部敏樹
・ずっとプレイヤーでいたい 食べる政治/増沢諒

上記の方々にインタビューをしています。読みどころはこちら

今後もオススメ本があれば追記してご紹介していきますので、お楽しみに!






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ビッグイシューについて

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ビッグイシューは1991年ロンドンで生まれ、日本では2003年9月に創刊したストリートペーパーです。

ビッグイシューはホームレスの人々の「救済」ではなく、「仕事」を提供し自立を応援するビジネスです。1冊350円の雑誌を売ると半分以上の180円が彼らの収入となります。