アマゾン川流域での公共事業を獲得したい企業が政府高官に巨額の賄賂を贈り、熱帯雨林とその地に暮らす先住民の権利を脅かしている。

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©photo-ac


あらゆるものに感染する病気のように、アマゾン熱帯雨林一帯に汚職が蔓延している。
ペルー北部サン・マルティン県タラポトに1,600人を超える参加者を集めた大規模フォーラム「第8回パンアマゾン社会フォーラム(FOSPA)」の席で、土地司牧委員会でコーディネーターを務めるルベン・シケイラはこう述べた。当フォーラムは、森林、水、土地、この地域に暮らす先住民の権利を保護するための24の提言をまとめ、5月1日の午後に閉幕された。

このフォーラムで採択された「タラポト宣言」では、社会運動の代表者、先住民族の指導者、学者らが「アマゾン・アンデス地域における資源採取のモデルやメガプロジェクトに関連した汚職を非難し、これと闘う」ことに合意した。これは、9つの作業部会に分かれて行われた4日間(4/28-5/1)の審議の結果である。審議では、汚職非難と「ラヴァ・ジャット捜査」対象となったブラジル企業による工事の社会・環境・経済面での影響に重点が置かれた。
今回の提言及び決定は、各国の国家機関における適切な意思決定者に提示されます。
フォーラム主催者のひとりで、「人類学と実践への適用のアマゾンセンター」(CAAAP)事務局長を務めるイズマエル・ベガは言う。

ブラジルの汚職摘発「ラヴァ・ジャット作戦」

ブラジルで3年前に始まった「ラヴァ・ジャット作戦」は、建設大手オデブレヒト社をはじめとする国内企業がアマゾン流域などで実施される公共事業の契約を獲得すべく巨額の賄賂を政府高官に渡していたという事件の捜査をいう。結果、賄賂工作は南米およびアフリカの10数カ国に及ぶ範囲で行われていたことが発覚した。(アンゴラ、アルゼンチン、ブラジル、コロンビア、ドミニカ共和国、エクアドル、グアテマラ、メキシコ、パナマ、ペルー、モザンビーク、ベネズエラ。)

米国司法省がまとめた2016年12月度報告書によると、オデブレヒト社幹部はこれらの国で契約を獲得するため2001年から2016年までの間に8億ドル近くの賄賂を渡し、30億ドルの収益を得たと供述。対象国にはアマゾン流域8カ国からも5カ国(ブラジル、コロンビア、エクアドル、ペルー、ベネズエラ)が含まれていたため、今回のフォーラムではこれらの国々の社会運動代表者、先住民族の組織、研究者らが汚職の通報と闘いで協力していくことに合意した。これら5カ国にボリビア、ガイアナ、スリナム、フランス領ギアナを合わせて「アマゾン流域国」とされる。(フランス領ギアナの代表者も今回のフォーラムに参加した。)

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アマゾン川の流域
©wikimedia commons


ペルーの高速道路建設でも汚職

ブラジルに次いで検察庁による捜査が大きな進展を見せているペルーでは、アマゾン・アンデス地域をペルーからブラジルまで貫く「南米大洋間高速道路」を建設中である。

この建設契約獲得のため、オデブレヒト社幹部はアレハンドロ・トレド元大統領政権時代(2001-2006年)に少なくとも2,000万ドルの贈賄を行ったことを認めている。ペルーの検察当局はブラジルのカマルゴ・コレア社についても同建設事業における不正支出を捜査中である。

汚職は組織的なもの。建設メガプロジェクト、偽造IDや偽造証明証による森林伐採、資源採掘事業、これらへの投資を優遇する法律などで行われているのが実情。
そう語るのはブラジル・カトリック教CPTコーディネーターのルベン・シケイラ。

環境活動家が60人以上殺害されている

シケイラはじめ代表者らが強調するのは、驚くべき数の環境活動家が殺害されているという事実。CPTの報告によると、2016年にブラジルで殺害された活動家は61人にのぼり、うち47人がアマゾン流域出身者だった。

コロンビアの団体「ミンガ」の代表オルガ・スアレスも、自国で起きている環境活動家の殺害を非難した。コロンビア検察当局による捜査は25年もの月日を要するのだと言う。
捜査はあまりにも遅く、無罪放免になるケースが多過ぎる。

自然保護は、地域高齢者の知恵を守りつつ次世代の考えも尊重していこう!

今回された24の提言には、「地域社会およびその他の地域出身の女性、特に女性人権擁護者に対するあらゆるタイプの暴力を終わらせる必要性」も含まれる。また国家に対しては、女性の権利、身体及び土地に影響する法律制定や公共政策の決定においては宗教上の教えは考慮しないことを求めた。先住民の集団的権利および先祖伝来の知識を認めることも重視された。

同様に、自然保護に関しては地域高齢者の知恵を守り、子どもや若者の考えを尊重し理解することを国家に求めた。フォーラムでも作業部会と並行して、200人近い若者がタラポトから約30分の距離にあるラマス村に集まり、多くの汚染地域を見て回り、地域社会が森林や水源を守るために行っている活動について学ぶプログラムが行われた。

参加者のひとり、13歳のハンマルコ・フローレス・ウマニは、1980年から2000年まで続いた内戦で最も大きな被害を受けた地域のひとつ、ペルー南部の山岳地方アヤクーチョ県に暮らすケチュア族だ。彼は干ばつ時に備え、雨水の貯水池づくりをすすめており、同県キスピヤクタ出身の若者たちによるネットワークの主宰者でもある。

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ハンマルコ・フローレス・ウマニ、13才。ケチュア族で、ペルー南部の山岳地方アヤクーチョ県で貯水池をつくる彼はこのアマゾン流域ソーシャルフォーラム内のユースミーティングに参加するために初めてアマゾン地方にやってきた。
Credit: Milagros Salazar/IPS

夢の中で山の精霊の声がして、自然の水の守り方やラグーンの作り方を教えてくれるんだ。
アマゾン流域でのフィールドワークに初めて参加したハンマルコは言う。またいつか、ここに戻ってきたいと願っている。

 文: ミラグロス・サラザール
 翻訳監修:西川由紀子
 Inter Press Serviceのご厚意に感謝して/ INSP.ngo
*本記事は2017年5月にINSP掲載された記事を翻訳したものです。
 *photo-acの写真は本文とは関係ありません。

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