市民の手による地域発電所でエネルギーを生み出し、原発や化石燃料に依存しない安心で安全で持続可能な社会を実現しよう―。

 11月2日~4日、福島市で「市民・地域共同発電所全国フォーラム」が開かれ、多様でユニークな取り組みが報告された。


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全世界の再エネの設備容量が2015年、石炭発電を抜く

 2015年9月、国連の持続可能な開発目標(SDGs)に、再生エネルギー(再エネ)の拡大が盛り込まれ、同年12月には温室効果ガスの排出削減を世界的に目指すパリ協定が採択された。その後、世界は再生可能エネルギーへと急発進している。

 日本では、政府や大手電力会社が原発再稼働を急ぐが、逆に地方に目を向けると、福島第一原発事故後に制定されたFIT(再生可能エネルギー固定価格買取制度 ※1)を追い風に市民が立ち上げた地域発電所が着実に成長している。

 フォーラムではまず名古屋大学の高村ゆかり教授が基調講演をした。「2015年という年は歴史的にエネルギーの転換点になったのではないか。私たちは今、再生可能エネルギーのトランスフォーメーション(変革)を目の当たりにしている」と述べ、SDGsが2030年に目指す姿と再生可能エネルギーをアップさせる方針を示した。

 さらに、15年には、史上初めて再エネの設備容量が全世界の石炭発電の設備容量を超え、急激な再エネへのシフトにより投資額も増え雇用も伸びていると報告。「日本でも原子力を超える雇用が再エネで生み出されている」一方で、大手電力会社による再エネのベースロード化(※2)や送電のための系統接続の推進が必要なことに言及。国・政府による再エネ事業への投資の必要性も指摘。地球環境や持続可能な社会づくりのために、やれること、やるべきことはまだまだたくさんあると、会場の参加者を勇気づけた。

いずれ原発は不良債権化。どこよりも先に再エネ国家に

 続いて、地元・福島からは、注目の再エネリーダーの二人がそれぞれの取り組みを報告した。地域発電所「会津電力」の佐藤彌右衛門さん(喜多方市)、そして、「元気アップつちゆ」の加藤勝一さん(福島市)だ。

 会津電力の佐藤さんはまず「次の世代に何を残すのか、そう考えて会津電力を作った。会津は、猪苗代湖、田子倉ダム、奥只見湖など水資源が豊かな土地。戦後、東北を豊かにしようと会津にも水力発電用のダムが作られたが、結局、電気だけを首都圏に取られた」と、エネルギー搾取の歴史を語り、続いて「会津に降り注ぐ太陽光、吹いている風、降った雨は、私たち会津のものとして再エネに使い、地域を活性化する。いずれ原発が不良債権化するのは目に見えている。日本は早く原発を止めて償却し、どこよりも先に再エネ国家になるべきだ」と提言した。会津電力は17年9月から、自然エネルギーの共同購入を進める生活クラブエナジーと契約を結び、その会員に電力を供給している。

 福島市の土湯温泉で立ち上がったのが、加藤さんらの元気アップつちゆだ。温泉街の旅館16軒のうち、震災後に5軒が廃業、観光客も23万人から7万人に激減したなか、地熱バイナリー発電と小水力発電で土湯温泉街をエコタウンにした。今では、1年間に全国からの視察者約2500人が土湯温泉の旅館に宿泊するという。「自分たちの手で土湯温泉の復興と、夢と希望を全国に発信するのが目的」と加藤さんは話す。

 市民発電所の全国調査を行った気候ネットワークの豊田陽介さんによると、FITが始まった12年以降に発電所が急増したが、16年以降、送電線の容量がないという理由で、大手電力会社が系統接続の抑制をしているため、鈍化傾向にあるという。また、再エネの推進に伴って、資金調達、地球温暖化対策に取り組む行政との連携、住民への支援体制や人材ネットワークなど地域の社会的基盤を整えることが必要だという。そのためには、太陽光の買取価格低下や、設置場所不足、資金調達の問題、法令・規制など課題もあり、自治体や地域住民、売電先となる事業所などを巻き込む総合的な支援体制が重要なカギになると指摘。

 3・11後の日本での再エネ増加の動きは、静かなエネルギー革命と称される。パリ協定など国際的な動きとも連動する、地方でのゆるぎない動きが始まっている。

(あいはら ひろこ)

※1 再生可能エネルギー特別措置法で拡大。
※2 季節や天候、1日の時間帯などの条件に左右されず、年間を通して安定して一定量の電力を作り出すこと。


あいはら・ひろこ
福島県福島市生まれ。ジャーナリスト。被災地の現状の取材を中心に、国内外のニュース報道・取材・リサーチ・翻訳・編集などを行う。
ブログhttp://ameblo.jp/mydearsupermoon/

*2017年12月15日発売の325号より「被災地から」を転載しました。


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