福島第一原発事故後、福島県内には国により放射線モニタリングポスト(以下MP)が設置されている。そのうち約3千基が県内全市町村の学校、保育施設など、子どもの生活空間の放射線量を測定し、パネル表示する「リアルタイム線量測定システム」だ。しかし原子力規制委員会は今年3月、過去1年間の放射線測定値が低いMPから順次撤去し、測定を終了したり、別なところに再配置する方針を明らかにした。


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福島県内に設置されているモニタリングポスト

福島県内市町村がこぞって「時期尚早」「継続配置」の声

これを受けて、子どもを持つ母親らによる「モニタリングポストの継続配置を求める市民の会」などが、「子どもの生活圏域の線量が目で見てわかるMPは地元住民にとって安全・安心の根拠。配置を継続してほしい」と要望や署名活動を展開。ネットで集まった分を含めて約3千筆になった。

同規制委員会は測定終了の理由として、「環境中の放射線量の減少や除染・復興の進展で、結果が低い値で安定している」ことを挙げ、「すべてのMPをなくすのではなく、避難指示・解除区域など必要なMPは維持する」としている。しかし、住民が日常的に使っているMPが廃止される地域もある。福島県内の市町村からは「継続配置」「時期尚早」といった意見が最も多かったにもかかわらず、だ。同規制委員会への福島県および市町村の意見は主に次の通り。

・「公園等利用者、保護者らが線量を気にしており、継続配置が必要」「現状維持」「撤去は時期尚早、あまりにも唐突感」「一律に撤去前提で進めることに反対」(二本松市、郡山市、須賀川市、本宮市、鏡石町、石川町、三春町、平田村、小野町、西郷村、棚倉町、いわき市)

・「廃炉まで撤去は考えていない。除去土壌を中間貯蔵施設に運ぶ相馬福島道路と国道115号に新たに設置を」(相馬市)

・「(学校や公園などに埋設された)汚染土の搬出が終了するまで設置継続(搬出してからMP撤去を)」「再配置は遅らせて」(福島県、福島市、喜多方市)

・「地中や敷地内の汚染土と生活する市民にとって撤去は多大な不安材料」「撤去は国の震災対応への不信感を助長する」(福島市、二本松市)

・「毎時0・23マイクロシーベルト未満が『十分に低い』とする考えに異論」(二本松市)

・「国主催の住民説明会で、撤去や再配置など国の方針を丁寧に説明してほしい」「質問や苦情対応、広報は国の責任で対応を」(福島県、福島市、二本松市、郡山市、会津若松市、磐梯町、南会津町、いわき市)

・「村外で必要とする市町村への再配置は賛成」「異論はない」「リアルMP撤去後、別の地域に可搬型MP設置を」(西郷村、塙町、北塩原村)

・「同一時期の移設・再配置を」(磐梯町、会津坂下町、南会津町、新地町)

白河市では本年度7基撤去予定
地元住民への説明なく

 「市民の会」は4月以降、郡山、福島、いわき、伊達、会津若松、三春の各市町に維持を要望。5月24日にも、白河市在住の原あけみさん、元白河市民で現在いわき市の千葉由美さんら10人が白河市役所を訪れ、圓谷光昭副市長に要望書と白河市民や在勤者ら約80人分の署名を提出した。


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白河市の圓谷副市長(右)に要望する原さんら(白河市役所にて)

原さんは「MPは私たちにとって必要不可欠で、安全を守るための大切な目安。安心して子育てができるように他の市町村や県とともに国に対して継続配置を求めてほしい」と要望した。
圓谷副市長は「MPがなくなることに不安を感じている市民の方々やみなさんの声を真摯に受け止め、規制委員会に伝えたい。また住民説明会の開催を求め、開催決定時には市の広報でお伝えする」などと答えた。白河市の担当課によると、規制委員会からは、同市に93基あるMPのうち、本年度は7基を撤去するという説明があったという。

筆者の取材に対して同規制委員会は「市町村から個別に意見を聞き、対応を決めたい。一律に廃止ありきではない。今後各市町村で住民説明会を開催するが、時期は未定」と述べるにとどまった。
地元住民への説明なしで、地元を軽視する形で突然に打ち出された原子力規制委員会のMP撤去方針。今後説明会が開かれる方針だが、撤去ありきなのではないかと、住民の不信感が高まっている。
(写真と文/藍原寛子)

〇原子力規制委員会に福島県内自治体が寄せた意見と、それに対する同規制委員会からの回答
 www.nsr.go.jp/data/000224268.pdf (原子力規制委員会のホームページ)


あいはら・ひろこ
福島県福島市生まれ。ジャーナリスト。被災地の現状の取材を中心に、国内外のニュース報道・取材・リサーチ・翻訳・編集などを行う。
ブログhttp://ameblo.jp/mydearsupermoon/

*2018年6月15日発売の337号より「被災地から」を転載しました。

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