無駄に使われるプラスチック製品に目を光らせる消費者が増え、「過剰包装」といえば真っ先に思い浮かびがちな食品企業はこれまでのやり方を変えるよう圧力をかけられている。プラスチックに代わる新素材への投資をすすめ、その対象は、ロブスターの殻を細かく砕いたもの、もみ殻、新グラフェン系複合材などさまざまだ。

しかし、これで本当に地球環境は良くなるのだろうか?
 


食品包装のなかでも特にプラスチックが環境に極めて有害なことは以前から分かっており、食品業界はその問題の元凶だと、とかくやり玉に挙げられてきた。
だが、英国の大手食料品店の多くは、今の今まで、なかなか改善に向けて腰を上げようとしていない。

埋立地や海にとめどなく蓄積されるプラスチックを食い止めるよう、スーパーや小売店に「対策」を求める人がこれまで以上に増えている。この流れが高まったのは、2017年末、BBC(英国放送協会)が『Blue Planet II シリーズ』を放送したことが大きい。プラスチックが世界中の海洋生物に深刻な影響を及ぼしている事実をまざまざと見せつけ、海中ではなんと1平方マイル(*)あたり4万6千個ものプラスチック片が浮遊していることを明らかにしたのだ。

*約2.5平方キロメートル。皇居の敷地面積の2倍弱。

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イラスト:Steph Coathupe

マイケル・ゴーブ環境大臣さえも、プラスチックがからみついた海洋生物の姿や環境破壊ぶりが「頭から離れない」とコメント、何かしら対策を取ることを約束した。そして直後の2018年1月、メイ首相は今後25年以内に「回避可能な」 プラスチックごみをゼロにすると発表した。

小売業者はすぐさまこれに反応。スーパーマーケットチェーンを展開する「アイスランド・フーズ」は5年以内に自社製品すべてからプラスチック包装をなくすと発表、英国第2位のスーパーマーケット「アスダ」は今年度のプラスチック包装を10%削減するとの目標を打ち出した。

どんな取り組みでもプラスにはなるだろうが、環境団体に言わせると、政府計画は「弱腰」で、産業界による約束は必ずしも実現されるわけではないと批判的だ。国際環境NGO「地球の友」でプラスチック廃絶キャンペーンを担当するエマ・プリーストランドは言う。「企業がプラスチック汚染に取り組むのは良いことですが、彼らの約束や目標が実際に達成されたかどうかがはっきりしないのが問題です。」

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食品会社にとっては、プラスチック包装をゼロにするのは非常にわかりやすい対策だ。しかし、冷蔵・冷凍食品が大きな課題であると専門家は見ている。かつて大手食料品店がプラスチック包装廃止を試みた時も、店頭の食品が腐り、廃棄される食品が大幅に増えたため、計画は頓挫した。

マンチェスター大学で実施中のグラフェン研究

今、研究者や革新者(イノベーター)らは、プラスチックを使わない食品保存法を提供することでこの問題を解決できないかと、ありとあらゆる包装製品を考案中だ。

マンチェスター大学の研究者らが有望視しているのが「グラフェン(*)」を使用した新素材だ。大学内の「国立グラフェン研究所」では、グラフェンおよびその他二次元材料(*)の食品包装や他用途への使用を目指して研究が行われている。

*グラフェン:2004年頃に科学者のアンドレ・ガイムとコンスタンチン・ノボセロフが発見した新素材で「未来のプラスチック」とも言われている。発見した科学者たちは2010年度のノーベル物理学賞を受賞した。

*二次元材料:原子の二次元的結合構造を持った薄膜物質のこと。

「グラフェンの特性にはさまざまな利点があり、従来の包装材の代わりになるかもしれません。例えば、新しい膜技術によって既存材料の特性を変え、より薄いプラスチックを作り出すなどです。」

研究所の代表ジェームズ・ベーカーは、グラフェン薄膜を利用することの可能性を指摘する。

「グラフェン膜によって食品は自然に呼吸することができるので、食品の劣化を防げるのです。」

マンチェスター大学が6,000万ポンド(約85億円)をかけて新設した「グラフェン技術イノベーションセンター(GEIC)」が2018年末にオープンした。これにより研究者たちの仕事は加速するだろうし、包装材など食品業界向けのワークショップ開催も予定されているとのこと。

どんな素材が使われるにしろ、食品包装は「再利用可能で、持ちが良いものにし、使い捨てタイプはやめるべき」とプリーストランドは言う。新製品の設計者は、どうやって再利用/リサイクル/分解するのかと、製品の「行く末」をしっかり考えなければならないと。

グラフェンはプラスチックより優れているが、どれほど環境に優しく、実際にどれだけリサイクルが機能するかは現段階では分からない。

「グラフェンは地中・空中・体内に自然に発生する炭素からできています。ですが、いろんなタイプのグラフェン素材があるので、具体的にどういう包装に使われるのかをしっかり考慮する必要があります」とベーカーは説明する。

天然素材を使った包材

こうしているあいだも、世界中の起業家たちは、食品業界で発生する副産物など天然素材を使った新たな食品包装の考案をすすめている。

米国では、甲殻類の殻を細かく砕いたものや栽培した菌糸類などを使った包材が試験的に使われている。豪企業「アピラップス」は、油布を使った包材からヒントを得て、天然の蜜ろうや綿の食品包材の販売で成功している。

英企業「ハスカップ」は、大量に廃棄されているが完全なる生分解性物質とされるもみ殻を使い、再利用可能なコーヒーカップを製造した(参考)。「包材業界で働いていたときに、使い捨てプラスチックが大量に廃棄されているのを見て、大変ショックを受けたんです。廃棄文化も一時ほどではなくなりましたけど」創業者のリチャード・ミルトンは言う。

消費者ひとりひとりの姿勢を見直すことが必須


こうした変化が起きているものの、まだまだ出来合いの食べ物やコンビニ弁当などプラスチック包材を使った商品の需要は根強いと小売業者は言う。専門家も、プラスチックを大量に削減するには消費者の姿勢が変わらないかぎり無理だろうと強調する。過剰包装を避けるには、スーパーより個人商店で買い物するのが効果的だが、家の近所にそんな店があるとも限らない。

「食べられるスプーン、リキッドウッドなど、さまざまな代替品が世界中で登場しています。でも、世界的にプラスチック包装をなくすには、消費者の行動を抜本的に変えていく必要があります」と、経営コンサル企業アクセンチュアの製品戦略責任者ジョン・ゼオーリーは述べる。

そのためには厳しい法的規制が必要、とプリーストランドは主張する。

「レジ袋禁止など法律によって消費者の行動を変え、企業に革新的ソリューションを打ち出させた実績があります。」

「英国政府はプラスチック汚染にもっと強気の姿勢で臨まねばなりません。25年かけて不要プラスチックをゼロにするという現公約では生ぬるすぎます。地球環境へのダメージは今この時も広がっているのですから。」


8つの実践でプラスチックを減らそう

日々の暮らしからプラスチックを減らしたいと思っている人たちに、ジャーナリストで『Turning the Tide on Plastic: How Humanity (And You) Can Make Our Global Clean Again(未邦訳)』の著者でもあるルーシー・シーグルがお勧めする「8つの実践(8R)」を紹介する。

1.RECORD : 記録する
まずは、1週間で使用したプラスチックを書き出します。携帯電話でもノートでも構いません。ストロー、ペットボトル、お菓子の袋、チョコレートの包装...毎日の生活にプラスチックが登場する度にメモしていくのです。

2.REDUCE: 減らす
記録したメモを見てみましょう。知らず知らずのうちに、いかに多くのプラスチックを使っているか驚くでしょう。実はプラスチックだった、というものもあります。ガムを噛めば口の中はスッキリするかもしれませんが、これもプラスチックの一種でできています。ティーバッグにもプラスチックが含まれています。これらを使わないようにしましょう。ネットショッピングや宅配を使う時も、プラスチック未使用のものを選択できないか、チェックしてみましょう。

3.REPLACE: 置き換える
「プラスチックを使わない代替品はないの?」いつでもどこでもこう問いかけ、あるならぜひそれを使いましょう。綿棒も持ち手がプラスチック製のものから紙製のものに取り替えるなど、プラスチック未使用製品に乗り換えていきましょう。

4.REFUSE: 拒否する
プラスチック製品を上手に断れるようになりましょう。「レジ袋はいりません」と言えるように。私は店頭でもあらゆるプラスチック包装を断っています。リサイクルが難しく、ゴミにしかならないのですから。

5.REUSE: 再利用する
プラスチック製品を買う場合は、再利用できるものかをチェックしましょう。さすがにサンドイッチの包み紙まではお勧めしませんが、もっとしっかりしたものなら何かしら使い道があるはずです。密閉できるものなら、残り物の冷蔵庫保存に、肉屋や魚屋での買い物に、お弁当箱に、いろいろ用途があります。私はペットボトルも再利用しています。名前を書いておけば、捨てられることもありません。

6.REFILL: 満たす
常に水筒を持ち歩きましょう。街なかには冷水器(ウォータークーラー)や無料で飲み水を補充できるサービスも増えてきました。外でコーヒーを飲むのが好きなら、KeepCup (参考) がお勧めです。よくある紙のコーヒーカップは簡単にリサイクルできそうですが、実はプラスチックが含まれているのです!

7.RETHINK: 見直す
長年、当たり前にやっている「便利さを求める行動」を見直しましょう。昔は日常的に使うことのなかったウェットティッシュも、今ではスキンケアなどに大量に使用されています。プラスチックでできているので、トイレに流すことができません(参考)。これを再利用可能なモスリン(*)の布などに替え、エッセンシャルオイルを1〜2滴足らすのはどうですか?

*モスリン:綿や羊毛などの単糸で平織りした薄地の織物。

8.RECYCLE: リサイクルする
これら7つのステップを実践してから、最後にリサイクルを考えましょう。プラスチックは何でもかんでもリサイクルできるわけではありません。リサイクル業者の負担軽減も考えなければなりません。ごみ回収ルールや回収日をきちんと守り、ゴミに出す前にしっかり洗っておくことも大切です。プラスチックごみはきっちり分別してください。


By Clare Speak
Courtesy of Big Issue North / INSP.ngo


参考リンク

GREENPEACEのプラスチック使用量診断

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