SNSやブログといった個人発信のメディアが一般的になったことで、広く世に出る文章だからといって、必ずしも「校正・校閲」の工程を経ているわけではなくなった。

しかし、新聞社や出版社など、日常的に大量の文章を世に出している会社では、校正・校閲を担当する人間を数十人単位で擁するなど、出版の仕事には欠かせない工程であることには変わりない。
誤字脱字の発見はもとより、ファクトチェックや矛盾点や齟齬の指摘をするなど、“文章をひろく世に出す責任”を背負って日々地道な作業に心を砕いている。
 


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©Photo-ac

そんな校正・校閲の仕事だが、デジタル化が進んだ現代では体制を変更するケースも出てきている。 かつては社内に常駐したり、定期的に来社して待機したりしていたものだが、最近ではプロジェクトごとにオンラインサービスに登録している人たちにアウトソースしたり、在宅ワーカーにオンラインで校閲してもらうなどで、コスト削減につなげることも珍しくない。

オンライン校正・校閲のメリット

オンラインで校正・校閲を依頼する際は、PDFなどのデータファイルを校正・校閲担当に送り、それを打ち出して確認するケースと、データのままタブレットなどの画面で確認するケースと両方ある。後者の方は現物を送ったり、データを打ち出したりしなくてよい分、スピードが早く重宝されることも多い。

1つの原稿に、複数の目が「同時」に入る場合も、別々のファイルに赤入れしていくよりは、1つのファイルをオンラインで共有して画面上で赤入れしていく方が集約漏れもなく、集約にかかる時間が圧倒的に短くて済む。

また、データ原稿の場合、単純な誤字・脱字や表記の揺れは校正ツールで検出することができる。その技術は今後どんどん精度を高めていくのは間違いない。
問題は、ストーリーの矛盾や、文章の主旨に合った表現など、人間に感性があるからこそ生まれる言葉としてふさわしい表現を、人間の力でどれだけ指摘していけるかに絞られていくだろう。

紙とWebの校正・校閲、精度が高いのはどちら?

ところで、紙に打ち出した校正・校閲作業と、タブレットなどの画面に表示したままの作業では、どちらが誤りを検出しやすいのだろうか。
5月15日発売の『ビッグイシュー日本版』の特集「紙の力――ポストデジタル文化」で、富士ゼロックス株式会社でペーパーレスオフィス研究に従事してきた研究技術開発本部研究主幹の柴田博仁さんに話を聞くと、このような調査結果を教えてくれた。

紙とタブレット端末を使って文章の校正作業を比較した実験では、タブレットに比べ、紙のほうが17.2%も高い率で誤りを検出できるというのだ。

本誌では紙がなぜそのような力を持っているか、その秘密について、柴田さんに語ってもらった。結論から言うと、コストやスピードが許す条件ならば、紙の校正が望ましい。

とはいえ、手に取る人がお金を払ってくれる「紙の出版物」の市場は年々減っている。

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「2017 出版指標 年報」より

それに対しデジタル出版やオンラインメディア、個人発信メディアの利用者は増える一方。
デジタル出版やオンラインメディアでは、紙と比べると修正が効くこと、スピードが重視されがちなこと、紙の出版と比べて関わる人数が少ないこと、無料のメディアも多くコストをかけづらいことなどから、紙ほどのコスト・パワーをかけて校正・校閲に力を入れているとはいいがたい。
複数の目や手をじっくりとかけて生まれる表現は、これからさらに贅沢品になっていくのかもしれない。

ビッグイシュー日本版359号ではこのほかにも、
・リレーインタビュー。私の分岐点:ダンサー 大前光市さん 
・スペシャルインタビュー:アン・ハサウェイ
・国際:韓国、メイクを放棄し、男女平等を求める女性たち
・映画インタビュー:『ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス』
・ホームレス人生相談:20代女性からの「好きだった先輩が卒業して遠くへ行きます」の相談

など盛りだくさんです。
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ぜひ路上にてお求めください。

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