ビッグイシューでは、ホームレス問題や活動の理解を深めるため、教育機関や各種団体などに出張して授業をさせていただくことがあります。今回訪れたのは、兵庫県・芦屋にある甲南高校。「ソーシャルビジネス入門」の授業にビッグイシューのスタッフがお邪魔しました。

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組織の説明をするスタッフ

 ホームレス問題の現状を語るスタッフの言葉が生徒の皆さんの注意を引きました。それは「『ホームレス問題』はホームレスの人たちだけの問題ではない」というもの。

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ビッグイシューのスタッフの話に聴き入る

「『ホームレス』の支援を通じて、誰もが生きやすい社会を作りたいと思って、僕らは活動しています」とスタッフ。「ホームレス状態に陥る前に、多くの人が『介護離職』『リストラ』『倒産』『依存症』などを経験されています。ですから、ホームレス問題に対峙するということは、それらの問題にも向き合うということなんですね」

「今月の人」を読み、ホームレス状態に陥ったそれぞれの理由を知る

 スタッフの話の後は、販売者のライフストーリーのコーナーである「今月の人」をグループに分かれて読み、感想を語り合います。

「借金がかさんで、家族がばらばらになったと書いてありました」「この人は、リストラに遭って、野宿生活が始まったということです」

 実際に誌面を読み、それぞれの事情でホームレス状態に陥ったということを理解したことで、今まで持っていた「ホームレス」像が変容したようです。

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「今月の人」を読み、感想を語り合う

死に切れず樹海を出て、ビッグイシューと出会う

今回、スタッフとともに講義に伺ったのはポートライナー三宮駅前で販売する勝俣潤一さんです。ホームレス状態に陥ったきっかけは、会社で上司と意見が折り合わないことが起こり、退社を余儀なくされたため、と語りました。

「失業保険をもらいながら、コンビニでアルバイトをして、次の仕事を探していました」。ですが、そのバイト先のコンビニでも人間関係でつまづいてしまい、辞めてしまいます。

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半生を語る勝俣さん

「自分はもうダメだなぁと思って鬱々とした日々を過ごしていました。自暴自棄になってしまい、家も全部引き払ってしまったんです」

「生きるか、死ぬか」、ずっと考えていたという勝俣さん。足は樹海へと向いていました。
「何日かあちこちウロウロしながら、ご飯もまったく食べずに、ついには持っていた水が尽きても、歩いていました」

そして数日後。突然の雨でぬかるみができ、木々に阻まれることでもう前には進めなくなった時、ようやく樹海から出ることを決意。困難を極めましたが、幸運にも樹海を出ることができました。

その後、なけなしのお金をはたいて電車を乗り継ぎ、ネットカフェを拠点としながらの野宿生活が始まりました。そしてある日、新宿で働いていた時に目にしたことのある『ビッグイシュー日本版』のことをふと思い出し、ネットカフェに駆け込んで、検索してみました。住所を調べて事務所を訪ねたことから、5年前、勝俣さんはビッグイシューの販売を始めることになりました。

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心に止まった言葉をメモする

 現在は、読者の方から紹介された低家賃のアパートで暮らす勝俣さん。時に笑みを交えながら、現状を語りました。

「誰でもホームレスになる可能性」。自分たちにできることは?

 授業後に回収されたアンケートには、「誰でもホ-ムレスになる可能性があると思った」「ホ-ムレスになったからこそ学ぶこともあると感じた」という答えが寄せられました。日常生活で起こった人間関係のつまずきを発端に、ホームレス状態に陥った勝俣さんのお話を聞いて、それぞれ様々な気づきがあったようです。

また、「誰もが生きやすい社会をつくることが大切だと感じた」「今後、このようなホ-ムレス支援の活動がさらに広がるようどのようなことができるか、考えていきたい」と、我がごととして捉える文面も見られ、能動的な学びの機会となったようです。

「社会課題を自分ごととして考える想像力を」授業を企画した花野勝幸先生に聞く

授業後、講義を企画した花野勝幸先生にお話を伺いました。「『ソーシャルビジネス入門』は今年から始まったのですが、開校以来経営者のお子さんを預かってきた本校にふさわしい講座と言えると思います」
 最終的には、社会課題を解決するようなビジネスモデルを生徒たちに考えてもらうことを目標にしているのだそうです。

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出張講義を企画した花野勝幸先生

「好んでホームレス状態に陥る人はいないと思います。何らかの理由があってそういう状況に陥っている。ということは、何らかの原因でそういう状況になる可能性が誰しもあるということです。ですから、生徒たちには何事も自分ごととして考えるような想像力を持ってもらいたいですね」

(写真と文章:八鍬加容子)


格差・貧困・社会的排除などについて出張講義をいたします

ビッグイシューでは、学校その他の団体に向けてこのような講義を提供しています。
日本の貧困問題、社会的排除の問題や包摂の必要性、社会的企業について、セルフヘルプについて、若者の自己肯定感について、ホームレス問題についてなど、様々なテーマに合わせてアレンジが可能です。

 

小学生には45分、中・高校生には50分、大学生には90分講義、またはシリーズでの講義や各種ワークショップなども可能です。ご興味のある方はぜひビッグイシュー日本またはビッグイシュー基金までお問い合わせください。
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ビッグイシューについて

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ビッグイシューは1991年ロンドンで生まれ、日本では2003年9月に創刊したストリートペーパーです。

ビッグイシューはホームレスの人々の「救済」ではなく、「仕事」を提供し自立を応援するビジネスです。1冊350円の雑誌を売ると半分以上の180円が彼らの収入となります。