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カテゴリ: 自然・環境・動物


アフリカゾウの密猟対策のために、NPO法人「アフリカゾウの涙」を立ち上げた滝田明日香さん。滝田さんから、レオナルド・ディカプリオ制作の『THE IVORY GAME(アイボリー・ゲーム)』というドキュメンタリー映画、犬型ジステンパーウイルスの流行の兆しについてのレポートが届いた。

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ビッグイシューオンライン編集部より。10月15日発売の297号から、「滝田明日香のケニア便りvol.5」を転載します。

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アフリカゾウの密猟対策のために、NPO法人「アフリカゾウの涙」を立ち上げた滝田明日香さん。
滝田さんから、昨年から2年かけて行われたゾウの個体数調査結果と、9月末に開催された第17回ワシントン条約締約国会議の結果について、レポートが届いた。

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07年から14年、7年間で14万4000頭が密猟の犠牲に

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ビッグイシュー本誌の291号より、滝田明日香のケニア便りvol.4を紹介します。

アフリカゾウの密猟対策のために、NPO法人「アフリカゾウの涙」を立ち上げた滝田明日香さん。 滝田さんから、象牙の密猟を止めるため、ケニアで行われた象牙焼却セレモニーについてのレポートが届いた。

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ナイロビ国立公園にて(2016.4.30)

ケニア野生動物公社倉庫の在庫象牙105トンを焼却

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4月15日発売のビッグイシュー日本版285号の紹介です。
表紙はレオナルド・ディカプリオ、特集は「地球生命」。

スペシャルインタビュー レオナルド・ディカプリオ

映画のためならどんな苦労も厭わないディカプリオにとっても、『レヴェナント:蘇りし者』は、かつて味わったことのないほどの忍耐力を試される経験でした。アカデミー賞主演男優賞を受賞した同作品について、映画という芸術への思いについて語ります。

特集 地球生命――地球外、辺境、初期地球から考える


すでに、地球上の生き物すべてが共通する祖先から進化してきた生命であることが明らかにされています。今、その祖先を探す研究が地球にとどまらず、宇宙で始まっています。
2015年5月から始まった、国際宇宙ステーション(ISS)の「きぼう」日本実験棟の船外に捕集材を設置して宇宙空間を漂う微生物を捕まえようという「たんぽぽ計画」。代表の山岸明彦さんに「宇宙生物学(アストロバイオロジー)と『たんぽぽ計画』」について聞きました。
また、極地や赤道直下、深海などの辺境に生きる生物を研究する長沼毅さんに「辺境生物のスローな生き方、辺境生物を通して見えてくる生命の謎」について聞きました。
さらに、地球深部の構造を研究する廣瀬敬さんに「地球の水はいつからあるのか? 地球マントル最下部層での『ポストペロブスカイト』の発見、地球生命の誕生」について聞きました。
地球生命を地球の外、辺境、初期地球から考えたい。そして宇宙生物学の今を知りたい!

国際 イランの若者、スマホアプリを駆使して「道徳警察」をかわす

スカーフの不着用や男女の同伴などを取り締まる「道徳警察」に日々遭遇しているイランの若者たち。新アプリ「ゲルシャド」などを活用して、柔軟に規制に対抗しています。

滝田明日香のケニア便り 恐るべし、ハニーバジャー。登れないなら、飛び移る

アフリカゾウの密猟対策のために、NPO法人「アフリカゾウの涙」を立ち上げた滝田明日香さん。蜂を怖がるゾウが農地に立ち入るのを防ぎ、養蜂によって地域の人も収入を得る「養蜂フェンスプロジェクト」は、いよいよ2年目に突入しました。

ワンダフルライフ 西川豊子さん

「普段からお米は太陽光の熱で炊きます」と話すのは、20年以上にわたってソーラークッキングを続ける西川豊子さん。神奈川県茅ケ崎市にある五郎兵衛コミュニティガーデンで、西川さんが開いた「太陽のキッチン」にお邪魔しました。 この他にも、「ホームレス人生相談」やオンラインでは掲載していない各種連載などもりだくさんです。詳しくはこちらのページをごらんください。

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part.3を読む


アフリカゾウの未来に、日本人としてどう関わっていくのか?

アフリカ諸国は何をしているのかについてもお話します。まず今年の2月に、ロンドンで開催された違法野生動物取引のミーティングで、ボツワナ、チャド、エチオピア、タンザニアの政府が自国での酷い密漁の現状や、象牙のお金が犯罪組織に流れていること、象牙の取引市場があることで密猟が悪化していること、それによって地域住民の安全が脅かされていることをうったえる声明を署名入りで出しています。

では、アフリカゾウの未来はどうなるのか。

それはアフリカゾウと地元住民の共存にかかっています。ここ5年間で多くの保全のプログラムが実施されてきましたが、今、もっとも重要なトピックですね。

今までは動物だけを守ることが中心だったのが、今は地元住民の生活を通してどう共存するかが課題になっています。

たとえば、人間との衝突を減らすためにゾウが畑を歩かないように、トンネルをつくってゾウを通らせてあげる。そういった共存プロジェクトが始まっています。

他にも研究でゾウが蜂が怖いことが分かっているので、畑に入らないように蜜蜂の巣箱を作って畑のフェンスに設置しているプロジェクトもあります。さらに蜂蜜からの収入も得ることもできる仕組みです。

そのようなプロジェクトを通して、国立保護区以外の70%の生息地にすむ野生動物をどう守っていくか。それには地元住民に現金収入があることが大切なんですね。「ゾウは大切だ!」と言っても毎日隣り合わせに生活している地元の人からしたら、あまり意味がないことなんですね。

たとえばゾウが住む森を保護することで、観光であったり、何であれ、現金収入が貰えるという試みがあれば、地元の人と一緒に共存していくことができるかもしれない。

アフリカ人は共存の道を大変ながらも頑張って歩んでいるんですが、一方でゾウを絶滅から守るためにはアジアの歩みも大事だと思うんですね。

問題なのが国連で取り上げられている、テロリストの資金源として使われている象牙マネーや、「アフリカゾウを守る」という目的のもとレンジャーと密猟者という立場でアフリカ人同士が殺しあっているという悲劇。アジアの国はこの事実を知って欲しいし、この事実と、どう象牙と向き合っていくかが私たちの課題だと思うんですね。

すでに63%が殺された中央アフリカから始まり、東アフリカ、まだ大丈夫な南アフリカと「絶滅の波」が起きています。ゾウが絶滅したら象牙という素材自体もなくなってしまうわけですから、今、間に合ううちに代用品に変えていくとか別の道があると思うんですね。

それを、象牙を買い、使っているアジアの国として、今後どのように関わっていかなければいけないのか、この講演会がそれを考えるきっかけになればと思い、お話させていただきました。長い時間、ありがとうございました。


Q&Aセッション:その象牙製品を買わなければ、1頭のゾウが救えたかもしれない

Q : なぜ中国の方は象牙を求めるのですか?日本でもそれほどの需要があるとは思えないのですが。

A : 日本も中国も、社会的に象牙に対して寛容だと思います。たとえば印鑑に象牙を使ってたりと。中国では「モノからパワーを得られる」という信仰があるので、それもあるのではないかと、と中国の方から伺いました。

日本についてですが、印鑑以外で象牙への需要はあるんでしょうか。日本に住んでいないので、私も気になります。三味線でしたり、お茶の蓋ですかね。日本ではほとんどは印鑑だと聞いていますが、アフリカに15年住んでいて、6歳の頃からずっと色々な国に住んでいるので、よく分からないんです。日本の人は印鑑は象牙の方がいいんですかね?

小さい印鑑でも小さいイヤリングでも大きな彫り物でも、ゾウの命を奪わないと取れないんです。大きさには関係なく、命を奪われたということには変わりないんですよね。

追加したいのですが、別に象牙が悪いということではないんです。ただ、それは今現在維持できない資源だということなんです。プラカード掲げて「ゾウが可哀想だ!」と言いたい訳ではないんですね。10年前に合法で市場を回せていたものが今は悪用する人たちが多すぎる。簡単に利用できる。銀行に送金するより足が付かない。もう紛争の状況や密猟のプレッシャーにゾウたちは耐えられないんですね。

生きたアフリカゾウから素材になるまでの過程ですけど、私が見たら、毎日ゾウの死体を現場で見て、それが綺麗なアクセサリーになるのを見ると、あまりにも世界が違うなという感じがします。

なぜお話をしたいと感じたかと言うと、私の仕事は死体から始まるんですね。命が亡くなる現場にいるので、生きた動物を守りたいと思ったんですね。死ぬ前のゾウを守りたいなと思った。

象牙取引というものには、犯罪組織の政府とのコネクションであったり、大きなパワーが関わっていて、1人の力で全てを解決することは難しいのが現実です。でも、象牙で作った物を買わないというのは1人でもできますよね。買わないということで1頭のゾウが救われたかもしれないんです。

もし、象牙が石ころと同じくらいの価値になれば、買う人も殺す人もいないんです。犯罪組織にしたら、お金が手に入ればいいので、象牙でなくても、金でも麻薬でもいいんですね。ただ金なら鉱山を管理しないといけないけど、ゾウなら簡単に殺せるのでイージーキャッシュになっているだけなんです。もし象牙の価値がなくなれば、彼らは違う対象(資金源)に移るんでしょうね。

会場からQ : 今まで密猟者に命を狙われたり、危険な目に遭ったことはありますか?

A : 命を狙われるというより、密猟者を追いかけたことはあります。

(会場笑)

私は反撃にあったことはありませんが、他のレンジャーは撃たれたことはありますね。戦争の最前線と同じで、命を落とす危険は常にあります。

会場からQ : 今の日本にできることはなんでしょうか?この問題を日本のマスコミに取り上げてもらうのは難しいですか?

A : そうですね…。アフリカからビッグイシューに投稿していたので、まだ日本のコネクションがないんですね。もちろんNHKにもアプローチはしましたが…。

このアフリカの現実を知ったら象牙を欲しがる人はいないのではないでしょうか。それは中国人、日本人関係ないと思います。なので1人でも多くの方に知っていただきたいです。

1つの象牙が買われないことで1頭のゾウが救えたかもしれない。色々な場所でこの事実を知っていただきたいなと強く思います。


<講演終わり>


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こんにちは、ビッグイシュー・オンライン編集部のイケダです。6/6に実施した「アフリカケニアで野生動物と生きる~滝田明日香さんを囲む市民の集い」の内容を書き起こしましたので、読者のみなさまとご共有させていただきます。アフリカで動物を保護するために奮闘する滝田さん。貴重なトークとなっておりますので、ぜひお読みください。


滝田明日香さんが語る「マサイマラ国立保護区」での仕事

滝田明日香さん:こんにちは。まず、象牙の話をする前に私がどこで何をしているかというところから説明をしたいと思います。

私は今、マサイマラという国立保護区で働いています。この保護区ですが管理施設が2つありまして500平方km(屋久島とほぼ同じ面積)を管理している「Mara Conservancy」という管理施設で働いています。密猟対策チームの一員として働いています。

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現在は、犬を使った野生動物保護の仕事もしています。

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具体的に言うと、たとえば、疫病コントロールなどが挙げられます。セレンゲッティとマサイマラで、1994年に犬型ジステンパーの突然変異型のウィルスが蔓延して、当時、保護区のライオンの30%にあたる1,000頭のライオンがウィルスに感染して死んでしまったんです。そこから、犬にワクチンを投与して肉食獣の命を守るというプロジェクトが始まりました。

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タンザニアのセレンゲッティの国立公園の延長線となるマサイマラで私のチームが年間2006年には3,200頭、2008年までに8,600頭、2009年から2014年現在までには6,000〜7,000頭の犬にワクチンを投与しています。

あとは狂犬病ですね。なぜジステンパーウィルスだけでなく狂犬病もやるかというと、地元の人もマサイの犬から感染するという被害がとても多いんです。

私たちがライオンとかヒョウの動物の名前を聞くと、サファリのすごく優雅な動物のイメージを浮かべますが、実は地元の人からすると必ずしも優雅ではなく、ときには害獣なんですね。

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たとえば、ライオンが家畜の牛を殺したり、ヒョウがヤギやヒツジの小屋に入ると、食べるのは1頭でも20頭〜30頭近く殺してしまうことがあります。肉食獣に対するダメージをどうコントロールしていくか、どうやって野生動物と人間が共存していくかなどを考えています。

肉食獣の対策としてフェンスを使用することもあるのですが、私が提案したのが「牧羊犬」でした。アナトリアシェパードという牧羊犬なんですが、ナミビアでチーターに農場の羊やヤギが襲われないように使われているという話を聞いたときに、マサイマラでもライオンやヒョウに使えないかと試してみたんです。

ただこれは、犬自体は家畜を守ることができたんですが、犬の餌代が高すぎるということで上手くいかなかったんです。ですが、一回も野生動物から攻撃を受けていなくて、1頭も家畜が死んでいない、さらにゾウも家の近くに近寄らせないという、とても良い成功例となっているので、もう一度マサイの人とこれをできたらいいなと思っています。

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次に犬を使って保護区の中で何か役に立つことができないかと考えたときに追跡犬ユニットというユニットを結成しました。

これは泥棒や密猟者が逃げた後に足跡の匂いを追跡することを教えた犬なんです。例えばアメリカのドラマの「プリズンブレイク」で刑務所から逃げた登場人物たちを犬を使って追跡するというシーンがありますが、それと同様に逃げた密猟者を捕まえることができます。

私の犬は12時間くらいのトラッキングができるので、その追跡能力を活かして、ワイヤー罠を使っている密猟者を捕まえられないか、というプロジェクトを立ち上げました。

7月から10月にヌーの大移動というのがあるんですね。この期間にヌーの肉とシマウマの肉を干肉として捕りにくる密猟者が大量に現れます。この時期は、1日300〜350個といった大量のワイヤー罠をレンジャーが回収しています。

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ブッシュミートに関しては、最近は商業化していて、たとえばナイジェリア(西アフリカ)のブッシュミートの市場だとゾウの鼻、ゾウの耳、ハイエナの頭、チンパジーなどは家畜より高めに取引されているんです。

ブッシュミートを獲る人たちを捕まえるために追跡犬ユニットを始めたんですが、これを始めてから国立保護区の外にも頻繁に呼ばれるようになったんですね。特に、5年位前から象牙の密猟の現場によく呼ばれるようになりました。

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私の職場から10km離れた森で起きたんですが、ゾウが頭から切られて持っていかれてしまいます。私の追跡犬ユニットは、こういう現場に誰よりも先に現場に入らないといけないんです。なぜなら追跡犬たちはレンジャーの足跡か密猟者の足跡か区別がつかないので、一番最初に現場に入らないと分からなくなってしまうんです。

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象牙の密猟者の問題に対して犬も導入できないかということで、一昨年に象牙と銃器の探知犬ユニットを作りました。

この子たちはライフル、自動小銃・手榴弾、ピストル、そして象牙を探知するトレーニングしてます。どのように使うかというと、例えばケニアはテロリスト攻撃が多くて、今しょっちゅう爆破事件が起きているんですけど、その爆破事件を起こしているグループが国立保護区に入ってこないようにゲートに車のスクーリニングとして使っています。

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それ以外だと、密猟の現場に呼ばれたときに、まず追跡犬をスタートさせて彼らが追跡始めて現場を去ったあとに、この探知犬ユニットが周囲を探知して証拠品を拾うために活躍しています。

通常、密猟された象牙をそのまま持っていくことはないんですね。密猟者たちはゾウを殺して、夜に穴に埋めたり、木を被せて、どこかに隠すんです。この子たちは、そういう怪しそうな場所を探知しています。

他にも、私はくくり罠にはまったゾウの治療のアシスタントであったり、罠にかかったゾウのワイヤーを外す仕事であったり、密猟孤児となったゾウの輸送などの仕事をしています。


part.2に続く


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(2013年4月15日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 第213号、「ノーンギシュの日々--ケニア・マサイマラから」より)






象牙密猟の犠牲になった雄ゾウ、ヘリテージ




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「ヘリテージ」と呼ばれる大きな雄ゾウが、象牙密猟の犠牲になった。ヘリテージのことは2006年の頃からよく知っていた。当時、私は保護区外にあるマサイランドの森のすぐ横に住んでいたからだ。

ヘリテージはよく、うちの庭のフェンスをゆっくり持ち上げて野菜畑に入ってきては、トウモロコシを盗んでいった。私は唐辛子の粉を混ぜたオイルをフェンスに塗ったりして、彼が庭に入ってこないように工夫したのを覚えている。




ゾウは保護区の中だけでは、生きのびていくことができない。サバンナが広がる保護区の中には、木がポツンポツンとしか生えていなくて、大きなゾウたちがお腹いっぱい食べられるほどの植物がないからだ。そのため、大きな雄ゾウの多くが保護区の外にある森に入り、そこで多くの時間を過ごしている。

深い原生林で長年の間、平和な時を過ごしてきたゾウたち。しかし、ゾウたちにとって平和な場所はもうなくなりつつある。優しい雄ゾウ、ヘリテージの死骸は、彼が大好きだった深い緑の森の中で見つかった。




横たわった、山のように大きな彼の身体。機関銃から放たれた銃弾が身体の右側に10個以上埋まっていた。身体の反対側には、あと何発ぐらいの銃弾が埋まっているのかは、わからなかった。

大きくて、とても静かだったヘリテージ。彼の動きを把握するため無線ラジオコラーをつけようとしたことがあり、大きな鼻から息を数えて麻酔のモニタリングをしたのが、彼を見た最後となってしまった。その時、眠っていた彼の滑らかな象牙を撫でたので、私もその大きさと美しさは見ている。でも、それは生きている姿の美しさであり、決して彼の命に代わるものではない。

1頭1頭、大きな象牙を持った雄が殺され、生きのびた雌ゾウたちも子孫が残せなくなって、ゾウはこのままいなくなってしまうのだろうか……。彼らの将来を考えると、心配で眠れない日が続く。




(C) Marc Goss


たきた・あすか
1975年生まれ。NY州のスキッドモア・カレッジで動物学専攻。大学卒業後、就職活動でアフリカ各地を放浪。ナイロビ大学獣医学部に編入、2005年獣医に。現在はケニアでマサイマラ巡回家畜診療プロジェクトなどの活動を行う。ノーンギシュは滝田さんの愛称(マサイ語で牛の好きな女)。著書に『獣の女医 ―サバンナを行く』(産経新聞出版)などがある。
https://www.taelephants.org/





(2013年3月1日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 第210号、「ノーンギシュの日々--ケニア・マサイマラから」より)






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(象牙はゾウの頭蓋骨を目の辺りまで切り刻まないと、取り出せない)




中国も参入、象牙本体と象牙細工。両方輸入は日本だけ



日本の合法象牙取引が違法象牙の流出のきっかけになった後、2008年に中国も合法取引に参加したことによって密猟がさらに悪化した。

近年、中国は、道路建設や貿易商などでアフリカの多くの国に拠点を置き始めている。たとえば、ナイジェリアやケニアなどのアフリカ諸国の国際空港で象牙を押収された中国人の数は2011年度のみで150人にのぼり、アフリカ在住の中国人労働者による象牙の違法な調達の現実が浮き彫りになった。また、中国本土の経済成長とインターネットによる商業取引の繁盛は、アフリカとアジアでの違法象牙取引に拍車をかけている。

国際動物福祉基金(International Fund for Animal Welfare)の象牙市場調査によると、中国で象牙を販売している店舗で合法象牙取引免許を得ている店は全体の64パーセントだが、免許をもつ店の60パーセントで違う商品に同じ象牙ライセンスを見せて何度も使用するなどの違法使用が発覚している。

驚くことに中国人の象牙購入者年齢は、主に26〜45歳までの中流階級だ。若者に人気のネットショッピングサイトなどでは多数の象牙商品が堂々と販売されており、中国本土での象牙需要は減る傾向をみせない。




現在、合法象牙の取引先は日本と中国で、取引対象の象牙の54パーセントは中国へ輸出されている。それを聞いて、象牙問題は象牙輸入率が高い中国の問題だと思ってしまう人も少なくはない。しかし、実は、中国で加工された象牙細工の輸出国に日本が入っているのだ。

中国から象牙細工を輸入している国は、日本、韓国、アメリカ、英国とヨーロッパ諸国(スペイン、ポルトガル、フランス、ドイツ)など。象牙自体を輸入して、さらに象牙細工までを輸入しているのは残念ながら日本だけである。





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(ゾウから切り取りだされた血だらけの象牙。こんな残酷な物が高級品と呼ばれるとは)




増えるアジアの象牙需要。象牙価格が4年で15倍に



2010年に行われた第15回ワシントン条約締約国会議で、タンザニアとザンビアが自国の象牙112トン(タンザニア90トン、ザンビア22トン)を日本と中国を対象に輸出する許可を求めた。しかし、その申し出は国際アフリカゾウ保護団体による断固とした抗議により、許可されることはなかった。

だが、11年には24.3トンの象牙が全世界で押収された。12年にはさらに多く34トンの象牙が押収され、この過去24年間で象牙密猟、最大の年となった。12年だけでも、アフリカ全土で3万8千頭のアフリカゾウが密猟者の手によって命を落としているといわれている。




そして、今年3月のバンコクで開かれる第16回ワシントン条約締約国会議では、再びタンザニアが「自国のゾウを個体群の附属書Iから附属書 Ⅱ へ移行し(「附属書 Ⅰ」は商業のための輸出入禁止。「附属書 Ⅱ」は輸出国の政府が発行する許可書が必要。)、101トンの象牙の1回限りの販売」を申し出ている。取引相手国は再び、中国と日本だ。
 
1月に入って、「タンザニアは象牙販売許可を申請しない」とニュースで伝えられた。しかし、タンザニアはセレンゲッティ国立公園の真ん中を通る高速道路の建設、セルー国立公園のウラニウム発掘、ナトロン湖のソーダ灰工場建設などの多くの世間の議論を引き起こし、近年多くの環境保護団体からバッシングを受けている。象牙販売許可の申請動向は、実際に3月のワシントン条約締約国会議になってみないとわからない。




恐ろしいのは、いっこうに減る傾向を見せないアジアの象牙需要。そして、とどまることを見せずに跳ね上がり続ける象牙の市場価格。違法象牙取引は今、紛争ダイヤモンドとまったく同じ悲劇を繰り返している。

08年にキロ157ドルだった象牙価格は、12年には15倍以上のキロ2357ドルまで跳ね上がった。今や象牙1本の値段は、アフリカ人の平均年間収入の20倍以上。麻薬取引と同じで、一攫千金を狙った人間がゾウ密猟の世界に引き込まれている。

高額で取引される象牙は、中国では「ホワイトゴールド」と呼ばれ、その販売ルートは麻薬シンジケートや暴力団によってコントロールされている。そして、ゾウの棲みかであるアフリカ諸国では、テロリスト・グループや反政府組織は象牙による外貨獲得と、それによる武器購入を広く行い始め、まさに象牙は紛争地帯の資金源と化してしまった。






たきた・あすか(滝田明日香)
1975年生まれ。NY州のスキッドモア・カレッジで動物学専攻。大学卒業後、就職活動でアフリカ各地を放浪。ナイロビ大学獣医学部に編入、2005年獣医に。現在はケニアでマサイマラ巡回家畜診療プロジェクトなどの活動を行う。ノーンギシュは滝田さんの愛称(マサイ語で牛の好きな女)。著書に『獣の女医 ―サバンナを行く』(産経新聞出版)などがある。

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(2013年2月15日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 第178号、「ノーンギシュの日々--ケニア・マサイマラから」より)




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密猟によるアフリカゾウ絶滅の危機―日本の象牙買い取りが引き金に。1989年、象牙販売は全面禁止



広大な緑色のサバンナの中をゆっくりと歩いていくアフリカゾウの群れは、サファリのシンボルの一つだ。しかし、そのアフリカゾウたちが今後10〜15年でこの地球上からいなくなってしまうかもしれない危険に脅かされている事実は、あまり知られていない。

本来は、アフリカゾウが自分の身を守るために使っている象牙。その象牙が今、アフリカ全土でかつてない規模で繰り広げられている密猟のせいで、ゾウ自身にとって呪われたものとなってしまった。




今世紀始まって以来、アフリカ諸国は史上最悪の象牙密猟問題を抱えてきた。いっこうに減る傾向が見えない象牙需要を前にして、「この地球からアフリカゾウがいなくなる日」も、そう遠い日ではないと思わざるを得ない。そして、このアフリカゾウがいなくなる原因の大きなキッカケをつくってしまったのは、他でもない2000年に日本企業が合法的に購入した象牙なのだ。

アフリカゾウ殺戮の歴史は、現在に始まったわけではない。1980年代には象牙やトロフィーハンティングの影響で、アフリカゾウの全体の約半数といわれる72万頭がその命を落とした。当時の日本は全世界の象牙消費の40パーセントを占める「象牙大国」。これは、70年以前までは印鑑の先端だけが象牙で作られていたのに、70年以降は印鑑全体が象牙ものが好まれ始めたことが原因だといわれている。





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80年代までのアフリカゾウはワシントン条約会議で「附属書Ⅱ」とされていた。「附属書Ⅱ」に載った動物は国際取引で国同士の取引を制限しないと、将来、絶滅の危険性が高くなる恐れがあるとされ、象牙などの輸出は可能だが輸出国の政府が発行する許可書が必要とされていた。

ところが、日本の象牙需要が伸び、現地での密猟が増加したため、アフリカゾウの絶滅を心配した国際保護団体などのアピールにより、89年にはワシントン条約会議で国際取引の規制対象になっていたアフリカゾウの附属書の見直しがされたのだった。

その結果、アフリカゾウは「附属書Ⅱ」から、今すでに絶滅する危険性がある生き物に指定された「附属書I」に移行された。「附属書I」に載った動物は商業のための輸出入は禁止され、全世界で象牙販売が廃止されるに至った(学術的な研究のための輸出入などは輸出国と輸入国の政府が発行する許可書が必要とされる)。




日本と中国の合法象牙取引が象牙市場を復活させる



ところが00年に、再びアフリカゾウたちの平和な日々を脅かす時代の幕開けとなる出来事が起こる。

97年のワシントン条約会議により、 南部アフリカ諸国(ボツワナ、ナミビア、ジンバブエ)からの象牙が「附属書Ⅱ」に戻され、00年に流通・販売実験 として日本が約50トンの「合法象牙」を500万米ドル(約5億2千万円) で買い取ることが許可された。この合法象牙の流出は、象牙密猟者、販売カルテル、 そして消費者に「象牙ビジネス再開」という大きな勘違いを植えつけてしまった。

その後 06年には、南ア、ジンバブエ、ボツアナ、ナミビアから60トンの象牙が日本にのみ取引許可されたことで、08 年には「一回限りの販売」として、中国とともに日本は108 トンの象牙の買い取ったのである。




象牙の国際取引には、「ゾウの保護に役立つ適切な国際取引」と「ゾウを絶滅に追いやる違法な国際取引」の二つがあるといわれている。確かに書類上はそうかもしれないが、実際には合法象牙と違法象牙を区別することは簡単ではない。本来は、象牙市場に合法象牙を過剰に供給することで密猟を減らす試みが、実際には正反対な効果が出てしまったのだ。

つまり、合法象牙取引が象牙市場に加算されたことで、象牙の需要が復活して象牙価格が上がってしまい、違法象牙取引も復活してしまった。

本来なら自然死や害獣コントロールで殺されたゾウの象牙だけが国際取引の対象になるはずだった日本と南部アフリカ諸国の合法象牙取引は、実際には「アフリカゾウの乱殺」と「象牙のローンダリング」(違法象牙を合法の象牙として流通させる)が可能な土台を築き上げてしまった。






たきた・あすか(滝田明日香)
1975年生まれ。NY州のスキッドモア・カレッジで動物学専攻。大学卒業後、就職活動でアフリカ各地を放浪。ナイロビ大学獣医学部に編入、2005年獣医に。現在はケニアでマサイマラ巡回家畜診療プロジェクトなどの活動を行う。ノーンギシュは滝田さんの愛称(マサイ語で牛の好きな女)。著書に『獣の女医 ―サバンナを行く』(産経新聞出版)などがある。

https://www.taelephants.org/

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