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大学生と語る恋愛とDVのグレーゾーン




DVは、特別な男女間のトラブルではない。ケータイの覗き見や強い束縛意識、セックスの強要など…。その種のことはどんな恋愛の中にも潜んでいる。お互いの恋愛経験を話し合って自らの恋愛観を見つけるプロジェクト「恋愛ism」(注)。メンバーの立命館大学産業社会学部の大学生ら5人と、恋愛と暴力の間の微妙なグレーゾーンを語り合う。


DVとびら青

愛情か?束縛か?1日250回のメール、盗み見、アドレス消去の強制…


 
A子さんの元カレは、詮索好きだった。例えば、元カレのメールは、こんな風。「今、何してる?」「家でボッーとしてた」「ボッーとって? 何それ?」。そんなやりとりから始まって、「今日は何時に寝るの?」「明日の授業は何限目から?」「あき時間は?あき時間は一緒にいよう」と続く。常に何かを問われている感じ。どうして、なんでもかんでも私のことが気になるのか?「監視されてる感じだった」


B子さんは、彼氏のケータイが気になってしょうがない時期があった。デート中の彼氏のメール打ち、男性名で登録されている元カノのアドレス…。「ケータイ見せて」と追及して口論になり、黙って盗み見ては怪しいメールに疑心を抱いた。「わざわざヤマシイことばかり探してる」と責められた。


ケータイは、今や恋愛には欠かせない必需品。それゆえ、過度の束縛、喧嘩・トラブルのもととなり、時として相手への支配・コントロールのツールにもなってしまう。特に5人全員が指摘したのは、高校時代のメール。「友達も含めて、メールは30分に1回が普通」「彼氏アリの女の子と親密になって、1日250回やりとりした」「返信しなきゃという強迫観念で、高校の時はヤバかった」


一般的には、相手のケータイを盗み見る、異性のアドレスを消去させるなどの行為は、デートDVに数えられる。嫉妬、支配が行き過ぎると、深刻な暴力へと発展するケースもあるとされる。ケータイが誘発するカップル間の束縛やDVを研究する大学院生のC子さんは、彼女に男性アドレスを消去させたり、行動範囲を制限したり、ありもしない元カレとの関係を詮索して暴力をふるうケースを、よく耳にする。「ケータイはレスの早い人の方が基準になるから、遅い方に対して早い方の怒りや不安を誘発しやすい。ケータイがなければ、行き過ぎた束縛や深刻な事態に至らなかったケースもあるのでは」と考える。


「仕留めた!」男の心理と、つい言ってしまった「それでも男?」



ケータイに限らず、束縛や男女間のすれ違いは、恋愛にはつきもの。D君は、休日にひとりの時間を過ごしたいと彼女に言うと、露骨に暗い顔をされて、「どうして?」と思う。他にも、「異性がいるグループで遊びに行って、彼氏に事後報告したら、別れようと言われた」「大学で女友達と歩いているのを彼女に見られる度に、彼女が『あの子誰?』と周囲に聞いて回った」など、交際していても、相手とずっとべったりいたい人と適度にお互いの時間を持ちたい人とでは、距離のとり方がズレる。特に、つき合い始めやセックスをする親密な関係になった後では、人によって期待するものが違ってくる。これまでの交際最長記録が3ヶ月というE君は、「つき合い始めると、あとはどんどんテンションが下がる」。「楽しいのはつき合うまでのプロセス。うまくいった時は、“仕留めた”という感覚」と言う。恋愛は、基本的に自分ペース。「コミュニケーションとして彼女を普通に叩いたりする」

言葉にしにくいセックスでも、「したくないのに、嫌と言えずにしてしまった女の子の相談はよく受ける」「彼氏に拒まれると、惨めになって、『それでも男?』と暴言を吐いてしまった」など、カップル間でも意外とすれ違いが多いようだ。B子さんは、「基本的に彼氏にひっぱってもらいたいと思っている女の子が、完全にマイペースの男性を好きになると、何でも許してしまうことはあるかも」と言う。また、別れ話の時には、逆上した男性の暴力や女性のリストカット、女性間のトラブルなど、かなり過激になるケースも。

恋愛は、好きな相手との幸福な時間がある一方で、人格を傷つけ合うような喧嘩や束縛など、ネガティブの面も併せ持つ。そこに深刻なDVにつながる種も潜む。恋愛と暴力の間のグレーゾーンを、どう見極め、相手との距離をどう取るのか。「恋愛ism」を指導する斎藤真緒助教授は言う。「ケータイの覗き見や過度の束縛を、一つひとつDVと言い出すと、恋愛が息苦しくなる。それよりも自分の失敗や恋愛観などをいろいろな人と語り合う中で、自分の恋愛タイプに気づき、異性との距離の取り方を学び、セルフマネージメント力を身につけることが無用な暴力を防ぐことにつながる」

(稗田和博)


(注)取材協力:「恋愛ism」プロジェクト「地域における女性に対する暴力の予防啓発に関する調査研究(内閣府補助事業)」



(2006年8月15日発売 THE BIG ISSUE JAPAN 第55号 特集「愛と暴力の狭間で—D.V.(ドメスティック・バイオレンス)からの出口はある」より)

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「脱力する」生き方が、男の暴力を未然に防ぐ



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(メンズサポートルームの中村正さん)

必要な加害男性側の再発防止方策



DVへの対応の一つは、DV防止法の保護命令(退去命令や接近禁止命令)によって、家庭内に介入して加害者と被害者を分離することにある。しかし、分離した後、大きな精神的ダメージを受けた被害者をケアする仕組みが緊急の課題であるのと同じように、加害者の更生指導、再発防止、未然防止への働きかけが重要。

法的に罰せられても、加害男性は自分の暴力を、家事などがきちんとできない妻や彼女への教育であるとか、「自分も悪いが、暴力を引き出した相手にも非がある」と思いがち。駐車違反でキップを切られた時に逆上する人のように、「みんなやってるのに、どうして自分だけが罰せられるんだ」と考えているケースが多い。

メンズサポートルームでは、こうした加害男性に対応するため、京都と大阪でグループワークや語る会を開催し、暴力を男の視点からとらえ、なぜ自分は暴力をふるったのか?脱暴力化するためにはどうしたらいいのか?を考え、気づき、男性が家庭内で暴力なしで生活する方法を学ぶ機会を提供している。




”私“メッセージで、男らしさを脱ぐ



なかでも暴力を乗りこえるためのグループワークは、社会の中で植えつけられてきた過度の”男らしさ“を塗り替える作業が中心になる。多くの男性は、競争社会や家族制度などの中で、「男は強くなければいけない」「勝たなければいけない」といった抑圧的な男性文化の中で育っている。それが、妻や彼女への暴力につながる男性特有の「感情鈍磨」「言語化困難」「攻撃・行動化」を生む土壌になっている。

そうした自分を縛っている”男らしさ“に気づくため、まず安全の保障された男同士のグループワークという世界で、自らの体験や感情を「私」を主語にして語ってもらう。これは、「私メッセージ」というコミュニケーションスキルで、普段、男性が使いがちな「我々」「男というのは…」「社会では…」といった主語を使わないのがポイント。理屈や論理・分析的な言い方も極力抑え、感情語を多く使うことで、暴力や攻撃性と近いところにある”男らしさ“を脱学習していく。同時に、暴力に訴えないセルフマネージメント力、ソーシャルスキルを身につけながら、被害女性に謝罪を行う土壌をつくっていく。

ただ、現在は”男らしさ“から自由になることは、「落ちこぼれ」「負け組」「ダメ男」という負のラベルを貼られることも意味しかねない。今後は、この「脱力する生き方」が、新しい社会の価値観と結びつき、「降りる」ことが進化であるということを示していくことが、加害男性の暴力の未然防止にもつながる。

(稗田和博)




中村 正(なかむら・ただし)
1958年生まれ。NPO法人「きょうとNPOセンター」常務理事、立命館大学大学院教授。家庭内暴力の加害者のためのグループワークを行う「メンズサポートルーム」を主宰。著書に、『「男らしさ」からの自由』(かもがわ出版)ほか。










(2006年8月15日発売 THE BIG ISSUE JAPAN 第55号 特集「愛と暴力の狭間で—D.V.(ドメスティック・バイオレンス)からの出口はある」より)


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