(2012年2月1日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 第184号より「ともに生きよう!東日本 レポート20」)
「除染作業」で人は再び住めるのか?
大型の重機が、人影のない水田や畑で音を立てて動き、汚染された土を詰め込んだ黒い大型のバッグ「フレキシブルコンテナバッグ」(フレコンバッグ)が次々と並んでいく。周囲では、白い防護服、顔にはプラスチックの全面マスクを着けた作業員が慌ただしく動いている。
(汚染土砂が入ったバッグを設置する作業員)
ここは、メルトダウンを起こした福島第一原発から1・5キロほどの大熊町夫沢地区。震災後、県内各地で住民や自治体により除染作業が行われてきたが、原発20キロ圏内の「警戒区域」や、線量の高い「計画的避難区域」を国が除染することが決まった。本格的な国の除染開始を前に、効果的な除染や実際の費用と成果、作業者の被曝対策など、広く除染の進め方を決めるための「除染モデル実証事業」が、独立行政法人日本原子力研究開発機構福島技術本部(JAEA)に委託して行われている。2月9日、報道関係者にその様子が公開された。
JAEAが国から事業を受託し、大手ゼネコンJV(共同企業体)に委託。大成建設JVと、大林組JVが各32億、鹿島建設JVが17億でそれぞれ受託した。JAEAはさらに、除染技術に関する実証事業も国から受託、建設業者や研究所など25社に委託しており、除染モデル実証事業は総額約100億円の高額予算で行われている。
実際の作業は、高圧洗浄水で建物やコンクリートを洗い流したり、汚染された土や草木の除去などが中心。重機も入るが、実際の細かな作業は、人の手で行われているのが現実だ。作業は終盤に入っており、この日は除染が進んだ地域や山林の様子、フレコンバッグを仮置き場に置く様子などが公開された。
民家のすぐ裏山で行われた除染作業。山林の向こうに福島第一原発の煙突が見える。震災直後は毎時200マイクロシーベルト程度、除染作業直前は100マイクロシーベルトだったのが、下草刈りや土の除去作業後は50~70マイクロシーベルトまで低減した。しかし、高線量は依然続いている。JAEAは木の枝葉の切り落としなどを検討しているが、中山真一同本部副本部長は「山林、水田の除染は本当に難しい。木を切り、土を削って、森林の保水性を壊してもいいのか、という問題も残る」と話す。
(公開された除染後の山林)
本当に効果的な除染とは何か。そしてそもそも、作業員が被曝しながら進める除染作業が必要なのか。仮に除染後、いったんは線量が下がっても、住民が再び住んで安全なのかどうか。100億円除染モデル実証事業の結果は?
(文と写真 藍原寛子)