Genpatsu

(2012年9月15日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 199号より)




「脱原発法制定全国ネットワーク」発足




法律で原発を止めていこうと弁護士たちが立ち上がった。8月22日に発足した「脱原発法制定全国ネットワーク」の記者会見には、宇都宮健児前日本弁護士連合会会長もはせ参じてくださった。集まったのは弁護士だけではない。さようなら原発1000万人アクションの呼びかけ人たちが名を連ねてくれている。村上達也東海村村長など自治体の長にも加わってもらった。代表世話人は現時点で24人。筆者も末席にいれてもらっている。さらに多くの方々に参加を呼びかけていきたい。

法案は、2025年までのできる限り早い時期にすべての原発を止めることを明記し、具体的な各原発の廃止計画をつくることを求めている。法案を提出できるのは内閣もしくは国会議員だから、私たちは超党派による議員立法を目指している。政局が不安定なので、できれば早く提案できればよいと願っている。成立には議員の過半数の賛成が必要になる。今は難しいが、脱原発議員が増えれば成立の展望が開ける。次の選挙に期待したい。

毎週金曜には、原発の即時廃止を求めて国会前に人々が集い、再稼働に反対して声をあげている。野田首相とも会談することができた。政府の主張を述べただけで、会談は物別れに終わった。その後も、金曜日行動は続いている。この即時廃止への思いと、法律で年限を決めて原発を止めていくこととは対立しない。

大飯原発2基を除いてすべての原発がいま止まっているが、これは各自治体が安全強化を求めて、運転再開を認めていないからだ。市民の声が自治体の首長にそうさせている。脱原発法が成立して、法的に原発が廃止になるまで、私たちは運転再開を認めないように働きかけ続けたい。いや、むしろ同法が通ればいっそうの安全強化が可能となる。首長たちは無理して原発を動かすこともなくなり、廃炉が早まる可能性もある。

朝日新聞が国会議員にアンケートしたところ、原発ゼロを選択した議員は42パーセントだった。福島原発事故の前と比べると、隔世の感がある。そしてどの党も直ちにすべての原発を廃止することは難しいと考えている。私たちはこの現実から出発し、脱原発法制定を求めている。

政府は脱原発依存を掲げてエネルギー基本計画の見直しを進めているが、さらに法律で原発ゼロを確実なものにしたい。







伴 英幸(ばん・ひでゆき)

1951年、三重県生まれ。原子力資料情報室共同代表・事務局長。79年のスリーマイル島原発事故をきっかけとして、脱原発の市民運動などにかかわる。89年脱原発法制定運動の事務局を担当し、90年より原子力資料情報室のスタッフとなる。著書『原子力政策大綱批判』(七つ森書館、2006年)