(2012年7月1日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 194号より)




かるたで学ぶ「放射線防護」福島でワークショップ




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「あ あわてて逃げずに 屋内退避」「い 家の中 遠くに避難と同じこと」「こ 子供の甲状腺をまもれ」「す 吸い込み注意 マスクで防御」「せ セシウムは土にたまる」……。

これは「万が一かるた」の一部。万が一、原発事故が起きた場合、どうやって放射性物質から身を守ったらよいのかなど、具体的な対応をイラストと共に五十音の「かるた」にしたものだ。




5月19、20日に福島市内で持続可能な社会を考えるイベント「アースデイ福島」が開かれ、JIM-NET(日本イラク医療支援ネットワーク)が「かるた」を使ったワークショップを開催、多くの親子が参加した。作成したのは、東京都で広告制作会社を経営する佐藤哲康さん。佐藤さんは「住民の避難や防護に必要な知識を、記憶に残りやすい『かるた』にまとめてみた」と言う。

佐藤さんも、事故が起こるまでは放射能に関する知識はあまりなかった。昨年の3月15日には特に多くの放射性物質が福島県内に飛散したにもかかわらず、それが住民に知らされなかったと聞き、「無用の被曝が避けられたのでは。乳幼児や子どもへの影響が心配になった。深刻な事故直後から放射性物質が飛散する間を想定した住民の対応をどうやって伝えたらいいかを考えた」という。

福島県を訪ねて、専門家のシンポジウムに参加、書籍や資料も参考に、伝えたい情報を盛り込んだ「かるた」を完成させた。「みなさんからのご意見を参考に、もっとよいものにしたい。自治体ごとに内容を変えてパンフレットにしてもらうなど、各地で役立ててもらえれば」




JIM-NETは6月24日に猪苗代町で開く「アースデイ福島inいなわしろ」の中で、「万が一かるた」を使っての遊びや、子どもに放射能の知識を尋ねる催し「おしえて きみがしってる『ほうしゃのう』のこと」などの開催を予定している。担当の小松真理子さんは「『万が一かるた』はビジュアル的にインパクトがあって親しみやすく、ワークショップで好評だった。どのような活用方法があるのか共有していきたい」と話す。

震災後は、放射線防護などに関する子ども向けの副読本が作成され、理解を深めるための授業も各学校で予定。福島原発事故を契機に、放射線防護教育がさまざまな場面で進められる時代がやってきた。
 (藍原寛子)




※ 「万が一かるた」の内容はホームページ参照(現在市販はしていない。問い合わせがあれば検討予定)。
※ JIM-NET(日本イラク医療支援ネットワーク)

写真提供:JIM-NET