(2012年5月1日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 第190号より)





Sekaitanshin logo2012




タイ、ケシ栽培地域で進む作物転換プロジェクト



タイとミャンマー、ラオスの3ヵ国が国境を接し、ゴールデントライアングルと呼ばれる一帯は、古くからケシやアヘンの生産で知られてきた。

栽培作物の転換を通じて山岳民族の生活の向上を図るため、タイ王室が財団を立ち上げ、「ドイトゥン開発プロジェクト」に着手したのは88年のこと。現在はコーヒー豆や衣料品を生産し、国連機関から「世界でも際立った代替開発の成功例」と評されている。

ただ、実を言えば、違法薬物をめぐるタイの状況は思わしくない。人権侵害との批判を受けつつ、タクシン政権が03年に実施した摘発作戦など、これまでの対策は一定の成功を収めたものの、ミャンマーから持ち込まれた覚醒剤がまん延しており、依存症者は全国で120万人。ドイトゥン地区のあるチェンライ県を、麻薬の取引で有名な南米のコロンビアになぞらえる向きもある。

王室肝いりの財団は現在、支援の対象地域を広げ、「パンマハン貧困救済・森林再生プロジェクト」に取り組んでいる。

現地の生態系になじみやすいツバキ科の植物の栽培を後押しし、無理な耕作でやせ細った土壌の回復を促すとともに、せっけんなどの日用品の生産につなげていくことが目的だ。長期的には、エコツーリズムの振興を図る狙いもある。

関係者の一人は「若者の多くは学校を中退して都会で仕事を探したり、麻薬の取引にかかわったりしていた。だが、農園で仕事が生まれ、彼らの多くが戻ってきた」と話している。

(長谷川亮/参照:バンコク・ポスト、ネーション、チェンライ・タイムズ)