(2012年10月1日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 第200号より)




被災地から 震災遺族支援シンポ
(郡山市で開催されたシンポジウム(9月11日))





福島、各地で「わかちあいの会」開催へ—大切な人を亡くした人同士、語り合い聴き合う場へ



原発事故による放射能の影響が現在も続く福島県で、大切な人を亡くした人同士が語り合う「わかちあいの会」が各地で開かれることになった。

NPO「ライフリンク」や、地元の支援団体「福島れんげの会」などが準備を進めているもので、すでに行政の支援も受けて開かれている南相馬市に加え、福島、郡山、会津若松の各市でも開催が決定。いわき市、相馬市でも開催の検討に入った。




わかちあいの会立ち上げを記念して、震災から1年半となる9月11日、ライフリンク主催によるシンポジウムが郡山市で開かれた。

精神科医・斎藤環さんの講演に加え、津波で家族を亡くした地元の保健師・佐藤宏美さん、自死遺族福島れんげの会・金子久美子さん、グリーフサポートリンクの杉本脩子さん、そして斎藤さんの4人によるパネルディスカッションがあり、参加者はわかちあいの会や自助グループの重要性について理解を深めた。




わかちあいの会参加の経験がある佐藤さんは「震災から1年半が過ぎ、普段の生活に戻ったように感じた時、ふと、『大切な人がいない』『思い出も、思い出が詰まった物もない』と喪失体験を再認識し、居場所がないような空虚さを感じたことがある。わかちあいの会のような、大切な人や物などの思い出を話せる場所は必要」と意義を語った。

金子さんは「『地元で開かれるわかちあいの会には参加しにくい』という話を伺ったことがある。避難先や地元以外で会が開かれることは参加しやすさの面からも重要。震災から1年半が過ぎたが、ますます、これからの支援が大切なってくる。長く続けていくことが必要」と話した。

斎藤さんは、「喪失体験には定型がない。福島の被災者は『放射能の影響で自宅に住めなくなるかもしれない』という、日本人が過去に体験したことのない、非常に複雑な喪失体験をもっている。『ただ聴く』『ただ共感する』ということがいかに大きな支えになるか、わかちあいの場への参加を通じて、それが大事な作業なんだと感じてもらえたら」と語る。

(文と写真 藍原寛子)