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(2013年3月1日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 210号より)




民衆法廷で明らかにされる原発建設の舞台裏



原発民衆法廷が2月11日に三重県四日市で開催された。民衆法廷とは、法律に基づく裁判ではないが、原子力関連の法律を超えてより広い法律や憲法などによる法的判断を行うものだ。昨年2月、東京を皮切りにこれまで大阪、郡山、広島など6ヵ所で行われ、今回は7回目の法廷となった。

中部電力は現在の三重県南伊勢町に芦浜原発を建設する計画を立てていた。民衆法廷では建設計画の歴史を手塚征男さん(南伊勢町議)から証言してもらった。船で視察に来た中曽根康弘科学技術庁長官(当時)を追い返した実力行動とその後の逮捕による報復、三重県内で81万筆集めた署名運動、そして北川正恭三重県知事(当時)の仲介による中部電力の白紙撤回表明(2000年2月)への経緯と、推進派、反対派が真っ二つに割れた37年の歴史を短い時間でまとめてくれた。

また、町民の小倉紀子さんは、中部電力の金品による反対派切り崩し工作の実態や脅迫の手紙や無言電話、注文もしない品物が届くなどなど陰湿な行為の数々を赤裸々に語ってくれた。飄々とした語りに会場からは笑いがこぼれていたが、厳しい現実の一端を知った。

白紙撤回によって、親子二代にわたる反対運動(逆の側からは推進運動)に終止符が打たれたが、中部電力はいまだ買収した土地を所有したままだ。関西電力は和歌山県の日高原発計画を白紙にした後に買収地を町に寄付した。これに倣うべきだろう。

3・11の地震の後、東海地震・東南海地震・南海地震の同時三連動(マグニチュード9・1)を考慮すべきだが、耐震対策などの不十分さから、この三連動地震に浜岡原発は耐えられないだろうことを筆者が証言した。最後に、被曝の影響について、マーシャル諸島の島民調査を進めている竹峰誠一郎さん(三重大学地域戦略センター研究員)が証言した。

法廷なので、主尋問や中部電力の立場を代弁するアミカス・キュリエ(法廷助言人)と呼ばれる弁護士からの反対尋問なども挟んで進行していった。最後に判事が、芦浜の土地を町へ寄贈すること、浜岡原発を廃炉にすることなどを求める所見を述べた。判決は今年7月に予定されている。


伴 英幸(ばん・ひでゆき)

1951年、三重県生まれ。原子力資料情報室共同代表・事務局長。79年のスリーマイル島原発事故をきっかけとして、脱原発の市民運動などにかかわる。89年脱原発法制定運動の事務局を担当し、90年より原子力資料情報室のスタッフとなる。著書『原子力政策大綱批判』(七つ森書館、2006年)