Genpatsu


(2013年3月15日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 211号より)




ハラハラドキドキ、危うい状態、4号炉の使用済み燃料



福島第一原発は廃炉に向けた長い行程を歩み始めているが、深刻なのがプールに保管されている燃料だ。特に4号炉は定期検査中だったため、原子炉内の使用中の燃料が5階にあるプールに貯蔵されている。この燃料は発熱量が特に高く、冷却し続けなければならない。

東電は、4号炉の爆発でプールが大きくダメージを受けたので、その年の6月に支柱を立てて補強工事を行った。

しかし、これはあくまでも応急処置。元スイス大使の村田光平氏は、このプールがボロボロであると訴えている。強い余震が来てプールに大きな亀裂が入るなどして、大量の水が出ることになれば、燃料の冷却はできずに溶ける恐れがある。

さえぎるものがない状態で燃料が溶けるのだから、大量の放射能が環境に出ることになる。かつて近藤駿介原子力委員会委員長は「不測事態シナリオの素描」として、4号炉のプールで燃料溶融が起きた場合の影響を試算した(11.3.25)。

ここには、1331体の使用中および使用済み燃料と、204体の新燃料が保管されていた。1331体の4割程度が溶けた場合を想定した近藤試算によれば、福島県内の惨事は言うに及ばず、半径200キロメートル以内は法定限度を超える被曝を受ける事態になる。福島原発事故をはるかに超える被害だ。

燃料の取り出しを最優先にと、誰もがそう考える。そして作業は今年の11月から始まる予定という。時間がかかるのは、取り出しがそれほど簡単ではないからだ。

これまで建屋屋上の瓦礫を取り除き足場をしっかりさせていた。使用済み燃料は強烈な放射線を出している。そこで、専用の取り出し容器を開発・製造しなければならない。放射線をさえぎるために鉛が使われているため、容器自体も重量物だ。これを吊り上げるクレーンも必要だ。燃料を容器に入れる作業は必ず水中で行う。受け入れ先の地上のプールもゆとりがない。スペースを作るために、前から入っていたものをプールから移す。

向こう2年の間に強烈な余震が4号炉のプールを襲うかどうかは神のみぞ知る。私たちはまだ大惨事と背中合わせにいるのだ。


伴 英幸(ばん・ひでゆき)

1951年、三重県生まれ。原子力資料情報室共同代表・事務局長。79年のスリーマイル島原発事故をきっかけとして、脱原発の市民運動などにかかわる。89年脱原発法制定運動の事務局を担当し、90年より原子力資料情報室のスタッフとなる。著書『原子力政策大綱批判』(七つ森書館、2006年)