(2009年10月1日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 第128号)
公的住宅手当、保証金の無利子貸与も。若者の自立を支えるフランス・スウェーデンの住宅政策
イギリスやフランス、スウェーデン、フィンランドといった国では、ほとんどの若者がより早い時期に親から自立をはたす。日本のように、親元にとどまる若者は少ない。若者が自立するうえで、住宅政策が大きな役割をはたしている2つの国、フランスとスウェーデンに注目してみたい。
フランスでは、住宅ストックの17%を低家賃の社会住宅(公営住宅)が占める。その対象は低所得世帯であるが、日本のように年齢や家族形態によって制限されず、若い単身者でも入居が可能だ。
若年世帯は規定の所得水準以下であれば、家族向けや単身者向け(学生を含む)の公的住宅手当を受給することができる。また、若い失業者や就業者、学生などを対象とした住宅制度(ロカ・パス)として、借家契約の際の連帯保証人の代行、保証金の無利子貸与、未払い家賃の保証(18ヵ月まで)などのサポートがある。
スウェーデンの住宅政策は、すべての人に良質で適正な価格の住宅を供給することを目的としている。そのため、収入などにかかわらず、すべての世帯に社会住宅への入居資格がある。全住宅に対する社会住宅の割合は、約2割と多い。
公的住宅手当は、子どものいる世帯はもちろん、29歳未満の子どもがいない世帯(学生を含む)にも給付され、子どもの数などに応じて手当額の上限が設定されている。また、住宅サポートは、若者の自立を保障する包括的な青年政策の重要な柱の一つに位置づけられ、国が地方自治体に積極的な補助を行っている。
他国と同様、両国でも住宅政策に関するコストの削減は大きな課題であるが、それでもなお、多くの人がアクセスできる社会住宅の供給は維持されている。公的住宅手当も縮小がはかられる中で、社会的弱者としての側面が強まる若者の自立と家族形成への対策には重きが置かれ、柔軟な対応がなされてきた。
今、日本においては各政党のマニフェストに家賃補助の導入が含められるなど、住宅保障に関する議論が高まりつつある。他の先進諸国の経験と課題から多くを学び、住宅政策の新しい展開をはかるべき時がきている。
川田 菜穂子(かわた・なほこ)
1977年、神戸市生まれ。大阪市立大学生活科学部を卒業後、住宅メーカー勤務を経て、神戸大学大学院総合人間科学研究科・修士課程を修了。現在は同研究科・博士課程に在籍。専門は住宅問題・居住政策。著書に『若者たちに住まいを!−−格差社会の住宅問題』(岩波ブックレット)などがある。