Genpatsu


(2013年6月1日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 216号より)




敦賀原発、直下に活断層



原子力規制委員会は敦賀原発2号機の直下に走っている「D-1」と呼ばれる断層を活断層と認定した。政府は、原発の重要な施設は活断層の上に建てないとしているため、これによって敦賀原発の稼働はできなくなった。たとえ、敦賀原発を所有する日本原電が運転再開の手続きを申請しても許可しないからだ。

日本原電はこの決定に、理屈をかなぐり捨てて抵抗をしている。「厳重抗議」声明を出す始末だ。活断層である「可能性が否定できない」という規制委員会の判断が、感覚的な推量のみに基づくものであり合理的判断ではないと主張している。具体的には、火山灰などをもとにD-1断層を動かない「破砕帯」だと主張してきた。しかし、日本原電の主張は規制委員会の専門委員たちを説得できなかった。

考えてみれば、日本原電は敦賀原発を建設する時に、敷地内を通る別の「浦底断層」を活断層ではないとして申請していた。2008年になってようやく、たびたび活動していた活断層と認めた。経済産業省は活断層のあるところには原発を建てないとの立場だったから、そもそもこの地に原発を建てることはできなかったのだ。ところがすでに建設場所が決まっていたので、活断層ではないと事実を捻じ曲げたわけだ。

経済産業省は、敷地内に活断層が見つかると、地表まで出ていなければよいとし、さらに地表に出ていることがわかると、重要な施設がその上になければよいと立場を変えてきた。ところが、敦賀原発2号機の原子炉建屋そのものがD-1断層の上に建っている。

日本原電は原発を導入するために設立された卸電力会社で、沖縄電力を除く9つの電力会社が中心となって設立した。3基の原発をもつ。昨年度はまったく発電してなくても「売上」があり、10億円の黒字になった。電力各社は発電してなくても維持のために費用を払い、その分は私たちの電気代に上乗せされ、電気料金値上げの一因となっている。常識では考えられないことが起きていた。

活断層と判断された以上、素直に敦賀原発を閉鎖するべきだ。それが私たちの安全につながるし、「国策に協力してきた」と胸をはる電力会社の取る道だ。





伴 英幸(ばん・ひでゆき)

1951年、三重県生まれ。原子力資料情報室共同代表・事務局長。79年のスリーマイル島原発事故をきっかけとして、脱原発の市民運動などにかかわる。89年脱原発法制定運動の事務局を担当し、90年より原子力資料情報室のスタッフとなる。著書『原子力政策大綱批判』(七つ森書館、2006年)