こんにちは、ビッグイシュー・オンライン編集部のイケダです。先日行われたビッグイシュー基金主催の「【第3回若者応援ネットワーク研究集会】「見えない当事者」へ、情報をどう届けるか」のイベントレポートをお届けいたします。

Part.1はインターネットを使った自殺予防に取り組む、「OVA」代表の伊藤次郎さんです。

参考リンク:わずか150円で「自殺ハイリスク者」にリーチする:伊藤次郎さんに訊く、これからの自殺予防(2/2) | BIG ISSUE ONLINE

インターネットの力で自殺を減らしたい



伊藤次郎/OVA代表 インターネット・ソーシャルワーカー 2013年6月に若者の自殺が増えていることに問題意識をもち、ネットマーケティングによる自殺予防システム「夜回り2.0」(インターネット・ゲートキーパー)を日本で初めて開発、実施。


伊藤:私は今、自殺リスクが高い方にインターネットを使ってアウトリーチをして、自殺をしようとしている方の予防支援をしています。精神科ソーシャルワーカー(PSW)です。。1985年生まれなので、ギリギリ20代です(笑)

元々はビジネスマン向けのメンタルケアをしていたのですが、若者の自殺について意識が芽生えて、こういう活動をしています。去年(2013年)の7月14日から始まったばかりの活動で、任意団体として基本的にひとりで運営しています。協力者として、和光大学の末木先生と協同で研究などをしております。今回発表する取り組みについては、彼がWHOなどでも発表してくださっています。

2013年の6月に自殺対策白書というものが出ました。そこには全体の自殺は減ったのに、若者の自殺が増加傾向にあるということが書かれていたんです。これは問題だと思い、どのようにしたら彼らにリーチでするかを考えて、やはりスマホ、インターネットだと。

彼らは「死にたい」「自殺の方法」というワードを検索エンジンに打ち込むのではないかと思いまして、検索ボリュームを測ったら「死にたい 助けて」という検索エンジンに打ち込んでいる人が20万人いることが分かりました。

僕はこれにショックを受けました。リアルの世界で言えない悲痛な叫びを検索エンジンに打ち込んだのではないか。こういった声に対して、SEO、リスティング広告で対応できるのではないかと考えました。
仕組みについてですが、例えばスマホで「首つり 方法」、などの自殺関連用語を検索すると、私のサイトが出てきます。そうすると、私の広告が表示されて、彼らにお手紙が表示されます。そこで、私に連絡してくださいね、というメッセージを伝えています。ワンクリックでメールで相談できるようになっているので、ここで何らかの言葉を送れるようになります。最初は「助けて」くらいしかメッセージはないのですが、そこから概ねこのような文章を送っています。そこから支援を始めます。

自殺リスクの高い人は関係性が遮断されて孤独でいるわけです。1つの点という状態になっている。その点の状態にある人をインターネットを通じて私との関係性、線を作ります。関係性ができた時点で自殺リスクを下げることができるわけです。ただ、彼らが抱えている問題は解決しないので、リアルの資源に線をつないでいきます。

映写しているスライドが実際の成果ですが、7月14日〜10月31日の期間に、平均で約23歳、123名の相談者が来ました。全部で数千通のメールを送っています。自殺ハイリスク者にリーチする広告費用は、1人あたり約137円でした。



ネットでリーチするメリットとしては、まずは支援者と私自身のコストを下げています。夜回りなどをしても、自殺ハイリスク者一人にアウトリーチするのは大変ですが、ネットで自動化できています。

一番重要なことは、相談者のコストを下げたということです。電話サービスがありますが、あれはコストが掛かるものなんですよね。匿名性や地理の問題をネットは解決することができます。たとえば北海道で生活に困窮している方からも、メールをいただいたことがあります。活動を私の部屋から一歩も動かずにやっている。インターネットによってこれが可能になったということですね。

大事なのは相談者が状況をコントロール可能にする、ということだと思います。リアルな場だと、相談員がどんな人か分からず、相談に行ったら逃げられません。でも、メールだったら返さなければいいんです。もっとも、それだけメールで支援することには困難も伴います。

最後になりますが、今回のテーマは「見えない当事者へ情報をどう届けるか」という話だと思います。
私は、彼らの「情報を収集する」という行動パターンに注目してアウトリーチしていくことを考えました。「見えない相手にリーチする」ということを考えつづけてきた方がいると思います。それは社会福祉の人ではなく企業です。企業はマーケティング活動を通して、プロダクトを見えない当事者にリーチしているわけです。

そういった意味で、社会福祉に関わる私たちがマーケティングの手法を学んでいくことには、大きな意味があるのではないかと考えています。ありがとうございました。

part.2に続く
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ビッグイシューと参加の形について(初めての方へ)


こんにちは。ビッグイシュー日本東京事務所長の佐野未来です。

TVや新聞などを通じて「ビッグイシューのことを初めて知った」という方のために、簡単にご説明と参加の形をご紹介させていただきます。

また、ご興味を持っていただけた方、もう少し、ビッグイシューを知ってみたい、関わってみたいと思われた方のために、参加・応援方法なども最後にご紹介しています。最後まで読んでいただければ嬉しいです。

ビッグイシューについて


ビッグイシューは1991年にロンドンで生まれ、日本では2003年9月に創刊しました。ホームレスの人の救済(チャリティ)ではなく、仕事を提供し自立を応援する事業です。有限会社ビッグイシュー日本という会社を作り事業を行っています。

例えば厚生労働省の調査によると、野宿生活者の約7割が働いており、過半数の人は仕事をして自立したいと思っています。ビッグイシュー日本は『ビッグイシュー日本版』という雑誌の販売という仕事をつくることで、ホームレス状態であっても働き収入を得ることができる機会を提供しています。

販売者は、登録を済ませ、無料で提供された10冊を販売して3500円の収入を得た後は、一冊170円で仕入れ定価350円で路上で販売します。一冊180円が販売者の収入になります。 詳しくは販売のしくみをご覧ください。

2003年の創刊以来、2016年3月31日までにのべ1681人が販売者として登録し、188人がビッグイシューのしくみを利用して路上生活を脱し、ビッグイシュー販売以外の仕事を得ることができました(関連ページ:ビッグイシュー日本版|祝・おかげさまでビッグイシュー10周年!)。

現在全国で約120名がビッグイシューを販売しています(販売者ストーリーはこちら)。

若いホームレスが増えています――ビッグイシューの取り組み


ビッグイシューの販売者は「ビジネスパートナー」。ホームレスは一見とても遠いことに感じますが、今の日本では誰もが「ホームレス」になる可能性があると私たちは感じています。
日雇い労働者として建築現場などで働いていた人たちが、高齢や怪我などで仕事がなくなり、路上生活になる、というのがビッグイシュー創刊当初(2003年)に良くあったストーリーでした。ですから、販売者も50代以上の人たちがほとんどでした(関連ページ:ビッグイシュー基金とは)。

不安定な就労状況の中、高齢や怪我などで仕事を失い路上にでる、という構造は今も変わらずあります。そして、リーマンショック後、20代、30代の若い人さえも、仕事を失い、ネットカフェなどを転々としたり、路上生活となり、ビッグイシューの販売登録にやってきました。(関連ページ:若者ホームレス支援

ビッグイシュー日本はホームレス状態でも「すぐにできる仕事」を創るとともに、2007年にスタートした認定NPO法人ビッグイシュー基金とともに、「誰もが存在を認められ、安心して生き生きと関われる場所・社会をつくること」に取り組んでいます。

応援者の声


この12年間、本当に多くの方々に応援をいただき、活動を続けてくることができました。沢山の著名人の方々にも表紙に登場いただいたり、ゲスト編集長になっていただくなど、応援をいただいています。(関連ページ:バックナンバー表紙一覧

これまでに登場いただいた方々の声を一部ご紹介します。

「掲げている理念も、売る人も買う人も、全部ひとつの歌。僕らも、街頭に立って声を張り上げて生活費を稼いでいる彼らと同じ歌を歌ってる。同じ“生きようとしている人”なんだ。

ビッグイシュー41号 バンプ・オブ・チキン


「雑誌を購入したお金が、働く意思のあるホームレスの糧になる。ビッグイシューは、一律に税金を払って、補助金で一律にホームレスを支援する行政とは全く違う新しい公共性だ」

ビッグイシュー49号 石田衣良さん


「これを買うことでしかできない体験」がビッグイシューの魅力。もちろん中身も他にないものだし、それこそホームレスの人と話す体験は他でできないものですから。」

ビッグイシュー100号 香山リカさん


「ビッグイシューは日本社会の欠陥を補うキラーパスのような雑誌じゃないかなと思います。販売者さんを見たら、パッと寄っていって買う、そんな男の子女の子は素敵じゃないですか。ビッグイシューの未来を心から応援しています。」

ビッグイシュー107号 茂木健一郎さん


参加の形について


まずは人が貧困状態で一人ぼっちになり、ホームレスとなってしまう社会について、どうすれば変えていけるのか、一緒に考えていただけると嬉しいです。もう少し、ビッグイシューを知ってみたい、関わってみたいと思われた方、以下のような参加・応援方法があります。皆様の参加、ご協力をお待ちしております。

【知る・広める】
ビッグイシューについて知ってください。お友達や家族の人に広めてください!

①フェイスブックでビッグイシュー公式ページを「いいね!」 
②ビッグイシューの過去の記事が読める「ビッグイシュー・オンライン」を読んで面白いと思った記事を広める。さらに興味があれば、最新号の紹介やお勧め記事などをお知らせするメルマガに登録。
③ツイッターで BIG_ISSUE_JAPAN をフォローする。

【雑誌を買う・読む・広める】
雑誌をぜひ手にとって見てください。そして、お友達や家族の人に広めてください!

④ 最寄の販売者さんから購入→販売場所検索 
⑤ バックナンバーをビッグイシュー日本本社より直接購入《3冊からの購入となります》 
最寄りの図書館などで読む
*「図書館購読」の仕組みがありますので、最寄りの図書館に無い場合、ぜひ要望を出してみてください。

【その他のかかわり方】
⑦ イベントに参加してみる。*イベント情報はフェイスブック、ツイッターで速報をお知らせするほか、誌面やホームページでもお知らせしています。
ボランティアとして参加する
寄付をする。 

*NPO法人ビッグイシュー基金は、国税庁から「認定NPO法人」に認定されました。ご寄付は税制優遇の対象となり、寄付金控除等を受けていただくことができます。 

⑩ ご家庭や職場で不要になった書籍、DVDなどを「チャリボン」サイトから寄付する。(5冊より送料無料です)


最後まで読んでくださって、ありがとうございました!






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ビッグイシューについて

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ビッグイシューは1991年ロンドンで生まれ、日本では2003年9月に創刊したストリートペーパーです。

ビッグイシューはホームレスの人々の「救済」ではなく、「仕事」を提供し自立を応援するビジネスです。1冊350円の雑誌を売ると半分以上の180円が彼らの収入となります。


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237


4月15日発売のビッグイシュー日本版237号のご紹介です。

スペシャルインタビュー ケイト・ブランシェット
ここしばらく映画界から離れていたケイト・ブランシェットですが、ウディ・アレン監督の『ブルージャスミン』が、彼女に2度目のオスカーをもたらしました。これまでのキャリア、劇作家の夫との日々について語ります。

国際記事 国家か? 投資家か? 民主主義の土台を揺るがすISD条項
国が環境や国民の健康を守るために法律を制定しようとすると、大企業から告訴されるケースが増えています。貿易協定に盛り込まれるISD条項に、その原因があるようです。

特集 暮らしの源(もと)――里山の風景
もし、世界的な経済恐慌などによって、生活物資が供給されず、都市が機能しなくなったとしたら……。どんな暮らしが可能なのでしょうか?
かつて、暮らしの基盤には「里地里山」文化がありました。近くの山林から山の幸、燃料、生活資材などを採取し、田畑で米や穀物を育てて自給。はるか縄文時代、青森・三内丸山遺跡には植林されたクリ林があり(古里山)、それ以来5千年間、1950年代(昭和20~30年代)まで続いてきた暮らしでもあります。  そこで、石川県の金蔵、埼玉県の三富新田、大阪府の里山倶楽部など、市民が活動する「里地里山」の現場を訪ねました。里山体験、ボランティア参加情報も掲載。また、養父志乃夫さん(和歌山大学教授)には、「時空をこえる里地里山の源流」について聞きました。「里地里山」の今に触れ、未来の暮らし方を考えるヒントを得たい。

被災地から 日本政府の「100ミリシーベルト以下なら安全」は間違い
福島の原発事故後、健康の権利に対する調査を実施してきた国連人権理事会のアナンド・グローバーさんが来日。「広島、長崎の長期低線量被曝調査でも、ゼロより少しでも高ければリスクが高まることが明らかになっている」と、政府による安全基準の問題点を語ります。

この他にも、「ホームレス人生相談」やオンラインでは掲載していない各種連載などもりだくさんです。詳しくはこちらのページをごらんください。

最新号は、ぜひお近くの販売者からお求めください。
販売場所検索はこちらです。

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こんにちは、ビッグイシュー・オンライン編集部のイケダです。最新号より読みどころをピックアップいたします。

坂本龍一さんが今考えていること



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236号の読みどころは、なんといっても坂本龍一さんのインタビュー。東日本大震災から3年を迎えようとしていた3/8に行われた「Peace on Earth」に参加した坂本龍一さんを、ビッグイシュー編集部が取材しました。

坂本龍一さんは、今何を考えているのでしょうか。彼の印象的な発言を、紙面からピックアップいたします。


「12年末までは震災復興や原発の問題を言っていればよかったけど、もうこの国は大きく旋回して、変わってしまった。脱原発どころか、改憲、徴兵制と矢継ぎ早にやってくる中で、どうすればいいのか。これは、私たちの手に負えるものなのか……。」


「僕は社会活動家じゃないんですよ。本当は音楽だけをやっていたいんです。本来、音楽家がこういう活動をしないですむ社会の方が望ましい社会だと僕は今でも思っています。」


「僕が一番やりたいと思っているのは、あるいはアクティビストたちにやってほしいと思っているのは、一番困っている人たち、たとえば基地問題なら沖縄の人、原発問題なら福島の人や原発を抱える地方の人たちとタッグを組むことです。現実に、3年経った今も福島では14万人もの人が避難して困っているわけで、その人たちがまず声を上げるべきだし、上げられない事情があるなら僕らが手助けをする。その強力が活動の一番のドライビングエンジンになるはずです。」


「そもそも福島県は、あの自民党の福島県連さえ脱原発なんですよ。県議会も全廃炉だと言っている。こんなに強い味方はないのに、どうして一緒にやろうとしないのか。今の野党不在のこの日本で政治を変えるには、もう自民党に変わってもらうほかないんです。だとしたら、福島県から自民党を切り崩していけばいい。」


「単に美を追求するだけでなく、既成概念を破壊することが20世紀以降のアートの特徴だったとすれば、そのパラダイムが終わりをつげ、新たなアートの概念が生まれ始めている気がします。」


「僕が世界のあちこちに行って思うのは、管理社会の圧力が世界的に高まっているということ。極端に言えば、路上にごみひとつ落ちているものも許せないような、社会にモノ申す者を排除する力が強まっている。だけど、最近のウクライナの政変のように、世界には自由を求めて命を張って闘っている普通の人たちがいるということも、忘れてはいけないと思います。」


「未来ですか?まあ、あと20年も持たないんじゃないですか、この世界は。あなた(40代筆者)が生きている間に、世界は本当にやばいことになると思いますよ。」


いかがでしょうか。長らく環境問題にかかわってきた坂本龍一さんの悲観的な未来観を前にして、みなさんはどのような未来を予想するでしょうか。さらに詳しくは誌面でお楽しみください。

236号では、他にも情熱をもとに世界を飛び回る3人の人を取材した特集「地球を駆ける」、軽犯罪を起こした女性を支援する英国の取り組み「ターンアラウンド」について、料理研究家の枝元なほみさんのコラムなど、豊富なコンテンツが掲載されています。ぜひ路上にてお買い求めください!

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前編を読む

残像、心のスペース、そして寄付、ボランティア活動も


一方、さんざん悩み思いをこめた贈り物のエピソードも。

Gさん(20代女性)は大失恋した友達を励ますため、彼女の家のポストに、読んでほしい本やリラックスできそうなお茶、バスソルトなど、小さなギフトを2ヵ月間、毎日入れ続けた。「今日で終わりじゃないんだよ、明日があるよ」ということを伝えたかった。もちろん彼女は徐々に元気を取り戻した。

Jさん(20代女性)は、長くつき合った彼氏と別れる時、感謝と憎しみを綴った長編大作の手紙を贈った。「今となっては、どうかシュレッダーにかけていてほしい」と願っている。

では、そんな贈り物とは一体何なのだろうか? 次のような答えたちが並んだ。

「贈られた人よりも、贈った人の心を豊かにしたり、満足させるもの」(40代女性)

「贈った人と贈られた人の共感または乖離感の指標」(50代男性)

「人に対する親愛の気持ちを形にしたもの。無形の贈り物があるとするなら、その最たるものは命、自然だろうと思う。寄付行為、ボランティア活動も大きな意味で贈り物」(50代男性)

「抽象的でよければ、殺し合っている人々に戦争のない世界を/忙しい人に、のんびりした時間を/おびえている人に、安心を/未来の人に豊かな森と生き物。具体的には、自分で見つけたおいしい酒を本当の酒好きの人に。自分で作った料理や釣った魚を、味のわかる人に贈りたい。手間を惜しまず走るご馳走です」(60代男性)

「その人のために、あけた自分の心の中のスペースを形や言葉にしたもの」(50代男性)

「あなたのことが大切ですよ、という結晶」(20代女性)

「残像。いつまでも残って、思い出せば、その時に戻れるもの」(30代男性)

「ほこほこフワフワした気分の交換かな。大事に思っているよ、ずーっとずっと大好きだよ、という気持ちをこめているから」(40代女性)

そして今、こんな贈り物を考えているのは、Kさん(60代女性)。

「高校時代からの親友と会うたびに『生前葬』と思って、ささやかなるちょっとしたものを贈りたい。たとえば、一緒に美術館に行けなかったら『絵はがき』とか、頂きものの『おすそわけ』とか、もらって負担にならないが、『私の心にあなたのスペースをあけているよ』と、伝えたい」

贈り物論をいきいきと語る男性に対して、実際の贈り物が上手なのは女性だろうか? 普段はクールな人も、近寄りがたい強面の人も、老いも若きも、贈り物については驚くほど、誠実で素直だった。

(香月真理子、中島さなえ、野村玲子、松岡理恵、稗田和博)
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<2008年12月1日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 第108号より>


贈り物。それは自発的に、他人に「自分の何か」を差し出す瞬間



人生をふりかえれば、誰にでもいつまでも心に残る贈り物があるのではないだろうか?
20〜60代の老若男女50人にアンケートをして、「忘れられない贈り物」を聞いた。
あなたにも心に残る贈り物はありますか?


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贈り物の風景、そして原体験



「私の向かいに若いカップルが座っていました。電車はすいていました。男性が女性に紙袋を渡しました。女性はけげんな顔でそれを受け取り、袋をのぞき込んで息をのんだような表情をしました。そのうち彼女の眼から涙がほろほろこぼれて、私は目をそらし、でも気になって見ずにはいられませんでした。袋に入っていたのは、なにか画集のようなもののようで、会話の断片から高くて買えなかったというように聞こえました。男性は、照れてそっぽを向いていました」

Aさん(60代女性)が電車の中で見た風景。オー・ヘンリーの短編のようだ。

こんなにも感動的でなくても、アンケートの回答には贈った人、贈られた人の気持ちがあふれるエピソードが寄せられた。

まずは人生が始まったばかりの、子どもの頃の鮮明な贈り物の記憶。 「7歳の時。病気になった時、隣のタダシくんとおばちゃんが折ってくれた千羽鶴。千羽鶴を折るのは大変な労力です。子ども心ながら、単なるお見舞いの気持ちではできないことだと感動した」(40代女性)

「5歳くらいの時、クリスマスにサンタクロースにもらったウクレレ。ほんとにサンタクロースはいてた!という驚きとうれしい気持ち」(40代女性)

逆に初めて人に贈り物をした思い出が、「今思うと、人生初の『自発的に他人に自分の何かを差し出す』瞬間」と言うBさん(20代女性)。「小1の時、放課後、友達と遊んでいてルマンド(お菓子)をあげた。私が持ってきたルマンド5個に対し、集まった友人は私を含めて6人。身を切る思いで大好物のルマンドを最後の1人に差し出した」

人は物心つく頃から、心のこもった贈り物を喜び、一方で心を悩ましてきたのではないだろうか?

30年間、今も考え続けている贈り物のこと



そうして、人は大人になって日常的に贈り物を贈り合う。

1977(昭和52)年の冬のある日、金沢は豪雪だった。Bさん(60代男性)は公共交通機関が遮断される中、長い距離を家まで歩いた。帰宅したのは深夜。郵便受けを見ると、バレンタインチョコが入っていた。送り主の女性は、現在の妻。「車でも2時間はかかる私の家に、どうやってチョコを届けたのか。いまだに謎です」

バイトや職場を辞める時、同僚からもらった花束や寄せ書き。海外の旅先やホームステイ先で、気持ちのこもった手づくりの贈り物に思わず涙したという人もいた。30代、40代の女性は、結婚指輪やプロポーズの言葉をあげる人が多かった。

その他、「ぐっと大人になったような気がした洒落たジャズのCD」(20代男性)、「10代で入院した時にもらった尾崎豊の本に励まされた」(30代男性)など、それぞれの人生が浮かび上がるようなエピソードだ。

だが一方で、贈り物は、贈られた人の心に波紋を投げかけることもある。

Cさん(50代男性)が新宿のフーテン族だった若い頃、友人から贈られた誕生日プレゼントは『聖書』。「まともに生きろ」という意味なのかと考えさせられた。「なにしろ贈った友人も、まともに生きていなかったので、どういう意味だったのか、いまだに考えている」

Dさん(20代女性)は高校生の誕生日、家に新巻鮭が届いた。差出人は、元カレ。ギターしかとりえがなかった無職の旅人。別れてから数ヵ月消息を絶っていたが、伝票には北海道の羅臼と書いてあった。「ちゃんと仕事を見つけたって安心させたかったんだと思う。うれしかったけど、なんで羅臼だったの?」
 

「だいじょうぶ循環」という贈り物



反対に、形のない贈り物が心に残っている人も多い。

「久しぶりに会った人が、人前で思い切りハグしてくれました。こちらも会いたかったけれど、むこうの会いたかったという気持ちも伝わってきて、当分、幸せな気持ちでいられると思った」(40代女性)

「死にたくなるくらい気持ちがどん底だった時に、ある舞台俳優さんに力いっぱい頭を撫でてもらい元気をもらった。掌を通して温かさを感じた時、まるで生き返ったような気持ちだった」(20代女性)

「生演奏。歓迎パーティで、知ってる歌やら知らない歌やらをギターやウクレレで演奏してもらった。本当に楽しい気分で音楽ってすてき!って思った」(20代女性)

「『くたびれちゃった。もうダメかもしれない……』と言うと、友達が『だいじょうぶだよ、なんとかなるよ』と言ってくれる。『そっかなー、なんとかなるかなー』『なんとかなるよー』と言って笑い合う。心がやわらかくなってくる。それを私たちは『だいじょうぶ循環』と呼んでいる。そしてご飯を作って一緒に食べる。あんなことこんなことを話しながら食べているうちに笑顔になっている」(40代女性)

そして究極は、20代の女性、EさんとFさんがそれぞれ親友に贈った誕生日のサプライズパーティだ。

Eさんはウソの理由で呼び出し、自宅の自室を飾り「とにかくビックリさせてやりたかった!」と、親友が喜びそうなサプライズを部屋のあちこちに隠した。

「あの時の彼女が部屋に入ってきた瞬間目が点になってすぐの泣きそうな笑顔は、今でも思い出すたびにこっちが幸せになります」。Fさんは、「どこに行くか言わずに、いきなり船に乗せて、和歌山の友が島まで連れて行って、2人だけのサプライズパーティ。水着もサンダルもぜんぶ私が用意。驚かせると同時に、ステキな日にしてあげたかった」

20代の女性は個性的な贈り物が得意だ。

後編に続く
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<2013年5月15日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 第215号より>

市民の寄付で建設。福島県白河市の「原発災害情報センター」



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建設が進む「原発災害情報センター」内部(4月現在)

原発事故と向き合い、人々の尊厳を守り、平和の尊さを伝える資料館にしたい――。福島県白河市の「アウシュヴィッツ平和博物館」の隣に、姉妹館となる「原発災害情報センター」の建設が進んでいる。オープンは5月19日(日)で、開館記念式典とともに、立命館大学国際平和ミュージアム提供による企画展「放射能と人類の未来展」が開幕する。

アウシュヴィッツ平和博物館が建設されたきっかけは、1988年からアウシュヴィッツ収容所を管理するポーランドのオシフィエンチム博物館から借りた遺品やインタビュー記録、写真などをもとに、市民により「心に刻むアウシュヴィッツ展」が開かれたこと。全国を巡回展示するなかで、常設展を希望する声が上がり、栃木県塩谷町に常設館・アウシュヴィッツ平和博物館が00年開館。

その後03年に白河市に移転・再オープンした。そして10年にわたり、地元白河市の住民も参加し、平和を考える学習や講演会、シンポジウムの開催や、コンサート、交流事業、海外への見学ツアーなどを開催し、博物館を運営してきた。

「原発災害情報センター」の建設は、県内で地元の活動に参加してきた女性たちから震災後に提案があったのがきっかけだった。

「福島県内には原発災害を考える施設がない。心配や不安があっても声に出せない県民も多い。みんなで集まって話し、事実を記録して正確に発信し、伝えていく拠点が必要ではないか」

こうした要望を受けて建設を決定。原発事故の資料を収集し、機関誌発行などで正確な情報発信をする。また、各種の企画展や勉強会・学習会を開くほか、広島、長崎、チェルノブイリ、そして福島での原発・原爆の歴史やその影響などを、さまざまな考えや立場を越えて自由に話し、お互いに励まし合い交流する仲間づくりの場を目指すことになった。

メインの展示棟は約140平方メートルで自然光を利用、太陽光発電設備も設置。図書室や喫茶サロン室などの併設も予定。長野県から運んだ木材を使い、200年はもつという伝統工法による建設が進められ、「環境に優しく、後世に残る施設にしたい」との思いを込めている。

建設費用は賛同者からの寄付で賄っており、運営費は20年で総額1億円を予定。展示棟などの建設費用は目標3500万円のうち2000万円が集まったが、さらに寄付を募っている。このほかにも木材の現物提供、大工仕事のボランティア、菓子類の現物寄付など、全国からの多様な支援によって建設が進められている。

(文と写真 藍原寛子)
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part2を読む

エコアパートは持続可能な暮らしのモデルケース



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この「顔の見える」地域づくりは、平田さんが6年ほど取り組んできた環境活動「コミュニティガーデン」から発想したものだという。コミュニティガーデンは、土地の再開発によって生まれる多くの空地を活用し、花、野菜などを植え、地域住民が一緒に管理することで地域の結びつきをつくる活動。この活動は、単に農業の生産活動の場としてだけでなく、孤立した住民同士で起こる犯罪の防止や、少子高齢化で増える老人の居場所づくりとしても効果的だと、平田さんは考えている。

「コミュニティガーデンでは、緑を媒介にして、いろいろな人に出会えます。そこは、ローカルな場所と自分の知らない人・世界をつなぐゲートみたいなもの」と説明する。

平田さんが長年取り組んできた緑を通してのコミュニティづくりは、今、畑つきエコアパートという形で実現しているといえる。

エコアパートには木の机とイスが置かれた、共有スペースがあり、憩いの時間を演出している。採れたてのイチジクや冬瓜の煮物、自家製のゴーヤジュースを囲んで、住人の方々、平田さんご夫婦とご両親は仲良くくつろいでいた。近所の方やコミュニティガーデンで出会った人たちも、居心地がよいからとたびたびここを訪れるそうだ。

アパートの家賃は12万3千円。現在、30代の夫婦3組とシングル1組が入居中だ。「2軒目の計画はまだない」と平田さんは語るが、最近、こういった建物をつくりたいという見学者と問い合わせは相次いでいるそうだ。

「先進的な環境活動」として足立区から評価を受け、助成金も下りた。通常のアパート建設の1・5倍のコストがかかってしまったことが難だが、建築資材を再考することで、そこには改善の余地はあるようだ。今後、環境活動がますます重要になり、地域のあり方も問い直されてくることを考えると、こういった建物が増えていく可能性は十分ある。

平田さんは言う。「ほとんどが初めての試みで、不安もたくさんありましたが、環境と人のための、夢でも理想でもない、具体的で持続可能なモデルケースをつくれたような気がします。一時期のブームではなく地に足の着いたひとつの運動として、こういったライフスタイルのあり方を広げていきたいんです」

(山辺健史)
Photos:浅野カズヤ

ひらた・ひろゆき

1973年、東京都生まれ。足立グリーンプロジェクト代表。地球環境パートナーシッププラザ勤務。立教大学大学院21世紀社会デザイン学科在学中。95年カリフォルニア州ハンボルト大学留学中、野外教育NPO・LEAPに激流下りガイドスタッフとして所属。帰国後、巨樹と川と人のつながりを訪ねる日本縦断の旅をきっかけに、環境問題への関心を高め、「足元から考える環境問題」をテーマに、足立グリーンプロジェクトを立ち上げる。植物を活用したヒートアイランド対策や、野菜作りのプロセスを通じた環境学習を展開するなど、「遊びと学び」を融合させるプログラムを展開している。

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(ビッグイシュー・オンラインは、社会変革を志す個人・組織が運営するイベントや、各種募集の告知をお手伝いしております。内容については主催者様にお問い合わせください。)

『市民が考える住宅政策』:「住宅政策提案書」 発表シンポジウム



ビッグイシュー基金では、住宅政策の再構築が日本の貧困問題解決の切り札になるのではないかと考え、検討・提案のための委員会を開き、議論を重ねてきました。

そして昨年、市民が住宅の問題をオープンに話し合えるよう「住宅政策提案書」をまとめ、これまでに6000部を無料配布しました。(提案書の送付、PDF版のダウンロードについては基金HPへ)

昨年12月には東京青山で「提案書」の発表シンポジウムを開催し、120人が参加。ペンを走らせる音の止まない、静かに熱い時間となりました。

(東京でのシンポジウムのレポートはビッグイシューオンラインに掲載のこちらの記事をご覧ください)

他地域での「提案書」発表シンポジウム開催を待たれる声も多く頂いておりましたが、このたび、大阪での開催が決定しました。

今回は提案書をまとめた平山洋介委員長をはじめとする各委員と共に、ゲストスピーカーとして大阪で追い出し屋問題に取り組んで来られた徳武聡子さんと、岡山で精神障害者、出所者、高齢ホームレスなどもクライアントとして仲介を行う阪井土地開発株式会社の代表、阪井ひとみさんをお迎えし、住宅困窮者の今と、民間借家活用の可能性について話していただきます。(阪井さんのご活躍については14年3月4日~6日朝日新聞生活欄「ある不動産屋の挑戦」に掲載されました)

これまで住宅問題は「個人の甲斐性」の問題とされ、社会的に語られる機会が少なかったのではないでしょうか?市民の目でまとめた「住宅政策提案書」をもとに率直に話し合いませんか。ぜひご参加ください。

【日時】5月18日(日) 14時~16時半 (13時半より受付開始)
【場所】天満橋 国民会館 中ホール 
【アクセス】
 住所:大阪市中央区大手前2-1-2 國民會館住友生命ビル12階
 最寄り駅:地下鉄「天満橋」駅3番出口 徒歩5分
【定員】100名(先着順)
【参加費】1,000円(「住宅政策提案書」等、資料代を含む)
【主催】住宅政策提案・検討委員会/認定NPO法人ビッグイシュー基金

【お申込み】
ビッグイシュー基金HPお申込フォームか、FAX(06-6457-1358)で、お名前、ご参加人数、お電話番号、メールアドレスをご記入の上お申し込みください。

【内容】当日配布の「提案書」を参考に以下のテーマで話し合いをします。

第1部 「いま、なぜ住宅政策?」住宅困窮者のいまと、民間借家活用の可能性
●「住宅困窮者のいま」―徳武聡子さん(反貧困ネットワーク大阪事務局長/司法書士)
●「民間借家活用の可能性」―阪井ひとみさん(おかやま入居支援センター/阪井土地開発株式会社代表)

第2部 「これからの住宅政策のあり方」 検討委員会の各委員からの提案
 <住宅政策提案・検討委員会>
 ・平山洋介委員長 (神戸大学大学院 人間発達環境学研究科教授)
 ・稲葉剛委員 (NPO法人もやい代表理事)
 ・川田菜穂子委員 (大分大学 教育福祉科学部准教授)
 ・佐藤由美委員 (奈良県立大学 地域創造学部准教授)
 ・藤田孝典委員 (NPO法人ほっとプラス代表理事)

第3部 「市民が語ろう!住宅問題」
・参加していただいた市民を中心とするトークセッション

皆様のご参加をお待ちしております!
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