(2008年4月15日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 93号より)





大海勝子さんの春の「道草料理」入門



野草や山菜採りなどの自然遊びを始めて30年という、大海勝子さん。季節の光につつまれ風に吹かれて自然の中で「道草」を摘む喜びと楽しさを聞いた。そして、大海さん直伝の「道草料理」を紹介。








プロフィール





家のそばにあった。山にしかないと思い込んでいた野草



春は身近にある草木を最も意識しやすい季節ではないだろうか? 枯れ果てていた大地に草が芽吹き、花が咲き、木々が青々と茂っていく。その姿に春の訪れを知り、生命のエネルギーを感じる。それは都会でも同じ。ちょっと意識するだけで、私たちの身近にはたくさんの野草(道草)があることに気づく。

そんな身近にある道草を摘み、おいしく食べる方法を紹介しているのが、料理研究家の大海勝子さん。大海さんを訪ねると、桜のお茶で歓迎してくれた。

「おめでたい席で出される桜茶は塩漬けするんですけど、今回は砂糖漬けにしてみました」

ほのかな甘みと桜の香りが鼻腔に広がり、桜色の美しさに心が和らぐ。




大海さんは道草のほか、きのこの見分け方やハーブを使ったレシピ本を出版するなど、身近な植物のプロだ。今も毎週末、家の近所や郊外の山へ出かけては自然に親しむ生活を続けている。ところが昔はアウトドアが好きではなかったのだという。

「私は街っ子だったので、道草のことなどまったく知りませんでしたし、興味もありませんでした。でも夫が田舎育ちのアウトドア派で、休みといえば子どもを連れてテント担いで出かけていく。私はテントじゃなくて旅館に泊まってのんびりがよかったけど、お金もないし、子どもも小さいからしかたないかと……」




最初はしぶしぶついて行ったアウトドアだったが、大海さんは次第に自然にある野草やきのこ、ハーブ、木の実などに魅せられていく。

「自然の中には、なんて香りよく、おいしく、素晴らしいものがあるのか。知れば知るほどおもしろくなっていったんです。例えばよもぎなら、昔から知られているよもぎ餅から始め、今度はそれを雑炊に入れて、というふうに展開していきました。自分で探し出して摘んだという実感とともにいただく喜びは何ものにも換えがたいものなんですよ」




こうして植物に詳しくなっていった大海さんは、山にしかないと思い込んでいた野草が家のそばにもあることに気づく。大海さんが住んでいるのは、東京都東久留米市。市内には川が流れ、自然も多少残っているが郊外というほどでもない。都心から電車で20分ほどのごく普通の住宅街だ。

「東久留米に限らず、例えば、荒川とか、日比谷公園とか、至るところに道草はあります。遠くに行かなくても、自宅の近所で目を凝らしていればいいんですよ」
 そこで早速、道草の見分け方とおいしい食べ方について、教えてもらうことにした。




入門編—のびる、つくし




まずは誰でも目にしたことがある道草から。野草料理と聞くと、おひたしやてんぷらが定番だと思っていた。おばあちゃんの知恵料理、さっぱりしていて身体にいいけどパンチにかけるといったイメージがあったのだが、大海さんは韓国料理やイタリアンなどにも道草を各国料理へ展開させている。







のびる


●のびる

これも公園の片隅など、どこにもある道草の一つ。上に向かって細く伸びている(名前どおり!)ので見つけやすい。

「ねぎやあさつきの仲間と思ってもらえればいい。特に韓国では人気の野草で、ナムルやキムチ、チヂミ、卵焼きなどにして普通に食べられています」

【のびるのチヂミ】
〈材料〉のびるの葉、小麦粉、卵、水、塩少々、炒め油
㈰のびるは1.5センチの長さに切る。小麦粉、卵、水、塩少々で濃いめの天ぷら衣ぐらいの生地を作り、のびるを混ぜる。
㈪フライパンに油をしき、5〜6センチに丸く生地を流し、焦がさないように返しながら両面を焼く。好みでイカなどを入れても。






ツクシ

●つくし

つくしは昔からおひたしなどにして食べられていた定番道草の一つだろう。

「かすかな苦味と見た目のかわいさが特徴。味は淡白で、歯ざわりを楽しみます。定番パスタにさっとゆでたつくしを加えるだけでぐっと春っぽい味になります。パンケーキに入れるのもおすすめ」




春のおすすめ編—はるじおん、西洋からし菜



どこでも見かけるが、驚くほどおいしい道草。







ハルジオン



●はるじおん

空き地や草むらなど、至るところで見かける、はるじおん。「ビンボー草」と呼んで嫌っている人も多いのでは?

「私もそうでした(笑)。まさかこれが食べられるのかと半信半疑でしたが、ゆでると春菊によく似た香りとほろ苦さが出て驚くほど美味しいんです。てんぷらにしてもいいけど、練りゴマやマヨネーズなどを使ってこっくりした味つけにするのがおすすめです」

【はるじおんのゴママヨネーズあえ】
〈材料〉はるじおんの花芽、スリゴマ、マヨネーズ
㈰はるじおんは開花していない蕾で、手でつめる柔らかな部分を使う。
㈪さっと湯がいて水にさらした後、すりゴマを入れたマヨネーズであえる。

※はるじおんは秋にも咲くが、春のもののほうが甘くておいしい。





後編に続く


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(ビッグイシュー・オンラインは、社会変革を志す個人・組織が運営するイベントや、各種募集の告知をお手伝いしております。内容については主催者様にお問い合わせください。)







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【シンポジウム】

     「それでもボクはやってしまう・・・」
   ~犯罪連鎖を断ち切る社会復帰支援のあり方~

11月23日(土)午後2時~4時
@国立オリンピック記念青少年総合センター
主催:NPO法人監獄人権センター
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 生活に困って万引などで逮捕された高齢者や知的障がい者を、福祉の支援につなぎ、立ち直りを図る試みが続けられ、犯罪者の社会復帰をめぐる討論が活発化しています。

日本の刑務所の一部では、2005年の監獄法改正以降、薬物犯罪からの立ち直りのための自助グループのプログラムを取り入れたり、刑務所の中で盲導犬を訓練するプログラムなど、これまでなかったような処遇が行われるようになりました。

また、障がいを持つ人の処遇を刑務所ではなく福祉施設で担おうとするトレンドが始まっています。東京地検では社会復帰支援室が設けられ、社会福祉士が働くようになりました。犯罪を犯した人が再び罪を犯すことなく社会に復帰し、地域社会に貢献することは、社会全体に利益をもたらすことです。

しかし、この様な進んだ処遇は、初犯で模範的とされるような人に限られ、累犯受刑者や満期釈放になるような受刑者はなかなか対象となりません。全体として犯罪を減らしていくためには、社会復帰がより困難な人にこそ手を差し伸べる政策が求められているのではないでしょうか。援助を受けられず、犯罪を繰り返すなら、必要なのは刑罰ではなく社会で生きて行くための支援なのです。

今回のセミナーでは、受刑者の更生支援、社会福祉に取組まれているパネリストをお迎えし、どうしても犯罪を繰り返してしまう受刑者に、どのような処遇と支援が有効なのかに焦点を当てて考えてみたいと思います。

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■日 時:2013年11月23日(土)14時~16時(開場:13:30)

■場 所:国立オリンピック記念青少年総合センター
     国際交流棟2階第1ミーティングルーム
     アクセス→ http://bit.ly/4mR6wU
■参加費:1000円(会員、学生/25歳以下:500円)
※事前申込制
      お申込みはこちら→http://bit.ly/1871T2e
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■内容
 ●パネルディスカッション
 「犯罪連鎖を断ち切る社会復帰支援のあり方」

 ○岡本茂樹さん(立命館大学産業社会学部教授)
 ○松友了さん
  (一般社団法人社会支援ネット・早稲田すぱいく 社会福祉士)
 ○海渡雄一(進行役/監獄人権センター代表)

■出演者プロフィール

○岡本茂樹さん
立命館大学産業社会学部教授。
著書『反省させると犯罪者になります』(新潮新書、2013年)日本ロールレタリング学会理事長。中高の英語教員を務めた後、武庫川女子大学大学院臨床教育学研究科博士課程修了。臨床教育学博士。熊本刑務所篤志面接委員(2006年3月~)、京都刑務所篤志面接委員(2009年4月~)。日本矯正教育学会、日本司法福祉学会等に所属。

○松友了さん
社会福祉士/保護司。公益社団法人 東京社会福祉士会・理事/司法福祉副委員長。関西福祉大学・客員教授(司法福祉論)、早稲田大学・非常勤講師(権利擁護と成年後見制度)。一般社団法人 社会支援ネット●早稲田すぱいく・理事。2013年1月より東京地方検察庁・社会福祉アドバイザー。日本司法福祉学会、日本犯罪社会学会等に所属。

■お申込み
ご参加をご希望の方は、下記「主催・お問合せ」まで、
1)氏名、2)お住まいの都道府県、3)年齢(学生/25歳以下の方のみ)
をご連絡下さい。

お申込みはWEBからも可能です→http://bit.ly/1871T2e

■主催・お問合せ:NPO法人監獄人権センター
 e-mail:cpr@cpr.jca.apc.org
 Tel&Fax: 03-5379-5055
 WEB:http://www.cpr.jca.apc.org

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119人生相談




友人がドタキャンするので困っています



私の友人がすぐにドタキャンをするので困っています。今まで何度も、遊びに行く約束を直前で断られています。その理由も「仕事でトラブルが」とか、「病院に行くので」とか、ちょっと嘘くさいです。ドタキャンする人の心理って、どうなっているのでしょうか。今後あまりつき合わない方がいいですか?
(女性/22歳)


僕の場合はあんまりドタキャンをしたりされたりということがないですね。遅くとも10分前には待ち合わせ場所に行くなぁ。ただ、相手がちゃんと時間を守ってくれなくて、1、2時間待つことは何度かあったかな。

今、販売をしていても思うんだけど、やっぱり人を待つことは時間が経つにつれて、「今日、来てくれるかな?」って心配だったり不安だったりする。だからどんなに遅くなっても、来てくれたらそれでいいって思ってますね。遅れた理由も聞かない。聞くことで相手が嫌な気持ちになるのもつまらないことだし、わざわざ来てくれたっていうのがうれしいから。

でもこの人の場合は、待ち合わせ場所にすら来ないわけでしょう。こういう人の心理っていうのは想像だけど、「めんどうくさい」「どうでもいい」っていうのが第一にあると思う。自分のことだけで、その人の気持ちっていうのは多分、あんまり考えてないんじゃない? 考えてたら確実に来るでしょう。「仕事でトラブルが」って言うけど、多分この人はこの性格のせいで実際にトラブル続きと違いますかね(笑)。

相談者さんにまだこの人とつき合っていく気持ちが残っているなら、一度思い切って、本人に聞いてみたらどうかな。「どういうつもりなん? 私とつき合っていく気はあるの?」って。

もしかしたら本当に急なことが続いて来られなかった可能性もある。これからなるべくドタキャンしないって言ってくれたら、もう一度信用したらいいし、逆に自分に対してあまり好意が感じられなかったら、無理してつき合う必要はないわけだから。そうなったらこの人をあきらめて、他に信頼できる友達をつくった方がいい。

ドタキャンする人の気持ちがよくわからない。すごく不思議だな。だって僕なんかは誰かと会って遊ぶっていう前日は、小学校の遠足みたいにドキドキウキウキ、楽しみにしてるからね。結局、人と会うのがすごく好きなんだなって思いますね。

(大阪/Mさん)





(THE BIG ISSUE JAPAN 第119号より)







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10月1日発売のビッグイシュー日本版224号のご紹介です。



スペシャルインタビュー 松本人志さん


 日本のお笑い界をリードするカリスマであり、映画監督として国際的な評価を高めつつある松本人志さん。4作目となる映画『R100』の公開を控え、その作品世界と映画へのこだわり、社会について聞きました。



特集 10周年特別企画 対談 浜矩子さん×萱野稔人さん


 9月1日に開かれたビッグイシュー10周年記念のメインイベント。英国より来日した『ビッグイシュー』創設者のジョン・バードさんのあいさつの後、浜矩子さん(経済学者)と萱野稔人さん(哲学者)の講演と対談が行われました。浜さんには「成熟社会、日本社会がめざす未来」について、萱野さんには「縮小社会への課題と展望」をそれぞれテーマに、お二人による熱気あふれる講演と対談のハイライト部分を誌上で再現します。



リレーインタビュー 私の分岐点 俳優・加藤雅也さん


 ファッション誌『メンズノンノ』のモデルをつとめた後、俳優に転身した加藤雅也さん。その道のりは初めから順風満帆だったわけではなく、「冷たくあしらわれた出版社に、何度も足を運ぶところから始まった」といいます。そうして自ら売り込んで獲得した、念願の「パリコレ」デビュー。加藤さんはそこで、ある挫折を経験します。



国際記事 英国・現代葬儀事情


 いつか必ず訪れる親しい人との別れ、そして自らの死。英国では伝統にとらわれず、シンプルに自然に帰りたいと望む人々が、新しい葬儀の流れをつくり出しています。葬儀のせいで借金を背負わない方法から、家族の思い出として残るDIY葬儀やエコ葬儀まで、日本に住む私たちにとっても、いろんなヒントが見つかるはずです。



ビッグイシューアイ ゴジカラ村


 1981年、愛知県・長久手市の雑木林に芽を出し、32年をかけて育ってきた「ゴジカラ村」。約1万坪の敷地に子どもからお年寄りまで800人以上の人が行き来し、時間に追われない暮らしを送っています。誰にでも役割があり、居場所がある「ゴジカラ村」を、大須賀豊博さん(社会福祉法人愛知たいようの杜理事長)に案内していただきました。



この他にも、「ホームレス人生相談」やオンラインでは掲載していない各種連載などもりだくさんです。詳しくはこちらのページをごらんください。

最新号は、ぜひお近くの販売者からお求めください。
販売場所検索はこちらです。


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(2008年4月15日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 93号より)




ルーペと霧吹きを持って「コケ・ウォッチング」に出かけよう!



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(ハマキゴケ)





●初心者がコケを見に行くときの準備は?
ルーペと小さい霧吹きがあるといい。霧吹きは、コケが乾燥していればシュッシュとかける。コケが元気になる。コケ観察は1時間で1メートル。


●コケとコケに似たものの区別は?
コケは緑色。白、黄、オレンジのものはコケではない。粉っぽい、ヌルヌルしたものは藻。コケには茎と葉っぱがあり、花は咲かない。

●コケ・ウォッチングに最適の季節は?
かわいい蒴(胞子体)が見られるのは春から初夏までが多い。蒴の柄の部分は赤いものが多く、本体より長く伸びるので目立ちやすい。蒴から飛び散った胞子が、条件が整うと原糸体になって発芽する。

●どんなときに、どこへ行けばいいですか?
雨あがりが一番。最初は見つけやすい山や、コケがたくさん生えているお寺や神社などのわかりやすい場所がおすすめ。

●コケの名前を知りたいと思ったら?
図鑑だが、いきなりは難しい。例えば、岡山コケの会などの活動に参加するのもいい。関西と関東に支部がある。

●ルールは?
むやみに採集しない。公園やお寺、私有地でも採らない。持って帰って移植しても、まず育たない。その場での観察に徹して楽しむ。コケに気をとられて車にぶつからないように。

●初心者の人が見つけやすいのは?
市街地でも見つけやすいのは、ギンゴケ、ハマキゴケ、ハイゴケ。ハイゴケは大型で、ふわふわしていて見つけやすい。日当たりのいい公園や芝生のあいだにもよく生えている。


GinR
(ギンゴケ)


HaiR
(ハイゴケ)




コケ写真提供:田中美穂
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(2013年3月15日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 211号より)




原発労働者の被曝防護は?廃炉に向けた作業、いよいよ本格化





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今、廃炉に向けて急ピッチで作業が進められている、福島第一原発。ここで働くAさん(40代男性)はこう語る。

「以前は作業員の中でも、全面マスクで仕事をすることへの不安があったり、『収束させるんだ』というような気持ちで中に入ったりと、それぞれに強い意識があって作業をしていたように思います。それが今は、時間が経ったからなのか、高濃度の汚染地域で仕事をしているという意識自体が作業員の間で薄らいでいるように思う」

Aさんは、原発事故の約半年後からサイト内で仕事に当たっている。「県外からたくさんの人が来て原発収束作業に当たっているのに、地元の人間が何もしないで見ているのはどうかな、と思ったんです」。家族や友人も避難生活を送っており、本当の意味での「原発収束」を目指すことが、サイト内で作業を続けるモチベーションになっているという。




放射線防護や危険手当などの補償は、今どうなっているのだろうか?

「一昨年とは別の会社に移ったのですが、会社によって給料が相当違うということがわかりました」。

前の会社は、日当、危険手当、線量に応じた被曝手当込みで1日2万円弱。現在は震災前から福島第一原発内で作業をしているプラント会社で働いており、1日2万5千円。ほぼ同じ作業をしているという。




労働者の被曝問題では以前、下請け会社が線量計に鉛のカバーをつけさせ、組織的に線量を低くするようにしていたことが報道され、労働者が守られていないことが大きな問題になった。現在はどうなっているのだろう?

「労働基準監督署が厳しくなっていて、会社も毎日のように安全意識の徹底に関するミーティングを開いています。そのために、どの会社も前よりも防護策が厳しくなっている。しかし、意外に思うかもしれませんが、安全対策が厳しくなっても、作業の長期化で働く側の危険意識が薄れてきている」

Aさんは今後、機械設備の作業に入る予定で、「まだまだ自分にはやれることがある、と思っています」と話す。




東京電力は昨年12月、2011年3月11日から昨年8月までに、福島第一原発サイト内で作業を行う労働者の累積線量は、99パーセントが100ミリシーベルト以下であり、97パーセントが50ミリシーベルト以下であると県に報告。大半の作業員が今後も作業を続けることが可能であるとした。県は、廃炉作業に伴う労働者の安全確保のため、双葉、浪江など関係13市町村による「廃炉安全監視協議会」を昨年12月に設置。2月5日には初めて現地調査をした。

今後の作業について、「今年は4号炉の使用済み燃料プールから燃料の取り出し作業の準備、秋には燃料プールの上に上がっての作業が予定されており、これが福島第一原発で最も大きな作業になるが、元請企業からは、工期を守るよう下請へのプレッシャーがかかっているようです。本格作業後の安全管理がどうなるか、気をつけていきたい」とAさんは話している。

(藍原寛子)


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前編を読む





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コケ玉が一時はやったことがあった。

「たいがいの人はダメにしてしまいましたよね。あのコケ玉を雨ざらしに置いておくと、新たに生えてくることもあるんです。茶色くなってホコリだらけになって、どこか部屋の片隅に何年も置いてあったものが、光が当たる湿度の高い浴室や雨に当たるベランダに置いておくと、いつの間にか生えてきたりするんです」

コケは人工的な環境で生きていくことが苦手な野生児だから、コケを育てること自体がコケの自然と合わないのだ。

「外気が大切なので、生えている場所が変わったり、特にそこが空調のある場所だったりすると、たいていダメになります。コケといえばなんとなく暗くじめじめしたイメージを持つ人が多いのですが、本当は太陽の光が必要なんです。特に、朝露があたるといいんです」

朝露がいいのは、なぜだろうか?

「コケが朝露で濡れている状態だと、うまく光合成ができるからです。朝露があたって葉が開いて光合成をして、また昼間の光で乾燥して縮んでいくという自然のサイクルがいいんです。それはやっぱり室内だと無理なんですね」




「調べる」のを忘れて見入る。コケの細胞の海で泳ぎたい




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田中さんの座る畳の帳場の後ろの文机には、二つの顕微鏡が鎮座している。この顕微鏡の下に広がるミクロのコケの世界は、どのようなものだろう? 顕微鏡下のコケは、裸眼で見るときのつつましさとは違う華やかさがありそうだ。著書の中にはこんなふうに記されている。

「この顕微鏡下の世界というのがまことに美しく、肝心の『調べる』ということなどすっかり忘れて見入ることもしばしば。緑や黄緑のとろりとしたなかに、丸や四角や菱形など、いろいろな形をした細胞がならんでいて、もしもこの細胞の海の中に入ってみることができたら、いったいどれだけ気持ちがよいだろう」




コケの研究はまだまだ未知の分野だ。コケを採取し、顕微鏡で観察して分類し、標本もつくる。田中さんなら、新種のコケの発見も不可能ではないだろう。

「本気でやろうと思えば、例えば日本国内だと屋久島あたりで調べていけば、出る可能性はありますけれど」と言いながら、田中さん自身は関心がないと言う。




では、新種を発見しそうな人って、どんな人?

「植物の分野ではコレクタータイプというんですけれど、ぱっと風景を見ただけで、ここには何かありそうという勘が働くなら、可能性は高いと思いますね」

田中さんは、新種を見つけるよりは、さまざまなコケとの出会いを楽しむ人なのである。だからこそ、コケについて興味を持つ人と、コケの研究者の中間に立って、そのつなぎ役をするのが夢だと語る。




そんな田中さんが著書に載せたのは、岡山の詩人、永瀬清子さんの詩だ。

「この詩は、コケの生態を知ってから読むとよけい理解が深まると思うんです。永瀬さんは『岡山コケの会』をつくった井木張二さんに京都の西芳寺(苔寺)に案内してもらって、この詩が生まれたそうなんです」。その詩の一節を紹介しよう。


お前は陽と湿り気の中からかすかに生れたのです/なぜと云って/地球がみどりの着物をとても着たがっていたから (中略) 極微の建築をお前はつくる/描けば一刷毛か、点描でしかないのに/それでもお前は大きな千年杉のモデルなのよ 
(「苔について」/詩集『あけがたにくる人よ』思潮社より抜粋)

 地球が最初に着た緑の着物は、何億年もの時をこえて今も、身近なところであなたを待っている。




(編集部)
イラスト:Chise Park




たなか・みほ
1972年、岡山県生まれ。倉敷市内の古本屋『蟲文庫』店主。岡山コケの会、日本蘚苔学会の会員。シダ、コケ、菌類、海草、海岸動物、プランクトンなど「下等」とくくられる動植物が好き。将来の夢は「古本屋のコケばあさん」。著書に、『苔とあるく』WAVE出版/1680円がある。
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(2008年4月15日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 93号より)






コケはあなたを待っている-コケ愛でる若き女性、田中美穂さんに聞く



若い女性で古本屋「蟲文庫」の店主、
しかもコケが大好きという田中美穂さん。
花やハーブではなくて、なぜコケを?
田中さんが語る、コケの不思議な魅力と楽しみ方。







DSC 0085
(田中美穂さん)





『苔とあるく』研究じゃない、あくまで趣味



あなたは「コケ」の名前を一つでもあげることができるだろうか? すぐに名前を思い浮かべられる人はごく少数だろう。

日本庭園はもちろん、身近な公園や民家の軒先や庭など、誰もがどこでも目にしているのに、「コケ」は自己主張しない控えめで地味な植物だ。そんなコケのことを暇さえあれば、眺めては楽しんでいるのが田中美穂さんである。

そこで、コケの世界への案内を乞おうと、田中さんが倉敷で営む古本屋「蟲文庫」を訪ねた。風情ある古い町屋の一軒、その店先から漂う摩訶不思議なオーラが店内に足をふみ入れると一段と濃くなる。手作りの本棚や壁に並ぶ古本、古い地球儀や顕微鏡などの理科グッズ、水槽のカメたち、店の奥のガラス戸の向こうの坪庭とコケむした石垣に差しこむ陽光。田中さんからコケの話を聞くのは、心地よかった。




そもそも田中さんがコケに興味を抱いたのは、高校のときに在籍していた生物部での体験だった。顧問の先生の研究対象が、一生の間で動物的な時期と植物的な時期をもつというおもしろい生き物、変形菌だったので、変形菌を求めて部員仲間とともに山の中をはいずりまわったのだという。




「変形菌はコケよりもっと地味というか、小さい。コケはそれでもその辺に生えていますが、粘菌はちょっと真剣に探さないと見つからないんです。その存在を知らないと見えてもこないくらい。そのころに、小さいものにピントを合わせる習慣が身につきました」。

その後、「岡山コケの会」に入った田中さんは、コケへの興味をますます深め、昨年10月にコケの楽しみ方を著書『苔とあるく』にまとめた。

だが、田中さんはさらりと言う。「大学で研究されている方とは違って、あくまでも趣味なんですよ。ちゃんと分類もしたいので顕微鏡で調べることもしますが、研究をしているつもりは全然ないんです」




コケという「生き方」。根がない、死んだふり、朝露が大好き





コケ標本
(田中さんのコケの標本)




コケは地球で最初に陸上にあがった緑だという。

コケが原初の植物だという特徴の一つは、根がないことだ。

「一応はあるんですけれど、コケの根っこは地面や岩に張りつく役割を果たしているだけ。手で簡単にはがせる程度に張りついているだけです」。ふつう、植物には根から水や養分を吸い上げるストローのような維管束があり、その回りをロウ状のクチクラ層が管の中のものを外に蒸発させないように守っている。けれど、それは植物の進化の過程でできたもの。コケにはないのだ!

では、どうやってコケは水分を身体に取り込むのだろうか。実は、コケは身体の表面全体から、蒸気など空気中のかすかな水分などを取り込んでいる。だから、コケにとって何より大切なのは、その場の空気(環境)なのである。




一方で、コケならではの強みもある。

「乾燥してもそのまま枯れずに休んでいられるという特性があります。乾いてもしばらくは大丈夫、カラカラのところに生えたりもしますね」。つまり、コケは「死んだふりができる」のだ。「冬眠とか、仮死状態とか、休眠という言葉が一番しっくりきますけれど、ほかの植物とは別の生き方をしている。休眠中は呼吸もほとんどしないし、栄養も取らない。光合成もしなくなるんです」




それは、どれくらいの期間なのだろうか?

「まだ、はっきりとはわからないんです。何年も、中には何百年も休眠するものもあります。ただし、コケが枯れたかどうかはなかなか決められないんです。かなり古く茶色くなった標本でも、そこから絶対生えないとはいえない。とにかく何ヶ月かはまったく平気ですから」




後編に続く


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