(2008年4月1日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 第92号より)

金融を可視化する「コミュニティ・ユース・バンクmomo



東海地区最初のNPOバンクとして誕生した「コミュニティ・ユース・バンクmomo」。20〜30代の若者が中心になって、新しいお金の流れをつくるこの試みが目指すものは何なのか? 代表理事、木村真樹さんへのインタビューをはじめ、momoの取り組みを追った。


私の貯金が、イラクに落とされる爆弾をつくっていた



「信じられない、自分も戦争の加害者だったなんて」

2005年、名古屋市内で開催された「コミュニティ・ユース・バンクmomo」(以下、momoと表記)の立ち上げ説明会。そこに参加していた主婦の内田由紀子さん(35歳)は、会場で耳にしたある話に愕然とした。

「将来のために」とOL時代からコツコツとお金を貯めてきた。そのお金を預けている大手都市銀行が、大量にアメリカ国債を購入しているため、自分の預金が結果的にアメリカの戦費に使われているということを、初めて知ったのだ。言葉にできないほどのショックを受けた。

「いつもテレビで戦争や環境破壊のニュースを見て、どうして平和にできないんだろう?って、すごく腹が立って、よく夫に愚痴を聞いてもらったりしてたんです。それが、まさか自分の通帳のお金がイラクに落とされる爆弾に使われていたなんて」

内田さんは預金を全額引き出すため、すぐに銀行に向かった。自分の預金が、小さな子どもまで巻き込む戦争の資金に使われている。そう思うだけで、いてもたってもいられなかった。窓口では、「何に使われるのですか?」と尋ねられた。「私のお金を戦争に使ってほしくないんです」。説明会で聞いた話をそのまま話すと、窓口の女性も初めて聞いたのか、驚いたようすで「それはとても良いことですね」と共感してくれた。「みんな、自分のお金が何に使われているのか知らされていないだけなんだ」と思った。

内田さんは引き出した預金の大半を、夫と一歳半の子ども3人の名義でmomoに出資した。地元の地域社会を豊かにする事業に融資しようとするmomoの理念に共感したからだ。内田さんは、妊娠中から、わが子が生きる未来が不安だった、と話す。

「だんだん大きくなる自分のお腹を見て、自分たち家族だけの幸せはありえないと思ったんです。家計が楽ではないから、社会のために寄付する余裕はない。でも、預金を移すだけなら自分にだってできる。自分のお金が地域社会のために有効に使われていると思うと、なんだかワクワクします」

お金によって切れたつながりを、お金を介してつなぎ直す



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momoには現在(注:2008年4月1日時点)、内田さんのように、自分が働いて稼いだお金を有効活用してほしいと考える市民ら約180人が、総額約2000万円を出資している。ホームページには、出資者一人ひとりがどんな思いでお金を託したのか、切実ともいえるメッセージが並ぶ。多くは環境や福祉、自然エネルギーなど、地域の社会問題を解決する事業への融資を希望している。

momoは、これら思いのつまったお金を使って、地域を豊かにする事業に融資し、持続可能な地域づくりを目指す仕組みだ。そして、その活動を中心的に担っているのが、「momoレンジャー」と呼ばれる、学生を含む20〜30代の若いボランティアたちである。

momoを旗揚げした代表理事の木村真樹さん(30歳)は、「若い人が、お金を介して地域づくりにかかわることのできる場所をつくりたかった」と話す。

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木村さんは、元銀行マン。母子家庭で一人っ子だった木村さんは、地域のつながりや周囲の大人に囲まれて育った。それだけに、地銀への就職は地元名古屋の「地域への恩返し」のつもりだった。ところが、入行当時、日本は金融危機の真っただ中。地域貢献どころか、不良債権の処理に追われ、そこはいわゆる貸し渋り、貸しはがしの世界だった。

また、メディアでは「元気な名古屋」と喧伝されるが、一方で多くの企業が借金返済に窮し、地域社会が疲弊しているのを目の当たりにした。「閉塞感を肌で感じた」

地銀を退職すると、金融機関に環境配慮を呼びかける環境NGOの運営に携わった。新しいお金の流れをつくるNPOバンクに可能性を感じ、それに賭けてみたいと思った。「企業は世の中に大きな影響を与えている。それならば、その企業にお金を貸すかどうかを判断する金融が変わっていけば、世の中も変わると思った」と木村さんは話す。

後編に続く>*1/28アップ予定
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前編を読む

実際に各地のNPOバンクがこれまで融資してきた先をざっと見てみよう。太陽光パネル設置、風力発電、フェアトレード、ホームレス支援、高齢者福祉、リサイクル、社会起業家支援……。そのどれにも共通するのが「社会的リターン」の要素だ。

ちなみにこうしたNPOバンクに加え、融資ではなく投資を行っている「市民投資ファンド(※1)」、多重債務者救済などを行っている非営利の市民金融などを総称して「金融NPO」と呼ぶ。もしあなたがNPOバンクの融資先なんかを見て「こういう良い活動なら自分もなにかしたい」と思ったら、こうした金融NPOにお金を出すというのもひとつの新しい社会貢献だ。

ただここで二つほど注意しておきたい点がある。一つは、NPOバンクという名前がややこしいせいだけど、私たちはNPOバンクにお金を「預ける」ことはできない。つまり預金はできないのだ。もしあなたがNPOバンクにお金を出すとしたら、それは「出資」というかたちになる。NPOバンクはそうした出資で集まった資金を運営して、さまざまな事業や活動に融資を行う。

もう一つは、あなたが出資したお金は基本的に払い戻されるということ。そこが寄付や募金と異なる点だ。そのためにお金は無担保・低利子などで貸し出されるが、お金を借りる側はきちんとそれを返済する責務を負う。またNPOバンクの側はきちんとお金を返してもらうために、あらかじめ融資先の事業性を厳しく審査した上で貸し出しを決定しなければならない。
 

お金に込められる「意志」の力:地域をこえた金融NPOのネットワークが必要



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それでもお金が返ってこない、いわゆる「焦げつき」のリスクはどうしても残るだろう。そこで重要になってくるのがお金に込められる「意志」の力だ。

「もちろん焦げつかないほうがいいんだけど、焦げついたとしても、それは自分の意志によってあの人、あの活動に賛同したんだからと、お金の出し手が納得するかたちの融資をしましょうということです。お金の貸し手と借り手がそこまでコミットしていくのです。このやり方はすべてのNPOバンクに共通すると思うんです」

逆をいえば、これまで私たちはお金の預け先に関してあまりに無防備だったのかもしれない。郵便貯金やメガバンクに預けたお金がその後どのように使われているか、あなたは想像したことがあるだろうか? ある指摘によれば、私たちの預貯金は戦争や環境破壊を手伝っており、そのことに対する問題意識から顔の見える融資の必要性=NPOバンクが生まれたという実例もある(※2)。政府だって金融再生や不景気からの脱却をうたうわりには、公共福祉のためにお金をあまり割こうとはしない。

そんなことにお金を使われてしまうならば、もっと自分たちの手で、世のため、人のためになるようなお金を運営していこうと金融NPOは誕生したのだ。

そうした意味合いで、日本には中世の頃より頼母子講という「助け合い」の文化があったことを藤井さんは指摘している。頼母子講とは、庶民が資金を互いに持ち寄り、無利子・無担保で融通しあった伝統的な「非営利金融」のこと。NPOバンクはまさに頼母子講の現代版ともいえる。

「だから血縁でなくてもそういう信頼関係は築けるわけなんですよ。それはまさに経済的リターンじゃなくて、お互いに社会のためにお金を回そうじゃないかということです。自分が持っているお金もわずか、相手が持っているお金もわずか。でも10人寄れば10人分のお金がある。これを苦しいときにどなたかに貸しましょうねと。大事なことはそういう人間関係を再構築していくことです。現代社会には現代社会の道具立てがやっぱりいるわけで、NPOバンクがその仲介をしていく。日本は講のような社会をすでに捨ててしまいましたが、バブル崩壊の十数年のなかで営利の金融機関だけではお金が回らないということにようやく気づいたわけですよ」

これからは、東京で集まったお金を新潟に貸し出せるような、地域をこえた金融NPOのネットワークが必要になると藤井さんは話す。そして実績を積み重ねることによって、市民との信頼関係だけでなく、民間金融機関との信頼関係を勝ち取り、そこから営利のお金も引き込むことができればベストだと期待を寄せた。

まだまだ走り出したばかりの日本版金融NPO。大きく育てるためには、お金だけでなく、多くの人の信頼と意志が必要とされている。

(土田朋水)
Photo:高松英昭

※1 市民投資ファンドの一つに「おひさまファンド」がある。
※2 「未来バンク」の組合理事長を務める田中優氏は、未来バンク設立のきっかけとして郵貯に対する問題意識があったと語っている。詳しくは、田中優著『戦争をやめさせ環境破壊をくいとめる新しい社会のつくり方』合同出版、参照。普通の銀行は営利を考えNPOバンクは市民事業を育てる

ふじい・よしひろ
1949年生まれ。上智大学地球環境学研究科教授。日本経済新聞社に72年入社。編集委員を担当していた05年に「金融NPO」をテーマにした連載記事を執筆。著書『金融NPO』(岩波新書)では国内のみならず海外での豊富な事例を報告した。



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(2008年9月11日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 第92号より)


経済的リターンの銀行、社会的リターンのNPOバンク—市民「出資」という金融NPOの可能性




日本には中世のころより、庶民が資金を互いに持ち寄り、
無利子・無担保で融通しあった「頼母子講(たのもしこう)」があった。
その現代版ともいえるNPOバンクが今、
新しいお金の回路をつくろうとしている。
金融NPOの今と可能性を、藤井良広さんに聞いた。


普通の銀行は営利を考えNPOバンクは市民事業を育てる



汗水たらして、お金を稼いだら、いったい何に使おう?

ショッピング、映画、遊園地……。いやいや、今晩のおかずのためにはスーパーへも行かないとね。あるいはコツコツとお金を貯金したい人だってたくさんいるかもしれない。当たり前な話だけど、自分で稼いだお金は自分の好きなように使っていいし、それは私たちに任された自由な選択の領域だ。

けれど、お金にはもっとたくさんいろんな使い方ができるんだよ、というのが今回のお話。あなたがその手に持っているお金が、きっとこの社会をもっともっと豊かにしてくれる。それも今までのように「寄付」とか「募金」とかそういうのとはまたちょっと違うかたちで……というのが話の一つのポイントだ。


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上智大学教授の藤井良広さんは「もしあなたの家の近くにとても気持ちのいい森があったとして」と話し始める。

「その森をどう維持していこうかという時、もし営利の金融機関(普通の銀行など)だけに任せていたら、地主はすぐに森を売って、マンションを建ててしまいます。じゃあ森を維持するためにはどうしたらいいかというと、やっぱり森を残したいという地域の意志を活かして活動をする人のために道具立てが要るんですね」

ここで言う「道具立て」というのが、いわゆるNPOバンクのことだ。

ではNPOバンクの役割はいったいどういうもので、普通の銀行とはどんな違いがあるのだろうか? せっかく森の話が出たので、それを例にして考えてみよう。

藤井さんの言う「営利の金融機関だけに任せていたら」というのは、つまり営利の側面「お金をもうける」ことだけを考える組織にとっては、森は維持するよりも売っ払ってしまい、マンションにでもしてしまったほうがずっともうけになるということだ。民間の金融機関はまずこうした選択を好むだろうし、そのためには地主に多額の融資(お金の貸し出し)だってするはずだろう。

一方、森を残したいという地域の意志を受けて、市民事業を立ち上げるグループが出てきたとする。彼らは維持される森を利用して、ささやかながらも利益をもたらすような事業を行っていくことに決めた。映画やドラマのロケ地として森を貸し出す、エコツアーを開催する……等々。

そんな時、今の銀行はまず市民事業立ち上げのためにはお金を貸してくれない。なぜなら、「それは必ずしも銀行が悪いんじゃなくて、仕組み上、事業の実績も担保もないところに融資をすると、融資した段階で不良債権扱いをされて、要管理債権ぐらいになってしまうからなんです」

そこで登場してくるのがNPOバンクというわけだ。

「NPOバンクであればその人たちが一所懸命やろうとしていることがわかって、しかも事業計画が一応あれば、単にお金を貸すだけじゃなくて、事業の運営もちゃんとサポートしてくれます。そうして活動の事業性が高まっていけば今度は信用金庫、銀行からもお金を借りられるようになってくるわけですよ。NPOバンクにはそうやって市民事業を育てていく機能があるんですね。今の営利の金融機関にはなかなかできないことです」


出資先は、太陽光パネル設置、フェアトレード、高齢者福祉、リサイクル、社会起業家支援など



おわかりいただけただろうか?

ここでのキーワードはたぶん「社会的リターン」だ。ある事業に対して銀行が融資を決める際、判断の基準とするのは基本的に「経済的リターン」(利鞘が見込めるかどうか)なのだが、地域のためや社会のため、みんなのためになる事業であるならば、あまりもうけにはならなくても、そういう「社会的リターン」を考慮してお金を貸しましょうというのがNPOバンクなのだ。NPOバンクの判断基準は「社会的リターン」の優先であり、「経済的リターン」の追求にはない。

後編に続く
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(2013年4月15日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 第213号より)

プレハブ校舎にスクールバス通学。飯舘村の3小学校で卒業式



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原発事故に伴う放射能汚染により、現在も多くの村民が村外で避難生活を送る飯舘村。飯舘村の児童が学ぶ村立草野、飯樋、臼石の3小学校合同の卒業式が3月22日、学校が避難している隣町・川俣町の仮設校舎体育館で開かれた。

卒業生は草野小20人、飯樋小15人、臼石小5人の合計40人。震災後は川俣中学校の校舎に「間借り」して授業をしていたが、昨年の4月からプレハブの校舎と体育館に移った。家族と避難先を転々とした子どももいて、震災直後から落ちつかない生活が続いていた。福島市や伊達市など近隣の市や町に避難しているため、スクールバスで1時間以上かけて通ってくる子どもも多いが、最近は少しずつ現在の生活に慣れてきたという。

広瀬要人教育長は「みなさんは、東日本大震災と原発事故で飯舘村の学び舎を追われ、5年生の時には川俣中学校の校舎、6年生の時には仮設校舎で学んだ。しかし苦しみにひるむことなく、明るく前向きに取り組んだ。避難中の学びと経験はこれからの人生の糧になると思う」と卒業生を激励した。

卒業生全員による呼びかけでは、「震災の時に、私に『大丈夫だよ』って言ってくれたお父さん、お母さんのおかげでここまで大きくなることができました」「先生方や友達、たくさんの方々への感謝を忘れずに、これからもがんばります」と、大きな声がプレハブの体育館に響いた。3校の全児童が一緒に、3校の校歌を歌った。

飯樋小の卒業生、菅野翔太君は「本当は飯舘の小学校で卒業式をしたかったけれど、原発で避難しているためにできなかったのは、やっぱり残念です。それでも、みんなで卒業式をすることができてよかった」と晴れやかな表情で話した。

臼石小の二谷京子校長(3月末で転任)は、「プレハブの仮設でも、自分たちの校舎で卒業することができてよかった。教育課程を3校合同にしたため、学校行事も合同になっており、学校を超えて友達ができるなど、子どもたちも慣れてきた。来年度も3校で一体感のある教育や学校活動を進めていきたい」と語った。

飯舘村は昨年7月、「避難指示解除準備区域」(年間積算線量が20ミリシーベルト以下)、「居住制限区域」(同20ミリシーベルト超で避難継続が求められる地域)、「帰還困難区域」(同50ミリシーベルト超で、帰還は長期間困難な地域)の3地区に再編された。だが、今年3月1日現在、県内には6086人、県外には500人がいまだに避難生活を送っている。子どもたちが慣れ親しんだ校舎に戻る見通しは、まだまったく立っていないのが現実だ。

(文と写真 藍原寛子)
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阪神ファンの母親の応援がうるさくて、プロ野球シーズンが憂うつです



熱狂的な阪神タイガースaファンの母親と2人暮らし。自室で持ち帰った仕事をすることがあるのですが、狭い我が家、TV観戦中の応援が筒抜け。しかも、「死ね」だの、「ブチ殺す」だの罵声はお下劣で、聞いていて不快。「大声で応援するのが唯一のストレス解消法」と、本人は言うものの、好き勝手なことをして言いたい放題の母にストレスがあるのが疑問で、ストレスがたまる一方の私です。
(女性/37歳/会社員)


僕の姉さんがギャンブル狂いの義兄さんから足を洗わせた話をしましょう。あの時は最初の子どもが生まれたばかりで、お金がかかる時期でした。姉さんは寅年生まれで、とても気が強い性格。なのに、何も言わなかった。

しかも一緒になってとことんギャンブルにつき合った。保険を解約してつくったお金も使い果たした時はじめて、「明日のお米を買うお金がないよ。どうしようか、お父さん」と言ったそう。

この一言で義兄さん、ようやく目が覚めてくれた。今はものすごくマジメよ(笑)。夢中になっている時って、「やめて」とか横でゴチャゴチャ言っても、火に油を注ぐか、けんかになるかがオチでしょ。大切なのは、お母さんに自分で気づいてもらうことなんです。

そこで、野球の試合が始まったら、娘さんは仕事の手を止めて、お母さんと一緒に騒いでください。突然、熱くなるとバレますから、ルールや選手の名前は1、2ヵ月かけて勉強して、じわりじわりと熱を上げていく作戦です。

応援する時は、お母さんに負けずに、ひどい言葉を大声で発していこう。そんな娘さんの姿に、お母さんはいくらなんでも、気づくはずです。そのちょっと冷静になった瞬間に、一言「わかった?ほどほどにせなあかんよ」と言ってあげましょう。これは効きますよ。

でもね僕、お母さんはホントはトラキチを装っているだけの気がしてる。

販売している時、僕に気づきながら、わざと見てないふりしてスーッと通り過ぎて行く人がいる。透明人間にされるのが一番イヤ。

娘さんも「うるさいな」と、イーッとしてるのに、お母さんのこと無視してない? 子どもが悪さをするのって、たいがい親にかまってほしいからでしょ?お母さんはね、娘さんにかまってもらいたくて、ワーワー騒いでいるように思えるんです。

これからもお母さんとは、長い年月を過ごしていくわけですから、仕事も大事だけど、たまにはお母さんと野球で一緒に息抜きしましょうよ。

(大阪/Hさん)




(THE BIG ISSUE JAPAN 第124号より)




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こんにちは、ビッグイシュー・オンライン編集部のイケダです。現在発売中の231号より読みどころピックアップしてご紹介いたします!

地域住民がつくる画期的な病院「南生協病院」



231号の特集は「生きる喜び つくる病院」。医療に限界を感じ、「こんな病院があれば」と願う市民によってつくられたふたつの病院が紹介されています。こちらの記事では、そのなかから愛知県名古屋市にある「南生協病院」をピックアップします。3万人以上が見学に訪れたという、実に画期的な取り組みです。

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「南生協病院」は非常にユニークな総合病院。エントランスホールに足を踏み入れると、そこにはおしゃれなカフェやコンビニ、保育所、石釜ベーカリー、オーガニック・レストラン、旅行カウンター、図書館、フィットネスクラブなどの施設が用意されています。

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(新鮮多菜カフェ&レストラン にんじん *公式サイトより)

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(風と緑のダーシェンカ -YOU- 大高店 *公式サイトより)

常務の柴田純一さんは、次のように語っています。

「患者さんだけでなく、保育所やベーカリーに来る若いお母さんもいれば、町の中・高校生がくつろげるスペースもあり院内では多くの市民ボランティアが活躍している。そうした"混ざり合い"は、人と人がつながることにこだわってきた私たち南医療生協の哲学そのもの」


南生協病院の母体は「南医療生協」。生協の名の通り、市民の手によって始まった活動です。

はじまりは、59年に愛知県を直撃した伊勢湾台風。(中略)その惨禍の中で、救援活動をした人々と地域住民が集まって「自分たちの診療所を」と立ち上がり、61年に308人の出資によって設立されたのが南医療生協だ。当初は小さな診療所からのスタートだったが、76年に総合病院の南生協病院を設立。


南医療生協の組合員数は、なんと71,000人以上。さらに、その出資総額は27億円というから驚きです。

「出資者にとっては、地域の医療福祉がよくなることが、何にも替えがたい配当。しかも、利用者としてだけでなく、自らボランティアとして積極的にかかわり、人と人がつながりながらお互いの日々の暮らしや命を守る。無縁社会といわれる現代で、そうした活動で多くの人が意義を感じているからこそ、組合員も増え、病院を訪れる見学者も後を絶たないのではないでしょうか」(名誉理事長・柴田寿彦さん)


「医療崩壊」という言葉は日本社会に長らく踊りつづけていますが、「南生協病院」は、これからの日本における重要なロールモデルのひとつとなっていくのでしょう。

本誌では他にも小児がん専門の治療施設「チャイルド・ケモ・ハウス」が紹介されています。こちらも市民たちが寄付を集め設立された画期的な病院です。気になる方はぜひ231号を手に取ってチェックしてみてください。



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(2013年11月15日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 229号より)

事故は「想定外」?3千万人、避難の可能性も。福島第一、燃料の取り出しへ



福島第一原発4号機に残されている燃料の取り出しがようやく11月18日から始まった。事故当時4号機は定期検査中で、最上階にある燃料保管プールに使用中の燃料や使用済みの燃料、交換用の新燃料が保管されていた。余震などでプールが破損するようなことになれば、燃料のメルトダウンが起き、首都圏の3千万人が避難せざるを得ない事態になりかねなかった。そこで、爆発で傷んだプールの補強工事が急いで行われた。

燃料は放射能で熱を放っている。これは時間とともに減っていくが、冷却ができなくなれば燃料管の火災や燃料溶融の懸念が今でも残っている。18日から始まった作業では試験的に新燃料を取り出した。この成功を受けて2回目からは使用済み燃料の取り出しへ移った。

視界がそれほどよくない中で10メートルほど下にある14センチ四方の燃料集合体にフックをかけて釣り上げてくる作業は熟練を要する。熟練作業員の確保と厳格な被曝管理が求められている。一つの輸送用の容器に22体の燃料を入れて、地上にある燃料プールに移す。その数は1500体を超える。地上のプールも十分な余裕がないので、ここに保管されている古い燃料は貯蔵用の容器に入れて地上で保管される。

爆発でプールに落ちた大きなガレキは取り除いたが、小さなガレキが燃料を破損させるとか、燃料の間に詰まっていて抜けなくなるとか、トラブルの懸念は尽きない。また、一応の安全対策は施されているが、故障と強い余震が重なる事故などの評価は行われていない。

100トン近い容器をプールの上で落として、燃料やプール自体の破損を招くか、地上へ降ろす際に落下させてしまうなど、大事故の恐れが依然として残る。地上に落ちれば、容器は破損する。東電は「容器が破損しても燃料が外へ飛び出すことはないから対応可能」としているが、容器が壊れたら強い放射線が出て人は近づけなくなる。この状況が長く続けば燃料管の火災や溶融の恐れが出る。そうした事態と対策は考えられていない。あらゆる事故を想定するのが福島事故の教訓ではなかったか。評価をし直すべきだ。

4号機からの燃料の取り出しは来年いっぱい続く予定だ。無事に終了するのを祈るばかりだ。


伴 英幸(ばん・ひでゆき)

1951年、三重県生まれ。原子力資料情報室共同代表・事務局長。79年のスリーマイル島原発事故をきっかけとして、脱原発の市民運動などにかかわる。89年脱原発法制定運動の事務局を担当し、90年より原子力資料情報室のスタッフとなる。著書『原子力政策大綱批判』(七つ森書館、2006年)




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前編を読む

イケダ: なるほど。この方法ですと、匿名性が担保されている状態でコミュニケーションをとっているということですよね?

伊藤: そこが一番大事のポイントですね。やはり日本は建前とかもありますし、匿名性の担保は重要な点なのかなと考えています。

わずか150円で自殺ハイリスク者一人にリーチ




イケダ: この手法は非常に安いコストで行えますよね?

伊藤: これまで使った広告費は2万円以下ですね。だいたい相談者1人が相談するまでにかかる広告費が150円程度となっています。150円で自殺ハイリスク者を1人にリーチできるということです。ネットを利用して相談者から連絡をもらうという手法は、費用対効果の面から見てもかなり合理的だと思います。

ダイレクトにリーチしていくのは難しいこともあり、自殺未遂をした方で精神医療のケアが受けられるような方に対してリーチしていく研究はありました。しかし、未遂の前にリーチしたいと考えています。

いのちの電話などはありますが、つながりにくい場合もあり、自殺ハイリスク者が何回も電話をかけるパワーがあるかは疑問です。そのため、心理的経済的なコストを徹底的に下げるというのが一番重要なことだと思います。

イケダ: この取り組みがまさに先日WHOの会議で発表されたとのことでしたね。

伊藤: 協力者であり、和光大学にて臨床心理学と自殺予防を専門に研究されている末木新先生がWHOで発表してくれました。世界中を見てみると、これまでに検索と自殺の相関関係についての研究などはありましたが、実際に介入した事例というのは私たちの取り組みをのぞいてはゼロです。

イケダ: この取り組みで、どれくらいの人が救われると思いますか?

伊藤: 7月のスタート以来、エリアを限定して5ヵ月間で広告が30万回くらい表示されています。となると、さらに広告にお金をかけて、相談体制を整えたら、どれだけくるのか想像もつきませんね。現状、精神科・心療内科に通っていない人を限定していますし、集める部分を洗練していない段階で今の状況なので、可能性のある手法だと思っています。来年からは複数人による相談体制を構築し、さらに活動を拡大していく予定です。

「蛇口をひねるように」心理相談が受けられる



イケダ: 素晴らしいですね。他にもプロジェクトも考えられているんですか?

伊藤: 自殺防止の相談に来る人は複雑な問題を抱えています。そうなると、支援する側もかなりのリソースを割くことになるんです。なので、私は「ココロのインフラ」と言っているんですが、蛇口をひねると水が出るみたいに、誰もが受けられるような心理相談サービスをつくって、もっと上流の部分の支援ができたらと考えています。

現状ですと、いのちの電話も精神科も多くの人が来るのでパンパンな状態です。そのため、必要な人がアクセスできていません。一方で、臨床心理士さんは仕事が少ないという声もよく聞きます。そこでメンタルヘルスに苦しむ方と臨床心理士のマッチングシステムを作りたいとも思っているところです。

イケダ: それはすごくインターネット的なやり方ですね。もう少し具体的に言うとどのようなことなんでしょうか?

伊藤: いわゆる「カウンセリング」と呼ばれているものが、価格が高く、ユーザー側はどのカウンセラーが優れているのかが分からない状況です。そこで、カウンセリングレベルではない一般の方が、低価格で気軽に利用できるCtoCモデルのプラットフォームを構想しています。

イケダ: NPOとしての活動も行いつつ、ソーシャルビジネスも展開していくということですね。さきほど臨床心理士の仕事が少ないという話もありましたが、メンタルヘルスの市場にはどういう課題があるんですか?

伊藤: 例えば、いのちの電話で言えば、相談を受ける人が足りないです。無料でボランティアでやっているので、どうしても多くの件数に対応できていません。また、精神科もパンパンな状況で、先生も5分診療とかになってしまい、話が聞いてもらえず不満が残ってしまいます。

そうなると、臨床心理士のもとに行こうと思っても非常にコストがかかります。そのような現状があるので、ミスマッチは埋めて、本当に必要な人たちがサービスを受けられるようにコストを削減することが大事ですね。低価格にすることはユーザー側に立つことですが、一方で業界から反発は来ると思いますね。覚悟はしています。

イケダ: ソーシャルワーカーとして不合理を合理に変えていくのは大変な道だと思いますが、どのような体制で活動を行っているんですか?

伊藤: 相談自体は私一人で行っています。もう1人ソーシャルワーカーがいて、協力者の末木先生がいるという体制で非営利の活動を行っています。ITに強い創業メンバーがほしいなと思っているところです。

(*WHO世界自殺レポート会議及び関連行事にて「インターネットゲートキーパー」活動が紹介された際のスライドは以下のものです。ぜひご覧ください。)





伊藤次郎(いとう・じろう)
インターネット・ソーシャルワーカー。OVA(オーヴァ)代表。「SCA(Social Change Agency)」参画。学習院大学法学科卒業。EAP企業(従業員支援プログラム)を経て、精神保健福祉士、産業カウンセラー等の資格を取得後、精神科クリニックにて勤務。新しい復職支援のプログラムの開発・実施し、主にうつ病のビジネスパーソンの支援を行った。2013年6月に若者のジサツが増えていることに問題意識が芽生え、現在、ネットマーケティングによる自殺予防システム「夜回り2.0」(インターネット・ゲートキーパー)を日本で初めて開発、実施している。Twitter:@110Jiro ブログ:壁と卵
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不定期の新シリーズ「若者支援の現場」が始まります。ご注目ください!

◇スペシャルインタビュー ジュディ・デンチ
女優業を始めて50年も経ってから、『恋に落ちたシェイクスピア』のエリザベス女王役でブレイク、いまや英国で最も尊敬される俳優の一人です。79歳になった今も、人生への好奇心を燃やし続ける彼女が、映画の仕事、年を重ねること、愛について語ります。

◇国際記事 ヨーロッパで最大の少数民族、ロマとの共生はできるか?
EU統合、そして東欧諸国での排除政策の影響から、ヨーロッパ各国の路上にロマの人々が増えています。各ストリート誌は、雑誌の販売者として彼らを受け入れ、数々の新しい支援を試みています。6ヵ国、8つのストリート誌の取り組みをレポートします。

◇特集 生きる病院 つくる病院
これまでの医療に限界を感じ、こんな病院があればと願う市民が、実際に病院をつくってしまいました。
愛知県・名古屋市にある「南生協病院」は、敷地内に図書館やオーガニック・レストラン、保育所、フィットネスクラブが併設されるなど、“健康な人も訪れる病院”です。この病院を生み出したのは4年間にわたる“千人会議”、地域市民のアイディアと熱い議論でした。
また、公益財団法人チャイルド・ケモ・サポート基金は、小児がんの子どもたちの「家に帰りたい」という願いを叶え、居住スペースを併設する初の治療施設を昨年オープンしました。
病院づくりも今や、市民が担う時代。世界のユニークな病院も紹介しながら、患者は当事者として、市民はボランティアとして参加でき、生きる喜びをつくる、二つの病院を訪ねました。

◇若者支援の現場① 宮本みち子さん
今、若者たちはどのような社会的不利や困難をかかえているのでしょうか? 新シリーズ(不定期)では、社会的不利をかかえている若者たちの今と、ゆれ動きながら若者支援を模索する市民の活動と課題を浮き彫りにしたいと思います。第一回は、宮本みち子さん(放送大学教授)にインタビュー。若者支援のこの10年を振り返ります。

◇リレーインタビュー 人生の分岐点 女優 沢田雅美さん
1964年、ホームドラマ『ただいま11人』でデビューを飾り、その後も舞台・テレビと、多方面で活躍をつづける沢田雅美さん。「それまで歯医者の診察券くらいしかもったことがなかった」というほど健康な沢田さんでしたが、60歳を超え、思いがけない変化に見舞われます。

このほかの記事の目次もぜひご覧ください。
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