こんにちは、ビッグイシュー・オンライン編集長のイケダハヤトです。最新号の読みどころをご紹介です!




ネイチャー・テクノロジーが目から鱗



215号の個人的な読みどころは、なんといっても「ネイチャー・テクノロジー」特集。

「ネイチャー・テクノロジー」とは、その名の通り「自然の技術」。具体的には、シロアリ、カタツムリ、トンボ、ベタなどなど、自然界の生き物の「技術」を、ぼくたちの生活に取り入れることを指します。このコンセプトは「バイオミミクリー」「バイオミメティクス」といった言葉でも表現されることがあります。

「ネイチャー・テクノロジー」を知るためには、紹介されている事例を見るのが手っ取り早いでしょう。

たとえば、

・気温の変動が激しいサバンナでも一定の温度を保つ「シロアリの巣」を参考にした、「無電源エアコン」
・泡を使った保温する魚「ベタ」を参考にした、たった4リットルの水で体を温めることができる「水の要らない泡の風呂」(通常、お風呂は200〜300リットルの風呂が必要)
・どこにでも張り付ける「ヤモリの足」を参考にした、カーボンナノチューブを使った「接着剤を使わない吸着テープ」
・蚊とミミズからヒントを得た、外形95ミクロン「痛くない注射針」
・病気をしてもすぐ治る「ダチョウ」の抗体を使った「インフルエンザ対策マスク」


といったワクワクするテクノロジーが紹介されています。書中では、それぞれの技術の開発者たちによる解説と熱い想いに触れることができます。




地球環境が危ぶまれるこれからの時代、「ネイチャー・テクノロジー」は重要な解決策となっていくでしょう。引っ越したら「無電源エアコン」「水の要らない泡の風呂」がある家に住みたいものです。




その他、ジョン・ボン・ジョヴィのインタビュー、女優・神野三鈴さんのインタビューなど豊富なコンテンツが紹介されています。路上にて、ぜひお買い求めください。



ビッグイシュー日本版 5月15日発売 215号の紹介 | BIG ISSUE ONLINE


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(ビッグイシュー・オンラインは、社会変革を志す個人・組織が運営するイベントや、各種募集の告知をお手伝いしております。内容については主催者様にお問い合わせください。)





「共生社会を創る愛の基金」第2回シンポジウム



『罪に問われた障がい者』の支援
–新たな制度展開と多様な草の根の取組み–


 2012年、「罪に問われた障がい者」を支援するために、村木厚子さんからの「郵便不正冤罪事件」に関する国家賠償金を基にした寄付により「共生社会を創る愛の基金」が立ち上げられました。

 2012年3月には、刑務所出所者等の社会復帰を支援するために「司法」と「福祉」をつなぐ地域生活定着支援センターの全国設置が完了し、検察と連携し、障がい者に対して適正な取調べ、司法手続きを保障することや刑罰以外の道筋を探るための「被疑者・被告人支援」が始まりました。「罪に問われた障がい者」への支援は「出口」(社会復帰)と「入口」(取調べ、司法手続き)の両方でようやく進み始めています。

 「共生社会を創る愛の基金」の第2回シンポジウムでは、「罪に問われた障がい者」を支援するための新たな取組みを紹介するとともに、設立初年度の「共生社会を創る愛の基金」事業報告をとおして、地域に広がるさまざまな取組みをご紹介いたします。

 多くのみなさんのご参加をお待ちしております。

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日     時: 2013(平成25)年7月15日(月・祝)
開場・受付開始: 08:45
第  1  部: 09:30~13:00
第  2  部: 14:00~17:00
会     場: 日本教育会館 一ツ橋ホール
〒101-0003 東京都千代田区一ツ橋2-6-2
【道案内専用電話番号:03-3230-2833】
事 前 申 込: 要(定員750名先着順)
資  料  代: 4,000円
主     催: 共生社会を創る愛の基金
お申込み 方法: 公式ページ内のお申込みフォームか、
FAX(0957-77-3966)でお申込みください。

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締切り:7月5日(金)

※当日はご記入いただいた申込用紙か、 申込受付メール(自動配信)を
受付までお持ち下さい。




[編集部より]

詳しいプログラムは下記に紹介されています。骨太な内容ですので、ぜひチェックしてみてください。

シンポジウムプログラム|共生社会を創る愛の基金




【お問合せ先】
「共生社会を創る愛の基金」シンポジウム事務局(社会福祉法人 南高愛隣会内)
〒859-1215 長崎県雲仙市瑞穂町古部甲1572  (担当:南口・本田)
TEL 0957-77-3600㈹/FAX 0957-77-3966/E-mail:ainokikin@airinkai.or.jp



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[編集部より]

生活保護法改正に関して、NPO法人自立生活サポートセンター もやい理事長の稲葉剛さんに寄稿を頂きました。
自立生活サポートセンターもやい」は生活困窮者や家を借りたくても保証人がいない人たちの相談にのり、必要な支援につなげ自立を応援する活動をしています。




◆生活保護法「改正法案」が閣議決定



 5月17日、政府は生活保護法を抜本改正する法案を閣議決定しました。この「改正法案」の中には、生活保護の申請を厳格化し、親族の扶養義務を強化する内容が盛り込まれていることから、私たち、生活困窮者支援に取り組むNPO関係者や法律家ら、生活保護の当事者から抗議の声があがっています。

 「改正法案」の法的な問題については、私も幹事を務める生活保護問題対策全国会議のブログに掲載された同会議の緊急声明や関連資料をご一読ください。

生活保護問題対策全国会議 -「違法な『水際作戦』を合法化し、親族の扶養を事実上生活保護の要件とする『生活保護法改正法案』の撤回・廃案を求める緊急声明」および関連資料

 ここでは、路上生活者など生活困窮者の相談・支援に関わってきた立場から、今回の「改正法案」の問題点に迫りたいと思います。




◆福祉事務所職員による追い返し



 「どこの馬の骨かわからない人に生活保護は出せない」、「仕事なんてえり好みしなければ、いくらでもある」、「病気があると言って甘えているが、日雇いでも何でもして、自分の金で病院に行くのが筋だ」、「あんたが悪いんだから、頭を下げて実家に戻りなさい」…。

 これらはすべて私が自分の耳で聞いた福祉事務所職員の発言です。

 私は1993年から生活困窮者の支援活動に関わり、これまで20年間、東京23区内を中心に3000人以上の生活保護の申請に同行してきました。

 本来、生活に困窮した人の相談にのり、必要な支援策につなげるのは、行政機関の仕事です。しかし実際は、多くの福祉事務所で生活困窮者を窓口で追い返す「水際作戦」が日常的に行なわれてきました。特に路上生活者に対しては職員の偏見も強く、面接担当の職員が冒頭にあげたような暴言を吐き、言葉の暴力で相談者を追い返すということが横行していました。

 私はこうした差別的な対応に遭遇するたびに、担当の係長や課長を呼び出して抗議し、職員の窓口対応の改善を申し入れてきました。

 2000年代に入り、職員の差別的対応は減ってきましたが、その後も各福祉事務所は法律とは違う独自の基準で生活保護の対象者を選別することをやめませんでした。生活保護法では生活に困った人は無差別平等に保護することが定められていますが、一部の福祉事務所は、「65歳以上の高齢者や、重い疾病や障がいがある人に限る」、「地域内に住民票を設定している人に限る」など、自治体ごとに恣意的な判断基準を定め、その対象にならない人を窓口で排除するという運用を続けました。もちろん、こうした運用は生活保護法に違反しています。

 全国に1251ヶ所(2013年4月1日現在)ある福祉事務所のうち、相談者が手にとれる場所に申請書を備え付けているのは数ヶ所しかありません。多くの福祉事務所では、面接担当の職員が独自基準で認めた人にのみ申請書を渡すという手法で、違法に対象者を選別してきたのです。

 その結果、生活に困窮しながらも生活保護を申請できずに亡くなる人が増え、2003年には一年間の餓死者数が93人と過去最多になりました。この数は厚生労働省の人口動態統計で死因が「食糧の不足」とされている人のみを集計したものなので、実際にはもっと多くの人が餓死していると推察されます。

 2000年には大阪府監察医事務所の資料などをもとに研究者が調査したところ、路上で亡くなった路上生活者は大阪市内だけで年間213人にのぼったことが判明しています。




◆違法な「水際作戦」にどう対抗するか



 違法な「水際作戦」に対抗するため、2006年頃から全国で法律家らによる生活保護の相談窓口が設置され、生活保護の申請を支援する活動が活発化しました。私たちNPOも法律家と申請のノウハウをわかちあい、申請支援の活動を広げていきました。

 「水際作戦」への対抗手段とは何か。それは、福祉事務所に申請書を出してもらうのではなく、あらかじめ申請書を用意して持っていくという単純なことでした。生活保護の申請は口頭でも認められるという裁判の判例がありますが、録音をしない限り、口頭申請では証拠が残りません。そのため、申請の意思を示す書面を事前に書いてもらい、提出する、ということを各団体が始めたのです。私が代表を務める〈もやい〉のウェブサイトでは、事務所まで来られない遠隔地の方のために生活保護の申請書をダウンロードできるようにしました。



 2008年秋から「派遣切り」により、大量の非正規労働者が失職した際にも、全国各地でこうしたノウハウが活用されました。その結果、貧困は大きく拡大したにもかかわらず、必要な方が生活保護につながる率が高まり、餓死者数を減少させることができたのではないかと思います。2011年の餓死者数は45人と、依然として高い水準ですが、2003年の93人に比較すると半減しました。




◆2ヶ月前まで諌めていたことを自ら合法化



 しかし、今回の「改正法案」は違法な「水際作戦」を合法化する内容が盛り込まれています。

 「改正法案」24条1項は、生活保護の申請にあたり、氏名・住所だけでなく、要保護者の資産・収入状況、さらには「厚生労働省令で定める事項」を記載した申請書を提出しなければならないとしています。これまで認められてきた口頭申請が認められなくなる危険性があります。

 また第24条2項では申請書に「要保護者の保護の要否、種類、程度及び方法を決定するために必要な書類として厚生労働省令で定める書類を添付しなければならない」と定めています。ここで言う添付書類とは、賃貸住宅の契約書や預金通帳、給与明細、年金関連書類などが想定されます。

 〈もやい〉は、年間約1000件の面談による生活相談をおこなっていますが、相談窓口に来られる方の中には、ドメスティックバイオレンスや親族による虐待に遭い、着の身着のままで逃げてきた人や、入居していた賃貸住宅から「追い出し屋」の被害にあってロックアウトされた人、路上生活中に荷物をすべて盗まれた人も少なくありません。また、いわゆる「ブラック企業」の中には、給与明細などの書類を出さないところも珍しくありません。

 私たちはご本人が預金通帳などの添付書類をお持ちの場合は、生活保護申請書とともにそれらを窓口に持参することを勧めていますが、すぐに用意できない状況の際は、まずは申請書のみ提出するようアドバイスをしています。

 関連書類の添付が法律で義務付けられれば、こうした場合、「添付すべき書類を持参していない」という理由で申請できなくなる恐れがあります。生活の拠点を失うくらい困窮度の高い人ほど、申請が困難になるという状況が生まれかねません。

 これまでも、一部の福祉事務所は申請にあたって、資産・収入等の添付書類の提出があたかも要件であるかのように説明してきました。「書類が足りないから」という口実で、申請を受け付けず、何度も窓口に足を運ばせ、そのうちに相談者が申請をあきらめるのを待つ、というのも、伝統的な「水際作戦」の手法の一つです。

 こうした運用に対して、厚生労働省は今年3月11日に開催された社会・援護局主管課長会議において「それらの提出が保護の要件であるかのような誤信を与えかねない運用を行っている事例等、申請権を侵害、ないし侵害していると疑われる不適切な取扱いが未だに認められている」と非難しています。

 これは「改正法案」が閣議決定されるわずか2ヶ月前のことです。2ヶ月前に「違法だからやめろ」と言った内容を自ら合法化させる、という今回の動きには異様なものを感じます。何か背後に大きな政治的圧力があったのではないか、と想像せずにはいられません。 

 「改正法案」には扶養義務の強化も盛り込まれており、これも「親族に養ってもらえ」という口実による「水際作戦」を強化するものです。また、扶養義務者への調査が徹底されるため、「自分が申請すれば、将来にわたって親族の収入・資産等が丸裸にされる」という想いから申請抑制をする人も確実に増えるでしょう。




◆日本社会のターニングポイント



 このように今回の生活保護「改正法案」は、私たちが長年、根絶をめざして努力してきた違法な「水際作戦」を合法化させる内容になっています。それは確実に餓死・孤立死・路上死を増やします。貧困が拡大している現在、餓死者数は2003年の比ではなくなるでしょう。

 私たちは本当にそのような社会を望むのでしょうか。今、そのターニングポイントに立っています。





※扶養義務強化の問題については、こちらの文章もご参照ください。

扶養義務強化が福祉現場に与える影響(稲葉剛)





NPO法人自立生活サポートセンター もやい


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シューレ大学国際映画祭・上映作品募集中



2013年8月23日~25日にシューレ大学国際映画祭「生きたいように生きる」で上映する、公募作品を募集中です。

■今年も、特別審査員には原一男(映画監督)をお招きし、シューレ大学国際映画祭実行委員会のメンバーと共に厳選なる選考を行います。*原監督も応募作品全編をご覧になります。

■募集要項
◎テーマ:
「生きたいように生きる」をテーマにした作品。ジャンルは問いません。

◎応募〆切:
2013年5月31日(金)消印有効必着

◎応募形態:
・miniDVテープ、DVD-R(いずれもNTSC方式)
※応募作品は、本編の前後に10秒づつブラックを入れてください。
※DVDディスクで応募する場合は、家庭用再生機で再生できるディスクであることを確認の上、同じ内容のディスクを3枚添付しご応募ください。
※お送りいただいたメディアはご返却できませんのでご了承ください。
※作品を郵送ではなく持ち込みされる場合は、事前に必ず事務局までご連絡くだ
さい。

◎応募規定:
・資格不問。国籍、年齢、プロ、アマは問いません。
・作品は45分以内のものを対象とします。(時間を超過する場合は事務局までご相談ください)。
・応募点数に制限はありません。

◎入選、上映機会:
厳正な審査の結果、入選した2~3作品を2013年8月23日(金)~25日(日)に行われるシューレ大学映画祭にて上映いたします。映画祭は3 日間行い、期間中に複数回上映いたします。コンペティションではありませんので、賞金等はありません。

◎応募方法:
作品を郵送していただき、エントリー料をお振込みください。作品受納、振込確認次第、事務局からエントリー完了のご連絡を差し上げます。

(1)メディアと書類の送付:
映像の記録されたメディアと、下記に必要事項を記入した用紙を事務局までご郵送ください。必ず1作品につき、一つのメディアに記録してください。

映画祭の情報はこちら→http://shureuniv.org/filmfes/




シューレ大学:日本で唯一のオルタナティブ大学。子ども中心の、自由な学び場・活動の場を創りだしてきたフリースクール東京シューレが母体となって若者とスタッフで設立。知る・表現する・ということを自分のスタイルで進めることで、自分とは何者か を問い、自分の生き方を創り出すということを模索する場となっている。現在、学生40人、スタッフ4人に、原一男(Kazuo Hara)を始め、平田オリザ(Oriza Hirata)、芹沢俊介(Shunsuke Serizawa)、上野千鶴子(Chizuko Ueno)ら様々な分野のアドバイザーが約50人いる。




■お問い合わせ先

NPO法人東京シューレ シューレ大学国際映画祭実行委員会

162-0056 東京都新宿区若松町28-27

TEL03-5155-9801 FAX03-5155-9802

mail:univ@shure.or.jp

URL:http://shureuniv.org/
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110人生相談






夫の両親が、初孫に興味を示さない



現在5ヵ月になる娘がいます。私の両親は、初孫を激愛してくれていますが、夫の実家は対照的。近くに住んでいながら、会いに来てくれたのは、出産時とお宮参り、お食い初めの3回のみ。それもこちらから「来て下さい」と頼んで来てくれた感じで、とても寂しかったです。今後のつき合い方について、アドバイスをいただきたいです。
(32歳/主婦)






おそらく娘さんが生まれる前も、ご主人のご両親とは行き来がなかったのでしょう。ご主人がどう考えているのかわかりませんが、息子というのは、大人になると親に心配をかけたくないのかプライドなのか、家に寄りつかなくなりがち。

そんな仲を取りもとうとして、ホント大変だったと思います。でもこれからは、娘さんが生まれたことをきっかけに、ご両親と仲良くなれますよ。




私にとって孫は、言葉が悪いけれど、新しいおもちゃみたいでしたね(笑)。

娘が18歳で子どもを生み、8ヵ月からはうちで孫娘を引き取ったんです。どんな夫婦でも、長年連れ添うごとに会話が少なくなるものですが、孫が来て家が明るくなり、にぎやかになりました。

音楽が好きな子で、道ばたで演奏をしている人がいると、手をあげ、腰を振りふり踊るんです。周りの人も、しまいには音楽よりも孫に喜んじゃってね。

子はかすがいといいますが、孫はその役割を十二分に果たしてくれました。いろいろと苦労があったのに、いい思い出しかないです。私がこんな状態になり、雑誌を販売している時に孫が家族のことを知らせてくれたんです。




気の利いたことは言えませんが、ふつう自分の子よりも孫はかわいいものですから、そうではないご主人のご両親は、よっぽどつらい子育て経験があったのかもしれませんね。

娘さんは5ヵ月ということは、まだ泣くか寝てるかだけかもしれませんが、1歳の誕生日前にはよちよち歩きを始め、もっともっとかわいくなります。




気が進まないかもしれませんが、ご自身の両親を訪ねる3回のうち1回は、ご主人のご両親のもとへ行って、その愛らしい姿を見せてあげてください。たまには外で公園に一緒に遊びに行くのも新鮮でいいと思います。

頻繁に会ううちに、ご両親もだんだんと娘さんに愛情がわき、小学校にあがる頃には、「おめでとう」と来てくれるようになるんじゃないでしょうか。

(東京/M)




(THE BIG ISSUE JAPAN 第109号より)







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前編を読む

オランダの難民政策




オランダでは毎年約6000人の難民申請者が拒否されており、受け入れを拒否された難民たちは、それぞれの出身国に帰還することとされている。しかし、難民たちが政治犯であることも多く、出身国から入国を拒否されることも多い。また、アムネスティ·インターナショナルは、彼らの出身国の治安が万全でないことも指摘している。

1998年には、 国外退去が困難である難民申請者に対して、母国に、個人の責任で帰還させるという方針を導入。しかしその結果は、不法滞在者、ホームレスを増加させただけだった。

そのため、オランダ政府は不法滞在者の数を減らすために、より厳格な方法を模索し始めた。
昨年2012年、政府は事実上、文書として明示されていない居住者に、入国禁止命令を導入した。
難民申請が拒否されてから、通常28日以内の国外退去を命じている。彼らは期間外にオランダで発見された場合、入国禁止命令が発行され、軽罪で起訴される。罰金130〜1200ユーロ (日本円で約16800円〜15万5000円)または最大6ヶ月まで拘留される。

オランダの新政府は、難民の存在をイリーガル(違法)ととらえている。しかし、難民が犯罪者のように扱われるべきではないという非難の声が、国民からも多数上がっている。





オランダの光と影




北欧並みの「社会福祉国家」と呼ばれ、難民や移民にも手厚い保護を行なってきたオランダは、現在、 社会福祉・医療・文化などの予算を大幅に削減。本年度のオランダ財政赤字は、3%とするEUの目標を超え、国内総生産(GDP)比3.3%、さらに2014年も3.4%となる見込みだ。
http://www.reuters.com/article/2013/02/28/dutch-economy-idUSL6N0BS41I20130228

さらに、オランダ国家統計局CBSによると、今年2月の失業率は7.7%にも達した。これは1984年以来の最も高い数値である。オランダの失業率は昨年12月に7.2%、今年1月は7.5%と上昇し続けている。
http://www.nrc.nl/nieuws/2013/03/21/werkloosheid-loopt-opnieuw-fors-op/

仮にオランダ政府が難民を受け入れると、入国者の収容に1人当たり1日200ユーロ程度の予算が必要となると試算されている。だが、母国に帰ることのできない難民たちを追い出す訳にもいかず、難民の不法滞在を容認しているというのが実態である。




前述したとおり、オランダでは毎年約6000人の難民申請者が申請拒否されており、推定10万人とも言われる不法滞在者、ホームレスが存在していると言われている。

一般のオランダ人には目につかない闇の中—パラレル・ワールドで生きている難民たち。
オランダのつくりだした「光」と「影」の世界。

「光」が強くなれば、「影」も強くなるというふうに、世の中のありとあらゆるものは、相対的関係を持って成立している。「光」にのみ関心を持ち、「影」に無関心を装えば、そのコントラストはますます強まるばかり。影の部分にも目を背けず、光を投じてきたユニークな「オランダらしさ」が失われていくのは、時間の問題だ。




「あいまいで不透明な問題などというものはない。あいまいで不透明と考えるのであれば、それを個々の課題に落とし込み、課題ごとの方策を考えていくことが肝要」 という、緒方貞子さんの言葉どおり、難民問題をあいまいで不透明のままにせず、問題に向き合うことができるならば、 ゲイやレズビアンなどのマイノリティ問題に積極的に取り組んできた、オランダらしい先駆的な解決法が編み出せるはずだ。




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2013年4月5日:アムステルダムのデ・フルクト教会の敷地に植樹する難民たち photo by Manette Ingenegeren




滞在延長が認められた4月5日の夕刻、デ・フルクト教会の敷地に、教会の住人である難民の手によって、彼らの願いが込められた1本の木が植樹された。

まだ小さいながらも、天に向かって力強く伸びる枝々に生命の息吹を感じた。地中にしっかりと張り巡らせた編み目のように広がる根を想像しながら、オランダで普通の生活を営む、難民たちの未来の姿を思い浮かべた。

この小さな木がつくりだす「光」と「影」に、静かに思いを重ねあわせながら、1日も早い春の訪れを心待ちにしている。






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2013年4月5日:アムステルダムのデ・フルクト教会の敷地に植樹 photo by Manette Ingenegeren






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2013年4月5日:アムステルダムのデ・フルクト教会の敷地に植樹 photo by Manette Ingenegeren





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2013年4月5日:アムステルダムのデ・フルクト教会の敷地に植樹 photo by Manette Ingenegeren





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2013年4月5日:アムステルダムのデ・フルクト教会の敷地に植樹された木 photo by Manette Ingenegeren





タケトモコ
美術家。アムステルダム在住。現地のストリート・マガジン『Z!』誌とともに、”HOMELESSHOME PROJECT”(ホームレスホーム・プロジェクト)を企画するなど、あらゆるマイノリティ問題を軸に、衣食住をテーマにした創作活動を展開している。
ツイッター:@TTAKE_NL
ウェブサイト:http://tomokotake.net/index2.html
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デ・フルクト教会の難民たち—オランダの難民政策とその行方




2月に掲載した記事、「デ・フルクト教会へようこそ—温かい食事と寝床、政治亡命者を受け入れるアムステルダム市民たち」の続報をお届けします。







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(デ・フルクト教会に滞在する難民たち photo by Geert de Jong)






昨年11月末、オランダ・アムステルダムの難民キャンプに身を寄せていた難民たちが、キャンプを追い出された。そこで、現在は使用されていない教会を支援者グループがスクウォット(不法占拠)。今年3月末までの「限定期限付き」で、教会での滞在が許可された。その後のデ・フルクト教会に滞在する約120名の難民たちの行方を追う。





現在までの主な経緯



2012年11月30日:オランダへの難民申請者による、国外追放反対の泊まり込みテントキャンプが、警察により強制退去。

2012年12月2日:デ・フルクト教会スクウォット時にオランダのテレビ局、AT5で放映。「亡命希望者が今、教会をスクオット」
http://www.at5.nl/artikelen/91524/asielzoekers-nu-in-gekraakte-kerk

2012年12月4日・19日:デ・フルクト教会の難民申請者、支援者によるデンハーグでの抗議・署名活動
http://www.parool.nl/parool/nl/224/BINNENLAND/article/detail/3361004/2012/12/10/Poelgeest-Amsterdam-laat-illegalen-met-rust.dhtml

2013年1月5日: オランダ・ユトレヒトにて、”WE ARE HERE!” 難民キャンプデモ
http://www.devluchtkerk.nl/blog/vluchtelingendemonstratie-5-januari

2013年1月11日: デ・フルクト教会のソマリア難民が、難民追放の政府の決定に抗議し、デンハーグで「死体」抗議のパフォーマンス
https://www.youtube.com/watch?v=aCVhQzC8F7k


2013年2月10日:アムステルダムのパラディソで行なわれたサリフ・ケイタのコンサートで、デ・フルクト教会に滞在中の難民がコンサートで抗議。
ビデオ: http://www.youtube.com/watch?v=tTH5bcNaKKY






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(サリフ・ケイタとデ・フルクト教会に滞在する難民たちによるコンサート・ポスター)


2013年3月5日・14日:アムステルダムのパラディソで、デ・フルクト教会に滞在中の難民が、”We Are Here”(私たちはここにいる)・コンサートを開催。

2013年3月9日〜10日 国会議員がデ・フルクト教会で泊まり込み抗議
オランダ 緑の党、キリスト教連合と社会党の議員たちは、週末にアムステルダムのデ・フルクト教会で一夜を明かし、オランダの難民政策に抗議。
http://www.volkskrant.nl/vk/nl/2686/Binnenland/article/detail/3404888/2013/03/06/Kamerleden-logeren-nachtje-in-Vluchtkerk.dhtml

2013年3月13日〜14日:デンハーグで行なわれた「安全と正義の総合討論(AO)」にあわせて、難民の住居と生存権を訴える、泊まり込みの抗議活動
http://www.facebook.com/events/588928617802331/

2013年3月23日:アムステルダム 反難民政策デモ - “Wij zijn Hier. Geen mens is illegaal!” 「私たちはここにいる。誰も違法ではない!」





アムステルダムで行なわれた反難民政策デモには、難民申請者、支援者、政治家、組織、一般市民が参加。http://vluchtelingenactie2013.nl/


約2000人が、デ・フルクト教会からミュージアム広場までデモ行進した。子ども連れの家族、乗っていた自転車を押しながら、飛び入りで参加する人も多く見られ、フレンドリーで和やかな雰囲気に包まれた。





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2013年3月23日:アムステルダム 反難民政策デモ - “Wij zijn Hier. Geen mens is illegaal!” (私たちはここにいる。誰も違法ではない!) のチラシ&ポスター





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2013年3月23日:アムステルダム 反難民政策デモ 、デモ行進





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2013年3月23日:アムステルダム 反難民政策デモ 、ミュージアム広場での抗議





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2013年3月23日:アムステルダム 反難民政策デモ 、ミュージアム広場での抗議(ステージ)




ミュージアム広場の抗議活動、スピーチはオランダ語、英語、フランス語、アラビア語のマルチリンガルで行なわれ、デモ行進の参加者に加え、さらに500〜1000人が発せられた言葉に聞き入っていた。




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2013年3月23日:アムステルダム 反難民政策デモ 、ミュージアム広場での抗議。“nous sommes des humains comme vous”(私たちも、あなたがたのような人間である)と書かれたフランス語のプラカードを持った女性。




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2013年3月23日:アムステルダム 反難民政策デモ 、ミュージアム広場での抗議。車椅子で抗議する女性。




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2013年3月23日:アムステルダム 反難民政策デモ 、ミュージアム広場での抗議。“IEDEREEN IN DE WERELD IS VLUCHTELING”(世界中のすべての人は難民だ)と書かれたオランダ語のプラカードを持った女性。




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2013年3月23日:アムステルダム 反難民政策デモ 、ミュージアム広場での抗議。“WE ARE HERE”(私たちはここにいる)と書かれたオランダ語のプラカードを持った男性。





アムステルダム 反難民政策デモ デモ行進とミュージアム広場の抗議活動の様子を短く編集したビデオ



オランダの各種メディアは事実を歪曲せず、反難民政策デモについて報道している





オランダの今年の春の寒さは、例年よりもかなり厳しく、まだ真冬のコートが手放せない。
2013年のイースター(復活祭)の週末は、クリスマスよりも冷え込み、1964年以来の寒さが到来。

4月になっても、雪が舞い散る日も多く、春の訪れを感じるのはまだ先になりそうだ。

そんな寒さの折、3月末までの滞在が許可されていたデ・フルクト教会の住民である難民たちと支援者は、アムステルダム市長へ滞在許可延長を申し入れ、その結果、4月5日までの滞在延長の猶予が認められた。

4月8日に難民たちと支援者たちが書いたアムステルダム市長への手紙には、先の見えない将来への不安と闘う難民たちの苦悩が綴られた。異なる文化背景を持つ人たちとの長期にわたる共同生活によって、精神的・身体的な疲労困憊は限界に達している。人間としての最低限の生活を営むために、緊急に治療と保護が必要だと訴えた。

http://www.devluchtkerk.nl/blog/brief-aan-de-burgemeester

こうして再び滞在許可は4月10日まで延長され、同日、アムステルダム市長と教会の所有者が、非公開の場で今後の教会について協議したが結論には至らなかった。

4月15日、再びアムステルダム市長との会談が行なわれ、教会に滞在している難民と教会所有者との間の滞在許可契約書が、6月1日まで延期されることとなった。

今後数週間のうちに、難民たちが緊急サービスを受けられるような道筋を、アムステルダム自治体と他の機関が協力しながら作り上げていく運びとなった。

しかし教会側は、今回のアムステルダム市長の決断を高く評価しているものの、慎重な姿勢を崩さない。難民と直接話し合い、彼らをどのように扱うかという「実益」を約束すること、個々の難民に注目し、彼らの将来を考慮した「よいカウンセリング」を行なうことで、現実的な計画を作り上げることを市長に訴えかけている。




後編に続く


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(2012年11月1日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 第202号より)





『福島と生きる 国際NGOと市民運動の新たな挑戦』








震災直後、宮城県や岩手県には多数の国内・国際NGO/NPOが次々と支援に入ったが、福島県では出遅れた。

放射性物質による汚染のほかに、福島ではNGO/NPOの活動基盤や、外部から支援を受け入れるための受け皿となる中間支援組織が脆弱で、それが支援活動の遅れになった可能性が指摘されている。

本書は、こうした福島の問題を乗り越えようとする市民とNGOの格闘の軌跡と、「未来」や「福島」への視座を特集している。放射能汚染は測定器がなければ不可視的であり、よって実害も不可視化されやすい。

対立と分断を越えて、今の問題をどうとらえ、発信し、広く連携していくか、その実践とヒントがつづられた。

「福島の状況を世界に発信する際の鍵は、福島で起きていることを世界的な課題(グローバル・イシュー)として位置づけるところ」(竹内俊之・国際協力NGOセンター震災タスクフォース福島事務所長)。

福島の問題がいかに普遍的かを理解できる一冊。 

(藍原寛子)


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5月15日発売のビッグイシュー日本版215号のご紹介です。



スペシャル・インタビュー ジョン・ボン・ジョヴィ


バンド結成30周年の節目に、通算12枚目のアルバム『What About Now』をリリースしたボン・ジョヴィ。「ソングライターである前に、一人の闘う男でありたい」と言います。走り続けるボン・ジョヴィが、曲づくりや家族、政治、そして情熱を注ぐコミュニティ支援活動についても話してくれました。



特集 無限?! ネイチャー・テクノロジー ― 自然に学ぶ、生きのびる技術


地球生命の誕生から38億年。自然界の生き物は試行錯誤や淘汰を繰り返し、最小のエネルギーで駆動できるしくみや、完璧に循環するつながりのシステムなどをつくりあげてきました。
2030年、生物多様性の劣化、エネルギー・資源の枯渇などすべてのリスクがピークを迎えるといわれています。自然に学び、生きることを楽しみながら人類の危機を乗り切る技術、「ネイチャー・テクノロジー」を研究している石田秀輝さん(東北大学大学院教授)に、自然のすごさを新しい物づくりと暮らしに活かすことについてお聞きしました。
また、ヤモリの足にアイディアを得た中山喜萬さん(大阪大学名誉教授)の「ヤモリ・テープ」や槌谷和義さん(東海大学准教授)の「蚊にヒントを得た痛くない注射針」の開発研究について取材。
さらに、塚本康浩さん(京都府立大学大学院教授)には、ダチョウの生命力に注目、アトピーや花粉症に効き、将来的には子宮頸がんやHIVへの応用化も目指す「抗体」の研究についてお聞きしました。



リレーインタビュー 神野三鈴さん


舞台を中心に活躍を続ける、女優の神野三鈴さん。母親と老いた猫の介護を続け、ボロボロの身体を引きずるように稽古場へ通う……。そんな日々を過ごすなか、「自分の選択に誇りをもとう」と心に決めたことが、自身にとって大きな変化だったと語ります。



クリエーターの視点 下道基行さん


数十年の時を経た戦争遺跡や、暮らしの中で必要とされる橋――。下道さんは、目の前の風景を写真で記録し、時間の流れや人々の生活を浮かび上がらせます。現在、中学生と共に進めている、「14歳と世界と境」という活動についてお聞きしました。



この他にも、「ホームレス人生相談」やオンラインでは掲載していない各種連載などもりだくさんです。詳しくはこちらのページをごらんください。

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