(2011年11月15日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 第179号より)




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フランス、電気自動車レンタル“オトリブ”誕生



パリはこの秋、CO2と大気汚染対策を目的に、「電気自動車レンタル」というユニークな挑戦を打ち出した。2007年開始の自転車レンタル“ヴェリブ”の大成功にあやかり、自動車版“オトリブ”(「auto=自動車+libre=フリー」の造語)が登場。

10月2日に試運転が始まり、12月に本格的に実用化される。現在、パリおよび近郊自治体に33のステーション、66台の電気自動車“ブルーカー”が設置されている。今年末までに、250ステーション、250台に増やし、来年末には1000ステーション、3000台を目指す計画だ。  

車の借り方はいたって簡単。登録してプリペイドカードを入手し、1日、1週間、1年分の料金を事前に支払い、ステーションでカードをワンタッチして、暗証番号を押すだけ。

別のステーションに乗り捨て可能で、充電してから車を返却する。各ステーションには案内係が配属され、1000人以上の若者の雇用を見込んでいる。自転車同様、電気自動車レンタルもパリの風景として定着しそうだ。

(木村嘉代子)
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100人生相談





差別の塊だけど悪意ない同僚。どう対処したらいいでしょうか?



名古屋から東京へ転勤してきた30代後半の男性はとにかく差別の塊。下請けにはキビシクしないとなめられると、罵声、怒号はあたりまえ。あげくの果てには「あいつが来ると雨が降る」という理由で作業員をクビにする始末。ただ、上司や会社の後輩によると、本人に差別意識はまったくなく悪意もないらしいのですが…こういう人には、どうやって問題提起したらいいのでしょう?
(派遣社員/女性/31歳)





建設業が長かった私から察するに、クビになった人が「作業員」ということですから、この女性の職場も同じ業界でないかと思います。驚きでいっぱいの相手のようですが、まずは職場全体の状況をじっくり観察してみてください。

たとえば私の場合、高い所にのぼっての作業が多く、よく人から「怖くない?」って聞かれました。でも上からモノが落ちてこない分、下より安心できたんです。ただ自分が落ちたら終わりですけどね(笑)。

昔から「土方を殺すには刃物はいらぬ。雨が3日も降ればいい」なんて言葉もあるくらい、雨は嫌われもの。加えて、仕事は身体で覚えろという荒っぽい業界です。

私も最初はずいぶん親方から頭をはたかれました。この男性社員がそういう環境で仕事を仕込まれてきたとしたら、この女性が男性社員の上司へ直談判するのは逆効果でしょう。この女性がよかれと思った行動でも、周囲から「なんで最初に相談してくれなかったのか…」と逆に居心地が悪くなってしまうかもしれません。




私はビッグイシューの販売のとき「ありがとうございました」に、朝は「いってらっしゃい」。夕方は「今日はお仕事お疲れさまです」など、ちょっとしたひと言を加えて、会話が続くように心がけています。

どこの職場でもそうだと思いますが、仕事を進める上でコミュニケーションは大切。高所で作業する私らの場合、ひとつのミスが命取りの事故につながることもありました。なので、休憩時間に同僚とお茶でも飲みながらでも、味方を1人ずつつくっていってください。それから、男性社員と話し合いの機会を設けてみてください。




とりとめのない話が続きましたが、現場で作業員をまとめる立場にいた私から見ても、この男性社員のように人を道具のように扱う方法では、今の時代は誰もついてきません。仲間と一緒に慎重に行動にうつせば、あなたの思いは相手に伝わるはずです。

(東京/M)


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前編を読む






今も日本は食糧の約6割を海外から輸入している。食糧自給率は年々下がり続け、1965年当時に73%あったものが、2000年には40%となった(図5)。


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食糧自給率はオーストラリアの237%は別格としても、カナダ、フランス、アメリカは100%をはるかにこえ、ドイツ、スペイン、スウェーデンでは80%をこえる。また、英国でさえ1965年45%だった食糧自給率を1985年には72%に引き上げ、日本とは逆の道をたどっている。






総有。水はみんなのもの。分けて私有できない



なぜ、水の浪費が問題なのだろうか?

それは、水が限りある資源であるからだけではない。地球温暖化が問題になるのは大気が地球上に生きるすべての生き物みんなのものであり、特定の誰かのものに分けて所有できないからである。同じように、水もみんなのものであり、誰かが分けて所有できるものではないからだ。

日本にはもともと「総有」という、”水はみんなのもので、分けて私有できない“という考え方がある(「遠い水、近い水」嘉田由紀子『水と暮らしの環境文化―京都から世界へつなぐ』参照)。

水を飲んだり、お金を出して購入したりしても、「総有」という考え方からみれば、水を所有しているのではなく、利用しているにすぎない。そして、日本の突出した水使用は、水の購入、食糧の輸入というかたちを取っているとしても、過大、過剰利用なのである。




では、これから日本人はどのように水を使用、利用すればよいのだろうか? 今すぐできることとして、以下の五つのようなことを提案したい。

バーチャルウォーター(食糧輸入)を減らすために、肉食を少なくし地場のものを進んで食べる。残飯は極力、出ないようにする。



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戦後3割未満だった水道普及率は、現在97%(図6)となったが、その用途はトイレ、風呂、炊事、洗濯でほぼ四分される(図7)。4分1以上を占めるトイレ用水を中間水(水の再利用)に転換することがもっと考えられてもよい。現段階では、バケツに汲み置きした風呂の水などを再利用する。


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水田風景を残す。食糧自給率のアップだけでなく、梅雨や台風期に水をだきこむ水田の効用を見直す。減反政策で水田が減り地下水位が下がった福井県大野市などでは、休耕田にも水を貯めて地下水の涵養を促す試みをしている。また、井戸水をミネラルウォーターとして見直したい。

雨水をもっと利用する。降った雨をそのまま下水に流してしまうのではなく、天水貯水槽やたるなどに溜めて散水用などに使う。

”水はみんなのもので分けて私有できない「総有」“という考え方など、日本古来の水利用を改めて学ぶ。

(編集部)


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水は誰のもの?水は”私有“できない——日本と世界の水事情



モンスーン・アジアに位置する日本は降雨量も多く、水資源は一見豊かに見える。
だが、季節や地域で雨量には偏りがあり渇水にも悩まされる。
加えて、食物という名の水(バーチャルウォーター)を世界から大量に輸入することで、
水の帳尻を合わせている。今、私たちができることは?





38ヶ国、30リットル以下の水で耐久生活



命の水。水なくしては1日も生きていけない。しかし、水は無限でないだけでなく、希少な資源になりつつある。

地球上には14億キロ立方メートルもの水があるが、人類が使えるのはその0・07%程度。97・5%は海水で、残りの淡水のほとんどは北極や南極などの氷として存在しているからだ。

さて、そのわずかな淡水を使っている世界の人口は、1950年から2000年の50年の間に、25億から約2・4倍の61億人に増えた。さらに2050年には、その1・5倍の92億人に増えると予測される。この100年間で4倍近くになるという計算だ。(図1)


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ところが、世界の水需要は人口増のペースを大きく上回り、1900年から2000年の100年の間で10倍に増えた(図2)。そして2025年には、現在の1・4倍の水が必要だともいわれている。




果して、そんな大量の水を調達することが可能なのだろうか?特に今後も急激な人口増加が予想されるアフリカやアジアでの水不足、そこでの不完全な水処理による水汚染の頻発などが心配されている。

一方、各国の1人当たり1日の水使用量(生活用水)を見てみると、予想にたがわず先進国の水使用量が多い。カナダが801リットルと最も多く、ニュージーランドの740リットル、アメリカ589リットル、オーストラリア504リットル、と500リットル以上の国々が続く。日本は韓国やイタリアと同じレベルである。(図3)


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ちなみに、人間がなんとか暮らせるという最低限の生活用水は、1人1日あたり50リットルといわれる。だが、世界にはこの50リットル以下の水も使えない国が55ヶ国もある。さらに、30リットル以下の水で耐久生活を強いられる国が38ヶ国あり、うちアフリカが26ヶ国、アジア8ヶ国である。

現在も限られた水の確保をめぐって、特にドナウ川、ナイル川など国境をまたぐ世界各地の国際河川で紛争が続いている。また、著しい経済成長下にある隣国、中国では水不足の状況がすさまじい。水問題にかかわるカナダの活動家、モード・バーロウ氏は、21世紀は水紛争の世紀になると語っている。




飽食日本は世界有数の水浪費国



次に、日本の1年間の生活用水の使用量を見てみよう。1965年には42億㎥であったが、2003年には141億㎥となり、3・4倍になった。1人あたりの1日平均使用量に換算してみると、169リットル(65年)から313リットル(03年)へと約2倍となり、一見伸びが少ないようにも見える。(図4)


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だがこれは、水道水から取水される生活用水だけ。これに加えて、世界中の水が牛肉や小麦などの食べ物に姿を変えて、日本に輸入されているのだ。その水はバーチャルウォーター(間接水)と呼ばれ、その輸入量はなんと640億㎥(2000年)とはじき出されている。

1人1日当たりに換算すると、1460リットル輸入していることとなり、前出の生活用水(水道水)313リットルと合わせると、一日1773リットルの水を使っていることになる。食糧輸入とは”水輸入“であるのだ。

これらの数値を見れば、飽食日本は世界有数の水浪費国といわれても仕方がない。

後編へ続く


(2007年6月1日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 第73号より)

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98人生相談





ダメな男ばかりに惹かれてしまいます…。



私は情けない男に弱く、貢がされたり、泣き落とされたりする、ダメな男ばっかり渡り歩いてしまう、いわゆるダメンズウォーカーです。また、誰かを頼りにしたくなり、それほど愛してないのに、相手に無償の愛を望み、相手が結婚しようって言ってきたら、足を引っ張られる気がして、突然、冷めてしまったりすることもあります。どうしたら、この負のサイクルから脱出できるでしょうか?
(医療関係/女性/35歳)





元彼女とかぶるなぁ。

年もちょうどオレより一つ年上だし、よくわかるよ。前の彼女は、四つ年下で、彼女が働いていたお店で意気投合したんです。ところが男みたいに突然怒ったりするし、愛情はさらさらないって言っていたけど、オレとつき合いながら、元カレと一緒に住んでいるっぽかった。

彼女とオレは、お互いダメ同士。ダメな人間ってのは、人の痛みや気持ちがわかるから、惹かれあってしまうんだ。この人もね、つき合う男性と同じくらい精神的に弱いんじゃないかと思うんだ。




実はオレがビッグイシューを始めたのも、彼女への想いを断ち切るため。別れたというよりも、彼女が携帯を変えて、突然、連絡が取れなくなってしまった。

忘れよう、忘れようと努力しても、ふと思い出しちゃうこともある。今のオレにとっては、販売に没頭するのが一番なんだ。だからこの人も自分を変えるためには、何か新しいことに挑戦したり、新しい環境に身をおくのがいいと思う。

そのうちに新しい出会いもあるだろうし、オシャレにしろ180度変えてみたら、これまでと全然違うタイプの男性が近づいてくるかもしれない。




35歳っていうと、子どもがいてもおかしくない年頃だから、焦る気持ちっていうのもあると思う。オレも雑誌が1冊も売れないと、焦りますよ。それでも、粘りに粘って売るしかない。自分が納得するまでやったら、ダメでもふんぎりがつく。

この人は自分が納得するまでつき合っていないから、また同じパターンにハマってしまっているんだと思う。焦っても、いい結果は出ないよ。でも時にガマン強さというのは、裏目に出ることもあるから要注意。

実は今、足にばい菌が入って、販売をお休みしているんだ。痛いと気づいていたけどもう少し、もう少しと立っていたら、激痛がきてしまった。ガマンもほどほどにね(笑)。

(東京/S)


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前編を読む




また、スケールの大きい大陸的な要素も大きい。例えば、水の蒸発量。中国の乾燥地帯では、水の蒸発量は降水量の4倍から20倍に達するところもある。しかもそれは地球温暖化によって確実に加速される。

雨によって失われる土の量もすさまじい。中国の黄河流域では、夏の局所集中的な豪雨が樹木も草もほとんど生えていない地面を直接叩くため、農民が何代にもわたって耕してきた土が雨と一緒に失われる「水土流失」が起こる。その侵食される土の量が、また半端ではない。

「例えば、黄河に1年間に流れ込む土の量は16億トンです。16億トンの土というのは、その土で幅1m、高さ1mの堤防をつくると考えた場合、赤道を27周もしてしまう量になり、それが毎年流れ込む。河床が20mも上がることもあって、ため池などはすぐに埋まってしまう」

「日本から見た北京は発展中国のシンボルとして輝いているように見えますが、背後の大同から見る後ろ姿は砂上の楼閣に思えてならない」と言う。



 

水の争奪戦ばかりか、雲の争奪戦も




水不足看板

「水……明日もまだあるだろうか?」
北京のビルの屋上にかかった看板。それでもまだ膨張につぐ膨張。(北京市朝陽区、2005年8月)
 





だが、こうした水不足は中国全体の問題ではない。北京周辺を含めた中国北部が水不足に悩む一方、中国南部では毎年のように大小の河が氾濫して洪水が起こり、千人規模の死者が出ることも珍しくない。「中国の水問題は地域によって極端な偏りがあることなんです」と高見さんは解説する。

「中国の水資源の80%は長江以南の南部にありますが、耕地面積は中国全体の35%に過ぎません。一方で、人口や経済、政治の中心地である北京・天津の大都市、華北の穀倉地帯が集まる地域には水資源量が7.6%しかないんです」

こうした水資源の偏在を解消するため、中国では長江流域の水を北部に運ぶ「南水北調」という壮大な計画が進んでいる。また、最近、北京では人工降雨が盛んで、雲に沃化銀を打ち込んだり、飛行機から撒いて雨を降らせる。大同でも、雨を降らしそうな雲を打ち落とすために、常に大砲が待機している、と高見さんは言う。中国では水の争奪戦ばかりか、雲の争奪戦まで繰り広げられているのだ。

こうしたウルトラCの解決法にはさまざまな問題がある、と高見さんは言う。

「お金の大小によって水を確保できるかどうかが決まり、生態系への悪影響も避けられません。また究極の解決策に期待するがあまり、北京市民の危機感が薄れ、節水の取り組みも進まない可能性がある」と言う。



 

中国華北の農業撤退と「非常識」なほど水に恵まれた日本




桑干河のトウモロコシ


桑干河の河底で栽培されているトウモロコシ。
付近の農民は河に水が流れてくることを、期待もしなければ、恐れもしない。(山西省応県、2003年9月)






また、日本への影響も避けられない。実は、北京周辺で水を最も多く使用するのは農村と農業。全体の水使用量の半分を占め、残りの半分を都市生活と工業用水が分け合っている。しかし、大量の地下水の灌漑で成り立つ農業は工業と比べると、水を単位にした生産性が極端に低いため、中国政府は北京や天津地区と華北の一部から農業を撤退することを検討しているという。

「華北平野の農業は中国全体の農業の3分の1を占めています。そこでまかなっていた食糧の減少分を輸入し始めると、世界の食糧市場が大きく変わります。すでに大豆は最近まで世界有数の輸出国でしたが、いまは世界最大の輸入国になっています。13億人を抱える彼らが食糧を輸入に頼り始めると、世界はどう変わるのか。私たち日本人の胃袋にも直結する話なんです」

こうした中国の水問題を考えると、「日本は非常識なほど水に恵まれている」と高見さんは言う。春の菜種梅雨、夏の梅雨、雷雨、秋の台風、冬の雪…。四季を通じて水の恵みがある日本は、東アジアにおける水の通り道であり、世界の北緯30〜40度の地域で緑に恵まれているのは日本とアメリカの東海岸ぐらいだ。

それにもかかわらず、日本の食糧自給率は40%程度となり、日本は世界中から「水のかたまり」ともいえる食糧を通して大量の水を輸入している。

中国の水問題を指摘すると、たいてい『そんなところでオリンピックができるか!』という話になりがちですが、それじゃあ私たち日本人は恵まれた水をちゃんと有効に使っているのか、と思うんですね。自分の国の水を使わずにムダに流して、山や田んぼはどんどん荒れているのに、食糧の大半を輸入し、日本の自動車産業も中国の厳重欠水の地域で工場を次々に建てているんです」

「こんな無理なことが長く続くはずはありません。特に若い人はその時にどうやって生きていくのか、今から少しずつでも将来のことを考えるべきだと思います」

(稗田和博)
写真提供/緑の地球ネットワーク




たかみ・くにお
1948年、鳥取県生まれ。NPO法人「緑の地球ネットワーク」事務局長。中国山西省大同市で水のない村と出会い、井戸掘りの協力を行った経験から、中国の水問題にかかわる。92年以降、同市の農村に3〜4ヶ月は滞在し、緑化協力を続けている。01年、中国政府から「友誼奨」を受賞。
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3月15日発売のビッグイシュー日本版211号のご紹介です。



スペシャルインタビュー 乙武洋匡さん


大ベストセラー『五体不満足』から15年。今や教員資格をもち、小学校教師の実体験を元に描いた小説『だいじょうぶ3組』の映画化にあたっては俳優にも挑戦した乙武洋匡さんが、教育への思い、そして社会について語ります。



国際記事 初の選挙で7人の仲間を女性議員に。NGO「リビア女性の声」


2011年の「革命」以降、民主化への移行過程にあるリビア。中でも元気なのが、国際会議「ワン・ボイス」やラジオ番組制作などを通じて、女性の政治参加や地位向上を目指している、NGO「リビア女性の声」です。彼女たちを突き動かすものは何なのか?
創立者のアラア・ムラビトに聞きました。



リレーインタビュー 女優 鈴木杏さん


9歳と幼い頃より、テレビ、映画、舞台と、幅広い活躍を続けてきた鈴木杏さん。ターニングポイントは「新しい作品、一つひとつに出合うこと」と語り、その都度どんな役づくりをするのか? 自身の取り組みを明かしてくれます。



特集 放射性物質と向き合う


福島第一原発の事故から2年が過ぎ、放射性物質という言葉は親しいものになってしまいました。それらは子どもや孫の世代をはるかに超えて地球上に残っていきます。
放射性物質とは? 福島の事故でどれぐらい放出されたのか? 今、子どもたちにはどれくらいの危険があるのか? 身の回りや体内に取り込むのを減らすために何ができるのか? 次々に湧き出てくる疑問。これらに、正面から答えてくれる研究者にお聞きしたいと思いました。
そこで、事故後すぐに、飯舘村で放射能汚染の実態を明らかにしたチームの今中哲二さん、チェルノブイリや福島で被災者の支援活動をされてきた振津かつみさんに話を聞きました。また、福島で郷土の味を復活させる女性たち、福島の子どもたちの保養に取りくむ教育関係者とNPOにインタビュー。子どもたちの健康被害や原発労働者の状況も取材しました。
3・11後を生き抜くために、できることは何かを探りたい。



この他にも、「ホームレス人生相談」やオンラインでは掲載していない各種連載などもりだくさんです。詳しくはこちらのページをごらんください。

最新号は、ぜひお近くの販売者からお求めください。
販売場所検索はこちらです。

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(2007年6月1日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 第73号より)




北京の地下水が枯渇する?中国の水問題




中国内陸部の砂漠化した農村で、長きにわたって緑化協力を続けている高見邦雄さん(緑の地球ネットワーク事務局長)。
現地での生活経験を踏まえ、経済発展で躍進する中国の背後にある深刻な水危機の現状に警鐘を鳴らす。






MG 5827





(高見邦雄さん)




水のない村。一日の水使用量は日本のトイレ「大」の2回分



通水式

広霊県苑西庄村の新しい井戸の通水式のもよう。
地下176mの深井戸から汲み上げたばかりの水を、村人たちがコップで回し飲みした。(1998年6月)





農村に泊まると、朝、洗面器の底にうすく張った水が渡される。そのわずかな水で洗面を済ませ、その後は羊や鶏などの家畜用の飲み水に回す。

北京から西に約300km入った内陸にある山西省大同市。

ここの住民はほんのわずかな水を家畜と分け合い、あらゆる面で水を使い回さなければ日常生活が成り立たない。1年の3分の1をこの大同市で過ごす高見さんは、「この地では水不足は井戸を掘って解決できるレベルをこえ、すでに節水の余地もない」と話す。




なかでも深刻なのは、黄土丘陵にある農村。もともと水が乏しく、物理的限界ぎりぎりで生活している。そういう貧しい高所の村で井戸や湧き水が最初に涸れる。

「21の村にアンケート調査すると、1人当たりの1日の水使用量は23.8リットルでした。これは日本の水洗便所で大便を2回流すだけの量です。少ない村ではわずか15.6リットルでした」と高見さん。極端な水不足のため、ほとんどの農村では風呂もなければ、シャワーもなく、洗濯をすることも少ない。ドラム缶を積んだ馬車をロバに引かせて片道10kmをかけて地下水を買いに行かなければならない村もある。

事情は市街地も同じだ。住民は1日1時間弱の時間給水のところもあり、バスタブに水をため、食器などの洗い物に使った水でトイレの「大」を流す。まるで阪神大震災の被災者と同じような生活が1年中続いているのだ。

「彼らは、すでに親子代々にわたって水不足の生活を続けているので、水に困っているという意識もあまりないようです」




「厳重欠水」の上に成り立つ北京の経済発展



官庁ダム



湖底が干上がった北京の水がめ=官庁ダム。現在の水際は1950年代のそれから1km以上も後退している。(河北省懐来県、2004年3月)




中国の一地域である大同市の水不足を高見さんが声高に指摘するのには、実は理由がある。大同市は首都・北京の重要な水源に当たっているからだ。大同市の中央部を流れる桑干河には、現在、ほとんど水がない。

桑干河は河北省に入って官庁ダムに流れ込むが、この官庁ダムは密雲ダムと並ぶ二つしかない北京の水ガメだった。ところが水量の減少と水質悪化で上水道には使えなくなっている。北京とその周辺の水資源量は、国際人口行動基準で「厳重欠水」といわれる基準をも大きく下回る。

「大きな節目は1990年代後半です。それから10年ほどの間に河という河が死に絶え、ダムはほとんど使えなくなり、井戸もどんどん涸れています。今では雨が降っても水が河まで出てこない状況で、北京は使用する水の7割以上を地下水に頼っているんです」と高見さんは指摘する。

しかし、この地下水も一部には1965年以来、地下水位が59mも低下したとの報告もある。また、大同市では、2008年には地下水が完全に枯渇するという報道さえある。

なぜ、この10年で水不足が深刻化したのか? すぐに思い浮かべるのは急速に発展する北京の都市化と工業化だが、高見さんはさまざまな複合的要因を指摘する。

「ちょうど北京オリンピックの開催が決まった頃から大旱魃が起きるようになり、北京の水利局では99年から03年までの旱魃で降水量が30%も減ったと発表しています。その辺りから井戸の地下水をどんどん汲み上げて農業の灌漑に使ったりして、経済発展による都市部での水使用量の増加が激しくなったのではないか」と高見さんは話す。






後編に続く


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(2011年11月1日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 第178号より)




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インド、「幽霊職員」が2万人



「神の使い」として牛が街中を行きかうインドの首都デリーで、新しい「幽霊」の発見が話題を呼んでいる。職員の勤務実態を把握するため、市政府が数年前に生体認証システムを導入したところ、13万人のうち、2万人は名前が登録されているだけの「幽霊職員」だったことが発覚したのだ。

幽霊の大半は清掃員で、5年間で計50億ルピーが給与として支払われたとの調査結果もある。給与を詐取したとして、8月に逮捕されたエンジニアの男は「おじが勝手にやったことで、いつ職員になったのかもわからない」と供述した。実際のところ、本業で十分な収入を得ており、不正を働く差し迫った必要や、罪の意識はなかったようだ。

インドでは政治家や公務員の汚職が横行している。著名な社会活動家のハザレ氏がハンストを通じ、政府に対策を求めたのは記憶に新しい。デリーの件は「行政システムの欠陥が原因」(市幹部)のようだが、官僚主義の蔓延が背景との指摘もある。賄賂が「文化」として根づくなど、国民の側にも改善の余地があるようだ。

(長谷川亮/参照:IANS、タイムズ・オブ・インディア)


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