<part.5を読む>

路上生活者のためにできること



瀬名波雅子/NPO法人ビッグイシュー基金プログラムコーディネータ 「路上脱出ガイドを通じたホームレス当事者とリスク層へのアウトリーチ活動」 ホームレス当事者が路上を脱出するための情報をまとめた「路上脱出ガイド」を発行。近年は路上にいるホームレス当事者だけでなく、日中を図書館などで過ごすホームレス当事者やホームレス化のリスクを抱えた受刑者へのガイド提供を行う。


瀬名波:みなさんこんばんは、ビッグイシュー基金の瀬名波と申します。私どもは認定NPO法人でして、主にホームレスの方の支援をしているNPOです。色々な活動をしていますが、本日は路上脱出ガイドを通してのアウトリーチについてお話したいと思います。

皆さんにお配りした資料の中に「路上脱出ガイド」というものがあると思います。東京23区編の第四版になります。こちらは大阪を皮切りに2009年から発行しているガイドでして、全国で7万部以上の配布を行っています。この冊子を作成した2009年当時、今ほど携帯電話をもつ路上生活の方が多くなく、情報も一元化されていなかったため、支援を受けたいと役所などの窓口にいってもその窓口でたらい回しになってしまうということがありました。情報がひとつにまとまっている冊子があれば、自分でその時々の状況にあわせて必要な支援を選び、つながることができるのではないか、と思い作ったものです。

このように、もともとは路上生活を送る方への情報提供冊子として作成したガイドですが、近年役割が徐々に広がっておりまして、いまは図書館での設置も進んでいます。大阪では25の図書館、東京では40の図書館に設置しています。

最初のきっかけは図書館の方から「ホームレスのような方がいらっしゃるけれど、どのように声をかけていいかわからない」とお問い合わせいただいたことです。今では大きな図書館を中心に、私たちから冊子の説明と設置のお願いをしたうえで、お送りしています。工夫をなさっている図書館さんもありまして、給水場やトイレなど、人目に付きにくい、でも必要な人にとっては取りやすいところに置いてくださったりしています。

刑務所にも送付をしております。受刑中の方に向けてNPO法人監獄人権センターが発行している「社会復帰のためのハンドブック」のなかで、路上脱出ガイドの紹介をしていただいたところ、現在まで200通以上、ガイドの請求を刑務所からいただいています。多くの方が刑務所を出た後に路上生活になってしまうという危惧から、出所前に情報を知りたいということでご連絡をいただいています。

インターネットではビッグイシュー基金のホームページに路上脱出ガイドのPDFを掲載しています。「すぐにできる仕事」「すぐ泊まれる場所」といったキーワードでガイドにたどり着いてビッグイシュー基金に連絡をいただくというケースが多いです。

あとはビッグイシューに関わってくださっているボランティアの方を中心に、教師の方が学校の授業で使う、近所の路上生活者に渡す、生活に困っている知人に渡す、というように、多くの人の手を介して広がっています。

ビッグイシュー基金では2009年から若者ホームレス支援事業を行ってきましたが、その中で、路上に出る前に必要な情報にたどりつけていればホームレス状態にならずに済んだであろうケースを多く見てきました。そこで、昨年の改訂版ガイドでは路上に出る前に予防に使える情報も掲載しております。駆け足になりましたが、以上でご紹介を終わらせていただきます。ありがとうございました。