こんにちは、ビッグイシュー・オンライン編集部のイケダです。2月27日にウェブマガジン「ひみつ基地」が主催した「【イベント】高校中退・大学ミスマッチは、本人だけの問題なんですか?-通信制高校と進路選択・指導の現場から考える本当に必要なこと」のイベントレポートを数回にわけてお届けいたします。中退問題の現場で提案されている最新のソリューションに関心がある方は、ぜひご覧ください。

高校中退・大学ミスマッチは、本人だけの問題なんですか?

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岩切:では定刻になりましたので初めて参りたいと思います。みなさんこんばんは。お忙しいなかお集りいただき、ありがとうございます。マニアックな内容で定員30人くらいを考えていたのですが、蓋を開けてみると50人位申し込みがあって驚いています。

自己紹介が遅れましたが、「夢職人」という団体をやっております、岩切と申します。10年前から子どもたちの学校外の多様な体験活動を推進するNPOをやっています。

活動に取り組む中で、様々な困難を抱える子ども達と出会うようになりました。多種多様な問題や原因があり、一つの団体でできることにも限界があるなと感じておりました。

そういった問題意識があり、昨年から教育関係のNPOの方と共同で情報発信をする「ひみつ基地」というウェブマガジンを始めました。

ライターになってくださっている方々は、20名ほどおりまして、それぞれ子どもの諸問題に取り組む専門家です。本日、登壇していただいている今井さんにも、川原さんにも記事を書いていただいています。

これから話を進めていきますが、この場には政治家の方、官庁の方、メディアの方、実際にお子さんが不登校で悩まれている方、色々な方がいらしています。バックグラウンドは違いますが、目指すところは似ていると思いますので、皆さんと有意義な時間をつくっていきたいと思っています。

はじめにお二人に20分ほどお話をいただき、高校と大学の中退問題と解決のアプローチについて、理解を深めていきたいと思います。まず始めに今井さん、活動紹介と自己紹介をお願いします。

2人に1人は進学も就職もしない。通信制高校の現状

今井:みなさんこんにちは、NPO法人D×P(ディーピー)の今井です。大阪からやってきました。大阪は高校の中退率が全国的に最も高いといわれているところです。D×Pは通信制高校、定時制高校で授業をしていますが、今日は特に通信制高校で行っている事業と現状について、お話したいと思います。

D×Pは4人でやっている二期目のNPOですが、通信制高校で実施している授業が注目を集めています。通信制高校の仕組みを知っている方はいらっしゃいますか?

(会場から手が挙がらず)名前は知っていても、仕組みは知らないですよね。

通信制高校に通う生徒は約19万人いて、少子化の中、生徒数は増加しています。では、どんな生徒がいるのか。一般的には、勤労学生というイメージがあるかもしれません。

ところが今は違うんですね。通信制に通っている約19万人のうち、7割が一度学校を辞めた生徒で、4割が中学校までに不登校経験をした方です。学校によっては9割近い不登校経験者を抱えています。この数は増え続けてきており、来年度で230校になると言われます。学校基本調査では、通う生徒のうち2人に1人は進学も就職もしない、という現状が出ています。

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DxPはそういった課題に着目して、ニートにならないためにキャリア教育の事業を始めている若いNPOです。関西から少しずつ事業を拡げており、ソーシャルビジネスコンペなどでも賞をいただいたりしています。

なぜこの仕事を始めたかというと、自分自身が対人恐怖症だった経験があるからです。引きこもった時期、ニートを経験した時期があって、就職と同時にD×Pの前進となる団体を立ち上げました。

なんとか若者のために何かできないか。一般企業に勤めながら学校にいってヒアリングをしたり、授業をやったりしました。そのときに、たまたま通信制高校の生徒と出会ったんです。話を聞くと、彼らは周りから否定された経験が強いんですね。親から、学校の先生から、友人から…僕と経験が似ていて。一方で、通信制高校の課題解決はなかなか進んでおらず、先生たちも「自分たちはニートを生み出しているのではないか」と辛い思いをしていたようなので、だったら自分が何か出来ないか、とこの事業を始めました。

さて、通信制高校はどういうところにあると思いますか? 実は、この会場のような「ビル」の一室に学校があります。そこにキャンパスがあって、週に二回とか月に二回通うなど、様々な形態の学校があります。が、場合によっては年に数回、またはほとんど通わないでいい、という学校もあります。「年に数回のスクーリングやレポート提出で校舎に通うことなく高校の卒業資格が取れる」のが通信制高校なんですね。

2人に1人が進学も就職もしないという進路未決定者の中からニートが出ていると言われています。定時制高校のほうがしんどいと思われがちですが、そこよりも進路未決定率が高いのが通信制高校です。

どういうところが違うか。全日制、定時制は毎日通わないとダメですよね。通信制高校は通う形態もあります。5日通うところもありますがそれは少数で、実際はほとんど通わずに単位が取れてしまいます。レポートとスクーリング(通学)で単位が取れます。

定時制高校は公立高校がほとんどです。通信制は私立が半分以上です。定時制高校は県とか都がトレーニングやサービスを提供しますが、通信制高校はそれが無いのが現状です。

part.2に続く