なぜ通信制高校が増えている?
岩切:質問をしたいのですが、少子化が進むなかで、どうして通信制高校は増加しているんですか?普通に考えると減りそうなものですが。
今井:学校数も生徒数も増えています。構造改革がありまして、今は株式会社でも高校を作れるんです。たとえば、トヨタが学校を作った例で、全寮制の海陽学園がありますよね。あれは株式会社立です。そうした構造改革で、学校数が増えています。
生徒数でいうと、いくつか要因があるなかで考えられるのは、一般的な学校に合っていない生徒が出てきているんじゃないかな、と。情報も価値観も多様化しているなかで、通信制高校は自分のリズムで通えて、カリキュラムもバリエーションもあって生徒のニーズに合っていて、選ばれやすいというのがあるのかな、と思います。
岩切:ありがとうございます。この後は、もう少し上の年齢の大学生について。大学をミスマッチで中退する人が増えているというので、次はそのテーマについて川原さんからお話をいただきます。それでは川原さん、お願いします。
大学がもし100人の村だったら
川原:今井さんとバトンタッチして、大学ミスマッチの話をさせていただきます。自己紹介としては、出身は熊本で小中高と公立で、東京の大学を出ています。卒業後は人事コンサルの会社で企業の人事の方と新卒採用の企画の仕事をしてきて、今はNEWVERYで高校生向けの進路発見プログラムの企画、運営をしています。
これからお話する中には3つポイントがあって、1つは大学中退の現状。2つ目はなぜそういったことが起きてしまうのか、最後に対策として私たちが何をやっているかをお話いたします。
先ほどからも中退の話が続いていますが、大学がもし100人の村であったら、というかたちで紹介しようと思います。早速ですが、卒業までに約1割の12人が中退します。ほかの13人が留年をします。留年せずに卒業するのは75人です。
さらに、75人のうち卒業後に進学するのが9人。就職できなくて進学している人もいるでしょう。卒業は出来ても、就職出来ない人が21人もいます。留年せずに卒業して、ストレートに就職するのは45人。
さらに、就職出来た45人のうち14人は3年以内に辞めていきます。つまり、大学・短大・専門学校に入って、3年以上会社に入って勤めるというのは3割くらいしかいないのが現状です。もちろん留年、中退が悪いことかというと、必ずしもそうではないのですが、当たり前だと思っていることが実は3割であること、結構レアなケースであることを知ってもらいたいと思います。
大学中退は最近ニュースになっていて、文科省も調査を始めています。中退者の5割程度が非正規雇用、いわゆるフリーター、14%が無職という状態になっています。
中退対策が着目されていなかったのは、大学生にまでなって中退するというのは自分で選んだんでしょ、というイメージがあるからだと思われます。ですが、高等教育の社会的役割は変化しています。20年くらい前は、高校の中でも成績上位の意欲がある学生だけが進学していたところが、今は多様な学生が入学し、従来の授業のやり方ではついていけない、という大学生が出てきています。
スタートラインが下がってきている一方で、社会の仕事は高度化しています。コンピュータや機械に仕事を奪われる時代が来ており、機械化できない仕事が社会で求められています。スタートが低く、ゴールは高い。そうした学生たちを4年間、ないし2年間で成長させないといけなくなっている、というのが大学の現状です。
大学を中退する理由
なぜ辞めていってしまうのかというところでは、まず入試があって、新入生はカリキュラムや学習環境、生活環境に取り込まれて卒業していくという流れがあります。そのなかで逸脱したり不適応になってしまう学生が増えています。もう少しこの不適応、逸脱について話すと、私どもは色々とインタビューをしていて、大きく次の三つがあると思っています。
1つはカリキュラムとのミスマッチ。端的に言ってしまえば、やりたいことと違ったということですね。よくあるのが心理学部で「人へのカウンセリングを学びたい」と思って入学してみたら、「統計的なアプローチで、数学の要素が強くてついていけなくなった」というのがあります。
あとは学習環境とのミスマッチ。学校の中で双方向のプログラムが普及していますが、それが合っている人もいるし、合っていない人もいます。授業自体に学力がついていかないという状況もあります。
最後に生活環境とのミスマッチ。友達が作れないだったり、一人暮らしをして、夜にネットにハマって昼夜逆転して学校に行けなくなる、というケースは多く見聞きしています。 中退者の7割は、1年生のうちにいずれか、または複合的な理由を経験して中退していきます。つまずきを感じる生徒のうち、5割が1年生の前期に経験しているということがわかっています。
大学というのは、高校などに比べて簡単に辞めてしまうんです。大学を中退しても何とかなるんじゃないか、こんな大学で学び続けていても無駄だ、ということで簡単に辞めてしまう、と。しかし、日本の社会は中退者をネガティブな面で捉えることがあるので、就職的に不利になることもあります。
<part.4に続く>