<part.3を読む>
佐野:僕らとしては、今日行ってすぐできる仕事、一日やってすぐに辞められる仕事、それを作りたいと思ったんです。
ビッグイシューの販売者になるためには、面接を受ける必要があります。ですが、僕らがするのは最小限の面接です。落ち込んでいる人に「あなたは何者なの?どこで何をしてきたの?」と身元調べをやるのは最悪ですから。最小限は聞きますが、それさえも聞かないのがいいと思っています。「ビッグイシューを売りたいんです」「なるほど、さぁどうぞ」という流れがいいですね。
最初の10冊は無料でやってみて、その上で続けるのかを考えればいいというわけです。いつ来ても、すぐ出来て、嫌ならすぐに辞められる。とことん敷居の低い仕事場をつくれればいいんじゃないかと思ったんです。
ですから、そこで何万人も何十万人も、ということは考えられません。社会の中に敷居の低い仕組みが二桁もあればそれも選べるわけでしょ。南光さんはもう一つのシェアハウスを選んだわけですが、リバ邸みたいなのがたくさんあればいいわけです。すべての人を救うという話については、そういうことなんじゃないかと思います。
家入:先日、徳島の「いろどり」の話を聞きにいったんですが、そちらでも、まさに佐野さんが言われている、居場所と出番ということをおっしゃっていました。
「いろどり」っていうのは「葉っぱビジネス」をやっている会社です。30年以上やっていますが、始めた当初も「おばあちゃんは家のなかに居るもんだ」という昔ながらの価値観があって、外に出ることができなかった、と。一方で旦那は旦那で、雨だとメインの木材加工の仕事がないから昼間から酒を飲んでいる。これじゃ、やばい!と思って「いろどり」を始めたそうです。
最初はすごい拒否反応を示されたらしいんですが、おばあちゃんが半信半疑ながらも頑張り始めて、だんだん自分たちが役割を見出していって、葉っぱを拾って対価としてお金にもなっていって。それを重ねた結果、おばあちゃんたちが活き活きとし始めた、という話を聞いてすごくいい!と思ったんです。
葉っぱを拾うということから始められる。出番を掴んで、自分で社会の役割と見つけることができて、どんどんきておばあちゃんたちが若返っていって…その結果IターンやUターンで若い人が増えてきていて、それはいいなと思ったんです。
あと、僕は新聞配達をしていたんです。振り返ったとき、これが大きかったなと思って。うちは貧しかったので奨学金のためにやっていたんですけど、住み込みで新聞配達するんですよ。ひきこもりからそこに行ったので、最初は挙動不審で喋れないんです。
でも、必要以上の干渉はされないし、今思うと、普通の社会からドロップアウトした人が多かったと思うんです。オレは普通に働けないという感じの人が、同じ気持ちを共有する中で、必要以上に干渉しない、優しい空間だったんじゃないかと。
新聞配達はそんなに難しい仕事ではないので、とりあえずそこで食っていける。仕組みとして良い居場所になってると思ったんですね。
佐野:僕らは敷居の低い「今日来て、すぐ出来て、すぐに辞められる仕事」を提供していますが、そういうことをしていると、販売の仕事だけじゃなくて、「寝る場所もつくったらどうか」と、支援している人たちから言われるんですね。
そうした声に対しては、ビッグイシューとしては断固としてやりませんと言っています。ビッグイシューは仕事を作るんだ、と。世の中には福祉住宅やシェルターがあるわけですから、そういう所と連携すればいいわけです。
家入さんのリバ邸ようなスペースがあるのは、心強いと思ったんです。色々なことをやっている人が自分で全部やろうと思わない。ビッグイシューが全部やって、組織を大きくして、とは考えていません。それでも有給のスタッフが28人位いるので限界やと思っているんですけどね。だって、管理しないといけないじゃないですか。僕は管理嫌いなんです。管理しない職場にしたいんです。
家入:すごいなぁ、超分かります。
佐野:連携して、色々なことをやっている人が連携するのが社会だと思うんです。僕らは「敷居の低い仕事を提供する」ということをしたいんです。
ただ、人にはそれでも承認欲求があるんです。仕事だけじゃなくて、生きる意欲とか自立への意欲を持ってもらいたいと思うわけですよね。
その点についてはどうしているのかというと、僕らは基金でスポーツ文化活動を重視してやっています。何をやっているかというとホームレスサッカーであったり、コンテンポラリーダンス(ソケリッサ)であったり、路上文学賞を作ったりしています。彼らは、そうした活動をやっていってる時はすごく楽しそうなんですね。
人は楽しんでいる自分は認めやすいんです。自己承認しやすいわけですよね。社会が承認するかはどっちでもいいと。自分で自分が承認できればいいんですね。
なぜビッグイシュー基金を作ったかというと、自分で自分を承認出来る時間はどっかで作っていきたいと思ったんです。ただ、多角的に、コンツェルンにしたいと思っていませんね。
家入さんは事業面で色々なさっているでしょう。僕は家入さんの倍の年齢だけど、事業家としては足下にも及ばないと思っています。たくさんの事業をやられていて、それは凄いと思うんですが、なんでそういう風に出来るのか教えてほしいんですね。
家入:いやいやいや。そんなにすごくないですよ。
お話を聞いていてすごい似ているなと思ったのは、ぼくも管理したくないんですよね。リバ邸も知らないうちに出来ているんですよ。ツイッターを見てたら「福岡のリバ邸できたんだ!知らない!」とか、そういうことがあるんです。
(会場笑)
六本木のリバ邸でどんなイベントやっているかとか住人の出入りも把握してませんし…。最初はお伺いしてくれるんですが、ぼく、打ち合わせとかすっぽかすんですよ。メールも返事しなかったり。家入に頼ったら前に進まないから、俺たちでやろうと、結果的に自主的になっていくんです。
今まで作った会社も、全部そうで。最初は「俺はこれをずっとやっていくんだ!」という気持ちで立ち上げても、半年経つと浮気心というか、もっと面白いことが出てきたら、自然と会社に行く頻度も減っていって、オレたちがやるしかないとなるんです。
佐野:率先してサボる、と。
家入:トップがダメであればあるほど、皆、成長するというのが、ぼくの自己肯定なんですけどね(笑)
<part.5に続く>
今日行ってすぐできる仕事、すぐに辞められる仕事を
佐野:僕らとしては、今日行ってすぐできる仕事、一日やってすぐに辞められる仕事、それを作りたいと思ったんです。
ビッグイシューの販売者になるためには、面接を受ける必要があります。ですが、僕らがするのは最小限の面接です。落ち込んでいる人に「あなたは何者なの?どこで何をしてきたの?」と身元調べをやるのは最悪ですから。最小限は聞きますが、それさえも聞かないのがいいと思っています。「ビッグイシューを売りたいんです」「なるほど、さぁどうぞ」という流れがいいですね。
最初の10冊は無料でやってみて、その上で続けるのかを考えればいいというわけです。いつ来ても、すぐ出来て、嫌ならすぐに辞められる。とことん敷居の低い仕事場をつくれればいいんじゃないかと思ったんです。
ですから、そこで何万人も何十万人も、ということは考えられません。社会の中に敷居の低い仕組みが二桁もあればそれも選べるわけでしょ。南光さんはもう一つのシェアハウスを選んだわけですが、リバ邸みたいなのがたくさんあればいいわけです。すべての人を救うという話については、そういうことなんじゃないかと思います。
家入:先日、徳島の「いろどり」の話を聞きにいったんですが、そちらでも、まさに佐野さんが言われている、居場所と出番ということをおっしゃっていました。
「いろどり」っていうのは「葉っぱビジネス」をやっている会社です。30年以上やっていますが、始めた当初も「おばあちゃんは家のなかに居るもんだ」という昔ながらの価値観があって、外に出ることができなかった、と。一方で旦那は旦那で、雨だとメインの木材加工の仕事がないから昼間から酒を飲んでいる。これじゃ、やばい!と思って「いろどり」を始めたそうです。
最初はすごい拒否反応を示されたらしいんですが、おばあちゃんが半信半疑ながらも頑張り始めて、だんだん自分たちが役割を見出していって、葉っぱを拾って対価としてお金にもなっていって。それを重ねた結果、おばあちゃんたちが活き活きとし始めた、という話を聞いてすごくいい!と思ったんです。
葉っぱを拾うということから始められる。出番を掴んで、自分で社会の役割と見つけることができて、どんどんきておばあちゃんたちが若返っていって…その結果IターンやUターンで若い人が増えてきていて、それはいいなと思ったんです。
あと、僕は新聞配達をしていたんです。振り返ったとき、これが大きかったなと思って。うちは貧しかったので奨学金のためにやっていたんですけど、住み込みで新聞配達するんですよ。ひきこもりからそこに行ったので、最初は挙動不審で喋れないんです。
でも、必要以上の干渉はされないし、今思うと、普通の社会からドロップアウトした人が多かったと思うんです。オレは普通に働けないという感じの人が、同じ気持ちを共有する中で、必要以上に干渉しない、優しい空間だったんじゃないかと。
新聞配達はそんなに難しい仕事ではないので、とりあえずそこで食っていける。仕組みとして良い居場所になってると思ったんですね。
佐野:僕らは敷居の低い「今日来て、すぐ出来て、すぐに辞められる仕事」を提供していますが、そういうことをしていると、販売の仕事だけじゃなくて、「寝る場所もつくったらどうか」と、支援している人たちから言われるんですね。
そうした声に対しては、ビッグイシューとしては断固としてやりませんと言っています。ビッグイシューは仕事を作るんだ、と。世の中には福祉住宅やシェルターがあるわけですから、そういう所と連携すればいいわけです。
家入さんのリバ邸ようなスペースがあるのは、心強いと思ったんです。色々なことをやっている人が自分で全部やろうと思わない。ビッグイシューが全部やって、組織を大きくして、とは考えていません。それでも有給のスタッフが28人位いるので限界やと思っているんですけどね。だって、管理しないといけないじゃないですか。僕は管理嫌いなんです。管理しない職場にしたいんです。
家入:すごいなぁ、超分かります。
佐野:連携して、色々なことをやっている人が連携するのが社会だと思うんです。僕らは「敷居の低い仕事を提供する」ということをしたいんです。
ただ、人にはそれでも承認欲求があるんです。仕事だけじゃなくて、生きる意欲とか自立への意欲を持ってもらいたいと思うわけですよね。
その点についてはどうしているのかというと、僕らは基金でスポーツ文化活動を重視してやっています。何をやっているかというとホームレスサッカーであったり、コンテンポラリーダンス(ソケリッサ)であったり、路上文学賞を作ったりしています。彼らは、そうした活動をやっていってる時はすごく楽しそうなんですね。
人は楽しんでいる自分は認めやすいんです。自己承認しやすいわけですよね。社会が承認するかはどっちでもいいと。自分で自分が承認できればいいんですね。
なぜビッグイシュー基金を作ったかというと、自分で自分を承認出来る時間はどっかで作っていきたいと思ったんです。ただ、多角的に、コンツェルンにしたいと思っていませんね。
家入さんは事業面で色々なさっているでしょう。僕は家入さんの倍の年齢だけど、事業家としては足下にも及ばないと思っています。たくさんの事業をやられていて、それは凄いと思うんですが、なんでそういう風に出来るのか教えてほしいんですね。
リーダーが率先してサボると、自発的な組織ができる
家入:いやいやいや。そんなにすごくないですよ。
お話を聞いていてすごい似ているなと思ったのは、ぼくも管理したくないんですよね。リバ邸も知らないうちに出来ているんですよ。ツイッターを見てたら「福岡のリバ邸できたんだ!知らない!」とか、そういうことがあるんです。
(会場笑)
六本木のリバ邸でどんなイベントやっているかとか住人の出入りも把握してませんし…。最初はお伺いしてくれるんですが、ぼく、打ち合わせとかすっぽかすんですよ。メールも返事しなかったり。家入に頼ったら前に進まないから、俺たちでやろうと、結果的に自主的になっていくんです。
今まで作った会社も、全部そうで。最初は「俺はこれをずっとやっていくんだ!」という気持ちで立ち上げても、半年経つと浮気心というか、もっと面白いことが出てきたら、自然と会社に行く頻度も減っていって、オレたちがやるしかないとなるんです。
佐野:率先してサボる、と。
家入:トップがダメであればあるほど、皆、成長するというのが、ぼくの自己肯定なんですけどね(笑)
<part.5に続く>