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「会社以外の顔」をつくっていこう



佐野:だけど、実際に事業をやっていくとお金が動くわけじゃないですか、お金が回らなくなったりしますよね。お金で行き詰まるというときはどうなさるんですか?

家入:実際にお金がなくなったことはあって、全社員をリストラしてしまったことがありました。そのときの想いも居場所づくりに繋がっていますね。そのときにお金が払えなくなって、「申し訳ないけど皆に辞めてもらわないといけない」という話をしたら、みんな怒って出て行ってしまって。

彼らの生活はぼくの出す給料に依存していたわけなので、当然なんですが、ぼくからすると新鮮だったというか、気付かされたんですね。

要するに、ぼくは給与を払う、スタッフの子はこの分働く、それはイーブンだと思っていたんです。会社がダメになったらクビを切られても不思議ではない、対等だと思っていたんですが、そうではなかったんですね。これからはお金に関係しないチームで、ものづくりができないかを考えて、livertyを作って、リバ邸も生まれたんです。

生活費を貰う口が一カ所だと、そこがダメになったとき一気に路頭に迷うことになりますよね。それはあまりにも脆いというか…働いて生活費を得つつ、色々な顔を作っていかないと、これからの時代は生きるのがしんどいと思ったんです。

大きい物に依存して、いきなり、それが壊れると放り出されてしまう。そうなってしまったときにはもう遅いという状況があると思うんです。原発も同じだと思っていて。何も考えずに依存してきたのに、3.11でそれが露呈した瞬間に脱原発と言い出しても、そこに依存していたぼくらもいるわけじゃないですか。

大きいことは良いことだ、とすべて大きくしていった結果、ぼくらはそこに依存し続けたんでしょうね。それが壊れてしまって、大きいものに依存して、頼っていてはいけないという時代に突入して、一社に依存して給料を貰うのは悪いことではないけど、潰れるリスクはあるわけで、当然それは大企業でもそうですよね。

そうなったときに、会社の顔以外の顔を作っていこうという所から、liverty、リバ邸をやっています。お金を失って見えてきたものいっぱいあるんです。

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佐野:リストラするのは度胸がいりますよ。度胸がないから続けていくみたいなところはありますよね。日本の経営者はみんなそうだと思います、もちろん、ブラック企業は論外ですが。

質問なんですが、一社だけじゃなくて、色々な顔を持って生きるというのは、それが出来ている家入さんは良いじゃないですか。でも家入さんの会社には、一社の中で5人、10人が働いているわけでしょ。そういう人たちはどうしているんですか?日々、どういうメッセージを出されていますか?

家入:メッセージとしては、「依存するな」と伝えています。副業禁止とかは本当にクソみたいな規定だと思っていて。土日とか空いた時間はどんどん積極的に、色んな顔を作って欲しいと伝えています。縛りたくないんです。

佐野:僕は従業員を仲間だと思っているんですが、それぞれ自分の持ち場で仕事をしてもらっているんです。自分の頭で考えて、今日何をやる、明日何をやるということを自分で決めていくということが出来ていれば、仮にぼくが大失敗しても、「給料払えないからビッグイシュー潰すよ」と言ったとき、佐野さんだけ辞めてください、僕らがやりますと言われるのが理想ですね。

一緒に働いている仲間は、どんな現場に行ってもやれる人だと思っているんです。それ位の仕事はして貰っていると思っています。僕が従業員の人に何が出来るかというと、ビッグイシューの外に出たら、もっと輝けるよと、自信持ってくださいと奮い立たせています。

イケダ:ビッグイシューは現在、採用はしていますか?

佐野:そうですね。ビッグイシュー自体は累積赤字で難しいですけど、ビッグイシュー基金は2人くらい正規スタッフに来てもらいたいと思っています。パートスタッフには3人くらい来て欲しい。

イケダ:ありがとうございます。なぜ聞いたかというと、実は今回のイベントはリクルーティングに繋がると思っておりまして…。何かというと、「NPOで働く」って面白いんですよ。今日来てくださっている方は、みなさん一般的な会社に勤めていると思いますが、ぜひとも非営利活動に関わってもらいたいんです。

ぼくはサラリーマンを2年やりましたけど、会社から与えられる仕事よりNPOの方が面白いんですよね。自分で何をやるかを考えて、仕事出来るのは魅力ですね。ぜひこれを機会に、皆さんに非営利活動に関わっていただけると嬉しいなと思います。では、来場者の方からのご質問に移りたいと思います。

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