ビッグイシュー・オンライン編集部より:本誌連動企画として、「中央ろうきん若者応援ファンド」の特集記事をお届けします。
[この記事は「中央ろうきん若者応援ファンド」の提供でお送りしています]
人は人とのかかわりによってしか変われない。ひきこもり、不登校、学校中退の若者が学ぶ「カレッジ」
就学も就労もしていない若者を対象に、イベント運営や長距離を歩く卒業旅行などの「集団活動」を通して、社会で生きていく力をつけるという「とちぎユースワークカレッジ」を訪問した。
(理事長・横松陽子さん)
イベントの運営から進行まで若者に任せる
理事長の横松陽子さんは元編集者。自身も会社の倒産などを3度も経験。「仕事に恵まれないのは本人だけのせいじゃない」と痛感し、若者支援にかかわり始めた。そして、12年にNPO法人「とちぎユースサポーターズネットワーク」の事業を引き継ぐかたちで「とちぎユースワークカレッジ」を独立させた。
一期が半年の「カレッジ」には、17~35歳くらいのひきこもりや不登校経験者、高校・大学を中退した若者が週3日通うが、授業内容は実にユニーク。「言葉での自己紹介は初めの1ヵ月はしません。好きな色を塗ることで心の状態がわかる『ユニアート』や身体表現といったプログラムで自分やクラスメートのことを感覚的に理解します」
(「ユニアート」作品。その時の状態によって色の深さや長さ、混ぜ方などが変わる。)
そして2ヵ月目には、栃木県内の若者支援団体から若者たち約100人が参加する運動会「ヤングスポーツフェスティバル」の企画運営から司会進行までを若者に任せてしまう。
「人前で話した経験もない彼らは不安で泣いたり眠れなくなったりもするけど、打ち合わせや練習を重ねるうちに他人としゃべることへの抵抗が減り、堅牢な結束力ができます」
(ある週の時間割)
その他、各分野の専門家による「道なき道を歩くハイキング」や農作業、群読などの授業を経て、5ヵ月目にはビジネスマナーを学び、2週間のインターンを経験する。インターン先は「したいこと」ではなく「自分が今、社会に貢献できることは何か」を考え、「仕事」のイメージを明確にしながら探す。
(初めてのことや不安なことも「やってみたら楽しかった」の経験を重ねる)
出席率93%、7割5分が就職 1番人気は40キロ歩く卒業旅行
卒業旅行では、宇都宮から日光東照宮までの約40キロを1日かけて歩く。前と後ろに「自分と同じようにがんばっている友達の存在」を感じながら黙々と歩くうちに、若者たちは「これまで一人で問題を解決しようと思ってきたけど、一人じゃ無理」と気づくという。同窓生の9割が「一番楽しかった」と振り返る行事だ。
カレッジの修了生は、延べ130人以上。出席率は93パーセントと高く、7割5分が就職した。
「専門学校を中退後10年ひきこもっていた29歳の男性は、『学校に行きたくない日は無理に行くと、うつ病になる』と信じていましたが、働く社会人にアンケートを実施。『みんな仕事に行きたくないけど行ってしまえば案外平気』とわかり、パン屋のアルバイトを経て正社員に採用されました」
また、中学1年時からひきこもっていた20代半ばの女性は、初めこそ人の視線を怖がったが、カレッジに1年通ったあと「人とかかわる仕事がしたい」と、横松さんに時折悩みを相談しながらも、週5日のレジのパートを1年以上も続けている。
現在パートタイムを含む4名で運営しているが、広報にまで手が回らず学生数が増えないのが悩みだ。今年度は中央ろうきんの助成金で心理士など現場の人を増やし、横松さんは広報活動に力をいれる。
「人は人とのかかわりによってしか変われないんだと、ある子が語ってくれました。こんな場所があることを、一人で問題を抱え込み、苦しんでいる若者にもっと知ってほしい」
NPO法人とちぎユースワークカレッジ
2012年4月、任意団体「とちぎユースワークカレッジ」設立。13年にNPO法人化。
参加・寄付などのお問い合わせ先
TEL 028-638-5502
受講生募集中!13期の受講生を現在募集中です。
中央ろうきん社会貢献基金について
ろうきんは、はたらく人のための非営利・協同組織の福祉金融機関。
「中央ろうきん若者応援ファンド」は、家庭環境や経済状況、病気や障害などの社会的不利・困難を抱え、不安定な就労や無業の状態にある若者の自立支援に取り組む団体を応援する助成制度(2014年10月創設)。認定NPO法人ビッグイシュー基金をアドバイザーに迎え、NPO支援組織の協力のもと、2015年は9団体に総額1,000万円を助成している。
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