シューレ大学や新宿シューレ、ネモネットといった混合のフリースクールメンバーで結成した「フリースクール合同チーム」。ダイバーシティカップに参加し、サッカーの新たな可能性を感じたという小池さんに大会に参加しての感想を聞きました。

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勝負事としてのサッカーから、自分や相手と付き合う合うサッカーへ

―ダイバーシティカップに参加した経緯はどのようなものだったのでしょうか。

自分は普段「シューレ大学」というフリースクールを母体にしたオルタナティブ大学に通っているのですが、友人を通じて野武士ジャパンの練習に何度か参加したことがありました。そこで、ダイバーシティカップの話を聞き、フットサルを通じて様々な人と交流する試みが面白いと思い参加したいと思っていました。

ただ、シューレ大学だけでは試合するメンバーが足りないと思っていたところ、他のフリースクール(新宿シューレやネモネット)からも参加したいという人が出てきたので合同で1チーム出すことになりました。

―小中高とサッカーをしていたそうですが、サッカーが好きだったのでしょうか。

半分はそうなのですが半分は違うんです。とうのも、小中高でやっていたサッカーとは、 他者と競い他者よりも勝ることが主眼に置かれていて、相手とのつながりを感じたことがほとんどありませんでした。でも本当は、サッカーは人と競い勝敗をつけるだけでなく、人とのつながりや1人1人の個性を生かせる場のはずだと心のどこかで思っていて、その可能性を失いたくなかったんです。

そこで、多様性と人との出会いを趣旨にしたこの大会に参加すれば、これまで経験したことがないサッカーに出会えるのではないかと思い参加することにしました。

―ダイバーシティカップはどうでしたか。

楽しかったです!ダイバーシティカップでは、アイスブレイクがあって自分のチームや相手チームの人との距離が徐々に縮まった上で試合をするという流れでした。その中で、互いの名前を呼び合ったりハイタッチをしたりして、違うチームの人たちとも大会の主旨や関係性を分かち合っていくような感覚がありました。

これまでのサッカーでは試合中や試合後に相手チームの人と話す機会がほとんどなかったのですが、この大会では、味方・相手関係なく良いプレーがあれば声援を送るといった雰囲気を感じていました。ですから負けた試合でも、1人1人が力を出した時間を過ごせたという思いから自然と自分のチーム、そして相手チームのメンバーに「ありがとう」という言葉が出てきました。

よく考えると当たり前なことですが、サッカーとは味方と相手という存在がいて初めて成立するものですよね。大会では、他者の存在を尊重するところから始まるということを肌で感じました。少し大げさかもしれませんが、今まではサッカーとは“人の優劣をつける物差しの道具”だったのものが、この経験を経て“自分や他者を尊重することの豊かさ”を感じるもの、に変化し始めた気がします。

試合自体は、うちのチームには初等部(12歳くらい)のメンバーがいたので、単にサッカーがうまい人がゲームにでるだけではなく、メンバー1人1人の力や想いをどう活かして試合を進めるかという試行錯誤もあり、自分やチームメンバーと向き合うような時間でもありました。

ともにボールを蹴った感覚が、他者との間にある壁を小さいものに

―他に印象的だったことはありますか。

交流会の場でいろんなチームの人と話したのですが、一緒の大会でボールを蹴った感覚が自分と相手の中にあるので、他者への壁のようなものを1段階か2段階か超えて、これまでのことやこれからのことを安心して話せた気がします。

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―フリースクールとダイバーシティカップに共通点があったのでしょうか。

そうかもしれないです。自分たちのチームはいわゆる「学校」ではないフリースクールという場で、“自らの関心事から始まる学び”を模索・実践しています。僕は演劇や美術といった表現を中心に活動していますが、そこでも1人として同じ表現はなく、違いがあるということにこそ価値があるのだと感じています。この大会ではそれをサッカーを通して体験することができて本当に楽しかったです。

欲をいえば、1日の試合と交流会だけでは、まだ話足りない、もっとほかのチームの人たちのことを知りたいという思いがでてきたので、2度目の大会やここでの出会いを日常的な付き合いにしていけたらと思っています。またよろしくお願いします。

※フリースクール:学校に行っていない子どもとその親を支援するさまざまな活動を通して、不登校の子ども及び不登校を経験した子どもと、学校外の学び・交流を求める若者の成長と生活の権利を保障し子ども主体の教育のあり方を創造する。

〇ダイバーシティカップの報告書(抜粋版)は下記からご覧いただけます。
http://www.bigissue.or.jp/activity/info_15103001.html





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